You are my Beginning   作:コンスタンシア

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Episode 24 - 待ち合わせと決意と

[Side:裕也]

 

月曜日。

雲一つない快晴の祝日。

俺は、待ち合わせに指定した、小さな公園のベンチに座っていた。

お互いの家の丁度中間にある。公園…とついてはいるけれど、遊具はなくどちらかというと広場に近い。

スマホの時計を見ると、時刻は9時40分。

待ち合わせ時間の20分前だ。

 

「……早すぎたか」

 

はやる気持ちを抑えきれず、家を早く出すぎてしまった。

 

――行き先は『水族館』

 

昨夜、メッセージでほたるからリクエストがあった場所。

水族館…確か彼女と小学生の頃に言った記憶がある。あの時は、学校の宿題でお互いに魚の絵を描いたんだったか。

俺はベンチの背もたれに体重を預け、大きく深呼吸をする。

 

『彼女を待っていたい』なんて、もっともらしい理由を自分の中でつけてはみたものの、本音はただ落ち着かないだけだ。

彼女と正式に "デート" をするという高揚感。

そして何より、このデートの終わりに、彼女に "伝えなければいけない事" があるという緊張感。

それらが混ざり合い、朝からずっとソワソワしている。

 

「そういえば、最近こういった場所でゆっくりと "誰かを待つ" ってしたことが無かったな……」

 

公園には、休日の朝を楽しむ家族連れや、散歩をする老夫婦の姿がある。

アメリカでの日々は、常に何かに追われていた。

こうして穏やかな日差しの中で、大切な人を待つ時間というのも、悪くないものだと感じる。

 

===================

[Side:ほたる]

 

ピピピピ、と軽快な電子音が鳴り響く。

私は目覚まし時計を止めると、勢いよくベッドから起き上がった。

窓から差し込む光が眩しい。

今日はいつも以上に目覚めが良い。

「よしっ!」

少しだけ気合を入れて、スマホを手に取る。

画面には、昨日彼に送ったメッセージの履歴。

 

『水族館に行きたい』

(ふふっ、水族館なんて小学生振りかな?)

 

彼とならどこへ行っても楽しいけれど、私は "デート" として彼と一番最初に行くなら、ここだと決めていた。

それは、まだ私たちが小さくて、恋なんて言葉の意味もよく分かっていなかった頃。

夏休みの自由研究のために、二人で行った初めての場所が水族館だったから。

 

「ふふっ、あの時は学校の宿題の為だったけど、今日は違うよね」

 

あの時は、魚の絵を描くのに必死で、手も繋げなかった。

でも、今日は「宿題」じゃない。

あの日とは違う、今の私と彼で、新しい思い出を作りたい。

 

クローゼットを開け、並んでいる服を眺める。

動きやすさも大事だけど、やっぱり可愛く見られたい。

淡いブルーのワンピースに、薄手のカーディガンを合わせようかな。

鏡の前で服を当ててみる。

 

(とびきりの姿で、彼とのデートを楽しみたい)

 

メイクも、髪型も、今までで一番丁寧に。

私は気合を入れて、支度を始めた。

 

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[Side:裕也]

 

約束の時間の5分前。

公園の入り口の方から、パタパタという軽い足音が聞こえてきた。

顔を上げると、少し駆け足でこちらに向かってくる彼女の姿があった。

 

「――っ」

 

息を呑む。

淡い水色のワンピースが、風に揺れている。

いつも見慣れているはずの幼馴染が、今日は別人のように輝いて見えた。

髪型も少し違う。メイクも、気合が入っているのが分かる。

その可憐さに、思わず見惚れて立ち尽くしてしまった。

 

「お待たせ! 裕也くん!」

 

目の前で立ち止まった彼女が、太陽のような満面の笑みを見せる。

呼吸を整えているその姿を見て、俺は慌てて平静を装った。

 

「ううん。 全然待ってないよ、今来たばかりだから」

 

デートの定番とも言えるその台詞。

それを聞いた彼女は、くすりと笑った。

 

「ふふっ、定番のやりとりだね」

 

「……バレたか」

 

マイペースにこの状況を楽しんでいる彼女。

そんな姿に愛おしさを感じながら、俺はベンチから立ち上がった。

彼女がこれだけ頑張ってきてくれたんだ。男として、ちゃんと言葉にしないといけない。

 

「じゃあ、これも定番……かな?」

 

「え?」

 

俺は彼女の瞳を真っ直ぐに見つめて、告げた。

 

「いつも素敵だけど……今日のほたる、凄く可愛いよ」

 

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[Side:ほたる]

 

「かわッ…も、もう……それは反則!」

 

不意打ちの褒め言葉に、顔が一気に沸騰する。

定番のやり取りを楽しむ余裕なんて、一瞬で吹き飛んでしまった。

でも、彼の瞳は真剣で、それがお世辞じゃないことが伝わってくる。

 

「でも…うん、君にそう言って貰いたくて頑張ったんだよ? えへへ…嬉しいな、ありがとう」

 

私は熱い頬を隠すように、少し上目遣いで彼を見た。

素直に気持ちを伝える。

私からもお返し。少しでもドキドキしてくれたら……嬉しいな。

彼が少し照れたように視線を逸らすのを見て、私は勇気を出して一歩踏み出した。

 

「待ち合わせには少し早いけど…行こっか!」

 

そう言って、私は彼の右腕に自分の手を回し、ギュッと抱きついた。

彼は少しだけ驚いた顔をしたが、いつものように私を受け入れてくれる。

 

――少しだけ、昨日の事を思い出す。

 

昨日は、手を繋ぐことさえ怖くて、彼の隣を歩くのが不安だった。

でも、今日は違う。

昨日の彼の言葉で、彼の気持ちは痛いほど伝わってきたから。

 

(君は前に『ゆっくり歩いて行こう』って言ってくれた)

(……ううん。きっと彼は私の焦りにも気付いていたんだ。だからこそ『ゆっくりでいい』って言ってくれたんだよね)

 

彼の優しさに甘えるのは、もうおしまい。

彼がせっかく手を差し伸べてくれたんだから、私も自分から掴みに行かなくちゃ。

 

(もう私は逃げないよ……君がせっかく機会をくれたのだから……今日、私は君に気持ちを伝えるよ)

 

腕から伝わる彼の体温と、少し速くなっている心臓の音を感じながら。

私は「大好き」という気持ちを込めて、彼と一緒に歩き出した。

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