蒼天の軌跡〜『相棒』   作:心ここにあらず

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遅くなりました!ここからはオリジナルストーリー要素強めになると思うので投稿頻度が少し伸びるかも知れないです!


道半ば

 

 

 8月3日

 

 

 夏の大会が終了した俺たち青道高校は…次なる目標、【秋大】に向けて練習を再開していた

 

 

 

 

 

ーーカァァァン!!

 

 

 

 

「もう一丁!!」

 

 

 

ーーカァァァン!!

 

 

 

「どうした内野もう声が出ないか!!」

 

 

「まだまだぁ!」「おしこい!!」

 

 

 

 

 新チームが指導して間もないにも関わらず監督の考案するメニューは初日からハードなモノが多く、この夏休み中は徹底的に基礎づくりに励んでいた。

 

 

 青道レギュラーとしては外野には夏目と白州が、内野には倉持と御幸のセンターラインがいるが内野にいささか不安を抱くものも多いだろう。

 

 

 

 

 

「もう一丁お願いします!」「俺も!」「俺も!」

 

 

 

「…ふっ!」

 

 

 

 と言っても上の世代がいなくなった分新しい世代が台頭してきているのも事実であり特に1年生の成長が著しいものがある。

 

 

 

 

 そしてもう一つ…俺たち青道を破って進んだ稲城実業…彼が再び夢の舞台…甲子園に足を踏み入れたのであった。

 

 

 稲城実業は一回戦、二回戦と投打共に躍動し危なげなく快勝…特に2回戦…愛知の西邦との試合…ドラフト候補の怪物スラッガー・佐野修造対関東No.1サウスポー・成宮鳴との試合は世間が第注目する試合だっただが…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

『三振ーー!!西邦・佐野今日は稲実・成宮の前に4三振に打ち取られています!!』

 

 

 

 互いに実力者同士との対決と思われたこの対決は成宮が佐野を一蹴…欠片も寄せ付けないほどの圧倒劇で力の差をまざまざと見せつける形で稲城実業が勝利を飾った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてあれ以来…俺たち青道高校でも…

 

 

 

 

調整がうまく行っている者…

 

 

 

 

沢村 8回 12奪三振 無四球 1失点

 

降谷 8回 13奪三振 4四球 2失点

 

倉持 8打数 4安打 3盗塁 1四球

 

白州 8打数 5安打 1四球

 

 

 

崩している者

 

 

御幸 8打数 1安打 2併殺 2失策

 

前園 4打数 0安打 

 

金丸 4打数 1安打 

 

 

 

どちらなのか判断がつかない者

 

 

夏目 8打数 2安打 2長打 本塁打0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月20日

 

 

 

 この日、日本で1番強い高校を決める戦いが行われた。

 

 

《稲実実業VS巨摩大藤巻》

 

 

 互いに高レベルの打線を有しながらも勝敗予想としては6:4で稲実有利…これが世間での予想であった。

 

 理由は勿論…この男の存在があるに他ならない

 

 

 

 

『稲城実業マウンドに上がるのは"都のプリンス"成宮鳴!!』

 

 

 

 成宮はここ甲子園に来てからも圧巻の投球を披露…ここまで3試合に先発し23イニングを投げ抜き失点数は僅かに1…関東No.1サウスポーから今では世代No.1投手に足を踏み入れようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか"アイツら"が巨摩大藤巻にいるとはな。知ってたか栄純」

 

 

「…いや…初めて聞いた。」

 

 

 

 

 栄純が食い入るように見つめる先には…

 

 

 

 稲城実業を下し見事、甲子園優勝を果たした巨摩大藤巻の面々…そしてその中心にいる目つきの悪い男…そいつこそが

 

 

"本郷正宗"…中学時代俺と栄純に最後に土をつけた相手であり、俺たちの世代No.1投手の看板を背負っている怪童である。栄純としては甲子園で再会を誓った少しばかり因縁のある男でもある。

 

 

"円城蓮司"…そして代打で出てきて成宮からヒットを放ったコイツも俺たちと同世代の捕手であり、捕手として唯一俺が敵わなかった秀才である。

 

 

 

 やっぱ同じ高校行ってたんだな。こいつら。ま、人のこと言えねぇけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8月28日

 

 

 

 そしてこの日俺たちは再び"奴ら"と再開する事となる。

 

 

 この日俺たちは練習試合のためBグラウンドでアップを行っていた。すると遠くの方からこちらに歩み寄る縦縞のユニフォームを纏った男たち

 

 

 

「よぉ…夏ぶりだな。…お前ら」

 

 

 

「「アンタは!?」」

 

 

 

 

 俺たちに声をかけてきたのは夏予選で俺たちと激闘を繰り広げたダークホース・薬師高校…そしてそのエースを担う男…真田俊平である

 

 

 

「カハハ!ぶっとばぁす!!」

 

 

「あ、雷市」

 

 

「お前は…轟!」

 

 

「カハ!…カハハ!…久しぶりだ」

 

 

「…あぁ…そうだな!雷市!」

 

 

「あの2人仲良いの?」

 

 

「いや俺も初めて知ったんですけど…あっ!そう言えば!」

 

 

 

 名前呼びする2人に困惑する真田と夏目…と思いきや夏目には心当たりがある様子であった。それは夏予選の試合後の話…負けて泣きじゃくる轟に対し話しかけに行く沢村…他のものが整列後互いのベンチに戻る中2人は話し合っていたように見えた。おそらくあの時に何かしらあったんだろうな。

 

 

 

「ていうかお前ら夏休み何勝何敗?」

 

 

「はい?」

 

 

「練習試合だよ練習試合」

 

 

「…あぁ…どうだったかな。14勝4敗とかだと思いますよ」

 

 

「うし!ウチは今日勝てば20連勝!!」

 

 

 

 俺たちは栄純や降谷が投げている時は勝てるが他の面々で色々試している時は割と負けることもあった。と言うより新戦力を試すこともあるのでレギュラーがかならず試合に出ると言うこともないのだ。

 

 

 …それにしても20連勝か…余程調子が良いのか…それとも…それほどまでの強さを身につけてきたのか

 

 

 

「ま!後でな!バッチバチにやり合おうぜ」

 

 

「…はい」

 

 

「ほら雷市行くぞ〜」

 

 

「あ!またな!栄…純!」

 

 

「おう!」

 

 

 

 

 そう言い首根っこを掴まれながら引き摺られていく轟雷市

 

 

 

 

「…んで、いつの間にあんなに仲良くなったんだ?」

 

 

「ん?あぁ、いや仲良くっつうか俺がアイツのことをもっと知りたいと思ったんだ。」

 

 

「…へぇ〜それはまたなんで?」

 

 

「…凛以外では初めてだったからな。…同世代で俺のボールが通用しないかもって思った選手は」

 

 

「…なるほどな」

 

 

 

 

 

 

 去っていく背中を見つめながら俺たちも試合の準備に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーダーはこの通りだ。今日は2試合あるが1戦目の先発は沢村…2戦目の先発は降谷お前に任せる」

 

 

 

「「はい!!」」

 

 

 

「…うむ。川上と川島、金田もリリーフで起用するすもりなのでいつでも行けるように早めから準備をしておいてくれ」

 

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 俺たち青道のオーダーがこれだ

 

 

 

1 遊 倉持

 

2 ニ 小湊

 

3 中 夏目

 

4 捕 御幸

 

5 右 白州

 

6 一 前園

 

7 左 麻生

 

8 三 日笠

 

9 投 沢村

 

 

 

 

 

 これまでの練習試合の成績を加味した結果、上位打線…1〜5番までは基本的には不動のものとなっており変動は見られない。しかし6番から8番まではその日によって人が変わっている感じである。ウチで言えばホットコーナーの一塁手と三塁手に固定メンバーがいない事が些か懸念点ではある。しかしセンターラインに御幸、倉持、それに小湊兄弟の弟、夏目がいることは大きい他ならない。

 

 

 

 

 

 

「夏大ではウチが勝利したがそれはあくまで前のチームでの話だ。…忘れろとまでは言わんがこちら側が余裕を抱けるような立場でもないことを理解しろ。」

 

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴さんにとはお手柔らかにとは言ったけど…お前ら分かってんな!!」

 

 

 

 

 青道ベンチの反対側でも同じく監督を囲み円陣を組んでいる薬師高校

 

 

 

「夏大のツケ…ここで精算してこい!!」

 

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 薬師としては調整試合に来たつもりなどハラハラなく、どちらかというと『お前らの調子を狂わせてやる』が本音であった

 

 

 

 そしてそんな薬師のラインナップはーー

 

 

1 補 秋葉

 

2 ニ 増田

 

3 一 三島

 

4 三 轟

 

5 投 真田

 

6 右 平畠

 

7 中 阿倍

 

8 遊 米原

 

9 左 森山

 

 

 

 上位打線は変わらず1年を主力とし他を2年で固め、夏大では見られなかった名前が多く並んでいた。

 

 

 

 

「真田ぁ!!頼むぜ!お前次第だからな!」

 

 

「プレッシャー掛けてきますねぇ〜」

 

 

「の割にヘラヘラしてんじゃねえか」

 

 

「…夏大の借り返せると思えば…頬が勝手に緩んじゃうんすよ」

 

 

「…はっ!」

(目の奥が全く笑ってねぇんだよお前は…)

 

 

 

 

 表面上では笑顔の真田も心の奥底ではこの日を密かに楽しみにしていた。…自分たちの夏を終わらせた青道に借りを返せるこの日を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習試合の1試合目…先行は薬師高校…そしてマウンド上には沢村が上がった。

 

 

 

 

 

「先頭な沢村!」「打たせてこいよ沢村!」「頼むぞ沢村!」

 

 

 

「…ふぅ」

(夏には散々やられたんだ…次はそうはいかない)

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

 初球、アウトコースにストレート…秋葉は見逃しワンストライク。

 

 2球目、御幸が構えるのはインコースへのストレート…

 

 

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

 

 

「しゃあ!!」

 

「よっしゃあ!!」「しゃあ!センター前!!」

 

 

 

 インコースのストレートを秋葉を上手く腕をたたんでセンター方向に打ち込む…誰もがセンター方向に抜けると思った当たりだが、そこに差し込む人影ーー

 

 

 

 

 

「…簡単には抜かせねぇ!!」

 

 

「倉持先輩!!」「キャプテン!!」

 

 

 

『あ、アウトぉぉ!!』

 

 

 

 

 あわやセンター前という強烈な当たりを倉持は飛び込み捕球する。そして体勢が不自由な状態からとその身体能力で難なく送球し秋葉をアウトにして見せた。

 

 

 

 

「あざっす!倉持先輩!」

 

 

「おう!どんどん打たしてこい!」

 

 

 

(正直今のプレーは大きいな。1人目を出すのと打ち取るのではチームに与える影響も変わってくる)

 

 

 

 

 

 そして

 

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

「しゃあ!二者連続!!」「ナイピー沢村!」「流石だぜ!!」

 

 

 

 勢いに乗った沢村はその後の打者を連続三振に切って落とした。

 

 

 

 

「流石にそう簡単に点は取らせてもらえねぇか」

 

 

「そうですね。やっぱ他のチームとは違いますね〜」

 

 

「頼むぞ真田!3点!…いや2点以内が目安だ!今のお前なら出来んだろ!」

 

 

「言ってくれるっすね〜。一応夏俺打たれまくってるんですけど…」

 

 

「あの時とはお前…ほら、怪我とかしてたし」

 

 

「ま、やれる分はやりますよ。借りを返したい奴もいますし」

 

 

 

 

 

 そう言い残しコチラのエースもマウンドに上がる

 

 

 

 

 

「薬師の先発は真田だ。何人かは夏で実際に対峙したこともあるだろう。勝気な性格をしている投手なだけあってゾーン内…それも懐で勝負を仕掛けてくる投手だ。ならばコチラも奥手にならず初球から打てると思ったボールは打ちに行くぞ!いいな!」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 青道の1番はやはりこの人…

 

 

 

「…はぁ」

(確か薬師のサード…轟。打撃はすげぇけど守備ではちょこちょこやらかしてたよな…とくれば)

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

ーーコツンッ!!

 

 

 

 

 倉持は真田の初球のストレートをサードライン側にセーフティバント…それに遅れて気づいた真田が拾いに行こうとするがーー

 

 

 

「真田先輩!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 秋葉の呼びかけに驚き方を上げると

 

 

 

「カハハッ!」

 

 

「うお!?」 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 

 ボールに向かい突っ込んでくる轟の姿…そして轟はボールを右手で掴み取るとそのまま体を流しながら一塁へ送球する

 

 

 

 

『あ、アウトォォ!!』

 

 

「「「んな!?」」」

 

 

「なんつぅ肩してやがるあの野郎」「守備下手じゃなかったのかよ」「…この短期間で上手くなったのか?」

 

 

 

 

 穴だと決めつけていた轟の好守備、そして何よりチーム1の俊足を誇る倉持ですらアウトにするその強肩に驚きを隠せない青道ナイン

 

 

 

 続く2番の小湊は…

 

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィン!!

 

 

 

 

 

「ナイバッチ春っち!」「よく打った小湊!!」

 

 

 

 ストレートとカットボールを見逃して0ー2からのバッティングカウント、3球目に投じたシュートボールを強振し打球はライト前に転がっていく。

 

 

 

「1番嫌な場面でランナー出しちまったぜ」

 

 

 

 ここで迎えるバッターは青道が誇る天才打者・夏目凛太郎。夏の大会では一打席まで打ち取られるものの最後に夏目がお返しの本塁打を放っている両者の攻防。

 

 

 

「…ま、どっちみちコイツを抑えなきゃ上になんていけねぇ…初っ端から激アツだぜ」

 

 

「…ふぅ…」

 

 

 

 薬師バッテリーが選んだ初球はーー

 

 

 

 

ーードパァァン!!

 

 

 

「しゃあ!ナイスボール!」「ナイボー!真田先輩!」

 

 

 

 

 インコースへのカットボール…これを夏目は見逃し1ストライク。

 

 

 そして2球目、今度はアウトコースにシュートボール。ここも見送った夏目であるがこのボールはボールの判定になる。

 

 

 

(振ってこないな…)

 

 

 

(……なんだ…なにかおかしい)

 

 

 

 

 この時点で違和感に気づいていたのは真田だけであった。

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

 

「「「うぉぉ!!」」」

 

 

 

「いったか!?」「どっちだ!」「微妙なラインだ!?」

 

 

 

 3球目に投じたアウトコースへのシュートボールを夏目は一閃。振り抜かれたバットは見事にボールを捉え、打球はレフト上空へ…飛距離は十分、あとはファールゾーンに切れるのかどうなのみ…判定はーー

 

 

 

 

 

『ふぁ、ファールボール!!』

 

 

 

「だぁ!おしぃ!」「あと数センチ!!」

 

 

 

「……なんだ…いや…でも」

 

 

 

 打球は僅かに切れてファールボールに、しかし安堵より先に真田が感じたのは夏目への違和感。

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

「最後は見逃し三振!」「どうした!夏目が見逃し三振なんて初めて見たぞ!」「甘すぎて逆に振り遅れたのか!」「…大丈夫かあいつ!」

 

 

 

 

 

 続く4番の御幸も外野フライに打ち取りスリーアウト。

 

 

 

 

「「「真田先輩!!」」」

 

 

「やり返しましましたね真田先輩!」

 

 

「真田ぁぁ!!流石だぜぇ!!」

 

 

「…」

 

 

「…?どうした?」

 

 

 

 

 相手の主砲を抑え無失点に 帰ってきたエースに声をかけるものの、当人の真田本人はどこか納得のいった表情ではなかった。

 

 

 

「…アイツ…なんか変なんですよ」

 

 

「?どう言うことだ?」

 

 

「…いや…なんつうか…調子崩してんのか知んないんすけど…前はどこ投げても打たれるようなそんな雰囲気を感じたんです。…けど今は…」

 

 

「いや…いやいやお前一個前に特大のファール打たれてたじゃねぇか!?」

 

 

「…いや、まぁそれを言われちゃあ、何も言えないんすけど…本来のアイツなら…」

 

 

「…まぁ奴さんがどんだけ調子崩そうとこっちには何も関係ねぇことだわな。…なんなら今のうちに潰しとけや真田ぁ!」

(ただでさえ、"雷市以上の打者に成宮クラスの投手"がいるチームなんだ…片方だけでも削っておけば来年以降ウチが勝てるチャンスは大幅に上がるぜ)

 

 

 

 

 

 

 青道最強のスラッガーの不調…間違いなく青道攻撃陣の破壊力が半減すると言っても過言ではない状態であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

「んな!?」

 

 

「カハッ!カハハ!」

 

 

 

 二回表…轟と沢村の今日の初対戦は…初球のインコース高めへのボール球のストレートを轟が強振する。通常打ってもファールにならないコースだが轟はそのセンスと身体能力でボールへの対応と腕の畳み方をカバーする。打球はライト・白州の頭上を超えていきフェンスダイレクトに当たるツーベース。

 

 

 

「おーけーおーけ!コースは悪くなかったぞ沢村!今のは向こうを褒めるしかない」

 

 

「はい!…でもやっぱ悔しいっすね。」

 

 

「…」

(通常なら本塁打にならないだけでもラッキー…そう言うクラスの打者なんだけど…)

 

 

 

 

 轟には予期せぬコースを打たれた沢村であったが後続を2者連続でカーブで三振…ラストバッターをチェンジアップで詰まらせこの回も無失点で終える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

「…ふぅ」

 

 

「オーライオーライ!!」

 

 

「ナイピー真田さん!!」「嘘だろ…夏目が二打席連続で打ち取られるなんて」「初めて見たな」

 

 

 

 

 4回裏の青道の攻撃…先頭バッターは夏目…その3球目アウトコースに逃げるシュートボールを振り抜いた辺りはセンター後方まで伸びるもののフェンス手前で失速しセンターフライに打ち取られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 …くそっ…初めての感覚だぜ…

 

 …身体的な疲れもない…体のキレも悪くない…ボールも見えている

 

 

 …なのに

 

 

 …打てる気配がまるでしねぇ

 

 

 "絶対的感覚"…成宮にさえ通じたあの感覚が俺の中から消え去ったかのように感じなくなっちまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか両チームともに強打を売りにしたチームがここまでの投手戦になるとはな…」

 

 

「いやいや薬師は…ていうか轟は打ってるから打線がってことはないだろ!」

 

 

「だよなぁ…問題は青道…というか夏目にあるのは間違いないか」

 

 

「本当だぜ…夏目の3打席連続凡退なんて夏の大会でもなかったんじゃねぇか!?」

 

 

 

 

 

 戦っている選手だけでなくこの試合を見にきている父兄らファンの人たちにまで気づかれるほどこの試合は異様なものと化していた。

 

 

 互いに強打を売りにした超攻撃型チーム属性を持ち今夏も行く他のチームをその打力で破壊してきた。

 

 

 しかし目の前で行われている今日のゲームは

 

 

 互いのエースが相手チームの打力を完封し零封を重ねているまさに投手戦と言えるものであったからだ。

 

 

 そしてこの試合を"異様たらしめる"もう一つが

 

 

 

 この試合で1番注目されていた両者共にすでに世代最強クラスの打者と目される夏目凛太郎と轟雷市の打席である。

 

 

 夏の大会ではベスト8で破れるものの打者部門の大会成績では打点で首位…打率、本塁打共に2位に位置付けた怪物スラッガー・轟雷市

 

 

 ベスト16で楊、ベスト8で真田、ベスト4で真木、そして…決勝で成宮と悉くチームのエースをそのバットで粉砕してきた男こそ轟を抑え大会成績、打率・本塁打共に二冠を成し遂げた天才スラッガー・夏目凛太郎

 

 

 

 この両者がここまでこの試合で対照的な成績を残しているのだ。

 

 

 

 現在6回が終了して

 

 

 轟が3打数2安打2長打で得点こそあげれていないが、こと個人では沢村相手に打ち勝っている。

 

 

 そして

 

 

 

 夏目…現在3打数0安打2三振と完全にブレーキが掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

「…夏目くん」

 

 

 

 ベンチで頭にタオルをかけ項垂れる夏目を心配そうに小湊が見つめる

 

 

 

「ははは!大丈夫だってハルっち!」

 

 

「…大丈夫って…本当に?」

 

 

「あぁ!…確かにここまで打てない凛は初めて見るけどな。…でも」

 

 

「…でも?」

 

 

「このまま黙ってるような男が"チームを甲子園に導く"なんて出来るはずがないからな」

 

 

「…」

 

 

 

 あまりに楽観的…それに単純…しかし強固な信頼関係を結んでいる沢村と夏目の前に小湊は驚きを隠せない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …何をやっているんだ俺は

 

 

 …情けねぇぜ…あの日口にした誓いの言葉

 

 

 『俺がこの手でこのチームを甲子園に導く』

 

 

 …その誓いすら叶えることが出来ず…先輩たちを敗退させた

 

 

 …"同格だと思っていた相棒"は一度は敗北を味わうものの、今もなお前に進み続け成長を続ける怪物だった。

 

 

 …そして天才だと信じ続けた己は…ひどく脆い…そして弱い…"凡才"だった

 

 

 …くそ…こんな事実認めてたまるかよ…俺は…

 

 

 …俺は…何なんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7回の裏…青道高校の攻撃…9番の沢村からの攻撃は、沢村が三振に打ち取れるものの1番の倉持がこの日2本目のヒットで出塁する。そして2番の小湊がボールを転がしアウトになるもののランナーを二塁まで進める。

 

 

 

 そして打席に入ったのはーー

 

 

 

 

「「「夏目ぇぇ!!」」」

 

 

「頼む!お前しかいねぇ!」「打てぇ!夏目ぇ!」「一発かませ!」

 

 

 

 

 この日、3凡退で完璧に封じ込まれている3番・夏目である

 

 

 

 夏目はぬぐいくれないほどの閉塞感と懊悩に包まれながら打席に入る。

 

 

 

 …俺に打てるのか…

 

 

 …そもそも…俺なんかがこの場所に立っていいのか…

 

 

 …先輩たちの夏を終わらせた俺が

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

「しゃあぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 初球…インコースを抉るかのように真田はカットボールを捩じ込む。

 

 

 そして2球目…

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 ストレートが外角に外れボール…そして3球目

 

 

 

 

 

ーーカキィィィン!!

 

 

 

 

 インコースからのシュートボールに対し何とか反応し当てるもののファールボール

 

 

 

 

「…はぁ…はぁ…くそっ…っ!?」

 

 

 

 ふと夏目はマウンド上にいる真田と目が合う。

 

 

 

「…」

(打席で何考えていやがる…こっちは本気で勝ちに来てんだ…やる気がねぇなら"そこ"に立つんじゃねぇ!!)

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

「っぶね!!」

 

 

 

 

 インコース高め…それも頭部付近にストレートを投げ込まれる。驚きのあまり夏目は尻餅をつく。

 

 

 

 

「「「危ねぇなおい!」」」

 

 

 

 マウンド上で帽子を取る真田に青道ベンチから怒号が飛び交う。

 

 

 

 

「…すいません。靴紐が…タイムをお願いします」

 

 

 

 夏目はタイムを取る

 

 

 

 …青道に入学した頃の俺…いや夏大の頃の俺には…誰でも打てるような感覚があった

 

 

 しかし…それでも届かなかった…"あの頂には"

 

 

 そんな頃だ…俺の"絶対的感覚"が失われ…次第に打席に立つのが怖くなったのは…

 

 

 …でも俺の"相棒"は…栄純はそんな俺のことなどお構いなしに自らの道を突き進み新たなステージへ昇ろうとしている

 

 

 まるで『"相棒"なら心配いらないだろ』と言わんばかりに

 

 

 

 そんな奴と対等に語り合うには俺も登られねばならない…最高峰ではなく"未到の打撃"へ

 

 これまで積み上げてきたものを全てぶっ壊すような、そんな発想が必要なのかも知れない。

 

 

 …まさに命を賭ける程度じゃ辿り着けない領域

 

 

 

 思うように体が動かない?バットが上手く出てこない?足りないのは技術か、筋力か、覚悟か、器か、その全てか…どれでもないものか

 

 

 

 今ここで打てなかったら俺は終わる…ここで引いたら生涯"相棒"には追いつけねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ?」

(…なんだ今更…さっきとえらい違いじゃねぇか)

 

 

 

 

 いち早くその違いに気づいたのはやはり対峙している真田であった。何が違うのかと問われれば言葉にするのは難しいかも知れない。…ただ…生物としての本能とでも言うのか…この男をいち早く殺せと…警報が鳴り響く。

 

 

 

 

「うぉぉらぁ!!」

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 アウトコースにストレート…これで追い込んだ。…あとは渾身のボールをミットに捩じ込むだけ

 

 

 

 

(これで終わりだ!!)

 

 

 

 

 投じられた白球は、左打者の胸元へ鋭く食い込む。

 インコース――いや、体をえぐる軌道のなか終盤でわずかに滑るように切れるカットボール。

 

 

 

 

 それに対し夏目は踏み込んだ前足が地面を噛み、腰が静かに、しかし確実に回り始める。腕ではなく身体の中心――体幹から連動する回転を見せる。

 

 

 胸元に迫るボールを、体を開かず懐の奥まで引き込む。

 

 

 そして

 

 

 溜め込んだ力が一気に解放された。

 

 

 インサイドの更に奥の軌道に合わせる為に夏目は左手を軸にしインパクトの寸前で右手を離す…そしてボールとの接触の瞬間…片手という劣勢を腰の回転で上乗せしマイナスの部分を消し去ったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーバギャァァァァァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 ボールの行方はーー

 

 

 

 

ーーガシャンッ!!

 

 

 

 

「っくそ!」

 

 

 

「「「うぉぉ!!」」」

 

 

「回れ回れ!」「ナイスだ夏目!」「よく打ったぞ!」「信じてたけどな俺は!!」

 

 

 

 

 

 夏目の放った打球はライトフェンス直撃のツーベースとなりその間にランナーの倉持が生還し先制点となる得点を叩き出すことに成功したのであった。

 

 

 もっとも夏目としては会心の一発にも関わらずフェンスすら超えなかった事に納得がいかず塁上で不機嫌そうに眉を寄せているのだが…

 

 

 

 そしてこの試合…沢村が7回まで投げきり被安打4の無失点に抑えきり、その後川上への継投で逃げ切りの作戦に投じたのだが…9回に回ってきた三島、轟、真田の3連続長打でサヨナラを許してしまい俺たち青道高校は薬師との練習試合1戦目を敗戦からスタートしてしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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