いつか何処かの戦場にいた誰かの記録   作:防水工

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花粉症クソ食らえ(花粉症つらたにえん)


第4頁 アーチャー・エミヤの記録

「ふぁああ~~……目冴えちゃった……」

「お疲れのようですね、御苦労様ですマスター」

「ソルジャーは眠くないの?」

「英霊は基本的に三大欲求を必要としない、というのもありますが…夜間警邏やジャングルで寝ずに警戒していた兵士の記憶と経験があるので、ついこうして眠らずに巡回してしまうのですよ。

疲れが溜まって“性能”が低下する、ということはないので御安心を。

…もうすぐキッチンに到着予定です」

 

 

誰もが寝静まった深夜過ぎ。

私は溜まっていた報告書を書き終えたが、飲み過ぎたコーヒーの影響で眠れなくなったので、気分転換に暗いカルデア内を散策していた。

 

途中呪腕のハサンや徘徊するアサシンの両儀式と挨拶を交わし、巡回に精を出すソルジャーに警護されて、カルデアキッチンへと辿り着く。

 

キッチンではアーチャーのサーヴァント、赤い外套のエミヤが、ジャックやナーサリー達がヴラド三世と一緒に作った花柄のエプロンを身に纏って、明日の朝食の仕込みを行なっていた。

 

「……おや、マスターに……ソルジャーか。

何用かな?

特にマスター、睡眠をしっかり取らなければ特異点が発生した時困るぞ。

それに夜更かしは美容の敵だ」

「うーー、わかってるけどさーー。

報告書書くのにコーヒー飲み過ぎたから目が冴えちゃってさーー。

お願い♥温かい飲み物頂戴、エミヤママ♥」

「…誰がママか。

……ホットミルクでいいかね?」

「わ~~い♥ママ大好き❤」

「……くっ…全く……」

 

エミヤがこなれた手付きでパパっとホットミルクを出して私に手渡してくれる。

私はキッチン前のイートインスペースでちびちび飲んでいると、ソルジャーが流し台で食器を片付けている背中をじっと眺めていた。

その目には何の感情も無さそうだったが、ほんの少し、悲しみが宿っていた。

 

「……君も何か用かね、ソルジャー」

「いえ、……アーチャー、貴方の両肩には、途方もない“我等の重み”を感じる。

……悔いているのですか?」

 

ソルジャーがそう言った瞬間、エミヤは動きを止める。

まるでエミヤの身体に、幾つもの手が伸び、絡みつくのを幻視した。

 

「やはり居るのだな、君の中に」

「ええ、我等は“汎ゆる戦場で死した兵士達の集積”。

我等は、守護者としての貴官と幾度も相対し、敵対している」

「……そうだろうとも。

否定はせんよ。

かつて私が、守護者として弓を引いたその先に、君等がいた。

それは動かしようのない事実であり、変えようの無い真実だ」

 

エミヤは包丁を置き、まな板を丁寧に拭き上げると、ゆっくりとソルジャーの方へ向き直った。

その瞳は、敵意でも拒絶でもなく、ただ静かに凪いでいた。

 

「……悔いているか、だと? そんな甘い言葉で片付けられるほど、私の歩んできた道は軽くはない。

……だが、そうだな。

君の中に……かつて私が、最後の一人まで『排除』した者たちがいるのだとしたら」

 

エミヤは視線を落とし、自分の掌を見つめました。その手は今、温めたミルクの余熱を帯びていた。

 

「……彼らが今、君を通して私を見ているというのなら、せめて今の私は、血塗られた鉄の味ではないものを差し出すべきなのだろう」

 

エミヤがホットミルクを手渡し、ソルジャーが甲冑と手袋に包まれた指でカップを受け取る。

 

「……我等の中の、貴官の手に掛かった兵が言っています、「最期の時に、貴官のこのホットミルクがあったら、もっとマシだった」と。

貴官のその温かさに今救われたと、多くの者が言っています」

「……ふん、死んでから文句を言うとは図太い連中だ。

……これくらいでよければ、いつでも来たまえ」

 

エミヤは鼻で笑い、再び背を向けて包丁を握り直した。

まな板を叩く規則正しい音が、深夜のキッチンに響き渡る。

それは、かつて彼が戦場で奏でた破壊の音ではなく、明日の朝、誰かを満たすための希望の音だった。

 

 

 

変性亜種特異点の第3節を乗りに乗りまくって書いたが故に、カルデア軍を名乗る不明勢力関係で所々書き直したい場所があります。只、書き直すと少しばかり設定が変わる部分があるので、アンケ取ります

  • 書き直して
  • 別にいいよ
  • そんな事よりおうどん食べたい…
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