いつか何処かの戦場にいた誰かの記録   作:防水工

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宝具名を変えました


第1頁 いつか何処かの戦場にいた誰かの記録

ふと、呼ぶ声に目を覚ます

目を開けると、懐かしくもあり、安堵する顔があった

 

彼女達と駆けたあの大地、彼女達の願いの言葉が、“幾億もの自分達”を歓喜と安堵で満たす。

 

 

そうだ、“我々は彼女達の為に戦ったのだから”

 

 

「サーヴァント、ソルジャー

召集に従い参集しました

マスター、マシュ、また会えましたね」

「うん…うん!!よろしくね、私の兵隊さん!」

 

 

 

 

 

 

 

〇〇〇

 

変性亜種特異点 永劫戦域スカボロー

 

イギリス、ヨークシャー一帯に出現した特異点。

魔神王ソロモン…いや、人王ゲーティアと魔神柱の起こした人理焼却の余波で生まれた変性亜種特異点であり、魔神柱の一柱、グラシャ=ラボラスが消滅間際に生み出した、英雄を否定する戦場。

その特異性は、“サーヴァントの知名度が高ければ高いほど、各種ステータスが下がり、霊基も著しく弱体化する”という、カルデア史上有数の難所だった。

 

ソルジャーは、そんな大英雄達が苦戦し、倒れていった特異点で、カルデアがレイシフトするまで、ずっと戦い続け…私を最後まで守ってくれたサーヴァントだった。

 

 

 

 

 

夜、多くのサーヴァントやカルデア職員が眠り、思い思いに過ごす中、私、人類最後のマスター、藤丸立香は、可愛くて頼れる後輩、マシュ・キリエライトを引き連れ、今までの特異点攻略に際しての所感やサーヴァント達の情報を含めた報告書作成の為に図書館へ向かっていた。

 

「うー、今日は冷えるね、マシュ」

「はい、エジソンさんやテスラさんが空調の点検でいざこざの末改造に改造を重ねたせいで止まってしまったので……」

「もー、仲がいいんだか悪いんだか…」

 

深夜のカルデア図書室は、人工的な静寂に包まれていた。

壁一面を埋め尽くす書架の隙間から、青白い読書灯の光が漏れている。

私とマシュが山積みの報告書を抱えて足を踏み入れると、そこには先客がいた。

軍装に全身を覆い隠す外套姿、異様な圧迫感を放つサーヴァント――ソルジャーが、机に広げられた古びた戦史書を食い入るように見つめていた。

 

「ソルジャーさん? こんな夜中に……」

 

マシュの問いかけに、ソルジャーは立ち上がり、迷いのない敬礼を返した。

 

「マスター、マシュ、まだ起きていましたか。哨戒任務……いえ、報告書の作成のための資料集め…でありましたか」

「うん、ちょっと溜まっちゃって。ソルジャーは何を読んでいたの?」

 

歩み寄り、机の上を覗き込む。そこには、何十年、何百年も前に編纂された、色褪せた戦闘記録や軍の公式報告書が何冊も開かれていた。

 

「…ああ、これは…“我々”の記録です」

 

ソルジャーの声は、外套越しに重く響いた。彼は一冊の戦史書の、あるページを指し示した。

 

「この一文を見てください。――『4月12日、××地点にて敵勢力と接敵。戦闘経過報告、損害軽微。翌日、進軍を再開』。……報告書では、たった一文だけの小さな戦いです。歴史という大きな流れの中では、記す価値さえない砂粒のような出来事でしょう」

 

私はその一行を見つめた。インクの染みのような、乾いた言葉。

だが、ソルジャーの指先は微かに震えていた。

 

「ですが、この霊基に宿る断片的な記憶の中には……あるのです。この『損害軽微』という冷たい言葉の裏側に…」

 

ソルジャーは独白するように続けた。彼の中に眠る数億の亡霊が、一斉に囁き始めたかのように。

 

「……泥水を啜りながら、最期まで故郷の母の名を呼んでいた二等兵。胸を撃ち抜かれ、恋人に宛てた書きかけの手紙を握りしめていた兵長。家族の写真を血で汚さないよう、震える手で懐に仕舞い込んだ伍長……。……合わせて18人。この一文の裏で、18人の人間が、それぞれの人生を紡ぎながら息絶えた記憶が……確かにここに、残っているのです」

 

彼は自分の胸元を擦った。

parsley, sage, rosemary, and thyme…

金属と布が擦れる硬い音と、ソルジャーの何かを呟く声が室内に溶けるように消えていく。

 

「歴史は彼らを『損害軽微』と捨て去りました。名前も、功績も、死に際の声すらも記録されなかった。……ですが、彼らはここにいます。我々(ソルジャー)という霊基がある限り、彼らの死は、ただの数字にはなり得ない」

 

マシュは、その「18人」という重みに耐えるように、抱えていた報告書をぎゅっと抱きしめた。

私もまた、言葉を失っていた。自分が今書いている報告書にも、同じように「誰かの人生」がたった数行として処理されているのではないか。そんな痛みが胸を刺した。

 

「……ソルジャー。あなたは、それを全部、覚えておこうとしているんだね」

 

私の言葉に、ソルジャーは静かに視線を落とした。

 

「……それが我々という英霊の……いえ、残骸を集めて形を成した、この霊基の『義務(Duty)』ですから」

「一人じゃありません、ソルジャーさん」

 

マシュが、一歩前に踏み出して言った。

 

「その18人の記憶も、今、私と先輩が共有しました。ですから……あなたの負担を、ほんの少しだけ、私たちにも分けてください」

 

ソルジャーは驚いたように外套を揺らした。

しばらくの沈黙の後、彼はゆっくりと椅子に座り直し、広げられた本を閉じた。

 

「……。……了解しました。……報告書の作成、本官もお手伝いしましょう。我々の中の『軍の事務作業に明け暮れた工員兵』たちが、……無駄のない、かつ真実を違えない記録の書き方を心得ております」

「おお!!それは心強いよ!!お願いできる?」

 

私が隣に椅子を引くと、ソルジャーはぎこちなく頷いた。

 

「ハッ。……では、マスター。まずはその『損害なし』と書かれた項目から始めましょう。……そこにはきっと、言葉にされるのを待っている『誰かの無事』が、詰まっているはずですから」

 

夜更けの図書室。

数億の死を背負う兵士と、未来を守る私たちは、静かにペンを走らせ始めた。

たった一行の裏側に隠された、膨大な「生」の重みを、一つひとつ丁寧に、心に刻みつけるように。

 

そう、これは“いつか何処かの戦場にいた誰か”と、私達今を生きる人と、過去の英雄たちの他愛ない“平和”の記録だ。

 

 

 

 

 

【サーヴァント:ソルジャー】

真名: ――(いつか何処かの戦場にいた誰か)

クラス: ソルジャー(特殊例外クラス)

属性: 中立・中庸 / 人

身長/体重: 175cm・70kg(※霊基状態、観測対象により姿形が変動。外套の下にはあらゆる戦場の「傷」が刻まれている)

■ステータス

筋力: C

耐久: B+

敏捷: C

魔力: D

幸運: E

宝具: A+

■クラス別スキル

単独行動:A

補給の途絶えた戦場で、最後の一人になっても戦い続けた者たちの記憶と経験。マスターからの魔力供給が途絶えても長時間現界が可能。

対魔力:D

近代兵器に神秘は宿らない。しかし、「降り注ぐ(砲火)」に耐え続けた精神力は、魔術という名の暴威にほんの僅か程度耐えうる。

■保有スキル

無銘の矜持:A

特異点『永劫戦域スカボロー』での死闘を経て昇華されたスキル。敵対者の知名度が高いほど防御力・耐性に+補正が加わる。

軍隊の並列稼働:A

一人の霊基の中に、狙撃兵、工兵、通信兵、衛生兵など、数億の専門技能が混在している。状況に応じて「中身の兵士達」をスイッチすることで、あらゆる状況に対応可能とし、魔力供給次第で「中身の兵士達」を複数召喚し戦列を組み部隊を編成する。

■宝具

極星を墜とせ、永劫の戦域(フロム・フロントライン)

ランク: A+

種別: 対人/対軍宝具

レンジ: 1~99

最大捕捉: 1000人以上

ソルジャーの霊基内に蓄積された、数億の「兵士」たちの記録と記憶を物理的な実体として多重連続召喚し、標的に対して同時飽和攻撃を仕掛ける。

召喚されるのは、英雄でも武芸者でもない。ただ訓練され、命令に従うだけの「あらゆる時代の記号としての兵士」たちである。しかし、数千の弓矢、数万の弾丸、数百万の歩兵による波状攻撃は、いかなる超常の武技や神秘の加護をも窒息させる。

対象の知名度が高ければ高いほど、対象のステータスに-補正を与える。

この宝具の恐ろしさは、単なる数ではない。

召喚される兵士たちは一撃で消える「影」に過ぎないが、その一撃一撃には「死を恐れながらも戦い続けた」生身の人間としての執念が宿っている。

英雄の伝説には記されない、戦場の汚泥の中で放たれた一閃。

豪傑の鎧の隙間を貫いた、名もなき兵士の一撃。

それら「歴史を動かした偶然の殺意」を必然として再現し、必ず相手の弱点に攻撃する。

いつの時代も、勇士豪傑を仕留めたのは名もなきただの一兵の一矢、一閃だった。

その規格外の固有能力故に、A+という破格のランクを有する。

■マテリアル(解説)

01:概要

ソルジャーには英雄譚も逸話もない。古今東西のあらゆる戦場で、名もなき「兵士」として消費されていった人間たちの集合体であり人理に埋もれた残骸の集積。本来なら召喚は疎か英霊として存在することすら出来ない幻霊以下の存在だったが、人理修復の旅路の中で、藤丸立香という「一人の人間」と絆を結んだことで、複合体としての「兵士(ソルジャー)」という霊基を確立した。

02:性格

極めて生真面目、かつ軍人的。自分を「道具」と称するが、その内側には激しい情熱と、誰よりも繊細な慈愛を秘めている。マスターを「司令官」ではなく「守るべき一人の人間」として愛しており、その絆はどの英霊よりも泥臭く、深い。

また、数億の兵士達の断片的な記憶を保持しており、王のサーヴァントや兵を率いたサーヴァントと相性が良い。

03:動機・聖杯への願い

「聖杯への願いはありません。確かに愛する家族や恋人の元へ、祖国へ帰りたい、という願いは我々にもありますが…我々は死者。

既に帰る場所を喪って久しい。

それでも、今を生きるマスターの明日を守れるなら、それは愛する者の明日を願った我々が、今一度命を賭すに足る価値がある、と思います」

04:スカボローの功績

亜種特異点スカボローにおいて、知名度が剥奪され弱体化した名だたる英雄たちを尻目に、彼はただ一人「無名の強み」を活かして最前線を支えた。魔神柱グラシャ=ラボラスの「英雄否定」という理に対し、「名もなき残骸の集合体」で勝利したその姿は、人理が「個」だけでなく「群」によっても支えられていることを証明した。

05 : ソルジャーの霊基には「戦場で理不尽に死んだ被害者」や「理不尽に消費された兵士ではない者」、「嬲られ犯された女子供」も含まれる。

故にソルジャーが反転した際にはそれら「理不尽な被害者」が表面化し、無作為に破壊と殺戮を繰り広げる。

自身達を消費し、日常を謳歌する全てに“彼女達”は際限ない憎悪を振りまくだろう。

 

 

絆礼装 「汚れた手紙」

 

マスターに手渡された、愛する者へ綴った、届くことの無かった手紙。

差出人の部分は血と泥と硝煙で汚れ、読み取ることは出来ない。

 

「元気でいるか」

「腹を空かしていないか」

「もうすぐ帰る」

 

そんな有り触れた優しい愛と嘘が綴られている。

本来の受取人は既にこの世にはいないだろう。

しかし、今を生きるマスターに手渡される事にこそ、意味があるに違いない。

 

ーーー嗚呼、やっと届いたんだな…

変性亜種特異点の第3節を乗りに乗りまくって書いたが故に、カルデア軍を名乗る不明勢力関係で所々書き直したい場所があります。只、書き直すと少しばかり設定が変わる部分があるので、アンケ取ります

  • 書き直して
  • 別にいいよ
  • そんな事よりおうどん食べたい…
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