『はぁ困ったな』『まさか無一文で異世界にくるなんて』『全く』『つくづく僕らしい(マイナス)らしいよ』
まさかまさかの異世界転移。そしてまさかまさかの無一文。僕の所持品といえばこの学ランと携帯くらいなモンだ。本当、嫌になっちゃうよね。
それに異世界転移なんて全くもって安直すぎるよ。今時ジャンプでもそんなありきたりな展開は御法度だっていうのにさ。
『ま、考えても仕方ないか』『ところでさ』『僕に道案内、してくれるよね?』
現状を説明すると僕はこの世界の裏路地にいる。僕のような日陰ものはやはりお天道様の下を歩くべきじゃないと思ったからね。
だけど僕にだって太陽を見たいときだってあるんだ。だから僕は上を見上げた。
「た、助けてくれ.........」
なんてこった!
まさか天を仰いでみれば3人のチンピラが壁に血まみれで磔にされてるじゃないか!なんてひどい事をするんだ!正義を愛する僕にとってこんなの絶対許せないよ!
ま、それはさておいて
『おいおい被害者面はいただけないな』『先にナイフを向けてきたのは君たちじゃないか』『僕はただ自分の身を守っただけ』
『つまり』
『僕は悪くない』
そう。
だって。
僕は悪くないんだから。
『だけどまともに喋れないんじゃ意味ないよね』『安心して』『楽にしてあげるから』
僕は2本の螺子を手に持つ。
ゆっくりと、誰かの手によって磔にされちゃった彼たちを楽にしてあげようと思ってね。
だけどこういう時。
僕らはつくづく不幸(マイナス)なんだなと思う。
「凶器を捨てろ。そして大人しく投降するんだ。そうすれば命の保障はしよう」
こういう時は決まって主人公(プラス)はやってくるんだから。
あぁ。
全く憎らしいよ。
その全てを兼ね備えたような雰囲気、恵まれた容姿。服装から察するにきっと身分が高いのだろう。
あぁ。
とことん幸せ者(プラス)なんだな。
虫唾が走る。
『まずは自己紹介でもしないかい?』『僕は球磨川禊』『善良なる一般市民だよ』
「僕は剣聖の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア。この状況で一般市民とは、なかなかに無理があるんじゃないかい?」
『あぁ...かもしれないね。』
-ラインハルト視点-
僕が到着した時、まさにそこは地獄とも言っても差し支えない状態だった。
裏路地には夥しい血が散っていて、何やら杭...いや、巨大な螺子のようなもので壁の貼り付けにされてる者たちがいた。
だがその中で、たった一人何事もなかったかのように佇む男がいた。
「球磨川...と言ったか?2度目だが、投降をお勧めする。僕の名の下に命の保証は約束しよう」
彼は不思議そうな表情を浮かべている。だが...なんだこの感覚は?彼を見てると妙な胸騒ぎがする。
どこか、得体の知れないものが体にまとわりつくような、気味の悪い感覚。魔女教徒...?いや、彼から魔女の気配は感じない。だが、それに近しい“なにか”を感じる。
『いやだなぁラインハルトちゃん』『まるで僕が加害者みたいな言い方だね』『言っておくけど僕がここにきた時はすでにこうなってたんだよ?』
嘘だ。
加護を使用せずともわかる。彼の言葉には感情も、内容も、それでいて悪意も何も感じない。
機械の如くただ言葉を並べてるに過ぎない。
「彼らに突き刺さってる螺子と、君が手に持ち“それ”が同一でなければ、少しは信じたかもしれないね。」
『おぉ!?なんだこれ!』『なるほど』『きっと僕に濡れ衣を着せようとする誰かの仕業か!』
「再三聞く。...投降を」
『....はぁ』
彼は僕の言葉を聞くとため息をついた。まるでジョークが受けなくて拗ねるかのように、少しの苛立ちと呆れの色が見える。
『あのさ』『僕はさっきこの世界にやってきたんだよね』
この世界?
『なのに彼らったら』『僕の身包みを剥いで挙げ句の果てに殺そうとまでしてきた』『つまり僕はれっきとした被害者じゃないか』『だからね?ラインハルトちゃん』
「.......」
『僕は悪くない』
「忠告はした」
------最強VS最弱の火蓋が切られた