エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
\ (・ω・\)生命! (/・ω・)/ピンチ!
\ (・ω・\)人類! (/・ω・)/ピンチ!
余談ですが、主人公の太陽仔に名前がないのは西部劇の主人公のネタだったり。
ジャンゴもサバタもサルタナも西部劇ネタから来ているので、今回の太陽仔は名無しにしようとした次第。名無しの主人公はよくいますからね。荒野の用心棒とかペイルライダーとか(代わりにあだ名とかはある)
某金属な歯車シリーズのファンの1人なので、「名前などない……」と言わせたかっ(ry
「ゾンビ!?」
「あぁ落ち着いてください!」
開口一番太陽仔の反応がそれだった。
当たり前だ。結局ヴァンパイアが居ようが居なかろうが、この世界の生と死の輪廻にアンデッドが介入しているのならばそれはヴァンパイアハンターの領分だ。
グールタイプなのか、それともスケルトンタイプなのか。
何体いるのか。
聞きたいことは山ほどあったものの、小柄なシスターには突然患者が興奮したようにしか見えず必死に「落ち着いてください!」しがみつく。
当の抑え込まれた太陽仔も小柄な修道女をケガさせる訳にもと少しの遠慮が二人の間の力関係を拮抗させる。
そんな最中、もう一人の修道女に向かって小柄な修道女が呼びかける。
「彼の事は任せてください。リーリア、貴女は魔物を!」
「ハーニャ。お願いするわ!」
こくり、と頷きリーリアが修道院の外へと飛び出していく。
まるで哀れな病人みたいな扱いに少しばかり憤慨しそうだったが、実際問題行き倒れていたのだから何も間違ってはいない。間違っているのはヴァンパイアハンターが行き倒れになって非ハンターの人間たちに庇われているという状況の方だ。
……あえて。そう、あえて、だ。
言われた通り落ち着いてみる事にしよう。
突如スンと動きを止めた太陽仔に小柄な修道女――ハーニャはきょとんとした顔で太陽仔の目を見る。
突然落ち着いたものなのだから一体どんな心境の変化だ、と思いもしているのだろう。
「シスターさん。この手の事には慣れているのか? ゾンビやら魔物やら」
「えぇ。散々やってきたことですから」
事も無げに。ハーニャは答える。
淡々と、事実を述べている。そういう風に太陽仔には思えた。彼女ら修道女は一種のヴァンパイアハンターの類である、という結論にも行きつく。
とはいえ。言えども、だ。
太陽仔は今の自分の恰好を確認する。修道女たちはダスターコートを脱がせられなかったのだろう、倒れた時の状態のままベッドに転がされている。
流石にブーツだけは脱げているのでベッドのすぐそばに置いてあった。
棺桶は――見当たらない。贅沢は言ってられないか。
ズボンに取り付けられたホルスターは――あった。
戦うための手段は、まだある。
「悪い、食いモンあるかい?」
「そうです。今は体を休めて、安静にするのが先決……」
流石に大人しくなったと思ったのだろう、ハーニャは大きくため息を吐いてから、少し離れた場所に安置された籠の方へと向かっていく。籠には様々な果実が入っている。
食べればきっと元気になるだろう。だがしかし――今は。
「隙ありィ!」
太陽仔はベッドから飛び出した。
「はぁッ!?」
信じられないものを見たと言わんばかりにハーニャのひっくり返ったような声が修道院の乾き切った壁を乱反射する。
なお、太陽仔の走る先は修道院の扉――つまり出口だ。
「危険です!」
「――倒すべき敵を前に、ヴァンパイアハンターが大人しくくたばっていられるか!」
ハーニャの制止を振り切って太陽仔は外へと走りだす。
彼女の足では、太陽仔の足には追いつけなかった。
◆◆◆◆◆
村人の言う通りだった。
村の外周には10数体程度のゾンビが蠢いている。中途半端に腐り、崩れ、剥き出しとなった骨のまま、貌が得物を見据えるや否や飛び掛かり、村人の首筋を噛みちぎろうとしている。
リーリアはイチイの枝で造られた杖を取り出し、噛まれかけた村人に走り寄る。そしてそのままイチイの杖を大振りに振りかざした。
杖の先端が蒼く輝く。
「はぁっ!」
掛け声とともに振り下ろされた一閃はゾンビの身体を焼き切り、村人に組み付いたそれは蒼い光に焼かれるように消えていく。
逃げてください、と促すより先に村人たちは逃げていく。
それに構わずリーリアは杖の先端を次のゾンビに向けたまま構えを取る。
次の標的はやや離れた位置にいる。だがこのまま放置しておけば民家に押し入って大惨事を起こしかねない。
――一撃で仕留める。
杖の先端から光の矢と、もう片方の空いた手からは光の弓が生み出される。
弾道、距離、狙いに問題なし――行ける。
リーリアが「疾れ」と念じた瞬間、矢が飛び出した。
顔面直撃、一撃必殺。頭を吹っ飛ばされたゾンビはそのまま地に倒れ伏した。2体、3体、視界に入り次第一撃で仕留めていく。間もなくして前方の敵が消えた。
次は――
次のターゲットを探そうとリーリアの脚が動こうとしたその矢先だった。
前に進むこともなく、後ろに引っ張られるようにリーリアの身体がよろめく。同時に腐った卵のような臭いが鼻腔を突き刺してきた。
「しまっ――」
ゾンビだ。既に背後に回り込んでいたのだ。恐らく周囲の建物の影に隠れて回り込んでいたのだろう。
慌てて振りほどこうにもゾンビの肉食獣のような勢いでこじ開けられた口がリーリアの視界を覆う。むき出しになった歯は歯というより最早牙だ。
その牙は容易くも、リーリアの白いむき出しの肩に突き刺さった。
ぐちゃり。肉が抉れる音がした。
噛みちぎられた跡が焼けるような熱を伴ってリーリアに痛みという形で実感を与えてきた。
「あぁッ!!!」
熱した鉄を押し当てられたような痛みに、リーリアは絶叫する。それに呼応するようにゾンビたちが次々と彼女のもとへと迫っていく。
餌を見つけたと言わんばかりだ。振りほどこうにも嫌な組み付かれ方をされたせいで体が思うように動かない。
――殺られる。
リーリアの瞳が恐怖に染まる。
――ああ、私、死ぬんだ。
ここで死ねば、どうなるのだろう。
きっと多くの民家に押し入って人々を貪り喰らうだろう。次は修道院だ。ハーニャには戦う力はない。あの名無しの太陽仔だって、ヴァンパイアハンターなるものを名乗っているもののきっと寝言か狂言だ。
――ハーニャ、逃げて……
何も成せなかったけれども。
せめて、かけがえのない人に生きていてと願うのは罪だろうか。貌の分からない主に祈りを捧げながらコマ送りのようにして迫るゾンビと、組み付いたゾンビが次は首筋だと、骨付き肉を齧るように口を開く。
そして――
山吹色の閃光がリーリアのすぐそばを横切った。
「えっ……」
先ほど感じた痛みという熱とは違うものだった。
暖かい、陽だまりのような熱がリーリアの白い肌を撫ぜる。組み付いていたゾンビは煙となって灼け消えていく。
光の飛んできた方向には――男がいた。
そう、先ほどヴァンパイアハンターを自称した名無しの男。或いは太陽仔。
――ハーニャを振り切ってここまで来たの!? そんな馬鹿なことを……!
朽ち葉色の外套をたなびかせながら、同じように山吹色に輝くナニカを手に構えている。それが光の矢に類推されるものだという事はリーリアの勘が告げていた。
「グールにしちゃあ貧相だ。中途半端に肉も残っているからシングタイプのスケルトンでもない。新手のアンデッドの類かどうかは知らないが――太陽銃が効くなら
訳の分からないことを呟きながら無造作に、次のゾンビに狙いを定めると再び山吹色の光弾が吐き出される。
その光に呑み込まれたゾンビは先ほどと同じように消し飛んだ。
あれは――銃だ。
リーリアも噂では聞いたことがあるものだ。弓と矢を必要としない小さな大砲があると。けれども、そんな生易しいものでは済まされない。
今、あの男は明らかにゾンビを浄化していた。修道女でもないのにも関わらず、だ。銃だってそもそも噂で聞いているそれよりも小さいものだ。
「大丈夫かシスターさん!?」
片手間にゾンビをその小さな銃で浄化しながらリーリアの前に立つ。
「えぇ、なんとか」
庇護される存在ではないと理解した瞬間、リーリアの次に取るべき行動は変わっていた。治癒魔法は使えない。
ハーニャ程器用な能力は持ち合わせていない。リーリアの得意とする魔法は荒事に関することだけだ。とはいえここで弱音を吐くのはシスターの所作ではない。
「って思ったより多いな! そこそこゾンビ入り込んでやがるし、誰がけしかけたんだ、これは!」
十数体、という見積もりは甘かったらしい。
太陽仔が奥に入り込みかけているゾンビを先に浄化しながら、叫ぶ。若干キレ気味なのは気のせいではない。
「わかりません……!」
「こんな火事場で論じてたってしゃーないか……おらぁッ!」
横殴りに襲い掛かってきたゾンビを回し蹴りで吹っ飛ばしてから倒れた所に追い打ちの射撃一発を叩き込む。
完全に手慣れている動きに、リーリアは同業者の匂いを感じ取った。
「一気にやるか……!」
銃口をゾンビの群れそのものに向け、力を籠める。
何かが始まるのだ。この男ならやる。絶対にやる、そういうスゴ味がある。
太陽仔は不敵な笑みを浮かべ、引き金に掛けた指を引く……
だが、何も起こらなかった。
カチッ……と乾いた音がしただけだった。
「やべっ……バッテリー切れ。チャージしてる暇……無かったよなぁ……」
何を言っているのかリーリアには理解は出来なかったがこれだけは確かだと確信を持って思えた。不発だった、と。
それを裏付けるように太陽仔の顔が一気に引き攣った。
――あ、これは駄目な奴ね
一瞬期待した自分は愚かだったのかもしれない。そもそも本来失われていたこの命、数刻でも伸ばして貰えただけでも幸運と思うべきか。
せめてもの抵抗と言わんばかりにリーリアは光の矢を放つ。しかし肩の傷が騒ぎ出して狙いが絞れない。数発撃って当たったのはいいものの、片足に突き刺さりゾンビが1体すっころんだだけだった。
そんなリーリアの心境を読んだわけではないのだろうが、太陽仔は
「いや、まだ手はあった。あんまり言いたかないが……明日も陽は昇るんだ」
明日もまた陽は昇る。青空の見えないアルセゾンの地に似つかわしくない台詞と共に太陽仔は外套の内側から何かを取り出した。
小さな球のようなそれを銃身に取り付けると天空目掛けて発射した。
「貴重な一発だ! いけよ、ライジング・サン*1!」
どれくらい遠くまで飛んだのだろう。
小さな球が暗雲に呑み込まれて消えた時、再びリーリアは不発を確信した。一体何をするつもりだったのか。
その答えは――すぐに出た。
まずは一筋の光。
次に二筋、三筋。目に見える勢いで増えていく光はたちまち暗雲を焼き払う。
――青空が、見えた!
青空と共に顔を出す太陽。アルセゾンに向かう前に見たのがきっと最後。それ以来の再開に喜ぶよりも先に、太陽を引きずり出したこの異常な存在の方にリーリアの注目が行っていた。
太陽仔は再び銃を天空に目掛けて掲げ、大樹の根のようにその足で地を踏みしめ、この地に満ちた瘴気を吹き飛ばすような勢いで叫ぶ。
「太陽ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
差し込んだ太陽光がまるで意志を持っているかのように光が太陽仔に集中していく。
この太陽仔は状況を打開する何かを持っている。だが今の彼は無防備であることは何となく察せられた。ゾンビが近寄ってくる。
今のリーリアにできる事はただ、このゾンビたちを太陽仔に――
「近づけさせない!」
肩に燃え上がるような痛みに歯を食いしばりながらリーリアは放つ。狙いを絞って当てる。当てる。当てる。
「うっ……くぅっ! あぁッ!」
倒せなくたっていい。時間を稼ぎさえすればいい。ただその一心で痛みに耐え続けた。片腕の感覚が薄らいでいく。
ふと、太陽仔の方を見た時。既に銃口をゾンビの群れへと方向を変えていた。
「充電、完了だ。ありがとう――助けてくれて」
その瞳と銃口はゾンビに向いていても言葉はリーリアに向いていた。
その言葉にリーリアは無言の微笑で返す。
「吹き飛べえッ!!!!!」
そのやり取りを吹き飛ばすが如く発せられた雄たけびと共に銃口からこれまでのものとは比較にならないサイズの弾丸がその銃から放たれた。
結果は――言うまでもあるまい。
事が終わった時には既に青空は閉じられていた。
それはきっと、一瞬の奇跡。
その奇跡を呼んだ男は「気分爽快だ」と満ち足りた表情で笑ってから――
糸の切れた人形の如く頽れた。
「太陽仔様!?」
あの奥義にはきっと大きな反動があったのだ。それをこの男は命を削って――大きな後悔と罪悪感がリーリアを襲う。肩の痛みは酷く腕が千切れてしまいそうでも、そんな体を引きずるように倒れた太陽仔に駆け寄る。すると――
ぐぅぅ……
それは酷く呑気な音だった。
「あっ……」
ただ、お腹がすいているだけだったらしい。そういえば、寝ている間にポーションを喉に流し込む事で多少の栄養こそ与えていたものの、こうして動き回る人間を動かすには不十分過ぎるものだった。
太陽仔は酷くげっそりした顔で両目をかっ開かせながら開き気味の瞳孔を晒しながらプルプルと体を震わせていた。
「腹……減った……」
修道院に帰ったらいっぱい食べさせてあげよう。
先ほどまでの雄々しさはどこへやら、弱弱しくなった太陽仔を支えながら修道院へと歩を進めた。
相変わらず肩は灼けるように痛かったが、ゾンビに噛み殺されかけた瞬間に比べれば虫に噛まれたのと同義であった。
今回の敵解説。
・ゾンビ(出典:SiNiSistar2)
埋葬された遺体が異教の術によって、動く屍となって動くようになった魔物。
痛覚が鈍く、その力任せの動きで相手を捕え、本能のまま貪り喰らう。別に噛まれてもゾンビ化はしないらしい。
ボクタイ的に言うならグールのような存在。
しかし、ライジング・サンによる効果を受けても消滅しないためある程度の耐性はあると推測される。
名もなき太陽仔の操る太陽銃ことガンデルソルのチャージショットにより集団で吹き飛ばされた。
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?