覇王伝説第二章   作:ノワールキャット

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私の夢が勝ちました!メイショウタバル連覇おめでとう!
やっぱり武さんは巧かったよ。


年末最後の大舞台

 12月24日、中山競馬場。

 世間は冬休みに入り、クリスマスイブを迎えている。家族や恋人との穏やかで甘い空気で流れているが、ここ中山競馬場はそれに反して熱気で溢れ返っていた。

 

 10万人を超える観衆が中山競馬場を埋め尽くした。スタンドはもちろん、通路や立ち見スペースにまで人が溢れ、歓声は冬空を震わせている。

 ここまで人が訪れた理由はただ一つ、テイエムベルレクスとキタサンブラックの最初で最後の激闘を見届けるためである。

 

 史上3頭目となる無敗でクラシック三冠を達成したテイエムベルレクスと無尽蔵のスタミナと鋼の肉体を装備し、抜群の安定感で第一線を駆け抜け続けたキタサンブラック。この両雄の戦いは間違いなく競馬史に残るものだと観客達は確信していた。

 

 テイエムベルレクスはこれが古馬との初対戦であり、史上初となる無敗での有馬記念制覇が期待され、キタサンブラックはこの有馬記念がラストランとなるのだ。

 

 世代最強(テイエムベルレクス)現役最強(キタサンブラック)

 最初で最後。たった一度の最強がぶつかり合うレースなのだ。

 

「どっち賭ける?」

「俺はキタサン。粘りが凄いからな、ベルレクスにも負けねぇよ」

「お前はキタサン派ね。なら俺はベルレクスでいくわ」

 

「まぁ、テイエムベルレクスとキタサンブラックが馬券圏内には入ってくるよな」

「この2頭を複勝が硬いか?」

「だな」

 

「最後だし、キタサンブラックに勝って欲しいよなぁ〜」

「分かる。もう走らねぇしな」

「俺はベルレクスが無敗記録を伸ばす方に期待かな」

 

「やっぱベルに賭ける?」

「もちろん!だって倭達さんの乗る馬だもん!」

「あんた好きねぇ〜、本当に」

 

 スタンドで交わされる言葉はテイエムベルレクスとキタサンブラックに焦点を当てたものが多い。

 突出した人気を持つのはこの2頭で、ファン投票でもテイエムベルレクスとキタサンブラックを中心に票が集まり、キタサンブラックは約11万票を集めて第1位、テイエムベルレクスは約10万票で第2位で選出された。この2頭だけで実に21万票以上の投票数を集め、第3位の票数を集めたサトノダイヤモンドに大きな差をつける結果となった。

 

 世代最強を証明したテイエムベルレクスが単勝1.9倍の1番人気。現役最強馬として君臨するキタサンブラックは単勝2.1倍の2番人気に支持された。

 

 菊花賞を制して劇的な三冠制覇を演じたテイエムベルレクスに、これまでの19戦で掲示板外に敗れたのはたった2回だけという驚異的な安定性でこれまでの激闘を戦い抜いてきたキタサンブラック。

 この有馬記念はこの2頭にフォーカスされており、3番人気に支持されているスワーヴリチャードとの単勝オッズの差は6.0以上の差が開いていた。

 

 そしてパドックに件の馬2頭が姿を表せば、それはより決定的となった。

 

 厩務員に引かれながら、パドックに続々と姿を現して周回する16頭の優駿達。新時代の3歳馬達と歴戦の古馬達が集い、鬣を揺らしながら闘志を燃やしている。その中でも注目がいくのは、雄大な馬体の持ち主であるキタサンブラックとテイエムベルレクスだ。

 

 鍛え上げられた黒鹿毛の馬体でキタサンブラックは堂々としており、その威風堂々とした様は現役最強という評価に能う雰囲気が滲み出ていた。540kgにまで上る雄大な馬体は生命力で満ち溢れており、活力が漲っている。鋼のような肉体を持つその巨軀は、現役最強に相応しい風格を放っていた。

 

 キタサンブラックと比べればテイエムベルレクスは細身だが、負けず劣らずの雄大な馬格の持ち主であり、黄金の鬣と栗毛の馬体は冬の日差しに照らされ、特徴的な尾花栗毛がきめ細やかに反射して光り輝いている。一歩歩くごとに鬣が揺れ、全身の筋肉が奮い立つ。その姿は王者、いや──覇王その者であった。

 

「相変わらずキタサンブラックの馬体は凄いねぇ」

「やっぱいつ見てもスゲぇ馬体だわ」

 

「デッカいよなぁ。馬体重540kgなんだろ?」

「やっぱ父の影響なんだろうな。ブラックタイドもデカかったらしいしな」

 

「テイエムベルレクスの前走の疲労はなさそうだな。ほんとにキタサンブラック共々とんでもなくタフだな」

「あの菊花賞を走ってダメージゼロっていうのも大概だわ」

 

「レースもこの2頭が中心になりそうだね」

「どっちかが逃げて控える形かな?2頭とも先行主体で逃げかどうかは展開に任せるからね」

 

 パドックでの評価もテイエムベルレクスとキタサンブラックの2頭が最も期待されている。キタサンブラックはこれまでの安定性から言わずもがな。テイエムベルレクスは不良馬場で開催された前走の菊花賞の疲労が唯一の懸念点であったが、調教のタイムは今回出走する3歳馬達の中で最速であり、最終日の追い切りでその不安を完全に払拭した。歴戦の古馬達にも引けを取らない好時計を叩き出した。

 

 前走の疲労が見られないとなれば、斤量面で有利のあるテイエムベルレクスが1番人気に推されるのはある種必然であった。しかし単勝オッズがそこまで離れることはなく、非常に僅差なものとなっている。

 テイエムベルレクスが大外16番という枠順に加え、これまで第一線で走り続けてきたキタサンブラックへの信頼とこの有馬記念をラストランとする最後の勇姿を見たいという多くのファンの想いもあって、支持率を集めたからである。

 

 つまりはデータ・条件ではテイエムベルレクスが優位に立っており、実績と信頼ではキタサンブラックが互角以上という形で二分されているのだ。

 

─◇◆◇─

 

 パドックで騎乗し、少し周回してから、厩務員に引かれて各馬が地下馬道に入っていった。テイエムベルレクスも15番のサウンズオブアースの後を追ってそれに続く。コースへ出るまでの間、地下馬道の中でテイエムベルレクスの背に跨る倭達龍司は思考を巡らせていた。

 どの位置取りが安定するのか、何処で仕掛けるべきか、キタサンブラックと競り合うべきか、キタサンブラック以外に注意するべき馬はどの馬か……前日に叩き込んだ情報を再度頭の中で整理し、レースプランをギリギリまで思案していた。

 

(キタサンブラックの脚質は基本的に先行だ。でもランと同じく逃げることもできる自在性がある。それにスタートも上手い。もしかしたらキタサンブラックが古馬となった時のランの完成形なのかもな。得意な戦法で似通っているから同じ土俵で勝負すれば完全な横綱相撲になるのか……)

 

 テイエムベルレクスとキタサンブラックは先行して前目に付けたら、機会を伺って抜け出して、そのまま押し切るというのが最も得意としている戦術だ。よく言われる先行抜け出しというものだが、これは最も安定した戦法として広く知られている一方、実力差が如実に現れる脚質と認識されている。

 

(脚質が同じな上に勝負根性も凄いからな。ジャパンカップは逃げて道中落鉄したにも関わらず3着まで粘っている。直線を迎えた時の一伸びも二伸びもする粘りがキタサンブラックは突出している)

 

 ジャパンカップには同世代の馬であるレイデオロが参戦していた。テイエムベルレクスよりも先んじて一線級の古馬達が混じる戦いに参戦し、勝ち馬のシュヴァルグランから1馬身1/4差の2着と健闘している。

 前走のジャパンカップではキタサンブラックは逃げを打ち、緩みのないラップを刻んで先頭のまま残り100mまで逃げ粘ったが、後続から追い上げるシュヴァルグランとレイデオロに差し切られて3着に敗退した。しかしこのレースは左前脚の蹄鉄が道中で落鉄したことで脚元が覚束無くなり、満足に走れなかったことが敗因だとされる。

 

 レース後のコメントでも落鉄が敗北の原因だとは表明せず、陣営は「力負けはしていなかった」とコメントしていた。

 落鉄しなければどんな勝敗になっていたのかは分からないが、少なくとも倭達はそのまま逃げ切っていたと考えている。

 

 距離不安もなくスタミナ豊富、道中しっかりと折り合える気性の良さに引っ掛かることのない賢さ、そしてもう一伸びできる勝負根性。

 一瞬で突き放すような切れる脚こそないが、それをカバーできる程の強力な武器をキタサンブラックはいくつも兼ね備えており、勝てる要素は粗方揃っていた。

 

(直線の短い中山でギリギリまで粘られたら、ランでも差し切れるか分からない。となると前に出たらもう引くことはできない。一度引いたら勝つチャンスはない)

 

 先行して押し切る。

 それがテイエムベルレクスの競馬であり、キタサンブラックの競馬でもある。

 

 テイエムベルレクスと同じタイプであるキタサンブラックに小細工は通用しない。奇策が通じぬ以上、共に相手の土俵で戦って勝つ他無いのだ。

 

 倭達は静かに息を吐いた。

 

 地下馬道には蹄鉄がコンクリートを叩く乾いた音が響き、馬達の息遣いが反響している。カツカツと鳴るその一歩がやけに耳へ届いた。

 

 世代の頂点に立ち、世代最強を証明した。

 ダービーの栄誉を獲り、史上8頭目の三冠馬になった。

 

 だけど足らない。まだ足らない。

 頂点に立つにはまだ、足らない。

 

 史上初となる無敗の有馬記念制覇に3歳四冠。そして現役最強馬として立ちはだかるキタサンブラック。

 この試練を乗り越えることで自分達は日本競馬の頂点に立つことができる。

 

 倭達はそっとテイエムベルレクスの首筋へと手を添えた。力強さとしなやかさ、どっしりとした首から掌へ伝わる体温は熱く、添えている首筋の筋肉は弾けんばかりに張り詰めている。

 

「……行くぞ、ラン」

「ブルル……」

 

 そう呟けば、テイエムベルレクスは頷くように頭を上下させ、返事をするように鼻を鳴らした。その仕草を見た倭達は自然と口元が緩む。

 

 地下馬道の先から、眩い陽光が差し込み、出口が近付いている証拠に地鳴りのような歓声が少しずつ大きくなっていく。

 塊となった熱気が近付いているのを感じ取り、テイエムベルレクスが地下馬道を抜けた瞬間、その熱は爆発し、巨大な熱の波となって唸りを上げ、競馬場全体を揺らした。

 

 先に本馬場入場を果たした馬の後を追って、テイエムベルレクスは黄金の鬣を揺らしながら新世代の覇王はターフに姿を現す。

 

 大歓声に迎えられながら、倭達は手綱を静かに握った。

 

─◇◆◇─

 

《ここが運命のスタート地点。2500mの、このゲート。出走はこの16頭です。三冠馬の不敗神話か、人気馬の有終の美か、同期のライバルが意地を見せるか、新世代か、牝馬の切れ味か、伏兵か、奇跡の復活か。舞台は出来過ぎなまでに整いました》

 

 16頭の優駿達が本馬場入場を果たし、続々と返し馬のために走り出す。流石は歴戦の古馬達というべきだろうか。動きは颯爽として非常に軽快であり、馬体を弾ませながらゲートへ向かう。

 

《1番人気は史上3頭目の無敗の三冠馬テイエムベルレクス。あの、雨に覆われた激戦の菊花賞を8馬身差で圧勝したのはまだ記憶に新しいところ。さぁ、初の古馬戦線。世代の代表として、三冠馬として、その威信を懸けて歴戦の古馬達に挑みます!》

 

 芝を踏み締めながら、ターフに姿を現したのは額から鼻筋を通った白い流星が特徴的な尾花栗毛の馬。冬の日差しを浴び、黄金の鬣が風に靡く。

 今年誕生した史上8頭目の三冠馬にして史上3頭目の無敗の三冠馬。今回の3歳馬達の頂点に立ったテイエムベルレクスである。

 背にはデビューからコンビを組んできた父テイエムオペラオーの相棒である倭達龍司の姿があった。

 

《2番人気に推されました、今日も黒鹿毛の馬体が艶々と輝いておりますキタサンブラック。悲願の有馬記念制覇をこの三度目の舞台で成し遂げることができるでしょうか。これを勝てば、JRA史上最多タイとなるGI7勝に並びます》

 

 ゲートへ向かう1頭の馬にカメラがズームし、ターフビジョンいっぱいに黒き雄大な馬体が映し出される。並の馬を遥かに上回るその肉体の持ち主は2015年に『最も強い馬』の称号を勝ち取り、六つのGIタイトルを手中に収めたキタサンブラックである。

 これまで19戦を怪我なく走り抜き、掲示板外に敗れたのはたったの2回だけと、恐るべき安定感でGIレースの最前線を駆け抜けた歴戦の古馬。鞍上には長い間に亘って日本競馬を牽引してきたレジェンドジョッキーこと竹裕を迎え、古馬との初対戦を迎えたテイエムベルレクスの最大の壁となって立ちはだかるのだ。

 

 返し馬を終えた各馬が続々とゲート裏へ集結していく。

 冬空の下、緑のターフに彩られる16の勝負服。冬の日差しに照らされ、優駿達の馬体が光沢を放つ。

 

 そして今、スターターが壇上へと上がり、赤旗が掲げられた。

 それを合図に中山競馬場全体に響き渡る荘厳なファンファーレ。統率された指揮の下、一糸乱れぬブラスバンドによってスタンドからの手拍子と共にファンファーレが場内へ流れて行く。

 

 やがて最後の余韻が静かに消え去れば、スタンドから拍手と歓声が一気に湧き起こった。冬の大空を突き抜けてスタンドからコースへと、そしてゲート裏に集結する16頭に降り注がれていった。

 その大観衆からの熱狂を受けながら、各馬は1頭、また1頭と自らの枠順に入ってゲート入りを完了させていく。落ち着いた足取りでゲートへ収まる光景を見届けながら、アナウンサーは次の実況を言葉に紡いだ。

 

《10万人を超える大歓声が包む中山競馬場。

 テイエムベルレクスは悠然とした雰囲気を纏って、キタサンブラックはいつも以上にピリッとした、良い雰囲気を持って馬場へ入場してきました。今年も豪華メンバーで争われます、第62回有馬記念です》

 

 奇数番の馬から順にゲートへと収まり、次に偶数番の馬達がゲートへ入る。これまで特に嫌がる素振りを見せなかった春のグランプリホースであるサトノクラウンがゲートに入るのを嫌がったが、係員に手綱を引かれ、後ろから押され、鞍上のライエル・モーランに優しく促されて観念したかのようにゲートへ収まった。

 そして最後に、本レースの1番人気、無敗のクラシック三冠馬テイエムベルレクスが落ち着いた足取りでゲートへと入り、背後の鉄扉がガシャン、と閉められた。

 

《たった今、大外16番のテイエムベルレクスが入りました。大外不利と言われますが、三冠馬のテイエムベルレクスならば障害にすらならないでしょう。

 全馬ゲートイン完了しました。新時代を告げる流星が、新たな偉業を打ち立てて更なる伝説に幕を開けるのか、それとも最強の古馬が、三度目の挑戦にして悲願の有馬記念を成し遂げるのか!》

 

 全馬無事にゲート入りが完了し、係員が左右に分かれれば、場内全体が静まり返り、競馬場に静寂が訪れる。前方に誰も居なくなり、ファンはスタートの時を待って固唾を飲んで見守っている。

 

《さぁ、舞台は整いました。第62回グランプリ、有馬記念、スタート!》

 

 実況の言葉に合わせるかのようにゲートが開き、金属音が響き渡った。それと同時に各馬が一斉に飛び出し、足音を響かせながら我先にと前方へ殺到する。

 

《キタサンブラックとテイエムベルレクスが共に良いスタートを切りました!1番内の白い帽子、キタサンブラック、竹裕。早速、先手を取る。外からはピンクの帽子、テイエムベルレクスと倭達龍司。倭達龍司は行きました。前へ前へと追い上げて2番手に付きます》

 

 最も好スタートを切れたのはテイエムベルレクスとキタサンブラックの2頭。共に先行策を主体とするこの2頭はスタートが上手く、ゲートからそのまま飛び出せばスタートと同時に先頭に取り付いた。

 

 テイエムベルレクスはキタサンブラックよりも鋭く反応して好スタートを決めたが、大外ということもあって、内枠かつ出遅れをしなかったキタサンブラックには及ばなかった。キタサンブラックの後ろに控えて2番手からレースを展開する。

 

《まだまだ先は長いぞ。白い帽子、黒と茶色の勝負服、キタサンブラック先頭です。小回り中山、6つのコーナーまず一つ、そして二つ目に向かいます。キタサンブラック先頭。2番手に付いたのはピンクの帽子テイエムベルレクスと倭達龍司、3番手には冨久長悠逸、シャケトラ。外からはカレンミロティック9歳馬、河大。内にヤマカツエース。その後ろにクイーンズリング、クリストファー・ローメル。あと後ろからは赤い帽子、トーセンビクトリーなどが追走します。最後方サウンズオブアース》

 

 キタサンブラックは最初のコーナーを回り、二つ目の第4コーナーをカーブする。先頭を走るキタサンブラックに続いてテイエムベルレクスらが続き、第3コーナーから第4コーナーと二つのコーナーを続けてカーブする。

 

《正面スタンド前、16頭の勇姿。お客さんが皆待っていた。これがラストランのキタサンブラックと最強の座を狙う三冠馬ベルレクス。今、竹裕、ちらりターフビジョンの方を、タイマーの方を恐らく見た。流れはどうだ?ペースはどうだ?》

 

 第4コーナーを越え、正面スタンド前へ入る。暮れの風物詩である巻き起こる大歓声に迎えられ、キタサンブラックを先頭にスタンド前を通過する。

 

 ハナを主張して逃げるキタサンブラックから3/4馬身離れてぴったりとマークするのが三冠馬テイエムベルレクス、3番手にはシャケトラが付き、4番手内にヤマカツエース、その後ろ5番手にクイーンズリング、外を通って14番のカレンミロティックが6番手で追走している。7、8番手には二つの赤い帽子、5番トーセンビクトリーと6番サトノクロニクルが内外で併走している。

 中団グループからは9番サクラアンプルール、10番のシュヴァルグランと続き、少しバラけながら4番ブレスジャーニー、11番サトノクラウンの3頭が追走する。

 後方集団には内から8番のレインボーライン、12番の二冠牝馬ミッキークイーン、13番スワーヴリチャードの3頭が並びながら、前方集団を追いかけ、最後方に15番のサウンズオブアースが付いた。

 

《2番手から徐々に位置を上げるテイエムベルレクスと倭達龍司、3番手にシャケトラ、冨久長がぴったりのマーク。そして内にヤマカツエース。その後ろにクイーンズリング。外の方からじんわりとカレンミロティック、トーセンビクトリーなども押し上げてくる。ミッキークイーンは後方から》

 

 16頭の優駿達は第1コーナーを通過して第2コーナーに向かう。

 ハナを切って逃げるキタサンブラックを追ってテイエムベルレクスは少しずつ位置を上げて馬体を合わせにかかる。それをマークするようにシャケトラとヤマカツエースが続く。

 

《入りの1000mは61秒6というタイムです。さぁ、この流れ。竹裕の狙い通り。キタサンブラック、これがラストラン。有終の美を飾るか。テイエムベルレクスは押し上げて馬体が合おうとしております。16頭が向こう正面に入る!さぁ、ここからどうなるのか有馬記念!》

 

 先行策を取って前に付いた三冠馬のテイエムベルレクスを除き、ジャパンカップ優勝馬のシュヴァルグランや春のグランプリホースサトノクラウン、3歳馬の一角スワーヴリチャードなどの有力馬は揃って中団から後方での待機策を選ぶ展開となってレースは進む。

 

 1年の総決算、有馬記念はまだまだ始まったばかり。

 あらゆる思いが交錯し、互いの意地とプライドが打つかり合う歴史的一戦はこうして幕を開けた。

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