異世界サモナー、神話の怪物達と人理修復に参加する 作:一般通過初心者作家
コヤンスカヤによる襲撃から半日。
まずは彷徨海の内部の調査……コヤンスカヤがどうしてこの彷徨海に来れたのかという原因の探索が行われた。
その結果……。
「こんなもの、こんなものぉぉ!」
ゴルドルフ所長の絶叫と共に、地面に叩きつけられた口紅が砕け散った。
あとから話を聞くに、彼女と所長の間にはただならぬ何かがあったらしい。
次に、コヤンスカヤによって持ち込まれた毒の解析が始まった。
その結果わかったことは、二つ。
一つ目は、使われた毒が存在しない……いや、正確には2018年の地球には存在しないものということ。
今回は未然に防げたから良いものの、リコリスが止めてくれなかったらどうなっていたかは想像にかたくない。
そして二つ目。
この毒が存在している以上、俺達は常に危機にさらされるというものだ。
「トリスメギストスの回答によれば、毒の名称は
「仙道……中国か?」
「うん、そうなるだろうね」
中国、それは異聞帯がある地域の一つ。
今の地球に存在しないという事は、おそらく異聞帯の中にある可能性が高い、ということになる。
「今回のように間接的なものなら防げるパターンもあるだろう。だが、次はもっと直接的な行動に出てくるかもしれない。体に直接、大量の毒を注射でもされてしまったら、いくら毒に耐性のある立香君といえどタダでは済まない。そうでなくとも、今回摂取しかけたゴルドルフくんなんかは一発でアウトだ」
「……しかし、こちらには人類史に輝く天才が二人も居る。解毒剤を作ることなど朝飯前だろう?」
少し怯えた様子のゴルドルフ所長がそう訊ねれば、ダ・ヴィンチは少し複雑そうに頷いた。
「うーん、理論上は可能ではある。コヤンスカヤが用意したケーキから毒物の抽出には成功したからね。ただ……元が存在しない植物だ、推測だけで作った解毒剤には少し不安が残る。もし仮に、この毒の元になる植物が中国異聞帯にあるのだとしたら、中国異聞帯が残っている限り、我々はこの毒を警戒し続けなければならない」
「……それ、とてもまずいんじゃないか?」
仮に解毒剤が出来たとしても、その解毒剤が使えないような状態になってしまったら、そのまま何も出来ずに死ぬ可能性すらある。
リコリスのおかげで毒に耐性を持つ俺はまだしも、カルデアのみんなが標的になったらどうしようもない。
「あぁ、それで一つ質問なんだけど……レイマ君、君の召喚獣であるリコリスなら、この毒を再現したり出来たりしないかい?」
「……なるほど、聞いてみます。【サモン】リコリス」
昨日ぶりに現れた彼女。
要件を伝えてみたところ……彼女は首を横に振った。
「やめておいた方がいい……と思う。出来なくは無いかもしれないけど、ここが異世界である以上私が再現しようとしたら何が起こるかわからない」
「それは……確かにな」
リコリスの言う通り、これでまた別の猛毒事件を引き起こしたら目も当てられない。
「──それに、私以外の毒は嫌だし」
「ん、なんか言ったか?」
「……何も」
「そうか……? とりあえず、そういうことだからすまん、ダ・ヴィンチ」
「そうだね、こちらもまたリスクがある。何より向こうにこれ以上毒を作らせないためにも、中国異聞帯は早めに攻略しておいた方がいいだろう」
こうして、俺たちの目的地は大西洋異聞帯から中国異聞帯へと変更になった。
手筈としては、まず彷徨海ごと中国異聞帯の近くに移動。そこから
地球の表面に出たら、異聞帯を囲む嵐の中に再び虚数潜航で突っ込む。というものになるらしい。
北欧異聞帯から離脱する時にもやってたが、生身の人間にはそこそこの負荷がかかるらしい。
俺は特になんともなかったので、今回も大丈夫だろう。
数日の準備期間の間、俺は改めて資料を読み込んだり、シュミレーターというホログラムで敵を再現することが出来る装置を使わせてもらい、ルナとソル、それからリコリス達との連携を確認した。
そして、作戦前夜の夜。
「……眠れないな」
天井を見つめながらそう呟く。
まだ遅い時間な訳では無いが、全然眠くならない。
北欧の時は流れで色々巻き込まれることになったが、今回の中国は俺にとって自らの意思で飛び込む異聞帯だ。
「……異聞帯ってことは、ゲルダ達みたいに……」
頭に過ぎったのはそんなこと。
消えるはずだったもしもの世界、それがどんな文明なのか。
そして、それを滅ぼさなければならない事実が頭の片隅から離れない。
そんな時だった。
「レイマ、起きてる?」
控えめなノックの後に、扉越しの声が聞こえた。
「あぁ、起きてるぞ」
身体を起こしてそう返せば、扉を開けて声の主が入ってくる。
部屋着に着替えている立香は、少し申し訳なさそうな顔をしてから口を開いた。
「ごめんね、お邪魔して」
「全然問題ない……それで、俺に何か用か?」
「ほら、北欧の時に言ったでしょ。レイマの事、もっと知りたいって」
「そういえば……そんなことも言ってたな。まぁ座れよ」
俺がそう促せば、立香は椅子に腰かけた。
二人で向かい合うような形になる。
「それで、俺の事だったよな。一応軽く伝えはしたけど……そういうのじゃないんだよな」
「うん……元の世界での事とか、異世界での事とか。知ってたらきっと、役に立つと思って」
「役に立つかは分からないが……いいぞ?」
順番に話すなら……まずは、異世界でのことだろうか。
「……中学生の終わり頃に、事故に巻き込まれて。気が付いたら異世界に居たんだ」
そこで俺はサモナーというジョブの才能を手に入れ、元の世界へ帰るため魔王討伐の旅に出ることになった。
その世界で厄災と呼ばれたものたちと出会い、時には戦いの果てに契約をし、信頼できる仲間と出会い……別れて。
三年という長い時間をかけて、魔王を倒し世界を救った。
「――そして、殺された。まぁ、そりゃそうだよな。
「……それは、違うと思う」
笑った俺に、立香は心の底から苦しそうな顔でそう言った。
「レイマは何も、悪いことはしてないから」
「……立香」
俺よりも泣きそうな顔でそういうから、どう思えばいいか分からなくなる。
あの時の俺の周りにも、そうやって悲しんでくれる人が居たなら、何か変わっていたのだろうか。
いや、俺の中に居た召喚獣たちも、きっと悲しんでいたのだろう。
現代に戻ってきて、ルナに触れた時に感じた安堵を、みんなも感じたのだろう。
「……ありがとな、でももう気にしてないから大丈夫だ。なにせ……俺はその後、元の世界? に戻ってきたからな」
処刑されて、次に目を覚ました時の事を思い出す。
「この身体は……正確には俺の身体じゃないんだ、その世界に居た霊真の体。だから……俺はこの身体を元の霊真に返すためにダンジョンに潜り始めた」
真っ白な天上、見覚えがあるようで全然違った世界。
名前も声も、癖だって変わらないのに、元の記憶とは決定的に違う人たち。
そこで再会した召喚獣たち、昔の仲間たち、新たに知り合った仲間たち。
そして、ダンジョンで出会った強敵の数々。
「それが原因で悩むこともあった気がするけど、でも、今の俺はもう迷ってない」
何も諦める事無く、愚直に突っ走る。
全部が全部丸く収まる、そんな結末を藻掻いて足掻いて掴み取る。
馬鹿な俺にはこれくらいしかできないから。
「だからさ、俺は帰ることも諦めてなければ、立香たちを助けることも諦めてない」
俺のその言葉に、立香は少しだけ驚いた顔をして、それから笑ってみせた。
「……レイマは、強いんだね」
「それは立香の方だろ? 読んだよ、これまでの事」
立香の座る席の机の上にある資料、それを視線で指しながらそう言う。
人理焼却から始まったカルデアの旅。
人類最後の砦として、たった一人のマスターとして戦い抜けた日々。
そして、今度は地球白紙化という世界の終わりを覆そうとしている。
「本当にすげーと思う、心の底から」
俺が同じ立場だとしたら間違いなく無理だと、そう思えるくらいには絶望的な状態から、立香はここまで歩いてきた。
「オレだけの力じゃないよ。マシュにダ・ヴィンチちゃん……みんなが居たから出来たんだ」
「それでも十分凄いだろ」
「……それは、レイマも同じでしょ?」
「……まぁ、それはそうかもだけど」
確かに、俺だって召喚獣や仲間の皆が居たから世界を救えたのであって、俺一人じゃ到底たどり着けなかった。
でも、俺は事故で召喚されたわけだし、そんな役目があったわけでもない。
そう考えれば俺なんて随分とお気楽なものだと思った。
「だから、オレもレイマを凄いと思う」
「――そうか、面と向かって言われると恥ずかしいな……」
それでも、そう言われるのは嫌じゃなくて。
むしろ、立香に認めてもらうからこそ、心に来るものがあった。
「……良ければ、立香の話も聞かせてくれないか。資料とかじゃなくて、立香の話で聞きたい」
「うん、もちろん……ただ、寝る時間は守らないとね」
そう言われ時計を見れば、既に消灯時間を過ぎていた。
「やべ、もうこんな時間か……じゃあ、その話は今度だ。早く戻った方が良い」
「うん、そうするよ。おやすみ、レイマ」
「あぁ、おやすみ立香」
立香が部屋を出ていき、俺も再びベッドに寝転がる。
目を瞑れば、さっきまであった不安は消えていた。
明日から始まる中国異聞帯の攻略。
決意にも満たないこの心を持ったまま、俺は眠りに着いた。
◇ ◇ ◇
翌朝、俺達は白い地球の表面を走っていた。
予定通り彷徨海から出てきた俺達は、目の前にそびえたつ嵐の壁を前にしている。
乗員はカルデアの面々からシオンとキャプテンを除いたメンバー、そして……。
「ボクは
「あぁ、よろしく哪吒さん」
「敬語 不要、哪吒でいい」
「わかった……よろしく、哪吒」
哪吒と名乗るサーヴァントが一騎。
中国で語られる英霊の一人……らしい。
そうこうしている間に嵐の壁が迫る。
すると、通信機越しにダ・ヴィンチの声が聞こえた。
『朗報だよ、ゴルドルフくん! 中国異聞帯にコヤンスカヤの反応がある!』
「な、なにぃ?!」
どうやら、嵐の向こうにあのコヤンスカヤがいるという話らしい。
虚数潜航には、道標となるアンカーがあると成功率が上がるとのことで、急遽コヤンスカヤめがけて虚数潜航をすることになった。
「では、目標の一つである毒の探索はコヤンスカヤの身柄確保に変更。同時にクリプターを捜索し、これを捕縛。最終目的は空想樹の切除……これで宜しいですね? 所長」
「うむ、私も気合が入った。TV・コヤンスカヤ……今度こそはあの毒婦に鉄槌を下してくれる!」
「よし、残り400メートルだ。虚数潜航、始めるよー!」
虚数潜航のアナウンスが流れ始め、大きな揺れと共にシャドウ・ボーダーが沈んでいく。
そして、それと同時に俺の中から何かが途切れたような、そんな感覚があった。
お久しぶりの方はお久しぶりです、そうでない方は(投稿時間が夜なので)こんばんは、一般通過初心者作家です。
半年ほど期間が開きましたが、思い立ってしまったので再び筆を執りました。
今日は連続投稿となりましたが、今後は作者のリアル都合次第で執筆速度が変わるため不定期となります。
それでも良いよという方、かつ続きが気になるよという方は、どうか気長にお待ちいただけるとものすごく幸いです。
また、この二次創作を読んで『異世界サモナー』原作小説が気になったという方は、是非読みに行ってみてください。
カクヨム様となろう様、そしてハーメルンにて原作者様が投稿しております。
最近は更新頻度が遅いので、アクセス数を増やして続きを催促したいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました、一般通過初心者作家でした。