こうしてほしいとか要望あったら感想で言ってね…
シミュレーションルームに再現された丘陵の戦場。
ブリテン騎士率いる一万のブリテン軍と、ファランクスを組んだマケドニアの一万の軍勢が睨み合う泡沫の戦場。
その上空を、時代錯誤な物体が優雅に旋回飛行をしていた。
《スカイアイよりHQ、スカイアイよりHQ。
ブリテン、マケドニア両軍の配置完了を確認。
両軍の士気旺盛、観測任務を終了し、記録任務へ移行する》
《HQ了解、アーサー王陛下のエクスカリバーを警戒し、十分高度を取って戦闘を記録せよ》
《了解》
アメリカ空軍、EC-130ハーキュリーズ。
アメリカのロッキード・マーティン社が開発した大型機で電子戦に特化した改良が施された機体である。
4基のターボプロップエンジンが低く重厚な音を響かせ、全長約30メートルのずんぐりとした灰色の胴体内には、ソルジャーの影がコンソールに貼り付いて戦域を観測している。
本来ならば敵の通信網やレーダーを無力化し、味方の部隊に戦術データを提供する「空飛ぶ司令部」であるこの機体は、現在ソルジャーの宝具によって完全再現され、世紀の英霊大決戦を余すところなく記録する「空の目(スカイアイ)」として運用されていた。
機内のコンソールには無数の計器が明滅し、高度なC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察)システムが、眼下で繰り広げられる万の軍勢の激突を、魔力波長から個々の兵士の心拍数に至るまで完全にデータ化してHQ——カルデア観覧席へと送信し続けている。
「ひゃー! まさか中東や欧州の近代戦史のデータまで完全に引っ張ってこれるなんて! ソルジャー君の宝具は本当にすごいね!」
観覧席では、レオナルド・ダ・ヴィンチが目を輝かせながらメインモニターの映像を切り替えていた。
映像は上空からの俯瞰だけでなく、前線で剣を振るう兵士たちの汗の粒まで見えるほどの超高画質である。
観覧席に集まった他のサーヴァントも、幾人かが感嘆の声を上げる。
「当然です」
背後に控えるソルジャーが淡々と答えた。
「激闘を記録するため、上空にはEC-130に加え、無人航空機MQ-9 リーパーを4機配備しています。
本来は主翼下のハードポイントにAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルやペイブウェイ誘導爆弾を懸架する『死神』ですが、今回はすべての武装を取り外し、代わりに超高解像度マルチスペクトル・カメラと魔力観測センサー・ポッドをガン積みした『撮影特化型』に改装済みです。
最高速度480km/hの機動力で、ガウェイン卿やランスロット卿の超音速の戦闘機動にもある程度追従可能です」
「ド、ドローンで英霊の戦いを撮影してるの……!?」
立香はモニターに映る大迫力のアングルに圧倒されながら、頬を引き攣らせた。
「それだけではありません、マスター。
戦域各所には大日本帝国軍や旧ドイツ軍のバイク保有の強行偵察部隊による至近距離からの撮影、また医療訓練も兼ねて戦域の南東端に野戦病院を配置。
フローレンス閣下やシャルル・アンリ・サンソン閣下、アスクレピオス様が我等の医療従事兵や衛生兵の練度向上の為に実践形式で指導訓練の為待機して下さっています」
カメラが切り替わり、南東端の野戦病院を映し出す。
野戦病院のテント内では、あらゆる時代、あらゆる地域の医療従事兵や衛生兵達が慌てふためきながらあちら此方を、毛布やシーツ、薬品や包帯を抱えてサーヴァント達の指示を受けながら準備に奔走している。
スピーカーからは、ナイチンゲールやサンソン、アスクレピオスの指示する声が響いている。
《フローレンス閣下!!追加の医薬品類の搬入終了しました!!》
《閣下!!開戦まであと5分であります!!》
《消毒を徹底しなさい! 仮想の状況想定であろうと、ここで救えぬ者は本番でも救えません!
全員、死に物狂いで命を繋ぎ止めなさい!!》
《ふむ……エクスカリバー・ガラティーンの熱線による重度の火傷、あるいは騎馬に轢かれた際の複雑骨折……。
非常に興味深いサンプルが大量に手に入りそうだ。
おい、運ばれてきた患者はまず僕に見せろ。
痛覚を遮断する麻酔薬の新たな調合を試す》
《アスクレピオス殿、実験よりまずは止血と切断部位の縫合が先です。
衛生兵の皆さんは切断面の洗浄から……》
ナイチンゲールの怒号と、どこか楽しげなアスクレピオス、真面目に対処法を説くサンソンの声が入り乱れる。
「……なんか、医療テントの方だけ別の戦争映画みたいになってるんだけど……」
立香が遠い目をしながら呟くと、ダ・ヴィンチは「ふふっ」と笑いながらメインモニターを中央の戦場へと切り替えた。
「さぁ、いよいよ開戦だ! 世紀の激突、とくと拝ませてもらおうじゃないか!」
〇〇〇
モニターには、丘陵地帯の端と端に、びっしりと並んだ軍勢が映し出されていた。
マケドニア側は、長槍(サリッサ)を天に突き立てた重装歩兵が密集陣形を組み、大地を埋め尽くす銅色の波となっている。
ブリテン側は、白銀の甲冑に身を包んだ騎士と歩兵たちが、整然とした方陣を組み、竜の紋章が描かれた軍旗をはためかせている。
『システム・オールグリーン。
仮想空間、安定。
……両軍、準備はよろしいかな?
では開戦だっ!!
じっくり楽しんでくれたまえっ!!』
ダ・ヴィンチのアナウンスが響く。
「アレキサンダー! ウェイバー! そして我が誇り高き同胞たちよ!」
イスカンダルがブケファラスに跨り、剣を天に掲げた。
「我が道は征服! 我が夢は果てなき海! 立ち塞がるは騎士の王なれど、我らの蹂躙を止めることなどできぬ! 全軍、蹂躙せよっ!!」
『『『オオオオオオオオオオオオオッッ!!!』』』
万の軍勢が、地鳴りを上げて進軍を開始する。
「ガウェイン! ランスロット! そして我が愛するブリテンの民よ!」
アルトリアがエクスカリバーを抜き放ち、前方を指し示した。
「我らの誇りは未だ陰らずっ! 鉄の結束と不屈の闘志で、征服王の軍を打ち砕きなさい! ブリテンの栄光を示せっ!
突撃っ!!」
『『『ウォオオオオオオオオオオオオッッ!!!』』』
白銀の軍勢が、地を蹴り波となって迎え撃つ。
中央の平原。
長槍の林と、白銀の盾と剣が、ついに激突した。
「「「おおおおおおおおおおおッ!!」」」
「「「あああああああああああッ!!」」」
最初に激突したのは両軍の最先鋒、マケドニアの重装歩兵とブリテンの騎兵隊だった。
「我等が王の可憐さと愛らしさに適うわけねぇだろマケドニアのアホどもがぁ!!」
「んだとブリテンの田舎野郎共がっ!!
アレキサンダーきゅんの可愛らしさが至高なんだよクソ食らえ!!」
「アレキサンダーきゅん成長したらアレ(イスカンダル王)だろ笑わせんなッ!!」
「なんだぁ!?テメェ!!
アーサー王のバージョン多すぎなんだよ羨ましいッ!!」
「我等が王の水着姿に打ち震えろ負け犬どもッ!!」
「我等が王のリリィとアレキサンダーきゅんのツーショットの微笑ましさやばいよな…」
「「「それな!!」」」
最先鋒の「推し」のぶつかり合いに、マスターたる少女と、隣に座る後輩で最初のサーヴァントたる少女が苦笑いを滲ませる。
「なんかアイドルファンの論争みたいになってる……」
「あ、あはは……」
〇〇〇
「……よし、接触した。だが本命はここからだ」
マケドニア本陣。
ロード・エルメロイⅡ世は、胃の痛みを堪えるように眉間を揉む。
相手は、純粋な白兵戦において人類史でも頂点に近い「円卓の騎士」を擁する軍勢。
生半可な陣形など紙切れのように破られる。
「ライダー。
予定通り敵の左翼、太陽の騎士(ガウェイン)の進路上にある部隊を意図的に後退させろ。
奴の突破力は正面からでは殺しきれん。
……深く引き込み、左右と後方から長槍(サリッサ)の檻で幾重にも包囲して圧殺する」
「ふはははは! 相変わらず緻密な男よな、ウェイバー!」
巨大な戦車、神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)の上で、イスカンダルは豪快に笑い飛ばした。
「だが、策に溺れるなよ? あの騎士王の眼力、並の盤上遊戯で出し抜ける相手ではないぞ」
「分かっている、 だからこそアレキサンダーの機動力が必要なんだ」
エルメロイの視線の先では、若き征服王アレキサンダーが三千の騎兵を率い、凄まじい速度でブリテンの側面へと回り込もうとしていた。
(僕の役目は、敵本陣を撹乱し、騎士王の采配を遅らせること……!)
愛馬ブケファラスに跨るアレキサンダーの胸には、高揚感が渦巻いていた。
伝説の騎士王、そして未来の自分。
最高の舞台で、己の未完の戦技がどこまで通用するのか。
彼の瞳は純粋な闘志に輝いていた。
〇〇〇
一方、高台に陣取るアルトリア・ペンドラゴンは、風のにおいと眼下の土煙の動きから、戦況のすべてを正確に把握していた。
「……マケドニア軍の右翼が後退している。
やはり、我が軍の左翼を『引き込んでいる』のか」
彼女の翠緑の瞳が、冷静に敵軍師の意図を看破する。
「包囲殲滅陣……。
想定通り、個の力に勝る我々を、数の圧力で磨り潰す気ですね。
ですが……」
アルトリアは、決して後退の指示を出さなかった。
彼女が信じるのは、己が共に駆け抜けた最優の騎士たちの力。
「——その檻は、太陽を閉じ込めるには少々狭すぎる」
前線左翼。
ガウェインは、四方八方から押し寄せる数多の長槍(サリッサ)の壁の中にいた。
「囲め! 囲めぇ! 足を止めるんだッ!!」
マケドニア兵の怒号が響く。
しかし、包囲の只中に立つガウェインの顔には、焦りどころか涼やかな笑みすら浮かんでいた。
「我が王は、楔を穿てと仰った。
ならば……この程度の槍衾で、立ち止まるわけにはいきません!!」
愛剣・転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)を上段に構えた瞬間。
仮想空間の太陽の光が、極限まで剣身に収束していく。
「ふッ!!」
薙ぎ払われる一閃。
凄まじい熱量を伴う白銀の炎が、周囲の長槍ごと数百名のマケドニア兵を文字通り「蒸発」させた。
《警告、警告! 対象アルファ(ガウェイン卿)の周辺温度が急上昇! MQ-9の赤外線(IR)センサーがホワイトアウトしました!》
観覧席でオペレーターさながらに叫ぶソルジャーの影の声が響く。
「やっぱり理不尽な火力だね……! でも、これで陣形に穴が空いた!」
しかし、戦況が動いたのはそこだけではなかった。
ブリテン軍の側面へ、土煙を上げてアレキサンダーの騎兵部隊が強襲をかけたのだ。
「放てぇっ!」
騎乗からの投擲槍が、雨あられとブリテンの側背面に降り注ぐ。
しかし、その槍の雨の前に、白銀と紫の騎士が立ちはだかった。
「……ハアァッ!!」
咆哮。
湖の騎士、サー・ランスロット。
彼は地に落ちていたマケドニアの長槍を蹴り上げ、その手に掴む。
瞬間、宝具『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』の力によって、ただの槍が魔力を纏った魔槍へと変貌した。
「なっ……!?」
驚愕するアレキサンダーの目の前で、ランスロットは異常な跳躍力で騎兵の群れへと飛び込んだ。
槍の柄で馬の脚を払い、落馬した兵士の盾を奪い取っては別の騎兵へと投擲する。
一切の無駄がない、神速にして精密な無窮の武練。
たった一騎で、三千の騎兵の突撃が完全に停止させられてしまった。
「素晴らしい! ならば余が相手をしてくれよう、湖の騎士よ!!」
その戦場へ、雷鳴を轟かせて乱入する巨影があった。
イスカンダルの駆る神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)である。
「バカッ! なぜお前が前線に出るんだライダー! 指揮系統が!!」
後方でエルメロイⅡ世がタブレットを放り投げて絶叫するが、すでに覇王の耳には届いていない。
「シィィィィッ!!」
ランスロットは恐怖すらなく、魔力に染まった長槍を構え、突進してくる雷の戦車に向かって真っ向から駆け出した。
その両雄の激突の瞬間を、地上すれすれから追う者たちがいた。
「おいおいおい! マジかよあのスピード! 振り落とされるなよドイツ野郎!!」
「言われなくても! ピントはバッチリ合わせてやる! ッ、衝撃波が来るぞ、掴まれJapanisch (ヤパーニッシュ)!!」
戦場の端を土煙を上げて爆走する、旧ドイツ軍のツュンダップKS750サイドカー。
ソルジャーの宝具によって召喚された名もなきドイツ親衛隊員と日本兵が、卓越した操車技術と最新の高速連写一眼レフを構えて、超至近距離からサーヴァントたちの死闘を撮影していた。
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!
イスカンダルの戦車とランスロットの魔槍が激突し、凄まじい衝撃波が戦場を吹き荒れた。
サイドカーが片輪を浮かせながらも、凄腕のドライバーのテクニックでギリギリで転倒を免れる。
「ひゃー! いい画が撮れてるねぇ!!」
観覧席のダ・ヴィンチが手を叩いて喜ぶ横で、立香は頭を抱えていた。
「もう戦術とかそういう次元じゃない……! 王様たち、完全に自分が戦うの楽しんじゃってるよ……!」
万の軍勢の激突は、各所で王と騎士の局地戦へと移行し、戦場はさらなる混沌の渦へと飲み込まれようとしていた。
変性亜種特異点の第3節を乗りに乗りまくって書いたが故に、カルデア軍を名乗る不明勢力関係で所々書き直したい場所があります。只、書き直すと少しばかり設定が変わる部分があるので、アンケ取ります
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書き直して
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別にいいよ
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そんな事よりおうどん食べたい…