日本競馬において、三冠競走が成立したのは1938年に京都農林省賞典四歳呼馬──後の菊花賞が創設されたことによって制定された。
クラシック三冠が制定されて今に至るまで約80年近くの時間が経ったが、その間で誕生した三冠馬はたったの7頭である。
1941年──日本競馬にてクラシック三冠を定着させ、全競走が整備されてから4年目に誕生した日本競馬史上初のクラシック三冠馬。その黒き雄大な馬体から「黒鹿毛の勇者」の異名を戴く初代三冠馬ことセントライト。
1964年──今もなお中央競馬にて19連続連対のレコードを持ち、GI級競走では無敗。古馬での戦績は歴代三冠馬の中でも未だにトップに君臨する「最強の戦士」。日本競馬にて史上初となる「五冠馬」の称号を与えられ、戦後の日本競馬に多大な影響を与え続けた神の馬シンザン。
1983年──そのドラマチックな生涯から「叙情の三冠馬」と評され、天衣無縫、常識破りの追い込み戦法と端正な容貌から「ターフの演出家」と渾名されたミスターシービー。
1984年──中央競馬史上初の無敗のクラシック三冠馬として、1980年代半ばの日本競馬に君臨した絶対王者。日本競馬史上最強馬と評され、未だ破られぬGI7勝の金字塔を打ち立てたその競走成績と馬名から「皇帝」と称されるシンボリルドルフ。
1994年──クラシックで付けた15馬身半差という着差。4歳時に見せた異次元のパフォーマンスはまさに圧倒的で、漆黒の馬体に揺れるシャドーロールから「シャドーロールの怪物」の異名で知られたナリタブライアン。
2005年──21年ぶりに誕生した無敗のクラシック三冠馬。競走馬としても、種牡馬としても多大な実績を残し、その強さから「英雄」と称されたディープインパクト。
2011年──その美しい姿から想像できぬ程にその走りは苛烈であった。他馬とは隔絶した強さを見せ付け、歴代三冠馬の中で最も破天荒な三冠馬。その馬名からは「金色の暴君」、気性の激しさから「激情の三冠馬」と謳われたオルフェーヴル。
これまで誕生した7頭の三冠馬達は例外なく競馬史にその名を刻んだ。そして今日、そこに名を新たに名を連ねる三冠馬が誕生した。
《これが覇王だ!これが覇王の力だ!吹き荒れる暴風雨を斬り裂いて今ここに!雨風猛る京都競馬場に、菊の大輪が咲き誇った!テイエムベルレクス三冠達成!!》
出遅れから始まったスタート。しかしテイエムベルレクスと倭達龍司はすぐさま順応し、これまでと一転して最後方からのレースを展開した。
意図せずしたレース展開となったが、逆に最後方からのレースになったことで複数の馬達からのマークが外れることになり、自分達に注力してレースをできたことが大きいだろう。おまけに泥が跳ねて馬が走る気を無くさぬように馬群の中である程度の間隔が空いていたことで他馬の影響を受けにくかったことも関係していると考えられた。
それぞれは小さな要素だが、その散りばめられた要素がテイエムベルレクスが勝利する一因になったのだろう。
《倭達龍司、渾身のガッツポーズ!大外から突き抜けました!テイエムベルレクスと倭達龍司!荒れ狂う雨風を、沈み込む大地を、立ちはだかるライバルを全て超えて、今ここに、史上3頭目の無敗の三冠馬が誕生しました!》
テイエムベルレクスが勝ったことを認識し、倭達龍司は左手を大きく上げてガッツポーズを見せる。泥に塗れた格好であるというのに、その姿は言葉にはできない美しさがあった。
そしてテイエムベルレクスがゴール板を通過し、その後を追って後続の馬達も続々とゴールしていく。全馬疲労困憊であり、走るフォームは歪で、ゴール後すぐに走るのをやめる馬が続出していた。一戦を交えた騎手達の顔にも飛び跳ねた泥が打ち付けられ、着ていた色鮮やかで見栄えある勝負服は真っ黒に染まり切っていた。
勝ち馬であるテイエムベルレクスも流石に疲労が隠せないのか、すぐに走るのをやめて立ち止まっていた。
終始外を回るように追走していた上に最後の直線で見せた、他馬を一瞬で千切り捨てた末脚を繰り出せばこの疲労も納得であった。しかしこれだけの激走を見せたにも関わらず、他の馬達と比べれば、心倣しかまだ余裕があるように見えた。
恐ろしいとは、底知れないとはこのことだろう。
疲労しているのは事実だ。荒れ狂う豪雨の中で、3000mを走り切った直後である。如何に世代トップのスタミナを持つテイエムベルレクスであってもその疲労の度合いはいつもと比べて遥かに重い。しかし、荒くなった呼吸は僅かな時間で落ち着きを取り戻し始め、その瞳から輝きは失われてはいなかった。
泥に塗れていようと、その栗毛の馬体の美しさは健在で、黄金の鬣は風に煽られて揺ら揺らと靡き、輝きを放っている。
馬体には激闘の証として跳ね上がった泥が多分に飛び散っていたが、その立ち姿は威風堂々としている。他馬とは一線を画し、消耗の色は感じられなかった。
《雨音掻き消す大歓声に迎えられて、テイエムベルレクスが戻って参りました。アドマイヤベガ、そしてナリタトップロードに敗れた1999年、あの日届かなかった夢へ──そこから18年の歳月を経て、倭達龍司は覇王の息子と共にリベンジ達成です!》
ウイニングランを行い、スタンド前に戻ってくれば、祝福の言葉が降り注ぐ。
倭達は満面の笑みを浮かべ、右手を高々と上げれば、観客達もそれに応えるように更なる大歓声が巻き起こる。ダービーの時のような惜しみない賞賛と喝采が、ターフに佇むテイエムベルレクスと倭達龍司に向けて送られてくる。
「「「リュージ!!リュージ!!リュージ!!」」」
そして場内に木霊する程の幾重にも重なったコールが送られ、再び倭達の顔が綻ぶ。
観客達の歓声はいつまでも鳴り止まない。スタンドを埋め尽くした10万人を超える観衆は、今まさに歴史の証人となったのである。
《京都競馬場、リュージコールです!場内震わす大歓声が沸き起こっております!
レースは波乱のスタートからでした!躓いて最後方からの競馬!しかし、終始慌てることなく追走し、最後は大外一気で、この脚は届きました!
三冠馬としては史上8頭目の快挙!しかし、並べられた三つの冠に傷は一つもありません!
皐月賞、日本ダービー、そして最後に菊花賞を戴いて!ディープインパクト以来12年ぶり!史上3頭目となる無敗の三冠馬、テイエムベルレクスです!!》
その瞬間、再び割れんばかりの歓声が場内を包み込んだ。
黄金の鬣を揺らす栗毛の馬、新たなる三冠馬、テイエムベルレクスは、その喝采を一身に浴びながら悠然と歩いていた。
ウイニングランを終えて検量室へ引き上げれば、嶺苑と伊和本の2人が待機していた。
「やったな、倭達!」
「はい、勝てましたよ!」
「今日のレースは勝てたのはお前の腕があってこそだ。道中の動き、良かったぞ」
「ありがとうございます!」
下馬した倭達に2人は駆け寄り、力強く肩を叩く。
互いに称賛の言葉を送り、激闘を終えた倭達を労う。
倭達の着ている勝負服は泥に塗れて真っ黒に汚れていた。どれだけ過酷な馬場であったのかはこの勝負服の有り様を見るだけで簡単に理解できた。顔にも泥が飛び散り、髪は雨で濡れ、長丁場を戦い抜いた疲労も隠せてはいなかったが、それでも倭達の表情は晴れやかだった。
「最初躓いた時は流石に肝が冷えたぞ」
「あれは僕も驚きましたよ。ここまで馬場が悪いのは初めてですし、ランもすぐに順応できなかったんでしょうね」
「それは見てて何となく分かった。まっ、無事に戻ってきて何よりだ。ランもよく頑張ったな」
そう言って伊和本がテイエムベルレクスの頭を撫でてやれば、気持ち良さそうに目を細めた。
「よくやった。本当によくやった」
その言葉には調教師としてだけではなく、嘗て倭達を導いた師としての想いも込められていた。
競馬に携わって40年以上となるが、出遅れであそこまで肝を冷やしたのは2000年の有馬記念以来だ。馬主席でも、スタンドでも、全員があの瞬間は凍り付いた。
しかし勝った。
倭達も、テイエムベルレクスも、慌てることなく態勢を立て直し、冷静にレースを進めた。3000mという長丁場と不良馬場を味方に付け、全ての障害を踏み越えて勝利を掴んだ。
クラシック三冠。
競走馬にとって一生に一度のチャンスしかない大舞台。皐月賞、日本ダービー、菊花賞全てを同一年に制覇した馬に送られる最大の名誉。
胸の奥から込み上げてくる思いは簡単に言葉にできるものではなかった。
伊和本だけでなく、馬主である嶺苑と手綱を握り続けてきた倭達も三つ全てを勝ち切ったという達成感が全身を満たしていた。
「最後の直線は圧巻だったな。まさかあそこまで突き抜けるとは思わなかった。まるでナリタブライアンを見ているようだったよ」
嶺苑の言葉に伊和本も大きく頷いた。
大地を蹴り上げ、豪雨を斬り裂き、大外から一気に先頭へ躍り出た、たった1頭の金色の鬣が輝く栗毛の馬体。
誰もが苦しむ馬場で、ただ1頭だけ別格の脚を見せたその姿は鮮烈で、2人の脳裏にこれでもかと焼き付いていた。
あの加速、あのスピード、あの強さは「シャドーロールの怪物」と渾名されるナリタブライアンを想起させた。実際に、2着のキセキに付けた着差は相当なものだ。
「最後までランが力を出し切ってくれました。僕は多分、最後は我武者羅でしたから。あの着差はランが頑張ってくれた結果ですよ」
そう言って倭達は少し照れ臭そうに笑った。
「頑張ったな、ラン〜」
ウイナーズサークルで菊花賞の優勝レイを掛けられたテイエムベルレクスは静かに佇んでいた。そんな彼の首元で、雨に濡れることも辞さず、しがみ付くように抱き付いていたのは故郷の牧場で当歳馬の頃から世話をしてきた鹿嶋だった。そしてそのすぐ傍らには、牧場代表として京都まで駆け付けた尾崎の姿もある。
彼らにとっては牧場に初のGIタイトルを送ってくれた馬である。鹿嶋にとっては自分が世話をした馬ということもあって、クラシック三冠制覇は感慨深いものがあるはずだ。
競馬に携わる者なら誰もが夢見る三冠という偉業を、その栄光を、自分達の牧場で生産した馬が成し遂げた。
「ありがとうございます、嶺苑さん、伊和本さん。まさか私の牧場でこんな凄い馬が出てくるとは、まるで夢を見ているようです」
「それには及びませんよ。お互い様です。私もこんな栄誉ある瞬間を見届けることができたばかりか、当事者として立つことができるとは……馬主としてこれ程嬉しいことはありません」
「私もまさか、三冠馬を手掛けることになるとは……本当に、調教師冥利に尽きます」
言葉を交わせば、自然と感謝と称賛の言葉が溢れてくる。
生産者が居て、馬主が居て、調教師が居て、厩務員や調教助手が居て、騎手が居て、そして何より主役であるテイエムベルレクスが居た。
誰か1人でも欠けていればこの場所には辿り着けなかっただろう。
「倭達さんにも何とお礼を申し上げればいいのやら」
「いえ、僕はただ乗っていただけです。僕はランが走りやすいように心掛けていただけで……」
「それでもですよ。ランがここまで立派な馬となれたのは倭達さんの力があってこそです。現に鹿嶋は人一倍喜んでいましたからね。本当にありがとうございます」
尾崎はそう言って倭達の手を強く握り締め、深々と頭を下げた。
「当歳馬の時から、牧場一番の子だったんですが、まさか三冠馬になるなんて想像もしていませんでした。元気に、怪我なく走ってくれればそれでいいと思っていました」
尾崎の視線は自然とテイエムベルレクスへ向かった。
そこには優勝レイを首に掛けられ、鹿嶋に何度も撫で続けられながらも堂々と佇むテイエムベルレクスの姿があった。周囲に人集りができているが、それを気にすることなく落ち着きを払っている。
「小さい頃からよく動き回る馬で、放牧中にあの子が止まったところを見たことがありませんでした。ずっと走り回ってて……『落ち着きのない馬だな』なんていう人も居たんですよ」
懐かしそうな目で尾崎は語る。
当歳馬の頃から期待は大きかったが、あまりにも活発だったので、『忙しい馬』という評価があった。しかしその後に見せた賢さや落ち着いた気性からその評価は早計だったと言える。
「人の言うことをちゃんと聞ける聞き分けの良い馬でした。本当に賢くて、手が掛かることはありませんでしたよ。今思えば、あの頃から黙々と鍛えていたんでしょうね。そしてその努力がこうして報われました。本当にありがとうございます」
尾崎の言葉に倭達は思わず視線を落とした。
確かに主戦騎手として共に戦ってきた。しかし皐月賞を勝ったのも、ダービーを勝ったのも、そして菊花賞を制して三冠馬となったのも、根底にあったのはテイエムベルレクス自身の才能と能力、そしてそれを支えてきた人々の積み重ねだ。
生まれた時から育てた牧場関係者が居て、育て上げた厩務員が居て、能力を引き出した調教師や調教助手が居る。自分も時間の許す限り、テイエムベルレクスの調教に携わり、向き合ってきた。だが、それに応えてくれたのは他でもない、テイエムベルレクス自身だった。
自分はその背に跨り、最後の一走を任されたに過ぎない。
だからこそその感謝の言葉が少しだけ気恥ずかしく、そして何より嬉しかった。
視線を上げれば、そこでは鹿嶋に首筋を撫でられたテイエムベルレクスが気持ち良さそうに目を細めている。先程まで豪雨に覆われたサバイバルレースで死力を尽くして制した馬とは思えないほど穏やかな表情だった。
「僕の方こそ……テイエムベルレクスのような馬に乗れたことを嬉しく思っています。ダービーを勝てたのも、三冠ジョッキーになれたのも、全部ランのおかげです」
そう言って倭達は再びテイエムベルレクスへ視線を向ける。
「皆さんのおかげで、僕はテイエムベルレクスと出会えました。テイエムベルレクスと出会えたから、僕はこんな立派な舞台に立つことができたんです」
一度言葉を切って尾崎と再び向き合うと、倭達は改めて頭を下げた。
「だから、僕の方こそ感謝すべきなんです。こんなにも素敵な馬と出会わせてくれて、ありがとうございます」
「ははっ、お互い様ですね。私達もこれからのご活躍を応援しております。どうか怪我なく、無事に走り続けてください。ランのこと、これからもよろしくお願いします」
そう言うと、今一度倭達の手をしっかりと握り、尾崎は改めて頭を下げる。それを見て倭達も尾崎の手を握り返して言葉を続けた。
「もちろんです。これからも誠心誠意乗らせていただきます。ランと一緒にもっと上を目指します。どうか僕達の走りを見守っていてください」
倭達はそう言って穏やかな笑みを浮かべた。
菊花賞を勝利した騎手、倭達龍司にインタビューするために集まる報道陣。嶺苑と伊和本も合流し、ウイナーズサークルでインタビューが行われていた。
「放送席、放送席。史上8頭目の三冠達成、テイエムベルレクスで勝利しました、倭達龍司ジョッキーです。まずは三冠達成、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「まずはお気持ちからお聞きします。今はどのような心境でしょうか?」
「もう、ホッとしてますね。『よかったぁー』っていう気持ちです。もう出遅れしちゃったので、どうしようかと思っていた自分が居ましたから。まぁでも、それでも勝ってしまうのですから、やっぱり強い馬ですね。ベルレクスにはありがとうとお疲れ様の言葉を送りたいです」
「18年前のリベンジになりましたね」
「はい。オペラオーも三冠馬になれる程の名馬だったんですけど、僕が下手くそだったせいで歯痒い思いをさせてしまいましたから、一緒に勝ててよかったです」
「まさに、最も強い馬が問われる、非常にタフなコンディションだったと思いますが、テイエムベルレクスの走りはいかがでしたか?」
「やっぱり初めての不良馬場したから、返し馬の時点でいつもより走り辛いように感じました。それでも他の馬達と比べると動きはまだスムーズでしたので、勝算を持てました。道中で手応えが変わった感覚がありますので、改めて馬のポテンシャルの高さを知りましたよ」
「今日は道中、どういったレースプランを考えてこの菊花賞に臨んでいたのでしょうか?」
「最初は先行策で行くつもりだったんですけど、出遅れてしまったので、追い込みの形になってしまいました。ですけど、スタンド前辺りでは馬が落ち着いて折り合ってくれたので問題なくレースを進めることができましたね。後ろからになっただけでいつも通りのレースをできたと思います」
「終わってみますと、着差は圧巻の8馬身となる圧勝劇でしたね」
「そうですね……僕が一番驚いています。やっぱりこの馬場も関係しているんでしょうね。道悪で相当体力が削られたでしょうし、道中で脚を使い切った馬も多かったんだと思います。実際途中でマイスタイルやウインガナドルは下がってしまいましたし、僕としてはあまり差を付けてる感覚はなくて、後ろから追い上げる馬も居ると思っていたので最後までずっと追っていました」
「テイエムベルレクスに何か送る言葉はありますか?」
「僕のような騎手が三冠ジョッキーになれたのも全部ベルレクスのおかげです。主戦騎手として本当に誇りに思いますし、ありがとうと言いたいです。それと、ベルレクスを送ってくれたオペラオーにも感謝の言葉を送りたいです」
「改めて、三冠ジョッキーの味はいかがですか?」
「最高ですし、感無量です。重圧を跳ね除けて、この馬場の中を頑張って走ってくれたベルレクスに改めて感謝したいです」
「では最後に、全国の倭達騎手、ベルレクスのファンに向けて何か一言お願いします」
「いつもたくさんのご声援でテイエムベルレクスを応援してくれて、本当にありがとうございます!無事に三冠馬になることができました!これからも、ベルレクスと一緒に頑張っていきますので、応援してくださると嬉しいです!どうもありがとうございました!」
その最後を一言にインタビューは終了した。そして本日何度目となるか分からない大歓声が巻き起こり、大きな拍手が送られた。
口取り式は滞りなく進み、全員が晴れやかな笑みを浮かべながら式を終えた。そして最後に三冠達成を祝う記念撮影が行われた。
最後の一冠となる菊花賞を戴いたテイエムベルレクスを中心に、関係者が横一列に整列して手綱を握る。倭達は優勝レイを掛けられ、荘厳に佇むテイエムベルレクスに騎乗し、笑顔を浮かべながら三冠を示す三本の指を掲げた。
未だ雨は降り止まないが、誰一人として表情を曇らせる者はおらず、晴れやかであった。そしてその光景を収めるためにカメラマンはシャッターを切った。
豪雨の中で成し遂げられた無敗の三冠。
その栄光は歴史に刻まれると共に、一枚の写真の中にも収まった。
テイエムベルレクス
晴れて8代目のクラシック三冠馬となり、史上3頭目となる無敗のクラシック三冠馬に。
初の3000m+不良馬場を走り、更には8馬身差の圧勝を見せた末脚を繰り出したことで流石に疲労困憊。体力よりも肉体の方が結構消耗した。
倭達龍司
三冠ジョッキーの仲間入りを果たしたテイエムオペラオーに脳を焼かれたJRA所属の騎手。テイエムオペラオーの子供に乗ってダービーと菊花賞のリベンジを果たし、テンションが上がっている。
「勝ったぞー!オペラオー!」
嶺苑オーナー
オペラオーのサイアーラインを残すために努力し、遂にその努力が実った人。テイエムベルレクスが晴れて三冠馬となり、サイアーラインを無事に残せそうで安心している。
伊和本調教師
テイエムベルレクスの素質の高さを感じ、血統面から色々と不安に感じていたが、活躍する姿を見てどんどんのめり込んでいった。
調教師として最後の年にクラシック三冠馬を担当できたことが堪らなく嬉しい。
鹿嶋
ランが三冠を達成してホックホク。自分のように喜び、口取り式が始まるまでずっと撫で続けていた。
尾崎
鹿嶋よりはまだ落ち着いているが、内心はめちゃくちゃ喜んでいる。自分の牧場から三冠馬が出たことに感動しており、気持ちとしては感動の方が大きい。
PS
口取り式の様子をAIにイラスト化してもらいました。大体こんなイメージかな。
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