エ〇ゲ世界で或る上位存在曰く「叫べ、太陽ォォォ!」 作:糸をなんとかしろ!
さて。
夢の中に侵入したリーリアが、顕現しようとしている忌み子の先触れを排除すること。
いくら何でも荒唐無稽が過ぎるハーニャの提案に太陽仔が一番最初に出した反応がこれだ。
──え、出来んの?
太陽仔の無言の質問めいた訴えにハーニャは「はい」とあたかも当然の如く返した。
おてんこさまから聞かされた伝説の戦士の戦いの記録には
このアルセゾン近辺、知らない事だけで出来上がっている。
忌み子もイモータルの所業とも異なるし、神官なる存在の凶行も初めて聞いた事だ。
ただ一人、知らない荒野に放り出されたような置いてけぼり感が太陽仔を襲った。
話を戻そう。
ハーニャの提案には問題があった。──というのも、その先触れと戦うには『夢魔の秘薬』なるものを作らなければならないのだという。
じゃあ作ればいいじゃない。とは言うが現実そう簡単に上手く行くほど優しくはなかった。
他の素材はいくらでも街中にあるもので代用こそ効くが、この秘薬を作る上で欠かせない素材である夢見の花粉──
これを手に入れるには村の外に出るしかないと言うことだった。
こうして真っ当な形で村の外に出たのは太陽仔としては初めてだった。
人の住む建物が消え、代わりに木々が疎らに立つような。中途半端に整備された街道を太陽仔とリーリアは歩く。
「よかったのですか? ついてきて」
今回の仕事は単に修道女の普段やっているお仕事の延長線上でしかない。当然聖職者全般に刻まれたマイナスイメージの払拭という打算もあろうが、太陽仔には殆ど関係ないことだ。
この行為は太陽仔にはメリットなぞまるでないのだ。太陽銃のパーツを買い取ったと言う神官とやらもきっとこれから向かう場所にはいない。
「お前はあの時勝手にしたろ。だったら俺も勝手にする。俺はヴァンパイアハンターだし……ほら、牧師だからな」
借りた金と恨みと恩は返すものだ。
噂によると暗黒ローン*2を踏み倒した猛者もいるのだというがまぁそれは関係はない。
「ふふっ、頼りにしてますね。
意図を察しているのか察してないのか太陽仔には分からないが、ちょっとからかい気味に流し目で微笑むリーリアにむすっとする。
聖職者でも無ければ血生臭いヴァンパイアハンターを牧師にしたのはお前だろうにと、太陽仔は少しばかり拗ねていた。それに──
「説教はしないぞ」
そんな事をやれるほど偉い人間はやっていないと自覚していた。
神様がいるならきっと即座に銃口を向けている自信がある程度の信心深さだ。
そんな無駄な会話はさておいて。本題に戻ろう。
今回の目的は夢見の花粉を手に入れる事だ。行き先はアルセゾン西部。
そこまで離れていない場所に森がある。通称夢見の森。
ある特定の品種のみが出す花粉が夢見の花粉とされるのだが、そう言った森そのものは数は多くはない。
ハーニャ曰く
「呪いの影響を受けていない森から採取するのが一番安全ですが、私の知る限りそんな森は遥か彼方。到底間に合いません」
となれば危険でも最速で最短の手段を取るしか無いわけで。
アルセゾンの呪いによって世紀末現象めいた事を起こしている森に頭を突っ込むしか無いわけである。
村を離れれば当然安全からほど遠くなるわけで──ゾンビがまるで路傍の石ころのように彷徨っている。
このような危険な場所で太陽仔は行き倒れになっていたわけである。
「俺さぁ……こんな所で寝てた訳?」
行き倒れになっている隙にゾンビに貪られていた可能性は8割くらいあった。
やっぱり棺桶と太陽銃のパーツの大半を失ったのはある意味では安い対価だったのかもしれないと太陽仔は回顧する。同時にそれを認めたくない気持ちもあるが。
「はい……
「運が良いのか悪いのか。で……牧師呼びなのね」
気に入っているのだろうか。
牧師呼ばわり。
「もしかして……嫌でした?」
リーリアの顔が僅かに不安に染まる。
余程のことがない限りあまり表情は分かりやすく変わらないように見える彼女だ。本当に不安がっているのだろう。
「嫌っつーより変な気分、別に勝手にすればいいよ。あ、でも入信はしねえぞ」
「ふふっ、それは残念です」
揶揄われているのだろうか。
ちょっと不安になる太陽仔。
下手な男ならころっとリーリアの美貌に釣られて入信していただろう。太陽仔当人が自分が下手な男ではないという自信はないが。
目のやり場に困る程度のその胸の大きさと黒いタイツに包まれた肉付きのいい太もも、陶器のように白い肌も慣れてきた。……ような気がする。
「あと敬語……しんどくない?」
「……ちょっとだけ」
「ちょっとかい」
気恥ずかしそうに小声で言うリーリア。ハーニャに比べてあまり慣れていないような喋りだったように太陽仔には聞こえていたが本当だったらしい。
そんなこんなで駄弁りながら征くおてんこさまがいない旅。
話し相手が下手な冒険小説よりも面白い昔話をしてくれるおてんこさまから、年代が比較的(少なくとも太陽意思の具現化たるおてんこさまよりは)近いだろうリーリアに差し代わっただけとはいえ不思議と心細さは無かった。
「じゃあ……楽に話させて貰うわね、牧師さん」
なんやかんやで敬語はやめたものの断固として牧師さん呼びは譲らないリーリアに太陽仔は苦笑しながらも、その目はゾンビの出現を見逃しはしなかった。数は──2体。
統率もクソも無いゾンビ2体程度では当然、太陽仔とリーリアの敵では無いわけで。
太陽仔が体術で捌き、怯んだ隙にリーリアがゾンビにヘッドショットを叩き込む。
舌が何枚もある個体もいる。
きっと嘘やら何やらを重ねた不幸なやつなのだろう。とはいえ、妙にリーリアの魔法が通りにくい。
太陽銃の効きもチャージショットで無ければ吹き飛ぶこともない。ゾンビが独自の発達、進化を果たしたのだろうか。そんな太陽仔の疑問にリーリアは答えを出す。
「確かハーニャによるとグールという種類なんだとか」
「ゾンビとグール……ね」
太陽仔の知る限りではグール>ゾンビという認識だ。グールというカテゴリがあってその派生にゾンビがいるという訳だ。一般人はその辺をごっちゃにすることがかなり多いが、ゾンビとグールの強さは違う。それがヴァンパイアハンターの共通認識だ。
しかしここではその力関係は逆転しているらしい。ここにおいてはグールはそこそこ硬いというかしぶとい。隙あらばリーリアにその何枚もある舌を捩じ込もうとしている。
大体の人間が受ければ致命傷となり得る暗黒物質をばら撒く、ヴァンパイアハンターの知るグールとゾンビ。
相手を齧ったり、何枚もある異常発達した舌を喉奥に捩じ込んで嬲り殺しにしてくるアルセゾンのグールとゾンビ。
『嫌』のベクトルが違うだけでどちらも真っ平御免というやつである。
霧が深くなっていく。
重苦しい空気が余計に重くなっていく。
呼吸一つ一つが重労働のように感じるこの森から発せられる気配。それはまるで──
世紀末現象を起こしたアンデッドダンジョン*3の放つそれであった
夢見の森
−ユメミノモリ−
基本ダンジョン入りする時にダンジョン名を記載するのは私の趣味でやってるだけなのですが、執筆途中トチ狂って現在時刻と日の出日の入りまでの時間も記載しようとしていました。そう、ボクタイ仕様ですね。
そんなことやったら余計にややこしくなるので没に。
主要人物リストと頻出用語の解説とか要りますかね……?
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いる。
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無くても大丈夫やない?