エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」   作:糸をなんとかしろ!

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 まだだ!まだ終(エタ)っていなぁい!


20 或る太陽仔曰く、「いい勘(センス)だ」

 

「ん……」

 

 背中が痛む。

 あの骸骨頭に背後を取られた時の痛みだ。ハーニャのおかげで傷はとっくに塞がった。

 けれども完全ではないらしい。一種の魔法による負傷故に完治まで時間が必要なのだという。

 

 胎の違和感。

 とっくに植え付けられた卵は取り除かれたものの違和感は変わらず。今でもいつ孵化してしまうんじゃないかと思ってしまう程だ。

 実際孵化寸前だったらしくハーニャの表情が鬼気迫るものだったのはリーリアの記憶に強く焼き付いている。

 違和感は時間の経過で無くなるらしい。

 

 

 下腹部に手を当てながら、リーリアは思考する。 

 

 

 

 

 初めてあの男の力を目の当たりにしたときに感じたのは驚愕と困惑だった。

 手に持った太陽銃なる代物でゾンビの頭を撃ち抜くその姿は修道女(シスター)の系譜と異にするもの。

 

 あのアルセゾンでのゾンビ襲来からというものずっと助けられている。

 

 

 あの妊婦の忌み子を倒すために夢見の花粉を手に入れるときも太陽仔は己の身を、命を削ってそれを成し遂げた。

 忌み子の先触れだってそうだ。あの男の無茶が無ければ勝てなかった。

 そして今回だってそうだ。

 

 あの男はいつもその身に太陽を宿している。

 

 

 

 ──私はどうだ。

 

 何も出来ていない。

 あの骸骨頭に背後を取られ痛手を負い、沼地の忌み子に卵を流し込まれてこのざまだという事実にリーリアは大きくため息をついた。

 

 退魔の修道女(シスター)としてはとんだ失態もいいところだ。

 

 けれどもあの男は責めはしないのだろう。

 そう言う男なのは何となく察しがついている。

 前提としてあの男は得体の知れない存在だし、あの骸骨頭との関係も否定できない所まで来ている。

 

 けれども、どんな事情があるのか知らないが太陽銃を携えてあの骸骨頭と、忌み子と、そして不死なる者(イモータル)と戦うのだろう。

 そう言う男なのはこの短い付き合いながらもリーリアには確信が持てていた。

 故に彼のそう言うところが好きでもあり嫌いだった。

 

 

 ハーニャに呼ばれた太陽仔の反応が真っ先に「身体、大丈夫か?」だ。

 あの骸骨頭との戦いの顛末についてもリーリアの報告に任せていた。

 リーリアは包み隠さず全てを話した。それに太陽仔が足りない部分を補足する。

 その優しさがただ、リーリアには痛かった。

 

 

「さて。あの骸骨頭の件についてですが。魔法機械にゼロシフト……類似する能力を持っているようですが本当に無関係なのですね?」

 

 確認するようにハーニャは太陽仔に問う。

 リーリアは信じる気でいても、疑われるのは当たり前の話だった。

 太陽仔当人もどう答えたものか分からないようで困りきったような顔で答えた。

 

「あいつの正体については情報がなさすぎて首を縦にも横にも振れん。ただ確かなのは暗黒銃は太陽銃と対を成す存在だと言うこと。おそらくアレは暗黒仔の類であると言うことくらいだ。あの骸骨男が兄弟とほざいているが残念ながら俺は一人っ子だ」

 

 口調だけは少しちゃらけていたものの完全に目が笑っていなかった。どこか昏い目だった。

 そんな目を見てリーリアが少したじろぎそうになる。自分に向けられてる目なんかじゃないのに。

 

「それに奴は忌み子をイモータルにしようとした。そしてリーリアを撃った。……アレは俺の敵だ、それだけは確かだ」

 

 太陽仔は言った。

 あの骸骨頭が携えたものは暗黒銃『ガン・デル・ヘル』だと。製作者が誰なのか、一体なんのために作り上げられたのかも杳として知れず。

 フレーム、レンズ、バッテリーで構成されるという構造だけなら太陽銃とまるで同じで、逆に違うと言えるのはその根源となる力だけ。

 

 太陽銃が先に生まれたのか。

 暗黒銃が先に生まれたのか。

 どちらがマザーマシンなのかはわからない。

 

 

 そして夢見の森で見せた暗黒転移と沼地で見せたゼロシフト。

 暗黒仔と呼ばれる存在の特徴と一致するのだという。暗黒仔については平たく行ってしまえば銀河意思の代行者。つまるところ太陽仔と対を成す存在なのだ。

 

「ゼロシフトは本来あっち寄りの技だ。俺はそんなに使えないのに対してやつはバカみたいに連発が出来る。……属性の話をするか」

 

 太陽仔はおもむろにハーニャから白紙と筆を借りる。

 褒められた絵のセンスではないが、なんとなく『太陽』を思わせる絵が白紙に書き込まれた。そして隣に中心部が欠損したような逆さの十字架のようなものに円を足したマークが書き足される。

 

「この太陽のようなものがソルだ。要するに俺がついているのはこれだ。それに対してダークが存在する。両属性は反目しあい、片方に片方の属性をぶつけると拒絶反応が発生……つまり効果は抜群というわけだ」

 

「どちらが弱いと言うわけではないのですね」

 

「生憎な。あの骸骨頭が暗黒(ダーク)側ってわけだ」

 

 太陽と暗黒の間に太陽仔がもう一つの紋章を描く。

 今度は十字に円を足しただけ──少し暗黒に似てはいるような紋章だった。

 

「これは?」

 

 思わずリーリアが問うとこれまでハーニャとずっと問答していたのに口を挟まれた事に驚きもせず、淡々と太陽仔は答えた。

 

「ルナだ。慈愛と狂気を司る。あの荒くれ者連中から奪い返したレンズもその属性だ。太陽でも暗黒でもない属性だ。ただ交わらないはずのものを『つなぐ』ための『なわ』でもある。ゼロシフトは月光魔法だ。暗黒の力を少し引き出しているらしいが、それもあってあの骸骨頭もホイホイ使えたんだろう。俺の場合反目する力を使うものだからすり減るが」

 

 リーリアは息を呑んだ。この男は身を削り続けている。

 骸骨頭との戦いこそ目撃していない(なにせ忌み子に食われていた真っ最中)もののあの荒くれ者との戦いで行使していた以上あの骸骨頭相手に出し惜しみするような人間ではない。

 

 ゼロシフトとゼロシフトが交差する人外じみた戦いを想像した瞬間リーリアの背筋が少し凍るような感覚を覚えた。そんなリーリアの心境なぞお構いなしに太陽仔は月光(ルナ)の紋章の上に4つの紋章も書き足していく。

 

「そして最後に四元素の力。フレイム、フロスト、クラウド、アース……話がややこしくなるので細かい所は省くが太陽(ソル)側だろうが、暗黒(ダーク)側だろうが使う事が出来る。月光の力が繋いでくれる」

 

 月光の力があらゆる力を繋げる事が出来る。だからこそ太陽仔はゼロシフトを行使出来た。月光の力というのはずいぶん便利なものらしい。とは言え、暗黒の紋章と少し似ている事が少し気になって仕方がなかった。

 

 ハーニャが太陽仔の描いたお世辞にもきれいとは言えない図を一瞥してから少し考え込む。そして口を開いた。

 

「骸骨男が類似する力を持っている理屈はわかりました。……はっきりとさせておきたかったのです。アレが敵なのか、味方なのか。事実、うちの修道女もやられていますから」

 

 リーリアも完全に骸骨頭のゼロシフトを読みきれず一撃で伸されてしまった。その事を振り返ると一気に気が重くなる。同じようにいいようにされる可能性と、そしてまた太陽仔の足を引っ張ってしまったという恥じ入る心が同時にのしかかる。

 顔に出ていたのか、気づけば太陽仔が覗き込んできていた。

 

「アレを予測しろというのが酷だぞ酷。出来たら俺はそいつは多分人間じゃないと思う。物の怪かなにかだ」

 

 完全に読まれている。サッと血の気が首から上に上がっていくのを感じる。怒りではなくどちらかというと恥ずかしさの類だ。心の内を読まれてなんとも思わない人間がこの世のどこにいる。

 どこにいやしない。きっと。

 慌てて何事もなかったかのようにリーリアは「なんのこと?」ととぼけてみる。

 

 すると太陽仔はさぁな、と無理やり切り上げた。

 そういう所が本当に嫌いだ。この男に一切悪気はない。そして何かを察したのか気を使ってくる。……で、そんなことに苛立つ程度にはナーバスになっている自分も嫌で嫌で嫌で仕方がない。ハーニャも気を使ってか今のリーリアの事に追求することはまったくない。

 

 その気遣いが息苦しかった。

 胸の奥に溜まりこんだ空気が淀みとなっていく。淀みが体の内側で溜まり込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰還報告を終えてお開きになり、太陽仔とハーニャがこの場を去った瞬間大きくその淀んだ空気を吐き出した。

 

「はぁっ……」

 

 この気持ちはきっとただの八つ当たりだ。

 自分のやるべきことはあの魔法に対する対処法を太陽仔からどうにか聞き出すことだろうに。

 ハーニャからはしばらくは安静にしていてください、と口が酸っぱくなるほどに言われたものの体も落ち着かない。太陽仔をこのまま放置しておけばもしかしたらこのままアルセゾンのことなんて解決してしまうのかもしれない。

 自分が何もできないまま。修道女としての本分を果たせないまま。

 

 ハーニャの言う通りベッドでしばらく寝てみる。

 けれども意識は中々夢の中に落ちやしない。現実の中で揺蕩(たゆた)い、埃が貼り付いた天井とずっとにらめっこしていた。

 子どもの手のひらサイズの蜘蛛が呑気に巣にぶら下がっている。

 

 気づけば眠りに落ち、目覚め、落ちを何度も何度も繰り返す。

 子供の頃風邪を引いたときベッドでずっと横たわっていたときのことを思い出しそうになる。

 

 ……どれくらいの時間が経ったのだろう。夜になったのか朝になったのか判然としない。

 ハーニャが6度程様子を見に来た。痛みはないか、お腹の具合はどうか、といつものように接してくれている。太陽仔は部屋にはやってくる事はなかった。

 

 

 

 重い体を起こす。

 ベッドから降りた瞬間、少しよろめきそうになるものの、なんとか姿勢を正した。ハーニャに見つかればベッドに引き戻されるのは目に見えていた。けれどもハーニャは修道院の片隅で算板(アバカス)を黙々と弾いていてベッドから抜け出したリーリアのことに気づかなかった。

 

 修道院から抜け出して庭に出るといつものように暗い空が出迎えた。かつてはアルセゾンにも太陽があったという。あの分厚く、ドス黒い雲の向こうにはまだ太陽はいるのだろうか。

 太陽仔が取り戻したがっているという太陽は──

 そんな事を考えていると知った声が後ろから飛んできた。

 

「大丈夫なのか? 体」

 

 振り向くと修道院の壁にもたれている太陽仔が「よう」と会釈する。

 

「えぇ。ハーニャの治療の腕が良いから」

 

 実際の所まだ痛むが気取られないように笑顔を作ってみる。うまくごまかせた──気がする。

 

「悪かったな」

 

 突然謝るものだからリーリアは目を丸くした。謝る要素がどこにあるんだ。答えはすぐに太陽仔が口にした。

 

「多分俺の仕事にお前を巻き込むことになる。元々お前には関係なかったことだ」

 

 ──それは違う。

 

 太陽仔がここにやって来ようが来なかろうがリーリアが拾おうが見捨てようがきっとあの骸骨男やそれに類する悪意はやってくるものだ。悪意というのは向こう側の都合など知ったことではない。エゴをただただ押し付けるだけだ。

 お前のせいだ。お前がここにやってきたから自分たちは苦しんでいる。

 そんな誹りを、暴力を、辱めを受けた事は生まれて来て何度も受けた事がある。

 修道女として各地を巡ってきて何度受けたか。数えるのはとっくに放棄したし、その不条理に流す涙など枯れ果てた。今の太陽仔はかつての自分と同じだ。

 それが巡り巡ってリーリアの方が謗る側になったというわけだ。けれどもリーリア当人が気にしているのは悪意を退けられない己(リーリア)の弱さだ。太陽仔ではない。

 

「私は修道女として成すべき事をした。倒れている貴方を助けたのだってそうだし骸骨頭と戦うことだって。こうしてアルセゾンで魔物と戦っているのも退魔の者として貴方が成すべき事をしている。違う?」

 

 牧師ではなくヴァンパイア・ハンターとして。自分を歪めて得られるたらればなぞに価値はない。

 起こるべくして起きた事を誰が責めよう。それに太陽仔がいるいないなぞ関係無しに人に害を成すのならば戦う敵なのは一緒だ。暗黒仔だろうが、ヴァンパイアだろうが。

 太陽仔は「違わないな」と小さく返した。

 

「そこに間違いなんてありはしないわ。……そう言っている私も結局貴方の足を引っ張っているのだけれども。本来あの忌み子も先触れも私が祓うべき魔物だった」

 

 自嘲気味に笑う。

 アルセゾンの魔物はこれまで戦ってきた魔物とは何かが違う。リーリアの直感的な何かがそう言っている。けれども太陽仔当人はその言葉に肯定する事も否定する事もなかった。

 その代わり──太陽仔は真っ直ぐリーリアの方を見据えて──

 

「……あいつの使う月光魔法(ゼロシフト)には弱点がある」

 

 そう言った太陽仔の姿がふっ、と風に流される砂のようにかき消えた。

 

 ──消えた!? 

 

 この現象には見覚えがある。あの骸骨頭がやった瞬間移動だ。

 気づいたときには声が真後ろから飛んできた。

 

「この魔法は旋回能力がない。真っ直ぐ前方に向かって一直線、一定の距離だ」

 

「はっ──」

 

 骸骨頭との戦闘で感じた感覚そのままがリーリアを襲う。心臓が止まりそうになる、死に近づいた時のような感覚だ。

 あぁそうだ。先の沼地ではこうして背後に回られて撃たれたのだ。慌てて振り向くと太陽仔が手で銃の形を作って「ばーん」と撃つフリをした。思えばとんでもない魔法だ。

 かつて複数人で襲いかかってきた荒くれ者も完全に弄ばれていた。もしも自分がこんな魔法が使えたなら、と思いはするものの結局はないものねだりだ。

 

「こいつは転移魔法だが他者の意思が介在している場合発動が出来ない。つまりは、だ。誰かが魔法の発動者をとっ捕まえている状態だと魔法にエラーが出る」

 

 無造作に太陽仔はリーリアの腕を掴み自らの外套を掴ませる。――何も起こらない。

 そして手を離した瞬間再び太陽仔の姿が消えた。

 

 ──後ろか! 

 

 おぼろげながら読めた。咄嗟に振り向きざまに杖を抜き放つとがちん、と音を立てた。

 太陽銃と杖が交差しぶつかりあったのだ。読まれた事に気づいた太陽仔は驚愕よりもただ嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「ヘッ……いい勘(センス)だ。そうだ、こいつは無敵の魔法なんかじゃあない。相手が何をしてくるのかある程度読めていれば即座に対応が出来る。この魔法の用途そのものは単純な高速移動と敵対者の背後を取る事だ。……俺に出来る事はこれしかない。せめてふざけた所見殺しから身を守る術を伝える事だけは、な」

 

 太陽仔も太陽仔なりに何か悩んでいる。彼の目に少し影が差し込む。

 この男は太陽を宿している。多分自分より二歩も三歩も前へと進んでいる。それが面白くないと感じている自分もいるのは確かだ。けれども──これは違う。

 違うのだ。この男が俯いているのを見るのは見たくはない。その諦めの悪さに希望を貰えているから。自分も前を向いていられるような気がするから。

 そうだ、その優しさに息苦しさを感じている場合ではない。

 

「充分よ……!」

 

 痛む背中に鞭打ち、杖を構え直して距離を取る。

 戦意を察した太陽仔は太陽銃のレンズを取り替える。山吹色のレンズから白いレンズに。

 

「特訓ならいくらでも俺を使え。残念ながらあの骸骨野郎と俺はムカつくが──似ている気がする。そしてヤツは多分……お前を狙う」

 

 あの銃然り、他に太陽仔には思う所があるのか。

 多分この男はまだ隠し事をしている。あの骸骨頭についておそらく何かを隠している。けれども信じるに値する人間だ。誰かの為に命を削ってでも救おうとするこの男の行動を信じる。

 その口から語られるのを待とう。

 

「なら教えて。また同じ事にならないように」

 

「──あいよ」

 

 太陽仔が地面を蹴る。それをリーリアが迎え撃つ。

 お互い抱え込んで溜め込んでいたものをお互い吐き出すように振るわれる銃と杖。今はこうして体を動かしていた方が楽だった。それは多分、太陽仔も同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、ハーニャにバレて2人ともお説教を貰ったのは言うまでもない。

 特に太陽仔はこってりと絞られたとか。




 あ、次回は亜人編です。
 つまりみんな大好きゴブリンよー(´・ω・`)

Question

  • ボクタイから来た!
  • SiNiSiSistarから来た!
  • メタルギアから来た!
  • 偶然見つけた!
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