書いていた下書きが途中で全部消えてしまったので、すごい時間がかかってしまいました……。けど、何とか二話投稿出来たので良しとしまう。
見ると分かるのですが、ここから時系列がかなりごちゃ混ぜになってしまいます。ですが、本来のストーリーにはちょいちょい沿うようにはなっています。……それでも、結構ごちゃ混ぜになってる方が多いかも。
駄文ではありますが、楽しんでいたただけると幸いです。
彼女は変わっていた。
記憶の中にある彼女と違い、目の前に存在していた彼女は確かに変わっていた。外見や喋り方、癖や仕草とは違う何か。
彼女を見るたびに気にならない程度の小さなものではあるが、確かにある違和感。それがずっと何か、僕は知りたかった。
そんな小さな違和感に気付かないまま、僕はここまで来た。今ならば分かるのではと考えても、結局あの違和感について何も知ることはなかった。
──しずく君はさ、お母さんと仲良かったの?
あの時、彼女が何か申し訳なさそうに訪ねてきたときの光景が蘇る。
僕はあのとき、なんて答えただろうか。
……あぁ、思い出した。
──わかんないや
僕はあのとき、確かにそう答えたのだ。
……そうか、だから僕は彼女に違和感を感じたのか。
彼女の言葉が僕には理解できなかった。だからこそ、彼女が変わっているのだと。
でも、実際には変わっていたのは僕自身だったのだ。自らを不変的な存在であると信じて疑わないからこそ、あの違和感の正体を彼女であると決めつけていたのだ。
なんとも哀れな話だろうか。
彼女は気付いていたのだ。僕の異常性について。
それだけじゃない。きっと、そんな僕に何かを見出していた。けれど、僕がそれに気づくことはない。
何度考えてもその答えには、たどり着けないはずだ。
「……アイ、君に映る僕は一体どんなふうに見えたのかな」
幾度の時が流れようと、僕は愛を知らなかった
……少なくとも、僕がいつかの彼女と同じように無知でいる限りは。
※
なんとなく、ケーキが食べたい気分だった。
ただそれだけのことだったのに──。
「……なんで、俺はお前と二人でデパートに来てるんだ?」
「……? 雫がここに用があるって言うから」
「そうじゃなくてだなぁ……」
「……? そう?」
不思議そうに首を傾げる彼女を傍目に、俺は今置かれた現状に溜息をつく。
正直言って、今の状況は俺にもよくわかっていない。ただケーキを食べに外に出たら、この女に拉致られていた。はっきり言って、意味がわからん。
仕方がないからケーキを諦め、日常で使うものを補充するためにデパートに行こうとしたら、何故かそのまま付いてきたのだ。
「こんなとこに二人でいるとこ見られたら、困るのはお互いさまじゃないのか……」
「別にそんなの気にしない」
「気にしないって……、お前なぁ」
「そんなことより、あれ見てよ」
「おい、そんなこと言ったってなぁ……?」
視線を彼女の言われた方に向ける。
そこにあったのは、ある恋愛映画のポスターであった。少し前に世間で流行った恋愛漫画、その実写映画である。
内容は至ってシンプルで、よくある王道物だ。だが世間では、一周回ってこういったものが良いなどと好評であり、遂には実写映画化というわけだ。
「ポスターの周り、人集まってるね」
「……まぁ、あのポスターに映ってるヒロインを演じたのは、今をときめく売れっ子若手女優様だしな。ファンが多いんだろ、知らんけど」
「どっちかって言うと、みんな主人公を演じた実力派若手俳優さんにお熱なんじゃないかな。……心なしか、女性の方が多い気がするし」
……そう、この映画のヒロインはかなり売れっ子の若手女優なのだ。演技が上手いのはもちろんのこと、バラエティに出た際のノリや雰囲気の良さなども加味して人気を博している。加えて、モデルのような顔だちをしており、男女問わず多くの人を魅了している。
顔だちはとてつもなく良い。そう、隣にいるこの女と同様に。
「あの映画、懐かしいね」
「……そうか? 言うてもつい最近のことだろ」
「そうっちゃそうなんだけどさ。あの映画の撮影があったからこそ、君と仲良くなれた」
「……それに、君を見つけれた。だから、私にとってはとても思い出深いものなんだよ」
「……そーだな。そう考えたら懐かしいもんか」
「そゆことー」
そう、あの映画の主演は紛うことなき俺とこいつなのだ。
だからこそ、この状況が問題あるわけで……。
「……だから気にしろって言ってんだよ」
「……?」
「ポスター見てたら、近くに本人いましたーって洒落にならんわ。あろうことか、二人でいるとこ見られるなんて以ての外だろ」
「えー、だめ?」
「ダメに決まってんだろアホ女。構ってほしいならあとで構ってやるから、今は少し離れろ」
「仕方ないなぁ……、これでいい?」
「おう、これぐらいならいいだろ。さっきまでのは流石に目立つ、それこそ俺らじゃなかったとしても」
「……はーい」
残念そうに言葉を溢す彼女は渋々といった様子で俺の右腕から離れた。
流石に男の腕にしがみ付いてる国民女優の姿などスクープに違いない。幸いなのは、今の子の状況を見ていた人に俺たちが誰か気づかれていないことだろう。
このレベルの人だかりであれば、一人ぐらい俺らの正体について気づいてもおかしくないのだが、ありがたいことに誰も気づいていないし誰も不審に思っていない。
できることならば、このまま誰にも気づかれずに外に出たいものだが……。
「……あれ? しずく君?」
「あ……」
現実とはそう簡単に上手く事を運ばないものである。
※
「……で、どういうことか説明してもらおうかな?」
「……あの、あかねさん?」
「何かな、しずく君」
「……いえ、なんでもないです」
あかねと遭遇した僕たちは、他の人に少しでも感づかれないように近く公園へと移動した。
……そして、どうして僕たちが二人でいるかを説明する羽目になっていた。
いや、ほんとは僕だって断れることなら断りたかったんだ。ただ、あかねの眼光が怖すぎて従うしかなかった。
あかねの眼光の前では、あの不思議ちゃん代表格みたいなフリルでさえ身を縮こまって固まっているほどだ。
「えぇっと……、僕たちはたまたま出会ったから一緒にいただけで……」
「そのわりには、随分とくっついていたものだね?」
あ、あれぇ……?
なんでバレているんだ? ……もしかして、実は最初から見られていたのか?
……会ったときに、驚いた顔をしていたはずだしそんなことはないだろう。いや、あかねならやりかねないのか……?
「……不知火さん、しずく君は仮にも私とお付き合いしているんだよ? そんな彼が他の女性と二人っきりで出歩いていたら、どうなるかなんて分かるはずだよね?」
「……」
「しずく君もだよ。この浮気者、私という彼女がいるにも関わらず他の女とデートとか許されると思ってるの?」
「えぇ……」
「ん?」
「……ナンデモナイデス」
確かに付き合ってはいるものの、あくまで番組での演出のようなものだし、言わば仕事の関係のはずだ。ここまで徹底する必要もないように感じられるが、確かにあかねの言う通り何かあっては不味いのも事実だ。
事が起きてからでは遅いのだ。……そう、何事もことが起こってからではダメなのだ。それでは何も救えやしない。
……あの時のように、手遅れになる前に──「しずく君っ!」
「え、あ、……どうかした?」
「どうかしたも何も、呼びかけても反応ないから……」
「……あ、あぁ、ごめんね? 少しだけ考えごとしててさ」
「……? そっか?」
「あの、話はこれで終わりかしら? もう終わりなら私と雫はもう行きたいのだけど……」
「ふぇ?……いやいやっ!ダメに決まってるよね!? なんでそんなにも依然と行こうとしているのかな。さっきの話聞いてたかな!?」
「……別に、あなた達は番組の演出上の関係。言わば、ビジネスパートナーでしょ? さっきみたいに人の多いところは確かに良くなかった。けど、二人で遊ぶこと自体は別に問題ないはず」
「いやいや、問題大有りですぅぅ!」プクープクー
「……貴女、それわざと?」ジトッ
「へ? 何が?」
「……なんでもないわ」
この人のあざとさは、本人が意図したものではないからこそ少しタチが悪い。
雫にあんなふうに甘えている姿を見かけると、たまに彼女のような感性が少し羨ましくなる。
……一応は彼女を見習ってあれこれと試してはいるのだが、今のところ目ぼしい戦果は何一つとしてない。
「……それはそうとして、私が雫と一緒にいるかどうかは貴女じゃなくて雫本人が決めるものだと思うの」
「……まぁ、そうっちゃそうなんだけどさ」
「じゃあ……」
「えぇ……」
「「雫/しずく君」」
「「どうするの?/どうするのかな!」」
※
なんというか、懐かしい夢を見た気がする。
夢なんて、最近は滅多に見てなかったからなんだか少し新鮮だ。
それにしても……。
「……しずく君の夢かぁ」
いまだあの海に囚われている彼の夢を見た。
別に彼の夢を見ること自体は昔からよくあった。私とて、彼を想う少女の一人だ。想い人の夢くらい、そりゃあ何度も見る。
……けれど、ここ半年は違った。見ることあっても、内容はいつも一緒だったのだ。
本当の彼に触れたあの日の出来事。
仮面の下に隠された彼の本心と彼の本質に歩み寄ったあの日だ。
すべてを背負いながら幸溢れる未来を想い、その代償に自らを捧げようとしていたあの日。
……そんな彼を止めようと、力を尽くしたけど何も変わらなかったあのとき。
「……あいたい」
あれから半年、私は限界を迎えようとしていた。
どれだけ時が経っても目を覚まさない君を待っていると、ずっとこのままなのではないのだろうかという深い絶望とあのときの私にもう少しの勇気があればと強い後悔に苛まれる。
それだけじゃない。私は彼のことなど、何もわかっていなかったのだ。私が今まで知っている気でいた彼はすべて淡い泡沫のように消えていった。彼のことを何も知らなった。
まるで、氷山の一角しか知らないように。
「……あいたいよぉ」
君がいない今を誰が幸せだというのか。誰もこんなこと望んでなんかいないのに、彼はまるでこの現状が何よりも幸福であると語らんばかりに消えてしまった。
「……それくらいの罪、私だって一緒に背負ったのに」
たとえ、彼が自らを大罪人だと揶揄するのであれば、私はどんな罪であろうと共に背負う気でいた。どんな罪であっても共に背負い、彼の横に居続ける気だったのだ。彼を癒し、受け入れることこそが私にとってはどれだけの価値があることだったことか。
……たとえ、その罪が人殺しのようなものであったとしても。
プルップルップルッ
「……でんわ?」
突然、部屋に鳴り響く一本の電話。
この電話が知らせるのはものは一体何だろうか。
それは、暗い冬が続くことの暗示か。
それとも──、
「……ふりるちゃん?」
──優しい春の明けた合図か
雪解けは既に始まっている。
時系列には、決まった形で動くようにはしているのでごちゃ混ぜと言えど、次第に見やすいものになってくるはずです……多分。
次話は近いうちに出せるよう予定しています。はい、頑張ります。