You are my Beginning   作:コンスタンシア

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Episode 12 - 友人からの誘い

[Side:ほたる]

 

「ふぅ……」

 

筆を置き、大きく息を吐き出す。

アトリエの窓から差し込む午後の日差しが、描き上げたばかりのキャンバスを温かく照らしていた。

ここ数日、筆の走りが驚くほどいい。

以前のような迷いや焦りは消え、今はただ、キャンバスに向かう時間が愛おしくてたまらない。

 

(……よし、今日はここまで)

 

パレットナイフで余った絵の具を削ぎ落とし、筆洗油の中で筆を泳がせる。

独特の匂いが鼻をくすぐるけれど、私にはそれが落ち着く香りだ。

筆の汚れが溶け出していく様をぼんやりと見つめながら、思考は自然とあの日――彼と大学で過ごした日のことへとスライドしていく。

 

『また明日も、会える?』

 

『もちろん』

 

あの日以来、私たちは毎日のように顔を合わせている。

一緒に親に頼まれた夕飯の買い物に出掛けたり、彼が仕事の合間にふらっと家に来てくれたり。

恋人同士のような、でもまだ少しだけくすぐったい距離感。

 

(次は……少しだけ抱き着いてみようかな。……なんて)

 

そんな大胆な妄想をして、一人で顔を赤くしていると、机の上に置いてあったスマホがブブッ、と短く震えた。

 

「ん……?」

 

手を拭いて画面を確認すると、ポップなスタンプと共にメッセージが表示されていた。

差出人は、『ねねっち』

 

『こんにちは、ほたるん! 今度の土曜日だけど予定空いてる? 空いてたらあおっちも誘って一緒に遊ばない?

やっとね、作ってたゲームが完成したんだー! それで2人に遊んで欲しくて……どうかな?』

 

「えっ……!」

 

思わず声が出た。

ねねっちがプログラミングの勉強をして、ゲームを作っていることは聞いていた。

でも、まさかもう完成させるなんて。

あおっちはキャラクターデザイナーとして、ねねっちはプログラマーとして。

みんな、それぞれの場所で、自分の「作品」を作り上げている。

 

(すごい……! 私の友達って、やっぱりすごい!)

 

自分のことのように胸が熱くなる。

私たち、ジャンルは違うけれど「何かを生み出す」仲間なんだ。

負けてられないな、という心地よい刺激と共に、私はすぐに返信を打ち込んだ。

 

『うん、大丈夫。空いてるよ! ねねっちのゲーム、すごく楽しみ!』

 

送信ボタンを押して、カレンダーアプリを開く。

今週の土曜日。予定に『ねねっち・あおっちと遊ぶ』と入力する。

ふと、また彼の顔が浮かんだ。

このことを裕也くんに話したら、どんな顔をするだろう。

 

「きっと、『桜さん、本当に作ったの!? すごい行動力だな』ってビックリするだろうな……ふふっ」

 

彼の驚く顔と、その後に浮かべるであろう優しい賞賛の笑顔を想像して、私はクスクスと笑った。

嬉しいニュースがあると、真っ先に彼に伝えたくなる。

それが今の私にとって、何より幸せな「変化」だった。

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