You are my Beginning   作:コンスタンシア

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Episode 16 - 再会と企みと

[Side:ほたる]

 

「ねねっち、おまたせ~」

 

私は笑顔を作って、クリーム色のツインテールが揺れる背中へ声をかけた。

私の声に反応したねねっちが、勢いよく振り返る。

 

「あ、ほたるん! ……と……そ、そ、そっちの男の人は?」

 

彼女の視線は私で止まらず、すぐさま私の背後――少し遅れて歩いてきている彼――へと吸い寄せられた。

その目が点になり、口がパクパクと動いている。

ねねっちが凄く想像通りの反応をしてくれて、私は思わず心の中でガッツポーズをした。

 

(やった、第一段階クリア!)

 

「えっとー、あおっちも揃ったら紹介しようかな。それより、ゲーム完成したんだって? どんなの? 楽しみ!」

 

私はあえて彼の紹介を後回しにして、話題を今日のメインイベントへと逸らす。

ごめんね、ねねっち。

この特大のサプライズは、あおっちも揃って初めて完成するから、その質問への回答はもう少し待っててね?

 

「あ、えっと……うん、そうなんだ~……でも、まだあおっちには秘密にしておきたいんだ……ギリギリまで秘密……」

 

ねねっちは明らかに動揺していた。

マイペースに質問した私に答える間も、その視線はずっと彼に向けられている。

ねねっち、裕也くんのことを凄く意識しちゃってて、凄くかわいい。

手もなんだか落ち着きがないみたいだし、見知らぬ(と思っている)男の子がいることに緊張しているみたい。

 

「秘密?」

 

「わああああ!?」

 

その時、ねねっちの後ろから、いつの間にか到着していたあおっちが、きょとんとした顔で会話に加わってきた。

驚いて飛び上がったねねっちが振り返る。

 

「な、なんでもないよ! そ、それよりほたるん! そっちの男の人は!?」

 

あおっちにはまだゲームのことを秘密にしたくて焦ったねねっちが、絶妙なタイミングで話題をこっちに振ってくる。

その慌てっぷりと、話題逸らしの上手さに、私は思わずクスクスと笑ってしまった。

見てて惚れ惚れするくらい、見事な連携プレー(?)だ。

 

「え!? この人、ほたるんが連れてきたの!?」

 

あおっちが目を丸くして、私の背後に視線を移す。

そこで初めて、彼女も裕也くんの存在に気づいたようだ。

一瞬ぽかんとして、それからハッとしたように私を見る。

 

(ワンテンポ遅れて驚く、あおっち。ふふ、二人とも予想通りの驚き方で、私のサプライズの第一段階は成功……かな?)

 

「クスクス……二人とも驚き方が想像通りだよ」

 

私は悪戯っぽく微笑んで、二人の前に立った。

そして、背後に控えている裕也くんを手で示す。

 

「あおっち、ねねっち。この人は別に『初めまして』じゃないよ?」

 

「え……?」

 

「どういうこと……?」

 

二人が顔を見合わせる。

「ほら~、よーく見て? なんだか懐かしい感じがしない?」

 

私はもったいぶって、彼の方へと身体を逸らした。

さあ、二人は気づくかな?

高校時代、少しだけ接点のあった、私たちと同い年の男の子だってことに。

 

===================

[Side:裕也]

 

「ほら~、よーく見て? なんだか懐かしい感じがしない?」

 

ほたるの問いかけに、目の前の二人――桜さんと涼風さんは、揃って首を傾げている。

俺の顔をジッと見つめ、記憶の引き出しを必死に漁っているようだ。

 

(涼風さんは……「喉まで名前が出かかっているけど、思い出せない」って感じかな)

 

真面目な性格の彼女らしく、眉間に少し皺を寄せて考え込んでいる。

一方の桜さんは、「幼稚園時代から記憶を呼び起こそうとしてる」って顔だ。

目をぐるぐるとさせて、完全に思考の海に溺れかけている。

その様子がなんとも可愛らしくて、俺は口元が緩むのを必死に堪えた。

チラリとほたるを見ると、彼女もまた楽しそうに目を細めている。

 

『……もう、この辺にしておく?』

 

そんなアイコンタクトを送られ、俺は苦笑しながら小さく頷いた。

これ以上引っ張ると、桜さんの頭がパンクしてしまいそうだ。

 

「じゃあ、答え合わせかな」

 

ほたるは一歩前に出ると、まるで手品師が種明かしをするように、両手を広げて俺を紹介した。

 

「……この人は "葛城裕也くん"。つい最近、アメリカから帰ってきた、私たちのお友達だよ!」

 

(ほたるの口から『ばばーん!』という効果音が聞こえてきそうな勢いだ)

 

「ええええっ!?」

 

「葛城くん……って、あの葛城くん!?」

 

二人は同時に声を上げ、目を丸くして俺を凝視した。

鳩が豆鉄砲を食ったような、見事な驚きっぷりだ。

その反応を見ていると、俺の中で眠っていた悪戯心がむくりと頭をもたげた。

せっかくの再会だ。もう少しだけ、驚かせてみようか。

俺は一歩踏み出し、右手を差し出した。

 

「Hey, you two! It’s been a while! Missed you! How've you been?」

(2人も久しぶりだね! 元気にしてた?)

 

ロサンゼルスで仕込まれた、流れるようなネイティブ英語。

そして、日本ではまだ少し馴染みの薄い、フレンドリーなハンドシェイク(握手)のポーズ。

この絶妙なコンボを叩き込まれた桜さんは、完全に許容オーバーを起こしたようだ。

 

「えーと……えーと……な、な、ないすとぅーみーちゅーっ?」

 

しどろもどろになりながら、彼女は俺の手を恐る恐る握り返し、頓珍漢な挨拶を返してきた。

「初めまして」じゃないんだけどな、と思いながらも、その慌てぶりがおかしい。

 

「ねねっち!? それ違う! えーと……」

 

見かねた涼風さんが割って入ってくる。

彼女は意を決したように背筋を伸ばし、教科書通りの英語で俺に問いかけた。

 

「え、Excuse me. Are you Mr. Katsuragi San?」

 

たどたどしいけれど、一生懸命に伝えようとする "The 英語"。

しかも「Mr.」に「San」までつけてしまう丁寧さが、いかにも彼女らしい。

 

「ふふっ……くっ、あはは!」

 

耐えきれなくなって、俺は吹き出してしまった。

 

===================

[Side:ほたる]

 

「ふふっ……くっ、あはは!」

 

裕也くんがたまらずといった様子で笑い出す。

私も、もう限界だった。

ねねっちの「ないすとぅーみーちゅー」と、あおっちの「ミスターカツラギサン」の破壊力が高すぎて、お腹が痛い。

 

「くすくす……あははっ!」

 

私も他言語でのコミュニケーションには苦労した経験がある。

だからこそ、急に英語で話しかけられた時の二人のチグハグな反応が、可愛くて仕方がない。

 

「も、もう! ほたるんまで笑わないでよー!」

 

「私、何か変なこと言ったかな……?」

 

ねねっちが頬を膨らませ、あおっちが不安そうにオロオロしている。

裕也くんは笑い涙を指で拭いながら、優しく二人に語り掛けた。

 

「ごめんごめん。二人とも、ちゃんと覚えてるよ、日本語。 …久しぶりだね。 元気にしてた?」

 

彼は悪戯っぽく、けれど懐かしむような目で二人を見ている。

 

(……この怒涛の歓迎、向こうでもやられたって言ってたっけ)

 

向こうに行ったばかりの頃、職場の人に同じようなマシンガントークで迎えられて、目を白黒させたという話を以前聞いたことがある。

きっと彼は、その時の自分を二人に重ねていたのかもしれない。

 

「あぁ、なるほど……。この反応を見てしまうと、確かにやりたくもなってしまうな」

 

彼が独り言のように呟く。

その表情は、長い空白の時間を埋めるように、とても柔らかくて温かかった。

私はそんな彼と、混乱しながらも嬉しそうな二人を見て、今日一番の幸せを感じていた。

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