エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」   作:糸をなんとかしろ!

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③或る修道女曰く、「一体何を考えているんですか貴方は!」

 

「一体何を考えているんですか貴方は!」

 

 ハーニャの怒号が修道院に木霊する。

 修道院に帰ってすぐはハーニャの怒りは爆発せず1人でぶつくさ言いながらリーリアの傷を癒しつつ、ありったけの食べ物を用意して太陽仔に差し出した。

 そしてありがたく久しぶりのまともな飯にありつけた太陽仔は心底嬉しそうに手始めに、皮をV字に切り取ってうさぎさんのように形作られた林檎(ハーニャ作)を手に齧ろうとしたその瞬間、ついに彼女の溜め込んだ怒りが爆発した。

 

「すんません、何も考えてませんでした」

 

 なお、太陽仔。言い訳は出来なかった模様。

 実際問題、ヴァンパイアハンターと太陽仔としての矜持だけで突っ込んでいったようなものなので何も考えていなかったに等しいものだった。

 

「ハーニャ」

 

 諌めるようにリーリアが遮る。

 リーリア当人は怪我はハーニャの治療魔法によって瞬く間に回復しており、元通りの磁器のような白い肩だ。

 ハーニャはこほん、と咳払いしてから再び事の葉を紡ぐ。

 

「そのまま食べながら聞いていてください。リーリアを命懸けで救ってくれた事には感謝しても仕切れません。ですが。満身創痍の状態で走って行った事には承知致しかねます。二度と……そう、二度と! 同じような事はしないように」

 

「……」

 

 ハーニャのお説教を聞きながら太陽仔は促されるまましゃり、とうさぎさん林檎を齧る。甘い水気が口の中に広がっていく。

 飢えもあったろうが、この人生の中で一番美味しい林檎だと、そう感じた。

 

「……そっちの善意に漬け込んで脱走なんて真似をしたんだ。すまなかった」

 

 かなり悪辣な飛び出し方をしたという自覚は太陽仔にはあった。

 おそらく、おてんこさまがここに居合わせていたならこのような無茶をすればお説教が飛んでくる事だろう。

 アレで怒らないでいろというの正直無理がある話だ。リーリアを助けた事は感謝すれども、また同じような馬鹿をホイホイされたのではたまったものではない。

 

「でも──ありがとうございました。ヴァンパイアハンターを名乗るその腕前、見せていただきました」

 

 だがそれはそれ。これはこれと、深く頭を下げるハーニャに太陽仔も首を横に振った。

 

「そこはお互い様だ。拾ってくれた分もあるし」

 

 一宿一飯の恩義というものだ。

 貴重な太陽銃グレネード(ライジング・サン)を消費したもののこの程度なら安いものだ。

 道半ばで死ぬよりはマシだった。まだ目的を果たせないで死ぬのが──嫌だった。

 

「私からも、ありがとうございました」

 

「だからお互い様」

 

 リーリアも頭を下げるが太陽仔は首を横に振った。

 彼女がいなければチャージ中にゾンビに貪り喰い殺されていただろうことを考えればあの援護射撃は的確だった。

 戦士同士、少しばかり思うことがあると言うもので太陽仔とリーリアの無言のやり取りにハーニャは一つ咳払いして割り込んだ。

 

「こほん……取り敢えず貴方の事についての状況を整理しましょうか」

 

 そうだ。まずは情報だ、と太陽仔はハーニャの話に乗る。

 

 ……このアルセゾンという地にあれだけのゾンビが湧いてきていると言うことは世紀末現象*1が始まっているという事だと太陽仔は認識している……つもりだ。

 つもり、というのも自信が無いのだ。

 あのゾンビは暗黒物質*2で生まれた存在ではおそらくはない。

 グールの派生系としてゾンビと呼ぶ個体もあったがアレとも似ても似つかない。

 

 自分の常識が全て空回りしているような気がするのだ。

 

「貴方はヴァンパイアハンターであると言うことについては理解できました。サン・ミゲルという地からやってきて、修道女では無いにも関わらず浄化の力を持っていると言うことも」

 

 浄化の力を持っていると言うには少し語弊がある。とはいえあまりベラベラ喋っても致し方ない事なので敢えて指摘はしない。

 だが、その事についてはハーニャの方から突っ込んできた。

 

「しかしその銃はなんですか? その力の源はそこにあるように思えるのですが」

 

「……太陽銃だ」

 

 別名ガン・デル・ソル。

 それが太陽仔の戦う力だ。かつての時代に生きた旧時代の太陽仔たちの遺産の一つ。

 太陽の光をエネルギー源とし、それを射出。敵を焼き飛ばし浄化する武器だ。

 

「また太陽ですか……貴方は太陽にまつわる力を持っている。と言う事ですね」

 

「そういうことになる」

 

 前提として、()()()()()()()太陽仔にしか扱えない。

 かつて、伝説の戦士──太陽少年ジャンゴが父親、リンゴから継承した伝説の銃でもある。

 20年前、ジャンゴはこの銃でありとあらゆる人類の、生きとし生けるものの全ての敵(闇の一族と絶対存在)と戦ってきた。

 

 そんな伝説そのものな銃が何故血の繋がりも無いはずの、名も無き太陽仔に継承されているのか。

 

 説明すれば長くなるので、話を戻そう。

 次に口を開いたのはリーリアだった。

 

「貴方の戦闘を見たところ、無限に撃てる訳ではなく太陽光を魔力に変換しているように見えたのですが」

 

「その認識で合ってる」

 

 太陽銃はエネルギーが尽きた場合、太陽銃は弾丸を放てない。ただの屑鉄と成り下がる。

 だからゾンビ戦の後半で撃てなくなり、窮地に陥った訳だ。

 再び撃てるようにするには太陽光からチャージする必要がある。

 だが太陽チャージはチャンスだが隙だ。

 更にチャージショットも行うとなれば更に隙。

 故に太陽仔はリーリアの咄嗟の行動はありがたかった訳である。

 

「じゃあ逆に質問。修道女って俺の知る修道女は太陽仔みたいにバケモンとやり合う集団じゃないと言う認識でいた。でも見た感じどちらかというとヴァンパイアハンターに限りなく近い……ように思える。皆そうだったり?」

 

「実際リーリアのように荒事を主にしている者や、私のように後方支援を主にしている者もいます。ヴァンパイアがどういうものなのかは存じ上げませんが、「教会」にいる修道女は全てではありませんが私たちのように魔物を祓う者がいるのです。先の襲撃で出現したゾンビが魔物の一種です。何故このような魔物だらけになってしまったのか。何故ここに呪いが蔓延してしまったのか。それを調査し可能であればその原因の排除の為に私達がこの地に派遣され、この修道院を拠点としていると言う訳です。貴方は何故このような所に? 私と同じような調査を?」

 

 例えるならば。

 リーリアはジャンゴであり、ハーニャはおてんこさまと言う訳だ。

 教会のシステム的に、宗教上の部分を引っこ抜けばやっている事はギルドに役回りは強い。あの組織に聖職者はいたかどうかはわからないが多分いるだろう。

 今回の場合はアルセゾンで発生した異変の調査とその原因の排除が修道女たちの最終目標のようだ。しかし、太陽仔は違う。

 

「俺がここに来たのはそのアルセゾンを目指してた訳じゃない。ここの異変すら知らなかったんだ。俺の場合──サン・ミゲルを襲った犯人を追っていた」

 

 ペイルライダー。

 サン・ミゲルを襲った異聞の終末、太陽銃が然るべき人間(ジャンゴ)の手元にない元凶。

 それが、全ての発端だった。

*1
暗黒物質が引き起こす様々な時代や場所が混合し、モンスターが発生する現象。その時代に存在し得ない物体や建造物が出現する場合もある。

*2
読み:ダークマター。闇の力の塊の事を指す。ボクタイの世界において怪現象が起きると大体そいつのせいと言える程度には便利な存在。同じ読みで暗黒武具なる存在もあるが今回は関係ないので割愛する

主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?

  • いる。
  • 無くても大丈夫やない?
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