エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
「あなたはそのペイルライダーなるものを追っていた、と」
「別に狙ってこの場所に来たというよりは成り行きで来たというか。助かったけど想定外って所だ」
ハーニャのまとめに付け加えるように、太陽仔はぼやく。
ペイルライダーの行方は杳として知れず、その後の道程で数日も眠っていたのなれば逃げられたに等しい。じゃあこれから先何をすればという話だが、本来サン・ミゲルに戻るのが筋というものなのだろうが。
問題はおてんこさまとはぐれているという事だ。
ハーニャとリーリアの証言的に気絶しているタイミングで何かがあった事は明白なのだろうが……それにもう一つ心配事がある。それは――
「ところで、俺は棺桶を引きずっていたはずなんだが――あれ、仕事道具がそこそこ入っていたんだ。誰か知らない?」
棺桶。
その単語を太陽仔が口にした瞬間、リーリアが肩をピクリと跳ね上げさせる。
それもそうか、拾った当人が一番よく知っているはずだ。太陽仔の視線がリーリアに向くと、リーリアは鳩尾に一発入れられたような顔持ちで、白状した。
「申し訳ございません。私の力が足りずに棺桶は……後で棺桶を回収しようとはしたのですが、その時には既に」
「……マジか」
――マジか。
心に思っていた事がそのままに出てしまった。ショックを受けていると分かるや否や、完全にリーリアの顔がやらかした人のそれと化していた。
なにぶんあの棺桶には仕事道具が入っている。太陽銃グレネード、レンズ、フレーム。コートの中に仕込んでおくにはあまりにもかさばり過ぎたのだ。そんなものだから棺桶は移動手段でもあり一つの倉庫でもあった。
それが失われたという事は――ふと、コートの内ポケットに仕舞われたものと太腿に縛り付けられたホルスターを確認する。
あるものは太陽銃本体。
装備はレンズ・ソル、フレームはドラグーン*1バッテリーは当然装備品のみ。
予備バッテリーはみーんな棺桶の中。他属性のレンズもみーんな棺桶の中、フレームだってみーんな棺桶の中。
電池だって、レンズだって、フレームだーってー。
みーんなみんな、仕舞っているんだ、かんおけのーなーかー。
なお、申し訳程度に内ポケットにはなけなしのゼニ袋とグレネード数発、そしてもう一つのフレーム・サムライのみ。……以上!
「ぉぁーーーーー」
終わっている。素寒貧だ。顎が外れるほどに開いた口からまるで蚊の音のようなか細い音だけが漏れ出る。
無くなっているという事はつまり誰かが持って行ったという事だ。あんなご時世、略奪、暴力なぞあって然るべき日常風景だ。それにしてもどうしてこういうタイミングに限って棺桶の中に仕舞っているのやら。――移動中に落としたくなかっただけだ。
元から運は悪かった。同じギルドの連中とカードをやろうならボロ負けし、コイントスは10回やれば8回外す。こんな土壇場ですらクソみたいな運じゃなくてもよかっただろう。
今目の前の修道女を責めてもどうにもなるまい。彼女はやれる最大限は尽くした。命あっての物種とも言う。
運が良かったんだ。逆に、そう思うことにしよう。
その時、太陽仔は口を閉じた。
「さてと……」
立ち上がる。
ここで寝ているより動いていたかった。今ここで動き回ったとしても何かいい事が起きるという確信があるわけではない。だが――やらないよりはマシなのだ。
ふらふらと修道院の扉に向かう。それにハーニャが問いかけた。
「どこへ――行かれるのです?」
「散歩に――散歩に行ってくる」
◆◆◆◆◆◆
街には活気がない。
俗にいうお葬式という言葉がよく似合う。明らかによそ者として浮いている太陽仔の恰好を見るや否や、目を背ける者もいるときた。
見たところこの村そのものは元から裕福ではないのだろう。
「お前んとこの娘、帰って来てないのか?」
「あぁ……」
「大方ゾンビに食われちまったのかもな……」
道行く者の話を盗み聞きしても碌な話が流れやしない。
「嫁が聖職者に連れていかれちまった。子供を孕む事がそんなに許されないってのかい」
「連れて行かれなくたって遅かれ早かれだ……」
終わっている。
そもそもあの修道女に期待をしている人間がまるで居やしない。聖職者に連れて行かれたとは一体何を言っているのやら。ふと、すぐ後ろを向くと見覚えのある銀髪が待っていた。
「で、なんでついてきてんの?」
どうせハーニャあたりの差し金だろう。短いやり取りである程度彼女の人となりはわかる。
とはいえ、そんな事をこうしてついてきたリーリアが話せるはずもなくしどろもどろになっていた。
「その、それは……」
「監視ならやんなくていいぞ。勝手に居なくなるつもりはないし」
「…………」
「もし罪滅ぼしならもっとやんなくていい。あんたは人の命を救った、それで充分だ」
無駄に気負われては太陽仔当人としてもやりづらかった。
それでも彼女はついてくる。それにそれ以上どうこう言ったところでどうにもならないと思った太陽仔はそれ以上何も言うことはなかった。
あてもなく街中を歩き回ったところで得られる情報なぞ碌でもない情勢やら、アジンとやらに家族が攫われた殺されたその他諸々。
どうも別種として人間に近い種族がこの近辺に巣を作っているらしい。それが何やら人間を襲っているらしい。下手な街より詰んでいる。子を成せば何かがあり、村の外を歩けば人外異形に襲われる。
だが、珍しい事ではない。世紀末の時代において珍しくなんてない。
ひとしきり回った後、酒場の扉を潜る。
酒場にはそこそこ人の姿があった。荒くれ者の集まり数名が大声で何やら自慢めいた話をしている。そして酔っ払いの男*2が片隅で恍惚とした顔で酒を呷っている。少しでもいいネタを盗み聞き出来ると言う事を信じて、太陽仔とリーリアはカウンターに腰掛けると、荒くれ者のがなり声がこの寂れた酒場に響いた。
「なんだぁ? 聖職者の女とモヤシみてぇなガキが入って来やがったな。おいマスター、ミルクでも出してやりな! 俺のおごりだ!」
荒くれ者のリーダーらしき男の一声に取り巻きがギャハハと大笑いする。
太陽仔は呑気に「どうもー」とにこやかに返す。すると、マスターがそんな太陽仔とリーリアを横目に小さく口を開いた。
「さっさと帰んな。奴らはゾンビの襲撃に便乗して荒らしと盗みをやってるって噂だ。関わらん方がいい」
「ご忠告どうも」
さらっと流した上で帰る気でいない太陽仔にマスターは「どうなっても知らんぞ」と言わんばかりの目線を送ってから裏手でミルクを汲みに行く。
そんな中で太陽仔は荒くれ者に聞こえないよう声を抑えて隣にだけ聞こえるように言葉を紡ぐ。
「修道院に帰ってろ。ここからは碌なことが起こらんぞ、多分」
「揉め事の予感しかしないのにここで帰るとでも?」
「…………」
派手に揉め事を起こしかねないという確信があったのか、リーリアは断固として離れない。
太陽仔からすれば揉め事、暴力沙汰、喧嘩なぞ散々見てきたことだ。向こうが喧嘩を売るならそれ相応のコミュニケーションというものがある。修道女がその辺の碌でもない事に巻き込まれていいのかという懸念こそあれど、向こうが離れないというのなら好きにやらせてもらう。
ドン、とミルクがなみなみ注がれたコップが二つ。
マスターの目は「警告したからな」と必死に訴えている。太陽仔は「お気遣いごめんねぇ」と下手くそなウインクで返していると荒くれ者のがなり声が再び飛んできた。
「家にでも帰ってママのミルクでも飲んでな! そこの隣の乳のデカい姉ちゃんは残ってな。喉に絡みつく特上のミルクをご馳走してやるぜ!」
「兄貴ったら気前がいい!」
「おうよ。あの墓場近くで見つけた棺桶に宝が大量に入っていたからな! キラキラ光る色とりどりのブツ、よく分からん道具も入っていたが高く売れちまった。一応一つだけ白く光るやつも持ってるからまだ金に困ったらもう一度売っぱらえばいい」
まさか。
まさか、だ。こんな所で下手人を見つけるとは。荒くれ者のリーダーの手元を見ると見覚えのある太陽銃レンズが納められていた。ルナだ。
太陽仔の目つきが険しくなるのを察知したリーリアが「何を」と言うや否や、太陽仔はコップに注がれたミルクを一気飲みした。
「ぷはーっ! 人の金で飲むモンは旨いなぁ!」
わざとらしく、荒くれ者のがなり声を押し流すような大声で口にすると荒くれ者たちが一気に太陽仔の方を見る。気分を害したのだろう。ガンを飛ばしてくる。
太陽仔としては好都合だった。無視されるよりはずっと良かった。
席を立ち、荒くれ者たちのいるテーブルに足を運ぶと、太陽仔はホルスターに納められた太陽銃からレンズを外して荒くれ者たちに見せた。
「悪いがそいつは俺の持ち物だ。棺桶含めてな」
「あぁん? 金ならやらねえぞ」
荒くれ者からすれば太陽仔は金が欲しくて喧嘩を売りにきた荒くれ者に見えている事だろう。
1人がテーブルの上に雑に置かれた短剣らしきものに手をかけている。それに構わず太陽仔は続けた。
「金はいらん。欲しいのは棺桶とその中身全てだ」
「へっ、売っちまったよ。聖堂の神官どもに見せるや否や目の色変えて大量の金銀財宝を寄越しやがった」
「分かった。ならその手元のそれを返してくれれば手打ちにしてやる」
「やるとでも思ってんのか? こいつは俺ンだ」
「だろうな」
そんな聞き分けのいいような連中ならとっくに全てが終わっている事だろう。こうなるオチは読めていた。
荒くれ者の1人がテーブルから立ち上がる。体格は太陽仔の一回り大きく、そのハンマーのような拳を振り下ろした。
「調子に乗るのも大概にしやがれ!」
動きが緩慢。避けるのは容易。
大男の一撃を最低限の動きで避け、リーダーらしき男に詰め寄る。
「は……速い」
完全に攻撃を避けた上で守るべきリーダーをいつでも殴る事のできる位置まで距離を積められている。大男からすれば屈辱もいいところだ。リーダーの表情が揺れる。その一方で太陽仔は能面の如く無表情であった。
「なぁ、場所変えようや。喧嘩やるなら外でやれってママに教わらなかったか?」
「チッ……」
「後、俺は遊びは好きだが喧嘩は嫌いだ」
面子に傷をつけられたからか、荒くれ者のリーダーは忌々しげに太陽仔を見上げる。
だがその時にはすでに太陽仔は酒場のマスターに顔が向いていた。
「マスター!砂時計一つ、借りていい?」
「何をする気だ」
突然砂時計を要求されて困惑するマスターに太陽仔は事も無げに返した。
「
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?