いつか何処かの戦場にいた誰かの記録   作:防水工

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ちらほら感想くれたので書きます


第2頁 アーサー・ペンドラゴンの記録 その1

「じゃあ私とマシュで施設案内してあげるよっ!」

「はいっ!私と先輩に任せてくださいっ!

ダ・ヴィンチちゃんの魔術工房から、エミヤさんが手腕を振るうカルデアキッチンまで、どんな所でも案内しますっ!」

「成程、旅行ですか」

「りょ…旅行?」

「え?…ああ、マスターは日本人ですよね?

マスターの祖国、日本の自衛隊や旧大日本帝国軍では新任隊員や転属隊員が施設を巡って案内されるのを旅行と言うんですよ。

ほら、マスターとマシュに率いられる我々の姿がガイドに案内される旅行者に見えるでしょう?」

「ああ!確かに!」

 

ソルジャーが召喚された日、私とマシュ、ソルジャーはカルデアの案内の為に施設中を練り歩いていた。

他愛ない会話から、ダ・ヴィンチちゃんの魔術工房でいろんな品を見物したり…。

3人で愉快に楽しい案内に興じた。

 

そうして案内も途中のカルデアの廊下。

カルデアキッチンの方から、青いマントを翻して歩いてきたアルトリアが、その姿を見て不自然なほど固まって立ち尽くしたソルジャーの前で足を止めた。

 

「あっ、アルトリア!

お昼食べてきたの?」

「こんにちは、アルトリアさん!」

「ええ、こんにちはマスター、マシュ。

はい、シロ…アーチャーの料理はキャメロットを軽く凌駕する腕前、大変美味しく頂きましたとも。

……ああ、貴公が新しく召喚されたと言うサーヴァントですね。

お初にお目に掛かります、私は……」

 

凛とした声。

その声を、顔を見たソルジャーは流れるような、スムーズな動きで片膝を突いて頭を垂れた。

 

「……ブリテンを守護し、キャメロットに座する、もっとも高潔で清廉なる王、ブリテンの赤き竜の化身にして偉大なる騎士の王、アーサー・ペンドラゴン王陛下で有らせられます。

…“また”陛下の御尊顔を拝謁出来たこと、至極恐悦であります」

「……貴公は… 私とどこかで会ったことがあるというのですか?」

 

私とマシュがびっくりし、アルトリアが不思議そうに小首を傾げると、ソルジャーはゆっくりと顔を上げた。

その言葉は震え、数万の「兵士」の響きを帯びていた。

 

「我等はソルジャー、“戦場で死した兵士という概念と残骸の集積”……。

故に、我等の中にはあるのです。

キャメロットの“小姓(ペイジ)達”が、あなたが戦場から戻るたびにその傷だらけの甲冑を磨くのを誇りとしていた記憶が。

若い歩兵が、あなたが馬を駆って通り過ぎる際の、風のような速さに憧れていた記憶が。

……そして……」

 

ソルジャーは言葉を切り、自分の胸に手を当てた。

 

「……我等の血で染まったカムランの丘で、膝をついて慟哭するあなたの姿を最後に見た者たちが、私の中でずっと泣き叫んでいるのです。

主君を最後まで守護できなかった事を。

……陛下一人に重責を背負わせてしまった事を…」

 

アルトリアは、わずかに目を見開いた。

アルトリアにとってのキャメロットは、理想の果てに崩壊した白亜の都。

しかし、そこには確かに、自分を信じて剣を振るい、死んでいった「名もなき人々」がいた。

ソルジャーの言葉は、歴史の教科書には載らない、彼らの真実の温度を伝えていた。

 

「……そう、でしたか。

……私を守れなかったと、彼らは悔いているのですね」

 

アルトリアは優しく目を細め、ソルジャーの肩にそっと手を置いた。

 

「兵士よ……私に付き従った全ての死者よ。

貴公ら名もなき者の献身があったからこそ、私は最後まで、理想の王であろうと足掻くことができた。

……私は、貴公らを一度たりとも、忘れたことはありません」

「……」

ソルジャーの外套から、一雫の水滴が落ちた。

ソルジャーの中に渦巻いていた、数千、数万のブリテン兵たちの後悔が、その一言で昇華されていくのを感じた。

 

「……我等が王、我等がいと気高き騎士の王。

……ブリテン兵総戦死者72153名が、今一度陛下の御身に誓います。

今度こそ、……絶対に、あなたを一人には致しません」

「頼もしい言葉です。ソルジャー、今度は悲劇ではなく、この世界とマスターやマシュ、カルデアで生き残った、今を生きる人々の明日を守るために、貴公等と共に轡を並べたい」

 

まるで物語の中のアコレード(騎士叙任式)かのような…厳かで、神聖な場面を見ているかのようだった。

マシュも…マシュの中の“ギャラハッドの霊基”も、当時の事を思い出しているかのように、柔らかな笑みを浮かべている。

 

「そうだ!休憩ついでにエミヤにおやつ出してもらおうよ!

私、歩き回ってお腹ペコペコだよー」

「なんと!!それは良い、素晴らしいですね!

マスターの頼みとあらば、シロ…アーチャーも屈するに違いありません!!

さぁ行きましょう!今すぐ!!さぁ早く!!」

「あ、アルトリアさん、お昼食べたばかりじゃ…」

 

こうして、厳かだった再会は、いつのまにか賑やかなティータイムへと姿を変えた。

パンケーキを美味しそうに頬張るマシュと私、それを幸せそうに見守りながらスコーンを齧るソルジャー。

その光景は、かつてのカムランの丘で流された血を、少しずつ温かい紅茶で洗い流していくような、穏やかな時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「何故ですシロウ?!何故私だけおやつがないのですか!?」

「君はつい先程5人前以上食べているだろうが!!

少しは遠慮というものを覚え給え!!

あとその名で呼ぶなと言っているだろうに!!」

 

尚、アルトリアはエミヤにおやつぬきにされて涙目になっていた。

変性亜種特異点の第3節を乗りに乗りまくって書いたが故に、カルデア軍を名乗る不明勢力関係で所々書き直したい場所があります。只、書き直すと少しばかり設定が変わる部分があるので、アンケ取ります

  • 書き直して
  • 別にいいよ
  • そんな事よりおうどん食べたい…
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