2月4日、京都競馬場。
第58回きさらぎ賞。
《3コーナーカーブ、3番サトノフェイバーが先頭。2番手に9番のグローリーヴェイズ付けました。外の方からは5番のテイエムノアアークがじわりじわりと上がってきている。そして12番のカツジが3番手に上がっている、1馬身差。11番ダノンマジェスティは4番手、インコース6番のレッドレオン》
《隊列が変わっています。そして7番のニホンピロタイド。第4コーナーカーブ、インコースに4番のラセットが続いて、外から8番のオデットエール。5番のテイエムノアアークは中団まで上がってきています》
《第4コーナーから直線に向きます。大外に出した1番のスラッシュメタル。さぁ、直線の攻防!逃げる3番サトノフェイバー!並んでいく9番のグローリーヴェイズ!その外、11番のカツジが今3番手!5番テイエムノアアークは外から一気に追い込んできます!内を狙って6番レッドレオン4番手、外から4番ラセットも追い込んできた!》
《さぁ、粘っている3番サトノフェイバー、捉えにでる9番のグローリーヴェイズ、外から迫る5番のテイエムノアアーク!この3頭の追い比べとなりますが、5番テイエムノアアークが半馬身前に出ました!そしてそのまま押し切ってゴールイン!逃げ粘る3番サトノフェイバーを最後にはきっちりと捉えました。2着に3番サトノフェイバー、3着9番グローリーヴェイズです》
単勝1.4倍の支持を集め、1番人気で出走したきさらぎ賞。
3歳の始動戦、転厩後の初戦となったこのレースではいつも通り後方からの競馬を展開し、道中は後方3、4番手からレースを進めた。
3コーナーカーブから徐々に位置を上げ始め、4コーナー手前では中団グループまで上がってきた。そして4コーナーを回って最後の直線。倭達が鞭を一発入れると、それを合図に加速を開始し、楽々と差し切ると2着のサトノフェイバーに半馬身差付けて勝利した。
3月4日、中山競馬場。
第55回弥生賞。
《残り800を切って3コーナーカーブに入ります。10番のサンリバル先頭で、リードが3馬身ぐらい。2番手9番ダノンプレミアム、その差を詰めていって、今2馬身から1馬身半、1馬身と迫って600を切りました。11番テイエムノアアークは未だ後方4番手です》
《3、4コーナー中間、2馬身差4番リビーリング。その外へ出した3番ジャンダルムが3番手に上がってきます。そして促して8番のワグネリアン、5番手から4番手。大外から追い上げてきましたのは11番のテイエムノアアークです。大歓声が上がります》
《2馬身空いて1番のオブセッション。さぁ、第4コーナーから直線に入りました!打ち出し10番のサンリバル、離れた外から9番のダノンプレミアム、交わして先頭だ!1馬身リードを取ろうとする、2馬身空いて3番のジャンダルムが3番手から2番手、200を切りました!大外からは11番のテイエムノアアークが上がって来て、4番手から3番手、3番手と追い上げてくる!ここでテイエムノアアークに先頭変わった!9番ダノンプレミアムと競り合う形!》
《その後は2馬身空いて8番のワグネリアン、今4番手から3番手と追い上げ、9番のダノンプレミアムが粘る!しかし抜け出た11番テイエムノアアーク!半馬身リードでゴールイン!2歳王者は伊達ではない!これで重賞5連勝、クラシックに向けて準備は万端です!2着に9番ダノンプレミアム、3着に8番ワグネリアンが上がりました》
次走に選んだのは皐月賞への優先出走権が3着以内にまで与えられる弥生賞を選択。このレースには朝日杯FSの勝ち馬ダノンプレミアムと東京スポーツ杯2歳Sで最後まで競り合ったワグネリアンが出走。人気をこの3頭で分け合う形となり、テイエムノアアークは単勝2.1倍の支持を集めた。人気を分け合った2頭は2.5倍のダノンプレミアム、2.8倍のワグネリアンと続いた。
レースは出遅れから始まってしまい、最後方からのスタートとなる。倭達は慌てることなくレースを進め、向こう上面から徐々に位置を上げる。
最終コーナー手前から仕掛け始め、一気に順位を上げると最後の直線、残り200mを切った地点でダノンプレミアムを捕まえ、3/4馬身差差し切って優勝を果たした。2着にダノンプレミアム、3着にワグネリアンが入り、人気馬が上位を独占する結果となった。
これで2歳の未勝利戦から6連勝。重賞5連勝、GI1勝という同期の中では抜きん出た成績でクラシックの初戦皐月賞に挑むことになる。
第78回 皐月賞・GI
中山 芝 2000m
そうして迎えた4月15日。場所は中山競馬場。
馬場は生憎と稍重で開催することになったクラシックの第一冠皐月賞。テイエムノアアークの成績は7戦6勝。負けは新馬戦のみで、それ以外は全て勝利。しかも後方から一気に捲って勝利するという見応えある勝ち方だ。
4月の上旬にはテイエムベルレクスが大阪杯を勝利していたこともあって、テイエムノアアークの期待も高まっており、有力馬の1頭であるエポカドーロが挫跖で回避したこともあって本番では単勝1.6倍の1番人気に支持された。
テイエムベルレクスとの兄弟制覇が懸かっており、転厩後所属となった
騎手を務める倭達もテイエムベルレクスとの兄弟制覇を目指していたため、気合は十分だった。
《三度目になる中山2000mの舞台。目指すのはテイエムベルレクスとの兄弟制覇です。
皐月賞の格言。それは最も速い馬が勝つ。確率は6.25%。第78回皐月賞、今スタート!
さぁ、大歓声に迎えられましてスタンド前の直線コースです。ワグネリアン、そしてステルヴィオはまずまずのスタートを切っていく。4番のテイエムノアアークは少し遅れたでしょうか?》
稍重で開催された第78回皐月賞。
テイエムノアアークは2枠4番からのスタートになったが、このレースでも出遅れてしまう。しかしそこまで致命的ではなく、倭達の予想の範疇だったため、慌てずに後方に取り付き、落ち着いていつも通りの競馬を展開する。
《やはり積極果敢、注文通りここはアイトーンが行くでしょうか。その外からはエポカドーロ、更に17番のジュンヴァルロも前。16番のステルヴィオは中団やや後方、最後方は13番のグレイルといった展開です》
果敢に前に行ったのは赤の帽子、7番のアイトーン。それに続く形でジュンヴァルロとジェネラーレウーノが続いた。第1コーナーを迎える前にはこの3頭が馬群から早々に抜け出して逃げに入る。
第78回皐月賞は逃げ馬の3頭がハナを争って大逃げするという異例の展開となって始まった。
《前は3頭抜ける格好になっていきました。1番人気テイエムノアアーク、2番人気のワグネリアン、3番人気はステルヴィオ。
さぁ、ご覧のように前3頭、後続集団を突き放していく!この稍重の馬場、ペースが気になるところですが、アイトーン、國文が逃げていきます。その後ろから2頭並んでジェネラーレウーノ、更に外からはジュンヴァルロ。そこから10馬身以上開いたでしょうか?》
第2コーナーを回った辺りでアイトーン、ジュンヴァルロ、ジェネラーレウーノの3頭が後続に一気に10馬身近くの着差を付ける大逃げになった。
スタートから先頭争いを続けた結果、稍重にも関わらずハイペースでレースは展開された。そしてこの熾烈な先頭争いを勝ち取ったのはアイトーン。アイトーンがハナを切って逃げ、それをジュンヴァルロとジェネラーレウーノの2頭が追走する形だ。
注目の1番人気であるテイエムノアアークは後方待機。後ろから2番手の位置でレースを進める。
《10馬身ほど開いてゼッケン8番エポカドーロ。その後ろから9番のケイティクレバー。並んでいくのが15番のサンリヴァル。その後ろからは12番のマイネルファンロン。内4番スリーヘリオス。そしてその後ろ白い帽子、こちらがタイムフライヤーです》
逃げる3頭から離されて先頭を走るのは8番人気のエポカドーロ。その後ろにケイティクレバー、並走するのがサンリヴァル。その2頭の後ろで進むのがマイネルファンロン、その内にスリーヘリオスが付いている。エポカドーロから数えて6番手の位置でレースを進めるのがホープフルステークスで2着を確保したタイムフライヤーだ。
《前半の1000mは59秒2!59秒2!これは早いぞ!
タイムフライヤー、裡出がチラッと内を見ましたが、間をついて10番のオウケンムーンがいます。その外からは14番のダブルシャープ。そして3番のジャンダルムがいる。外からワグネリアン、鞍上冨久長。更に外を通ってじわりじわりと上がってきたテイエムノアアーク》
ハナを切って逃げる先頭集団が1000mを通過し、そのタイムは平均よりも早い59秒2というペース。良馬場ならば、そこまで特筆するペースではないが、今回の馬場は稍重で良馬場とは言い難い。前の3頭は十分にハイペースで逃げていると断言できるだろう。一方で離された後続集団は非常にスロなペースでレースを進めることができていた。
後続集団は馬群が固まって一塊になっている。タイムフライヤーの後に続く、オウケンムーンと横に並んで続くダブルシャープとジャンダルム、そしてワグネリアン。前との距離を鑑みてか、倭達はテイエムノアアークを前へ前へと押し上げる。
《さぁ、4コーナー良いポジション取れるかどうか!3頭並んでグレイル、間を突いてはステルヴィオ、その外上がっていくのが5番のキタノコマンドール。さぁステルヴィオは最後方!ステルヴィオは最後方!テイエムノアアークは中団まで上がってきた!》
既にレースは最終コーナーを迎えそうになっている。前の3頭がハイペースでレースを進めているので、それに伴ってレースの進みも早くなっている。
向こう正面を過ぎ去って第3コーナーと第4コーナーの中間地点。最後方にグレイル、ステルヴィオ、キタノコマンドールが横並びになり、1番人気のテイエムノアアークは外から進出を開始して中団の位置まで押し上げていた。
《前3頭止まることなく行けるかどうか!波乱を起こすかどうか!大歓声に包まれて、皐月賞、残りラスト400m!さぁ、直線コース入ってくる!》
第4コーナーを回って先んじて3頭が直線へ向く。しかしここまで一切ペースを緩めずにハイペースで飛ばしてきたのでガス欠気味だった。アイトーンとジェネラーレウーノはまだ粘っているが、ジュンヴァルロは後退しつつあり、後続集団に交わされるのも時間の問題だった。そして、後続集団の馬達も前の馬を追って続々と直線へと入ってくる。
《先頭はまだまだ、まだまだアイトーンだ!漆黒のダイヤモンド、ジェネラーレウーノが先頭に立つ!ジェネラーレウーノが先頭に立つ!》
先頭を走っているアイトーンとジェネラーレウーノとはまだ大きな差が開いている。途中まで先頭を走っていたジュンヴァルロは直線に入って早々後続集団に捕まり、そのまま馬群の中に沈む。
射程圏内に収めたのか、各馬に一斉に鞭が入って追い出しにかかる。外へ回したテイエムノアアークも倭達の鞭が入ると同時に一気に加速。自慢の末脚を解き放て先頭集団を捉えに動いた。
《更にはエポカドーロ!エポカドーロ!外からはサンリヴァルとテイエムノアアーク!さぁ、坂を上がって外から猛追してくるテイエムノアアーク!》
エンポカドーロが逃げ粘るアイトーンとジェネラーレウーノを捉えて先頭へ躍り出る。しかしサンリヴァルとテイエムノアアークがそれを追って外から猛追する。だが、サンリヴァルは中山の急坂に差し掛かって脚が鈍ってしまが、テイエムノアアークはそれを尻目に急坂を物ともせずに勢いを殺すことなく駆け上がっていく。
《エポカドーロは逃げ切るのか!しかし並んできた!並んできた!最後は外から飛んで来たテイエムノアアーク!!ベルレクスと兄弟制覇!!兄貴の背中を追いかけて、自らも三冠の道に続きます!!まずは一冠、テイエムノアアークです!》
最後は大外から豪脚を繰り出してきたテイエムノアアークが並ぶこともなく、エポカドーロを差し切り、3/4馬身差でゴールイン。
タイムは2分7秒、上がり3ハロンはメンバー最速となる33秒9という豪脚を繰り出しての勝利だった。
テイエムノアアークはテイエムオペラオーとの父仔制覇を達成し、全兄テイエムベルレクスとの史上3組目となる兄弟制覇を達成。兄弟制覇は1958年にコダマとの兄弟制覇を成し遂げたシンツバメ以来、60年ぶりの快挙で、同父による兄弟制覇は史上初の出来事である。
第85回 東京優駿・GI
東京 芝 2400m
皐月賞を制したならば、次に向かうのはもちろん、5月27日に東京競馬場で開催される東京優駿こと日本ダービーである。
ヒカルメイジとコマツヒカリ以来となる兄弟でのダービー制覇を目指して出走した。このダービーを勝てば世界初となるであろう兄弟でのクラシック三冠制覇という歴史的偉業が見えてくる。
そんな期待も込められ、大外ながら人気を集めたが、騎乗することになる倭達龍司の身に
身体に異常は無いものの、問題と見られていたのは倭達の精神面である。受け応えもできるし、レース前の動きにも問題はないが、やはり何処かぼんやりとした印象を抱く。
気丈に振る舞っているが、心の奥底では虚しさと悲しみが渦巻いている。何に起因しているかは誰もが知っていることであり、同時にどれだけセンシティブな内容であるかも把握しているのでファン達も話題に上げようとはしなかった。
あまりにも個人的でセンシティブな問題であるためだ。
だからこそ、ただ彼を見守るしかなかった。だが、そんな状況を見兼ねてか、同期の冨久長悠逸が出走前に彼に発破を掛ける様子が見られた。その会話がどんなものであったかは、当事者しか知る由もないが、その会話を最後に冨久長はゲートに先に収まった。
《大外18番のテイエムノアアークが兄のテイエムベルレクスに続く二冠を制するのか?さぁ、今年、今回夢を叶えるのはどの馬か!日本ダービースタートしました!》
まだ不安を拭えない状況下で開幕した第85回日本ダービー。
1番人気のテイエムノアアークのスタートは上々。出遅れることなくスッとゲートを出てお目当てのポジションにすんなりと入り込む。
《ダノンプレミアム、良いスタートを切っています。テイエムノアアークは今日は出遅れませんでした。中団後方に付いてじっくりと構えています。まずは最大の注目、大歓声の中、1コーナーに向かってのポジション争い!》
出遅れに定評のあるテイエムノアアークは今日はすんなりと出て中団グループに取り付くと、脚を溜めながら無理のないペースで自分の競馬に徹する。挫跖の傷が癒え、朝日杯FSを無敗で制したダノンプレミアムは内枠を活かして積極的に前へ上がる。
《外から皐月賞2着の実績馬エポカドーロが行きます。そして、内に切れ込みながら、15番のジェネラーレウーノ、早め1番のダノンプレミアム、2番手から3番手と言ったところ。前から中団固まって最初のコーナーに飛び込んでいきました》
隊列が形成され始め、最初のコーナーを回って第2コーナーを目指す。
皐月賞の雪辱を果たそうと前走と同じく前目の競馬を選択したエポカドーロ。内に位置を取ったダノンプレミアムと、その外からジェネラーレウーノが被せにいくように上がってくる。
《まず序盤、先頭に立ったのは皐月賞馬、11番のエポカドーロと十咲京汰となりました。そして外から8枠から果敢に発進、ジェネラーレウーノ2番手。ダノンプレミアムは3番手で折り合いをつけている河大夕雅。その後ろから6番のコズミックフォース、さらにワグネリアンも早め早めの競馬。それをピッタリマークするように、7番のブラストワンピースという態勢》
ハナを切ったのは意外にもエポカドーロだった。あすなろ賞の時の様に逃げ切りを計る。外からは大外枠ながら、ジェネラーレウーノが積極的に前へ上がって2番手の位置からレースを進めている。内で控えたダノンプレミアムとその後ろにコズミックフォース、ワグネリアン、ブラストワンピースの3頭が続いた。
《ご覧のように、18番のテイエムノアアーク、今日は中団後方の位置から進めています。4番のキタノコマンドールはやや後方という位置取り、後方3番手で向正面の直線コースに入っていきます。》
レースは第2コーナーを回って向こう正面に入る。隊列全体は先頭のエポカドーロと最後方のアドマイヤアルバの間で大きく開き、縦長の形となってレースは展開された。
1番人気のテイエムノアアークは中団後方から続き、最後の直線に向けて脚を溜める。4番人気のキタノコマンドールは追い込みを狙って後方待機の態勢を取った。
《先頭から見ていきましょう。皐月賞のリベンジ目指して11番エポカドーロがリード1馬身。2番手グループ2頭居ます。外側はジェネラーレウーノ、棚部。内側からガッチリ手綱を持って、1番のダノンプレミアム》
エポカドーロを先頭に、ジェネラーレウーノ、ダノンプレミアムが続く。そしてコズミックフォース、ワグネリアンと中団で控え、ここまで無敗のブラストワンピースは少し位置を上げた。
《1000mは60秒8で前は通過していった。その2頭にくっついて行った6番のコズミックフォース。更にはブラストワンピース、ちょっと順位を上げて行ったか。そして17番のワグネリアン、冨久長悠逸。5番のゴーフォザサミット。更に外からサンリヴァルは皐月賞3着馬、2番のタイムフライヤーです》
レースは平均ペースで進み、人気馬のほとんどが中団以降で控えている形だ。
逸脱したペースになることなく、各馬落ち着いて自分の競馬に徹してレースを展開し、掛かっている様子は見られなかった。
《タイムフライヤーのその後ろ、皐月賞のテイエムノアアークと倭達龍司は中団で構えている。後ろから10番のジャンダルム、竹裕。その外9番のステイフーリッシュ、善木山憲紘、ベテラン2人が並んでいる。そしてエタリオウ。更には14番のステルヴィオ、ローメルも怖い。グレイル、そしてキタノコマンドール。後方から4番のアドマイヤアルバ。こんな態勢で3コーナーから4コーナーに向かっていく》
タイムフライヤーの後方にはオウケンムーンとテイエムノアアーク2頭が控え、その更に後ろにジャンダルムとステイフーリッシュが続く。ベテラン2人が騎乗することの馬達は勝機をじっくりと窺っている。そしてまだ1勝馬の身ながら、ダービーまで駒を進めてたエタリオウが追走。そして皐月賞と変わらず、後方から勝利を狙うステルヴィオ。最後方にはグレイルとキタノコマンドール、殿を務めるアドマイヤアルバが続く形となっている。
《さぁ、この辺り力を溜めているのは一番、直線で力を弾けることができるのはどの馬でしょうか?ダノンプレミアムは最内。ダノンプレミアムは最内で最後の直線コースに入っていく!》
大欅を通過し、今は第3コーナーと第4コーナーの中間地点。最終コーナーをもう間も無く迎え、そこを越えれば、長い長い最後の直線に入る。
仕掛け時が近付いてきたためか、騎手は手綱を動かし始めて、最後の追い上げに入ろうと鞭を構える。それに合わせるように、倭達は手綱を押してテイエムノアアークを外から前へ前へと押し上げて中団前方、先行集団の後方の位置まで上げさせた。
1番人気が動いたことで、隊列全体に電気にようなピリッとした衝撃が流れ、空気が変わる。仕掛けるタイミングを計りながら、手綱を動かして最終コーナーを回る。
《先頭はエポカドーロ! エポカドーロが先頭!赤い帽子、コズミックフォース、
最終コーナーをカーブして直線に向く。各馬一斉に鞭が入り、一心不乱にゴールを目指す。
先行勢はそのまま粘り切ろうとし、特に逃げるエポカドーロはそのまま逃げ切りを図る。後方で待機していた各馬も鞭が入ることで一斉に加速して前を捉えにかかった。
テイエムノアアークは倭達の鞭が入るや否や、道中で溜め続けた末脚を爆発させる。だが、それよりも早く冨久長がワグネリアンに鞭を入れて加速を促す。
《ワグネリアンが先頭か!ワグネリアンが先頭に立つのか!テイエムノアアークも追い上げて並びかける!ダノンプレミアム伸びはどうか!エポカドーロも頑張っている!》
外からテイエムノアアークが並び立ち、ワグネリアンは坂を物ともせずに自慢の脚を伸ばす。
2頭は前で粘っていたダノンプレミアムとエポカドーロをあっという間に捉えると、そのまま並びもせずに追い抜かした。
《残り200mを切った!坂を駆け上がってワグネリアンが先頭に立つ!しかし、大外からピンクの帽子!テイエムノアアークが飛んでくる!倭達の鞭に応えて一気に差を詰めてきた!》
府中の坂を上り切り、完全に抜け出した冨久長悠逸とワグネリアン。しかしそれを逃さぬと、抜群の手応えで猛追してくるテイエムノアアーク。倭達が鞭を入れる度に脚を伸ばして外から飛んでくる。
残り100mとなり、完全に2頭の馬体が並んだ。
《ワグネリアンとノアアーク!内のワグネリアン、外のノアアーク!2頭並んだ一騎打ち!エポカドーロはここまでか!3番手を引き離す!》
内にワグネリアン、外にテイエムノアアーク。互いの馬体がぶつかり合いそうなほど接近し、凄まじいデッドヒートが繰り広げられる。他馬は完全に置き去りにされ、直線は2人と2頭のためだけの舞台と化していた。
互いに鞭が入り、一心不乱に追い続ける。ただ隣に居るライバルに勝つために。
《さぁ、どっちだ!内のワグネリアンか!外のノアアークか!譲らない!どちらも譲らない!2頭並ぶ!あと100m!》
ワグネリアンが執念で抜け出せば、テイエムノアアークはそれを差し返す。
叩き合いはどこまでも続き、ゴール板の寸前まで、どちらの鼻先が僅かに前に出ているのかすら分からない、完全なデッドヒート。
《内と外の追い比べ!後続はもう前2頭には追い付けない!ワグネリアンか、ノアアークか!2頭並んだ!》
スタンドを揺るがす10万人の大歓声の中、上がり最速の末脚を同時に繰り出した2頭は寸分違わぬ態勢のまま、並んでゴール板を駆け抜けていった。
《並んでゴールイン!ワグネリアンとテイエムノアアーク!その差は意地と夢の想いの丈!最後は最強の2頭の打つかり合い!激動の第85回日本ダービー!最後は激しい一騎打ち、完璧に並んでのゴールとなりました!3着のエポカドーロとは大きく差が開いています!世代の頂点、ダービーの栄冠はどちらに輝いたのか、体勢はまったく五分です!》
並んでゴール板を通過し、両騎手は背の上でグータッチを交わす。勝敗は分からぬが、両者の表情は晴れ晴れとした様が受け取れ、その顔に迷いは無かった。
その後の勝敗は、肉眼では目視不能だったため、2頭の優劣は写真判定にもつれた。長い判定の末、外のテイエムノアアークがハナ差、4cmワグネリアンより先着していたことが分かった。これによって第85代目のダービー馬の座にはテイエムノアアークが座った。
鞍上の倭達龍司は史上3人目となる連覇を達成。兄弟によるダービー制覇は約60年ぶりになる、史上3組目の快挙だった。
その後のウイナーズサークルで行われたインタビューで彼は「同期に背中を押されました。彼のプロ意識に感化されて乗ることができた」と涙ながら語り、ワグネリアンと冨久長悠逸に敬意を示した。
テイエムノアアークは新たな二冠馬となり、全兄テイエムベルレクスと兄弟でのクラシック三冠制覇に夢を馳せ、夕陽に照らされるターフの上で第85回日本ダービーは幕を閉じた。
秋古馬三冠に向け、どのレースを前哨戦にするかのアンケート。一番票数の多かったレースを使おうかなと考えています。
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京都大賞典 GII
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オールカマー GII
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毎日王冠 GII