異世界サモナー、神話の怪物達と人理修復に参加する   作:一般通過初心者作家

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第13節~第14節

 それは正真正銘、炎そのものだった。

 陽炎が揺れ、太陽から垂れ落ちる溶岩が全てを溶かす。

 その炎を俺は異世界(ミソロジア)で見たことがある。

 

「――スルト」

 

 北欧神話において、ラグナロクの際にムスペルヘイムから現れ、世界を焼き尽くすとされる炎の巨人。

 そいつが今、この地上へと降り立ってしまった。

 

「おいおい、冗談じゃあないよな! 異聞帯、神代が終わってないにもほどがあるだろう!」

「炎の巨人王! ボーダーの観測機器では魔力を測り切れません! 視認でも……駄目です、距離を捉えきれません!」

 

 マシュがそう言いながら盾を構え立香を庇う。

 それもそのはず、ものすごい熱気がこちらへと押し寄せようとしていた。

 そこへ、通信機から一人の姿が現れる。

 

「キミは不用意に接近してはいけない、礼装には極地対応機能を付与したが……過度な高温環境での活動には対応しきれない。ミス・キリエライトの防御範囲内を出ないように!」

 

 それは、医療室で見かけたあの男性だった。

 

「ホームズさん! 良かった、回復が終了したんですね!」

「勿論。十分な休憩だった。たまには何も考えずに眠るのも悪くない……が、やはり退屈かつ刺激が足りない。後でキミたちの冒険譚を聞かせてもらおうか。特に、異なる世界からの放浪者というのも気になるからね」

「悠長に話している場合では無い! ボーダーの外気温がみるみる上がっていくぞ! 巨人種などという幻想種だけでも驚異だというのに、なんだ、その王だと! 一刻も早く避難したまえ、そこは危険だぞ!」

 

 ゴルドルフ所長の発言に、俺は魔力探知を走らせる。

 この雪原や城の影響もあって完全にはつかめないが、少なくともスルトが遠くに居るわけではない事だけは分かった。

 あの巨体を考えるに、スルトからしてしまえば俺達が目と鼻の先に居るのだろう。

 

「近いな」

「そうだな、オレの勘もそう言ってる。炎の巨人王スルト! オマエ、オレたちの敵って事で間違いないな!」

 「 無論 」

 

 ナポレオンの呼びかけに、そんな返事が直接響くように聞こえた。

 

「魔術による意思伝達! スルト……来ます!」

「マシュ、出力最大で全力防御!」

 

 マシュが大盾を展開しながら前に出る。

 この状況はマズい。こちらはただでさえシグルド戦で消耗しており、ブリュンヒルデさんに至っては宝具後に力尽きて倒れてしまっている。

 それに、スルトのもつ熱量をそう簡単に耐えられるとも思えない。

 

「【ディフェンス】【火炎耐性】……皆、しばらく耐えてくれ!」

「これは……ありがとうございます、レイマさん!」

 

 防御に関するバフを付与しつつ、俺はブリュンヒルデさんの方へと駆け寄る。

 まだ辛うじて息はある……が、魔力が消えかけていることからも霊核……存在の崩壊が始まっていることが分かる。

 今ならまだ間に合うかもしれない、そう思い俺はある召喚獣を喚ぶ。

 

「【サモン】ベルフェ・フェニックス」

 

 顕れたのは明け空のような髪が特徴の、祭儀服に身を包んだ少女。

 不死の炎鳥の原典を持ち、俺の召喚獣の中でもっとも治療に長けた一人だ。

 

「こりゃ可憐なお嬢さん(マドモアゼル)だな。少年、一体幾つの従者を抱えてるんだ?」

「そこそこ、ってことにしておいてくれ。それよりベルフェ、治せそうか?」

 

 そう問えば、ベルフェはう~んと唸ってブリュンヒルデさんへと手をかざす。

 

「う~ん、正直厳しいかも。構造が違うというか、僕もまだこの世界に慣れきってないから……」

「この場を凌げるだけでもいい、頼めるか」

「了解~、出来る限りやってみる」

 

 ひとまずはこれで良いだろう、俺は前線で戦う皆の方へと視線を向ける。

 

「くっ……」

 

 出来るだけバフを付与したつもりだったが、マシュは押されつつあった。

 

「レイマ君の支援である程度補強出来てはいるが、霊基外骨骼(オルテナウス)は溶岩の中に浸かるような真似を想定してはいない。それに、下手をするとソイツは――」

「ああ、恒星とまではいかずとも、それに近い超高温を秘めるような不気味さはある。宝具に気を付けたまえ! スルトの剣は、星が生み出した神造兵器だ。()()()()()()()()()を有している! 形ある生命であれば、神代の神さえ滅ぼすぞ!」

 

 生命に対する優先権。おそらくラグナロクの破壊の象徴とも呼べるスルトだから持つであろう、殺すことに特化した力。

 防御があまり意味をなしていないのは大方そういう理由だろう。

 攻撃に転じたいのは山々だが、相手との位置が正しく見えない以上攻撃の手段は限られる。

 

「第二波、来ます!」

 

 再び、炎の剣が振るわれる。

 ここまでの戦闘でマシュの体にもかなりの疲労が蓄積しているのが見て分かる以上、先ほどよりも幾分か出力が上がったそれを耐えきるのは至難の業だろう。

 俺もその防御に加わろうとして――ある影が、剣と盾の間に割り込むのを見た。

 

「少年少女よ、当方の肉体が迷惑を掛けたようだ。償いは、行動によって示す他にないと考える」

 

 剣が、輝いていた。

 灼炎に燃える剣ではなく、蒼く煌めく剣だった。

 

「太陽の魔剣よ、その身で破壊を巻き起こせ――【壊劫の天輪(ベルヴェルグ・グラム)】!」

 

 視界が、光に包まれる。

 しかし襲い来る熱波は感じない。

 光も消え、再び視界が戻ると……そこには、魔剣を携えた英雄が立っていた。

 

「……巨人王は北の山嶺へと消えたか。ひとまず、無事で何より」

 

 その英雄は、俺達の方へ振り返ると爽やかな笑顔を向けてくる。

 

「既に承知の事とは思うが、自己紹介をしておこう。当方は魔剣を使う者、真名シグルド。貴殿らの命を維持できて、嬉しく思う」

「シグルド、さん……? でも、あなたは確かに、スルト出現の折に砕け散って……!」

「その通り。だが、肉体の崩壊を繋ぎ止めた者がいるのさ。それで合っているかな、北欧最後の統率個体。ワルキューレ・オルトリンデ」

 

 ホームズの呼びかけに答えるよう、白いローブのワルキューレがこちらへと歩み出て頷いた。

 

「ですが、既に私は出力限界を迎えています。()ってあと数十秒。これ以上は……」

「一撃なりとも魔剣を放てた。それで、当方は充分に感謝している。妹御」

「……いえ、貴方のためではありません。貴方が本当の英雄であるなら、どうかお姉様に、言葉をかけて下さい。私の望みは……それだけ、です」

「無論だ。妹御の心遣いに再度感謝する」

 

 そういうと、シグルドは未だ倒れ目を覚まさないブリュンヒルデさんの方へと向かう。そして治療を続けてくれているベルフェの隣に座り込む。

 

「貴殿にも感謝を、ここまで我が愛の霊基を繋ぎ止めてくれて」

「ん、レイマのお願いだからね~。まぁあんまり役に立った気はしないけど」

「充分だ。ではここからは当方が変わろう」

 

 目を閉じ、指先で宙に軌跡を描く。

 

「我が太祖オーディン神の名の下に、ルーンの導きに依りて。僅かで構わない、瞼を開けろ。我が愛。おまえの霊基を繋ぎ止める」

「……いけません」

 

 ブリュンヒルデさんは顔を赤らめながら、わずかに目を開けてシグルドを見た。

 

「私は……貴方を殺すモノ。だから……困ります……」

「黙っていろ、今は。」

「……あ……」

 

 彼が描いたルーンは、彼女を照らすとその身を包んでいく。

 それと同時に、先ほどよりも魔力の消失が止まっているのを感じ取った。

 

「……やはり、先ほどまでは本当の貴方ではなかったのですね。貴方は……今も、私の愛した英雄のままなのですね、シグルド」

「不甲斐なさを露呈した。かつても今も、当方はおまえの英雄たりえぬ男だな」

「いいえ、いいえ……貴方は、確かに守ってくれましたよ。世界を救うための、希望を……」

 

 

 ◇   ◇   ◇

 

 

 この異聞は、三千年前に始まった。神々の黄昏(ラグナロク)は、一人の終末装置によって運命ごと破壊されたのだ。

 北欧の神代を終わらせるだけではなく。この星すら破壊せんとした巨人は、神殺しの巨狼を喰らい、世界の黄昏を導こうとした。

 神々は彼と相打ちになり、ただ一柱(ひとり)の神だけが残る。

 スカサハ=スカディ。

 それが、彼女の話したこの北欧世界の始まりだった。

 残ったものを大切に、大切に守り続けて……三千年、永らえた世界だった。

 

「さて――闖入者はひとまず排除された。先ほどの提案の答えを、お聞きしたい。スカサハ=スカディ女王陛下」

「同盟か――ふむ、そうさな。この期に及んでは……仕方なし、か」

 

 迷いながらも、スカサハ=スカディはカルデア側の提案した共闘の意を呑んだ。

 これで、カルデアの最重要目標は目下スルトの撃破のみということになった。

 共闘関係になった異聞帯の女王スカサハ=スカディ、彼女に仕える異聞帯の最後の戦乙女オルトリンデ、地下に閉じ込められていると聞いていた神霊シトナイ、そして身体を取り戻したシグルド。

 四名の新たな仲間と共に、俺達は再びボーダーに乗り込みスルトを追っていた。

 

「……なぜ、斯様な鉄の塊で移動する? 高速飛行のルーンなり、疾走のルーンなりを描けば、英霊各々でもっと早く辿り着こうに」

「状況を考慮した上での行動です、女王陛下」

「うんうん、巨人種だけじゃなく空想樹の種子まで降ってくるような状況なんだ、各自が走ると各個撃破されかねない。こっちの方が守りやすく攻めやすいってコト」

 

 ボーダーを移動要塞に、ナポレオンをその主砲にし、俺達は雪原を進む。

 すると、操縦席のほうから不思議そうな声が聞こえてきた。

 

「ん……上空に……こりゃあ何だ、鳥か?」

「モニターに出せるかい」

「勿論、よっと」

 

 その声と共にモニターに映し出されたのは、空を舞う二羽の鳥だった。

 この世界、ヒトと巨人と氷の獣しかいないと思ってたけど……そんなことは無かったらしい。

 そんな二羽の鳥を見て、シトナイとスカサハ=スカディは少し驚いたような顔をしていた。

 

「そうか――腑に落ちた」

「女王陛下、何か?」

「いいや、こちらの話だ。幼き姿の賢者よ」

「っと、こちらボーダー車上! 上空に鳥以外の存在――種子を視認した! こりゃあ狙い違わず車上に落ちるぞ、迎撃に移る! 来たい奴は上に上がれ!」

 

 ナポレオンからの通信で、皆が一斉に支度を始める。

 

「マシュ、もう出られる?」

「はい、いけます!」

「当方も出よう。何、グラムの重みにもう少し慣熟しておきたい」

「私も出ます」

「いや、此処は当方のみで充分、おまえは休んでいろ」

「――いいえ、そうだとしてもお供します」

 

 俺も上に上がろう、そう思って移動しようとした時、背後から声をかけられた。

 

「待て、そなたは行くな。異世界の英雄よ。私はそなたに聞きたいことがある」

「……わかりました、でもこれだけ。【サモン】ルナ」

 

 召喚魔法でルナを喚べば、人の姿のルナが現れる。

 

「ルナ、皆を手伝ってくれ」

「……わかったよ、ますた」

 

 少し不服そうに頷いて皆について行くルナを見送り、俺は声をかけてきた人物……スカサハ=スカディの方へ振り返った。

 そばにはオルトリンデも控えており、その様子を少し離れた所からシトナイが見ていた。

 

「今のが召喚獣の召喚か……! こんな事態じゃなければ色々調べたいところだけど――」

「はいはい、それにしてもあの子は……随分不思議ね、彼」

 

 そちらのコソコソ話も気になりはするが、俺は女王陛下へと視線を合わせる。

 すると、彼女は不思議そうに尋ねてきた。

 

「あれは、巨狼の子か?」

「ええと……そうですね」

「……ふむ、片割れもいると見た。随分と不思議な力を持っておるな、特に――」

 

 彼女は、俺が持っている杖を見てそう言った。

 

「特に、その杖。かの巨人王の持つ物と同等のものに見える」

「多分……原典が同じだからだと思います」

「そうか、なるほど。そのような世界があるのか。あのような災禍を一体幾つ抱えておるのだ?」

「……災禍じゃないです。少なくとも俺にとっては、大切な仲間ですよ」

「……であったか、すまない。私もそういうもの(滅ぼすもの)に少々過敏になっているようだ」

 

 おそらく気が気じゃなかったのだろう、俺がスルトの力と同じものを持っている事が。

 彼女が語っていたこの異聞帯の歴史を考えれば、その心配も納得がいく。

 

「えっと……しまった方が良いですか?」

「いいや、構わん。それはあやつを倒すのに必要なはずだ、私とてそれくらいは理解している」

「……わかりました」

「――要件はそれだけだ、手間を取らせたな」

 

 そう言うと、彼女は離れていってしまった。

 それと入れ替わるように、シトナイが俺の方へと近づいてくる。

 

「――もう、肝心な時にヘタレなんだから」

「ヘタレ?」

「ううん、なんでもない。私の口からじゃ意味無いわ、あるとすればそれは……一人だけよ。(イリヤ)も別に、(フレイヤ)であるとは思ってないけれどね。ただの混ざり物だもの」

 

 それだけ言うと、彼女も元の場所へと戻っていく。

 その頃には上の戦闘も一段落着いたようで、ボーダーは再び速度を上げて移動し始めた。

 

(ルナ、そっちの様子はどうだ?)

(ますた。問題ない、けど……数は多い。むしろ増えてる?)

 

 移動中も飛来してくる種子に、こちらへ投石してくる巨人種の群れ。

 種子に関しては増え続けているらしく、このままの状況はあまり良いとは言えないだろう。

 すると、ダ・ヴィンチちゃんが車上にいる面々に通信を送る。

 

「皆、スルトと思わしき膨大な魔力の塊が()()()()()()!」

「へぇ、ついに俺達を迎撃しにきたか?」

「否、アレは当方らを迎撃すべき大敵とみなしはすまい」

「おそらく、何かに接近するつもりなのでしょう、たとえば、旧ヴェーネルン湖上に存在している――」

「集落か!」

 

 ナポレオンの発言に、全員が息をのむ。

 様々なものが表示されたモニターを弾き、ダ・ヴィンチちゃんはその言葉に応えた。

 

「ビンゴ! スルトのルートはまさにそれだ! 集落のある旧ヴェーネルン湖上にまっすぐ南下している!」

「空想樹との接続ってのは終えたのか。くそ、それじゃあこっちも南に反転せにゃならんな!」

「理由がはっきり掴めないけどね……何でまたわざわざ集落に向かうのかな? そのさまをわたし達に見せ付けたい、とか?」

「オレたちに見せる意味はなかろうな、まぁ思い付く事がなくもないが……それも野暮ってやつだろう! 何にせよ我が大陸軍(グランダルメ)には好都合! そろそろ、オレも本気を出していい頃合いだ!」

 

 どうやらスルトは集落を焼くつもりらしい。

 それが本当なら何としてでも阻止しなければならない。

 ダ・ヴィンチちゃんが算出したルートを先回りするように、ボーダーはその雪上を行く。

 俺も車上に出て、襲い来る種子や巨人を迎撃することにした。

 

「っ多くないか!?」

「あぁ、個の強さもそこそこだが、一番は数だ!」

 

 立香やマシュ、シグルド夫妻にルナも応戦してくれてはいるが、一向に減る気配はない。

 

「……凍って」

 

 ルナは人型のまま、種子を殴り砕いていた。

 どうにもこの世界……いや、異聞帯の影響を受けて強くなっているらしい。

 触れた傍から敵を凍らせてそのまま殴り砕いている。

 そういえば、初めてこっちで召喚したときもそんな感じだったような気がする。

 

「ますた、どうする?」

「無理に攻勢に出る必要はない、問題は――」

 

 俺は顔を見上げ、視線の先にある巨躯を見る。

 スルト、再び視認できるほど近くまで接近したそれは、先ほどと違いその半身を青く染め上げていた。

 

「……なんなんだ? あれ」

「さあな! だが不味いぞ。あいつ、剣を振るうつもりだろう!」

 

 炎の剣が振るわれれば、間違いなく全てが更地へと変化する。

 ボーダーから集落まではまだ微妙に距離がある、間に合うかどうかはギリギリだろう。なら――俺はルナに向かって叫ぶ。

 

「ルナ! あれのところまで今すぐ連れてってくれ!」

 

 俺が先行してあれを止める、ルナの足ならきっと間に合うだろう。

 だが、それを止める声があった。

 

『無茶だ、君にあれを止める手立てがあるのかい?』

「わかりません、でも動かないことには止められないですから」

 

 ダ・ヴィンチの言う通り、保証があるわけでもないが……なにも出来なくなるよりはずっといい。

 

「なら、私も行くわ。それでいいかしら?」

「……シトナイか」

「もう、イリヤって呼んで?」

『うーん、わかった。こちらも全速力で追いかけるから無茶だけはしないでくれ』

 

 その言葉に頷き、俺とシトナイはルナに乗って……次の瞬間、蒼い巨狼がボーダーから飛び出した。

 氷の木々の間を抜け、一瞬でスルトとの距離を縮める。

 しかし、スルトのほうも既に立ち止まり、集落へ向けて手を振りかざさんとしていた。

 

「何か手はあるのか、イリヤ」

「……私のバーサーカーで受け止めるわ、最低でも数十秒なら持つと思う」

「バーサーカー? いや、聞いてる時間は無いな」

 

 少なくともイリヤの方には時間稼ぎの手段があるらしい。

 なら、俺はそれを支援するべきだろう。

 先の一戦で見たスルトの剣なら受けきれるだろうが……多分、あれは本気じゃない。

 世界を滅ぼすという概念そのものである剣が本気で振るわれるのならば、それを完全に止めるのは不可能に近いだろう。

 そういう意味でも受け止める、受け続けるというのは正解に近いだろう。

 

(……ますた)

(ん、どうしたルナ)

(近くに来たからわかったけど……お姉ちゃんの気配がする)

(お姉ちゃん……って、フェンリルの?)

 

 この異聞帯におけるフェンリル。

 ニヴルヘイムの半分を喰らい、太陽すらも喰らった氷の怪物とスカサハ=スカディは言っていた。

 もし、今スルトの半身に現れているそれがフェンリルの力ならば。

 

「……なら、俺も受け止める側に回る」

 

 きっと、あれを受け止めることが可能かもしれない。

 更に速度を上げ、集落の前までたどり着く。

 スルトの右腕は高く振り上げられ、今まさにその剣が振るわれようとしていた。

 

「行くぞイリヤ」

「ええ。お願い――」

 

 ルナから降りた二人が、眼前の敵を見上げて並び立つ。

 同時に……巨剣が、炎が、終末が、振り下ろされる。

 

「【太陽を超えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)】」

 

 そして、それを迎え撃つは二つの召喚術式。

 

「来て、バーサーカー!」「【サモン】ソル・スコル!」

 

 顕れた筋骨隆々の番人と、太陽のような金髪の少女だった。

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