蒼天の軌跡〜『相棒』   作:心ここにあらず

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ダイヤのエースのアニメがそろそろ始まると聞いたので描いちゃいました!


序章

畳の匂いは、いつだって昔の記憶を呼び起こす。

 

 

 夕方の光が障子越しに部屋へ差し込み、橙色に染まった空気がゆっくりと揺れている。縁側に腰を下ろしながら、俺は何とはなしに庭を眺めていた。古びた柿の木、少し傾いた物置、そしてその向こうに広がる田んぼ。風が吹くたび、稲が波のように揺れて、さわさわと音を立てる。

 

 

 ここは、俺が生まれた家だ。

 

 

 都会とは無縁の、長野県の小さな田舎町。電車は一時間に一本しか来ないし、夜になれば虫の声のほうが車の音より大きい。けれど、そんな場所が俺のすべての始まりだった。

 

 

 生まれた日のことは当然覚えていないが、祖母はよく話してくれた。「よく泣く子だった」と。声が大きくて、夜中でも遠慮なく泣き叫び、家族を何度も起こしたらしい。泣き止んだあと、きょとんとした顔で周囲を見回す姿が妙に愛嬌があったのだとか。

 

 

 幼い頃の記憶は断片的だ。母の背中、父の大きな手、春の風の匂い、夏の入道雲。世界はいつも広くて、すべてが新鮮だった。

 

 

 まだ言葉もおぼつかない頃、俺はよく庭を歩き回っていたらしい。虫を見つけては追いかけ、泥だらけになって帰ってくる。母は困った顔をしながらも、笑っていたという。

 

 

 物心がついた頃には、外で遊ぶのが当たり前だった。家の裏には小さな川が流れていて、夏になると近所の子どもたちと一緒に水遊びをした。冷たい水に足を浸す感覚、石を投げて水切りを競ったこと、夕方になると大人たちの声が遠くから響いて帰宅を促したこと――どれもが、あの頃の日常だった。

 

 

 幼稚園の頃、俺は少し変わった子だったらしい。

 

 

 人見知りはしないのに、どこか一歩引いたところから周囲を見ていたと先生は言っていた。騒いでいる友達の輪の中に入りながらも、なぜか冷静に全体を眺めているようなところがあった、と。

 

 

 自分ではよく分からない。ただ、みんなと同じように笑っているのに、どこか別の場所にもう一人の自分がいるような感覚は、確かにあった気がする。

 

 

 小学校に入学した日も覚えている。校庭は想像以上に広く、知らない顔ばかりで少し緊張した。新しいランドセルは背中に重く、でも誇らしかったのを今でも覚えている。

 

 

 最初の頃は、とにかくすべてが新鮮だった。授業、給食、休み時間。田舎の小学校だから人数は少なく、学年全体の顔と名前をすぐに覚えられた。

 

 

 そしてここで俺は"アイツ"と出会ったんだ。俺とは反対に位置するような太陽のように明るく前向きな性格。勉強なんて全然出来ないし、まぁ運動はそこそこ出来たけどな。

 アイツの周りにはいつも沢山の人がいた。…勿論俺もその1人だ。初めは『なんだこのやかましい奴は』って思ってたのに気づいたら親友ポジの位置まで上り詰めていたよ。

 

 

 そんな田舎のガキからしたらありふれた日常を送っていた俺にとって転機となる日が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【回想】

 

 

 

 

 小学三年生の夏のある日… それまでの俺は、特別何かに夢中になることもなく、ただ毎日を過ごしていた。友達と遊ぶのは好きだったし、外で走り回るのも嫌いじゃない。でも、「これが好きだ」と胸を張って言えるものはなかった。

 

 

 

 その日、学校が早く終わった俺はいつものように友達たちと遊んで自宅に帰ってきた。時刻は15時過ぎだったかな。家にはまだ誰もいなくて父と母は仕事だろう。祖母と祖父は多分2人でどっかに出かけたんだろうと勝手に理解して俺はリビングのテレビをつけた。『なんか面白いアニメやってないかな〜』なんて漠然とした感覚でつけたテレビに映っていたのは…

 

 

 

『さぁ全国高校野球選手権大会――舞台は聖地・阪神甲子園球場!!』

 

 

 

 スタンドを埋め尽くす大観衆。アルプス席から響くブラスバンドの音色、照りつける夏の日差し、そしてグラウンド中央――マウンドに立つ一人の投手。

 

 

 日焼けした肌に強面な顔…背丈は180以上はあるだろうか…

 

 

 

『マウンドには今大会最注目の右腕、青道高校の“炎のエース”片岡鉄心!!』

 

 

 

 深く帽子を被り、ゆっくりとロージンバッグを握る。

 

 その姿は静かだが、内に秘めた闘志が球場全体に伝わってくる。

 

 

 

『最速150キロを超えるストレート、鋭く落ちるフォーク、そして試合を支配する圧倒的なマウンド度胸!ここまで無失点――まさに鉄壁の投球を見せています!』

 

 

 

片岡は感情を表に出さない。ただ静かに息を吐き、マウンドを一歩踏みしめる。

 

 その姿に、味方ベンチから大きな拍手が巻き起こり会場中の視線を浴び続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――カキィィン!!

 

 

 

 テレビの向こうから響いた金属音が、静かな居間に鋭く広がった。

 

 

 

 

『打ったぁ!!センター方向へ大きい!!

 

 

 

ーーーー入りました!!この試合終盤のこの場面で青道高校待ち望んだ先制点です!!』

 

 

畳の上に座り込み、俺はテレビにかじりつくように画面を見つめていた。夕方の光がカーテン越しに差し込み、部屋の中はオレンジ色に染まっている。

 

 

 画面には、満員の甲子園。

 

 土煙、歓声、揺れるアルプススタンド。

 

 そして――マウンドには、背番号「1」。

 

 

『炎のエース片岡、ここまで圧巻の投球です!九回裏、ツーアウト――あと一人で試合終了!!』

 

 

 

 俺は無意識に息を止めていた。

 

 テレビ越しなのに、空気が張り詰めているのが分かる。

 

 片岡は帽子のつばを軽く触れ、静かに構える。

 

 汗が頬を伝う。

 

 でも、その目はまったく揺れていない。

 

 

 

『さぁ、勝負の一球……投げたぁ!!』

 

 

 

 ーーズバンッ!!

 

 

 

『ストライク!!内角いっぱい!!』

 

 

 

 スタンドが爆発したように揺れる。

 

 俺の胸も、同じように跳ねた。

 

 なんでだろう。

 

 ただテレビを見ているだけなのに、心臓の鼓動が速くなる。

 

 画面の中の選手たちは、誰も笑っていない。真剣で、苦しそうで、それでも前へ進もうとしている。

 

 それが――なぜか、かっこよかった。

 

 次の球。

 

 振りかぶるテレビ画面越しの背番号1

 

白球が一直線に走る。

 

 打者が金属のバットをボール追いかけ全力で振り切る

 

 空を切る音。

 

 

 ーーズドォォォン!!!

 

 

 

『空振り三振!!試合終了ォォォ!!』

 

 

 

 歓声がテレビのスピーカーから溢れ出す。

 

 片岡は大きく吠えることもなく、ただ拳を握った。

 

 その小さな仕草が、なぜか胸に刺さった。

 

 

「……すげぇ」

 

 

 気づけば、声が漏れていた。

 

 何がすごいのか、うまく説明できない。

 

 でも、分かる。

 

 あのマウンドに立っている人は、何かを背負って戦っていた。

 

 仲間、努力、悔しさ、全部。

 

 テレビの中の世界は遠いはずなのに、手を伸ばせば届きそうな気がした。

 

 俺は自分の手を見る。

 

 まだ小さくて、何も掴んでいない手。

 

 でも――

 

 さっきから胸の奥が、ずっと熱い。

 

 試合後のインタビューが始まる。

 

 

 

『仲間のおかげです』

 

 

 

 背番号1を背負った片岡はそう言って、少しだけ照れたように笑った。

 

 その表情を見た瞬間、胸の中で何かが決まった。

 

 理由はない。

 

 理屈もない。

 

 ただ――やってみたいと思った。

 

 ボールを投げてみたい。

 

 あんなふうに、全力で何かに向かってみたい。

 

 俺は立ち上がる。

 

 テレビの音はまだ響いている。

 

 でももう、じっとしていられなかった。

 

 玄関へ向かい、靴を履く。

 

 夕焼けが外を赤く染めている。

 

 胸が高鳴る。

 

 どこへ行くのか、自分でも分からない。

 

 ただ――走り出していた。

 

 あの音を、あの感覚を、自分の手で確かめるために。

 

 ――野球を、やってみたい。

 

 その一歩が、未来を変えるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 それが俺こと"夏目凛太郎"の野球人生の始まりだったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何寝ぼけたこと言ってんのよ!」

 

「イッテェ!?何すんだ!!」

 

「何すんだじゃないわよ!愛しの彼女がわざわざ家まで起こしにきてあげたのに…ずっとピンポン鳴らしてたんだからね!」

 

「あははは!!早く起きろ凛!!」

 

「ちょっと栄純!」

 

 

 

 何かに殴られた衝撃を受けて目を開けるとそこには3人の男女が目の前に立っていたのだった。

 まずは目の前にいる…この女の子…名前は"九条雫"といい

 

 腰まで届く長い髪は、艶やかな黒。その髪は光を受けるたびに柔らかく揺れ動き丁寧に手入れされているのが一目で分かるようだった。顔立ちは整いすぎているほど端正で、どこか近寄りがたい印象すらある。近くで見ると、冷たそうに見える外見とは裏腹に、瞳の奥にはどこか優しさが宿っていることを俺は知っている。まぁそんな女の子が俺の彼女である。

 

 そしてその後ろから声をかけてきた男が俺の親友である"沢村栄純"

 

髪は短めに切り揃えられた黒髪で、少し跳ねた毛先が彼の活発な性格をそのまま表しているようだった。顔立ちはいわゆる端正な美形というより、親しみやすく感情が分かりやすいタイプ。まぁ腹芸とか出来ないタイプだな。

そんな男が俺の人生におけるある意味相棒的存在である

 

 

 そしてさらにその隣…栄純を注意しているのが"蒼月若菜"である。

 

髪は落ち着いた茶色で、肩にかかるほどの長さ。さらりとした質感で、飾り気のないナチュラルな髪型が彼女の素直な性格をよく表している。風に揺れるたびに軽やかな印象を与え、どこか優しい雰囲気を漂わせる。誰が見ても栄純のこと好きなくせに鈍感な栄純に振り回されている優しい女性である

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで2人は高校どこにするか決まったの?」

 

「俺は…」

 

「俺は凛と同じ高校に行く!!」

 

「おい…」

 

「そんで…俺たちで甲子園に行ってやるぜ!!」

 

「…聞けよ」「もう栄純!」「…あはははは」

 

 

 

俺たちは現在中学3年生…絶賛受験生真っ只中である

 

 

「あ、そう言えば推薦いただいた中に東京の高校もあったわよね?」

 

「ん?あぁ…俺と栄純2人にな。態々東京から足を運んでくれたんだ。」

 

「あのメガネの綺麗な女性でしょ?街中に栄純のおじいちゃんが言いふらしてたわよ」

 

「ぐぬぬぬ…じいちゃんめ…」

 

 

 

 俺と栄純には中学の軟式野球の功績と個人成績それに最近まであった県選抜の記録を加味してもらいいくつかの高校から特待の推薦を貰っていた。

 

 基本的には【甲信越地方】の強豪校からの誘いが多かった。まぁ他にも愛知の強豪校も目にかけてくれていたが。

 

 その中でさっきの会話の中であった東京から来てくれた高校と言うのが

 

 

 

 【東京都立青道高校】である。

 

 

 青道高校と言えば東京都内にある野球の名門として有名でありこと西東京においては100校以上ある中で"三強"とまで言われている高校の一つである。そんな高校から俺と栄純は声をかけてもらったんだ。栄純は『東京なんか…』

って言ってたけど俺としては"特別な思い"がある【青道高校】に非常に惹かれている。設備は完璧だし、実績もある。去年と今年とここ数年は投手力不足がやや課題視されているが打撃なら文句なし都内最強だろう。

 

 

 

 

 

「俺はもう決めてるさ」

 

「…」「え!?」「どこだよ!聞いてないぞ!」

 

「栄純は俺がどこでもついて来てくれるだろ?」

 

「当たり前だ!俺とお前の最強バッテリーで甲子園に行くんだ!」

 

「…あのさ何回も言ってるけど俺高校ではキャッチャーやんないからな」

 

「えぇ!?なんでだよ!今までずっとキャッチャーだったじゃん!!俺のこと嫌いになったのかよ〜!?」

 

「なんでだよ!?あぁ〜もう引っ付くな!…はぁ…元々俺は投手志望なんだよ。ずっと言ってただろうが。…そんでガキの頃にお前とじゃんけんして俺が負けたからキャッチャーやってたんだ」

 

「な、なら!高校ではピッチャーすんのか!?」

 

「…いや」

(投手としての気持ちは当に消え失せた。…目の前で"本物"を見せられちゃあな)

 

「…なら俺の相棒はどうなるんだ!」

 

「そこんとこは心配ないぜ。俺の行く高校には都内でも有数の捕手がいるからな」

 

「はぁ!?」「都内!」「…それって」

 

「あぁ…俺は青道高校に行くぜ」

 

 

 

俺の心ははなから決まっていた。元々どこの高校から声がかかってもしっかり来なかったのが"あの時"声をかけてもらった時からあそこに魅了されているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【回想】

 

 

 

 俺の全ての中学野球としての大会が終了した今俺たち三年生は進路について迷う段階に突入していた。そしてある日の夕刻俺たちのかやっている中学にある一本の連絡が入った。

 

 

「おい夏目〜今度は東京の高校からお前と話したいって連絡が来たぞ〜」

 

「「「おぉ!!」」」

 

「ついに東京の高校にも目をつけられたんだ凛ちゃん!」「あれ栄ちゃんは?」「凛が声かかるってことは栄ちゃんもじゃない?」

 

「後日ご自宅の方にお伺いするそうだからよろしくな。ご両親の方にはこちらから伝えておいたから」

 

「うっす!」

 

 

 

そうして後日俺と両親は居間のリビングルームにて【青道高校】から足を運んでいただいたポニーテールの女性と共に座っていた

 

 

「改めまして本日はこのような時間を設けていただきありがとうございます。私は東京都立青道高校・野球部副部長の高島礼です。」

 

「あ、どうも。夏目凛太郎です」

 

「ええ。と言ってもこちら側はあなたのことを調べさせたいいただいたのだけれど…」

 

「…へぇ。…で、どうでした?」

 

「文句のつけようのないとても中学生とは思えない完成度を誇る選手…それがウチの高校がつけた貴方への評価よ」

 

「…それはそれは流石に褒めすぎでは?」

 

「ふふ…謙虚なのね。しかしこれは決して大袈裟ではないと思っているわ。…打者として中学野球にして通算30本塁打に捕手として盗塁阻止率県内No. 1…貴方の事を中学No. 1捕手として評価しているという高校もあると聞くわ。勿論うちもその中の一つね」

 

「…」

 

「何より貴方と投手の沢村くん…実質経験者2人の状況から登録メンバー10人で県大会決勝まで進んだのは驚愕の一言…そしてそれは貴方の実力が大きく関係していると睨んでいるわ。」

 

「…いや…それは俺じゃなくて栄純が居たからってのが1番大きいと思いますよ」

 

「勿論沢村くんの影響は計り知れないわ。私が思うに彼がエースでチームを引っ張り貴方が主砲にしてチームの精神的支柱で仲間を支える。…とてもじゃないけど中学生に出来る芸等ではないわ。」

 

「もし…もし俺が青道に行くってなったら栄純はどうするんですか?」

 

「…これは後から言うつもりだったんだけど沢村くんにも同様のオファーをさせてもらうつもりよ。…ウチは毎年特待生枠を2人、言い方はあまり良くないけどその下に準特待さらに下に推薦枠の選手をスカウトしているわ。1番上の特待生枠は学費に寮費…学生生活を送る上で有りとあらゆる補助が掛かる。だから毎年2人…限られた人数でウチが今1番欲しいと思えた選手2人にオファーを出している。」

 

「…ありがとうございます。少し考える時間をください。栄純と同じ高校に行くと思うので1人では決めきれなくて」

 

「大丈夫よ。…それに後日沢村くんのご自宅にもお伺いするもの。さらに言っておくともし学風や館内の生活を知りたかったら見学も出来るからいつでも連絡を待っているわ」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ改めて…ご両親お二人も本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。」

 

「「いえいえ!」」

 

「それでは失礼致します」

 

 

 

そう言い残すと高島さんはウチを出て行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で凛と栄純が話しているのを私と若菜は少し離れた後ろから覗いていた。

 

 

「雫はどうするの高校…」

 

「私は決まってるもの」

 

「え?」

 

「それより早く栄純に告白しなさいよ。好きなんでしょ?」

 

「えぇ!!ないない!何言ってんのよ!」

 

「ちょっと!声が大きいって!」

 

 

 

顔を赤くした若菜が大声でリアクションしたせいで危うくこちらを2人が振り向くところであった

 

 

「もう!」

 

「…あはは…ごめんって」

 

「私たちの中で隠し事はなしよ!ていうか何年の付き合いだと思ってるの?今更隠したところで意味ないわよ?」

 

「…うん。そうだね」

 

「それにあの性格じゃあ向こうからは中々期待できないわよ?」

 

「…うん」

 

「栄純…顔は悪くないし運動は見ての通り…このままじゃあ東京に行ったらどこの馬の骨ともわからない女に取られちゃうかも」

 

「っダメ!?」

 

「…うふふ…大丈夫よ若菜」

 

「うぅ〜」

 

「貴方は可愛い。私が保証するわ」

 

「??」

 

「栄純には勿体ないくらいよ!大丈夫大丈夫。それに…」

 

「…それに?」

 

 

 

 

私は顔を若菜に近づけてこう言う

 

 

「…4人で同じ高校行かない?」

 

「っ!?」

 

「流石に東京で一人暮らしだと私の親も許さないかもだけど若菜とルームシェアなら多分いけると思うの」

 

「…ルームシェア」

 

「4人で…私と凛…若菜と栄純…2組のカップルが田舎から一緒に来るなんて素敵じゃない?」

 

「…うん…うんうん!いい。それ最高!」

 

 

 

上の空の若菜はおそらくこれからの出来事を想像したのかニヤニヤしながら頷いている。…本当に可愛いんだから!…まぁ本音は凛の活躍する姿を誰よりも間近で見届けたいって事なんだけどね。

凛のことだから大丈夫だと思うけどやっぱりほら…遠距離って不安じゃない?凛は顔も整ってるし身長も高くて性格も優しい。絶対他の女が寄ってくるに決まってるもの!だから私が1番近くで監視しなきゃ行けないんだから!…でも本当に4人で行けたら楽しいだろうなぁ〜なんて!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の親友は昔から少し変わったやつだった。ガキの頃から知ってるけど俺たちが馬鹿騒ぎしてる中1人すましているような雰囲気を漂わせどこか大人びた空気をいつも纏っていた。初めは少し戸惑ったけど話してみるといい奴だし本当はクールぶってるだけで結構内心は熱いタイプの性格だった。

 

 俺があいつを親友と認めたのは小学生の頃…アイツが急に『栄純!野球やろうぜ!』なんて言い出して学校の用具室からグローブ2つとボールを持ち出してきたのがきっかけだった。

 

 

 それからだった。俺が野球にハマるのは…ただ俺と凛の住んでいるこの町には野球のクラブなんてなくてあるのは二つ隣の町まで行かないとダメだった。そう思った俺と凛は小学生のうちにクラブチームに入ることは諦め中学生になったら野球部に入る事を決めた。

 

 勿論そのために努力も沢山したぜ。まぁ主に凛が考えてくれた練習メニューをひたすらやりこんで週5日学校終わりに2人で野球の練習をする毎日。土曜日は肉体を動かす練習は休みで野球のルールや上手くなるための理解を頭で理解する時間を作った。

 

 そのおかげで俺はメキメキと上達していくのが分かった。ただそんな俺たちに一つの問題が発生した。中学に上がったタイミングで野球部への入部届を顧問の先生に出しに行ったんだが…

 

 

『え?野球部?いや〜あるにはあるけど今部員居ないよ?』

 

 

 そうなのだ。まさかの部員が0人と言う落ちが待っていた。だかこれも仕方のない事。なにせこの町の少子高齢化ときたら止まる事を知らずどんどん学校が閉鎖され今やこの街に中学はここ赤城中学のみ、さらに言えば他の部活もこんなもんだ。

 

 

 だから俺たちの野球部としての最初の練習は部員集めから始まった。と言ってもこれはそこまで苦じゃなかったけどな。俺と凛の住む地域は人が少ないからみんな知り合いなんだ。だから全員に『野球部に入部してくれないか』って説明すると奇跡的に10人集めることに成功した。あ、ちなみに若菜と雫はマネージャーとして加わってくれたぜ!

 

 

 そこからスタートした俺たち赤城中野球部だったが何せ俺と凛以外は野球を見たことある奴すらいなかったから野球のルール説明から入り練習どころではなかった。だから1年の頃は大会には出場せずひたすら基礎練習に励んだ。

 

 そしてさらに一年がたった2年の時春に初めて地域大会に出場し俺が投手で凛が捕手…これは予め決まっていた。なにせ経験者が俺たちしかいないし俺たちは2人とも投手に憧れていたからな。結果はじゃんけんで勝った俺が投手。負けた凛が捕手って形になったんだが一応何かあった時のために2人のお互いのメインポジションの交代は出来るようにしていた。…しかし結果は一回戦敗退。特段強いチームではなかったものの試合自体が初めてのウチは緊張しまくりでエラー連発…ヒットを打たれていないのにエラーの数は7回までで十六個…これは大会記録らしくノーヒットで大敗すると言う大会記録を樹立してしまった。

 

 その後のみんなの顔ったら酷かったな。今にも死にそうな顔して謝ってきたのを覚えてる。…そこからだな。チームが本格的に成長段階に入ったのは。

 

 そして2年の夏俺たちは1.2回戦と大差で勝った。そして3回戦…相手はその年の優勝候補だった。それでも俺たちは勝てると思っていたし実際接戦だった。5回までは俺が相手打線を抑え込み攻撃の方も凛以外は全然打てなかったけど凛はこの日も猛打賞でホームランも一本打っていた。…それでも最終回…1:0で勝っている状況…あとこの回を抑えれば勝利という場面で先頭打者の放ったゴロがまさかのイレギュラーバウンドしエラーの表示、さらにそこからバントで塁を進められここまで2試合を完投してきた疲れがここで出てしまい相手の主砲に対しボールが抜けど真ん中に…結果は逆転のサヨナラホームランで2:1で負けてしまったのだった。

 

 

 

 

 あの時の悔しさは今でも覚えてる。…俺のせいで負けたんだ。…みんや勝つためにやれることの全てをやってくれた。…俺はそれを無駄にしてしまったんだって…流石の俺も数日寝込んじまって練習に参加できなかった。…でも

そんな俺を見兼ねた幼馴染たちが家に押しかけてきて『野球は1人でする競技じゃない』『自惚れるな』『ならこの経験を糧にして次はチームを勝たせるエースになれ』とかキツイ言葉を何個も言われたぜ。でもそのおかげで立ち直った俺たちは再び練習の日々…

 

 

 そして中学ラストの1年間…この年の俺らは3年間の集大成とも言える存在感を放っていた。まずは春の大会で決勝で昨年の夏に負けた優勝候補を下し優勝…勿論赤城中では初の快挙になり俺と凛が表彰された。さらに夏の大会…今までは挑戦者と言う立場から次は優勝候補まで成り上がった赤城中は予選を見事に勝ち抜き決勝リーグ…さらに決勝戦まで駒を進めた。…決勝戦の相手は今年の春にリベンジに成功した俺たちと並び優勝候補に位置付けられている歴史ある名門校…俺たちは再び勝利することに全力を注いだ。…しかし相手の思わぬ策によりそれは叶わなかった。…それは"敬遠"という戦略だった。…ウチは所謂打線は凛任せのワンマンチーム…勿論ここまで練習してきたおかげで上手くはなったがそれでも優勝候補…それも相手のエースは強豪校からも注目されていたような選手だったため凛以外はまともにバットは当てれずそこに凛を敬遠されてしまえば俺たちになすすべはなく俺が7回まで抑えたものの中学野球のルール上延長線で登板は出来なく延長の末俺たち赤城中は敗戦するのであった。

 

 

 これが俺たち赤城中野球部にとって最後の公式戦だった。やり残したことはないしやるべき事をやった。…それでも勝てるか分からないのが勝負の世界…負けたことは勿論悔しかったし課題も見たかった。…けど最後までみんなとやれた事が何よりも嬉しかったんだ。

 

 

 

 

 それから赤城中野球部としての活動は終わったけど俺と凛は長野県選抜っていう県内の選りすぐりの選手だけで選ばれたチームへのオファーが届いた。選抜大会は各都道府県で作られた精鋭達がどの県がNo. 1かを決める大会らしくそれに俺と凛も代表として選ばれたわけである。

 

 結果から言うと県選抜ではそこまで勝ち進むことはできなかった。…監督の方針が継投策だったし1試合丸ごと投げることは出来なかったためリリーフが打たれ敗退してしまった。印象に残った試合?う〜んそうだなぁ〜やっぱあれだな!最後の試合で戦った北海道選抜…特にエースの本郷と4番でキャッチャーの円城は凄かった。本郷は凛にしか打たられてないし何なら2打数1安打1死球と互角だった。円城の方は肩こそ凛には及ばないが動きの滑らかさっていうの?なんていうかスムーズなんだよな。それにバッティングも凄くて俺は1打席しか対戦してないから抑えれたけど後続はみんな打たれてたからな。最後に挨拶した後本郷が凛と俺の前に来て『…上(高校)でケリをつける…必ず甲子園に上がって来い』とか言ってたけどアイツの中では甲子園に進むことは決定事項らしい。

 

 

 

 

 

 

 まぁそんなこんなで濃い3年間だったけど俺にとってかけがえの無い時間だったぜ!みんなの分も俺と凛で東京で暴れてきてやるから応援してくれよな!

 

 

 

 




キャラプロフィール ⚠︎キャラの性能はパワプロ数値して描きます➕能力は高校査定の基準です


名前:夏目凛太郎

身長:178センチ

体重:65キロ

弾道:アーチスト

ミート:72 パワー:78 走力:70 肩力:80 守備力:68 捕球:70




沢村栄純

身長:175センチ

体重:65キロ

球速:138キロ

コントロール:75

スタミナ:70

球種 変化量

カーブ:4

チェンジアップ:3



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