蒼天の軌跡〜『相棒』   作:心ここにあらず

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代表

 

 

 

 あれから練習試合は中止になり向こうが故意ではないと理解しているからこそ尚のこと後味の悪い最後の練習試合になってしまった。

 

 そして後日…いよいよ夏の大会のトーナメントの組み合わせが発表された。

 

 

 

「稲実と当たるのは決勝か」

 

「うわ…市大とは準々決勝かよ」

 

 

 

 もれなく強豪全てに勝たないと甲子園は見えてこねぇっとことか…

 

 

「ふっ…上等!」

 

「だな!!」

 

 

 

 監督が室内練習場に入ってくる

 

 

「みんなも聞いてると思うが…昨日のデットボールで丹波の顎の骨にはヒビが入っている。幸い骨折には至らず脳の方にも影響は無いそうだが…予選にはおそらく間に合わないだろう」

 

「「「…」」」

 

 

「その間…沢村…降谷…そして川上…お前たち3人は出番が多くなるだろう。その間は三年生が中心となり後輩たちをバックアップしてやって欲しい。…頼んだぞ」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

「クリス!結城!伊佐敷はすまないが少し残ってくれ!それ以外は解散!」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 残された3人以外の選手たちは皆この場から退場していく。

 

 

 

「…お前たちに残ってもらったわけは2つほどある。そしてそれについての意見を求めたい」

 

「「「っ!?」」」

 

「…まずは一つ目だがエースナンバー…これを丹波に渡すべきか沢村に渡すべきかだ。…勿論ここ数ヶ月の成績を加味すれば沢村の方がエースとしては相応しい成績を収めているだろう。…だか丹波には実際にエースナンバーを背負ったことのある経験がある。…沢村がエースナンバーを背負った時…ましてやこの大舞台だ。どうなるかは俺にも予想がつかない。…ただ丹波は昨年その責務を全うしていると言う実績がある。…かと言ってここ数ヶ月の成績がエースに相応しいかと言えば素直に頷けはしないだろう。…お前たちの意見を聞きたい」

 

「…俺はーー」

 

 

 

 監督の話を聞き1番初めに話し始めたのはクリスだ

 

 

 

 

「ーー俺はエースナンバーは丹波に渡すべきだと考えています。…なぜならエースというのは最もグラウンドで注目を浴び続ける輝かしいポジションと同時にプレッシャーや負担も想像を絶するモノだと考えています。」

 

「…沢村はそれに耐えきれないと」

 

「もしかしたら耐えられるのかもしれません。…ただいずれアイツは青道を…いや、もしかしたら東京を代表する投手にまで上り詰めるほどの才気を秘めています。…それが潰されてしまうのでは無いかと思うと…」

 

「…」

 

「俺も同じ意見です」「俺もです」

 

 

 

 先に語り始めたのは伊佐敷だ

 

 

 

「俺も初めはいくら特待生とは言え去年まで中坊だったガキを戦力としてみることには抵抗がありました。…ただアイツの努力を…クリスと2人で自主練に励んでいる姿や一緒にノックを受けている時など一緒に過ごしてみて本当に凄いやつなんだなと思いました。…ただそれは丹波にも言えることです。…俺は共に2年半過ごしてきた丹波に背負って欲しいです」

 

 

「…」

 

 

 

 並々ならぬ想いを語った伊佐敷…それを聞いて主将の結城はーー

 

 

「…俺も丹波に背負って貰いたいです。…でも予選を通り抜け本戦で不甲斐ないピッチングをしようものなら俺は…"甲子園では他の者が付けるべき"だと考えています」

 

「「「!!!」」」

 

「…勿論…丹波の状態も十分理解しているつもりです。…ただエースというのは…俺の中のエースというものはその圧倒的な実力で相手を薙ぎ倒し絶望を与えるものの称号…そのようなイメージがあるんです。…それが怪我のためとは言え不甲斐ないピッチングをしようものならそれは青道の看板に泥を塗ることにも等しい…厳しいことだとは分かっていますがそれほどまでにエースというものは重い称号だと認識しています」

 

「…分かった。…お前たちもありがとう」

 

「「「…いえ!」」」

 

「あのちなみにもう一つというのは?」

 

「…あぁ…それは…」

 

「…夏目の打順の件…ですよね」

 

「!…分かっていたのか」

 

「はい。…自分でもアイツほどの打力を持った選手が6番にいるのは不思議なくらいでしたから。…本来ならクリーンアップを任されてもおかしく無い打力。けど座っているのが俺たち3年だから色々考えてくれていたんですよね」

 

「…」

 

「…俺…どこでも打つっすよ…」

 

「!…伊佐敷…」

 

「そりゃ勿論クリーンアップを奪われるのは悔しいさ。悔しく無いわけなんてねぇ…けどそれで少しでもチームの勝率が上がるならそれに越したことはねぇ…だから遠慮なくアイツをクリーンアップで使ってやってください!お願いします!」

 

「「…伊佐敷…」」

 

「…お前の覚悟は十分伝わった。…クリーンアップを担ってきた誇りもな。…それを踏まえてコチラも考える。何番になるにせよお前の打力はうちの打線には必要不可欠だ。本番でも頼むぞ…伊佐敷」

 

「っ…はい!」

 

「お前たちもわざわざすまないな。練習に戻ってくれ」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしていよいよ大会に挑む代表者20名が発表される時がやってきた。

 

 

 

「今から背番号を渡す。呼ばれた者から順に取りに来い。まずは背番号1」

 

 

 

 隣の栄純を見やる…栄純は祈るように下を向いていた。やるべきことは全てやった。あとは己が選ばれることを祈るのみーー

 

 

 

「丹波光一郎!!」

 

「っはい!!」

 

「…っ…」

 

 

 選ばれたのは3年生の丹波先輩だった。…選ばれなかった栄純は下唇を噛み締め力の限り拳を握りしめている。

 

 励ましの言葉なんて軽々しくかけれない…それほどまでに栄純はエースに拘ってきた男だから…その気持ちを本当の意味で理解したことなどどこまで行っても野手の俺にはないのだから

 

 

 そして次々と名前が呼ばれていきーー

 

 

 

「背番号7!夏目凛太郎!!」

 

「はい!!」

 

 

 俺の名前が呼ばれた。…俺の前任を担っていた3年の坂井先輩は悔しそうに下を向いている。…これが代表に選ばれるということか。…思えば俺たちはこういう大人数の中から選抜されるという経験は初めてだ。

 

 

 

「背番号11…沢村栄純!!」

 

 

「っ!はい!」

 

 

「…エースに選ばれなかったとは言えお前に対する期待は変わらない。チームを引っ張るその投球に期待しているぞ」

 

「はい!お任せください!」

 

 

 

 

背番号1 丹波光一郎

 

背番号2 御幸一也

 

背番号3 結城哲也

 

背番号4 小湊亮介

 

背番号5 増子透

 

背番号6 倉持洋一

 

背番号7 夏目凛太郎

 

背番号8 伊佐敷純

 

背番号9 白州健二郎

 

背番号10 滝川・クリス・優

 

背番号11 沢村栄純

 

背番号12 宮内啓介

 

背番号13 門田将明

 

背番号14 楠木文哉

 

背番号15 日笠昭二

 

背番号16 遠藤直樹

 

背番号17 山﨑邦夫

 

背番号18 川上憲文

 

背番号19 小湊春市

 

背番号20 降谷暁

 

 

 

 以上20名が青道の代表として選ばれたメンバーだ。今年は一年が4人も指名されており尚且つ主戦力として活躍しているなど異例の年だろう。

 

 

「皆んなも分かっていると思うが高校野球に次はない…日々の努力も流してきた汗や涙も全ては'この夏のため"にーー

 

 

 

…よし…ならいつものやつをやっておけ結城」

 

 

「はい!!」

 

 

 

 俺たちは選ばれたメンバーで円陣を組む。思えばこれで関東大会を含んで2回目だけど未だに慣れないな。

 

 

 

「俺たちは誰だーー」

 

 

『王者 青道!!』

 

 

「誰よりも汗を流したのはーー」

 

 

『青道!!』

 

 

「誰よりも涙を流したのはーー」

 

 

『青道!!』

 

 

「誰よりも野球を愛しているのはーー」

 

 

『青道!!』

 

 

「戦う準備は出来ているかぁぁ!!」

 

 

『おぉぉ!!』

 

 

「我が校の誇りを胸に狙うは全国制覇のみーーいくぞぉぉぉ!!」

 

 

『おぉぉ!!』

 

 

 

 

 夏に向けての準備はこれを持って全てやり切った…後は本番…これまで練習してきた全てを試合にぶつけるだけ…選ばれなかった仲間の為にも…

 

 

 

 ーーこれを持って日本一熱い夏が東京都にて開催される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより第89回全国高校野球選手権東東京大会を開催いたします』

 

 

 

 大会運営より挨拶が交わされこれより正式に大会として始動が開始する。…それより熱いな…平均気温が40℃高い今夏…例年よりも厳しい環境での戦いを問われる可能性が高い

 

 

 

 東西合わせて250校以上…僅か3週間足らずの期間で選ばられる高校はたったの2校のみーー名門復活を懸かけた俺たち青道高校の夏がいよいよ始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初戦の相手は米門西校です。」

 

 

 一回戦を見てきた先輩たちが試合後の報告とうちの初戦の対戦相手の分析や対策を教えてくれる

 

 

 向こうのエースは左のオーバースローで球速はMAX130がいいとこ変化球はカーブとスライダーの二つのみで変化量・キレ共に並…正直うちの打線に投げれるレベルの投手ではない。

 

 向こうのチームの特徴としては投打共に平均的だがその鍛えられた守備力でカバーし少ないチャンスをバントやエンドランでモノにし接戦を取りに行く…そういうチームだ

 

 

 

「それから…先発は…」

 

「「…」」

 

「沢村!…お前でいく」

 

「っ!はい!必ずやこの沢村この任務やり遂げてみせます!」

 

「…期待している」

 

 

 

 あれ…俺の打順…伊佐敷先輩

 

 

 発表された明日の打順…いつもなら俺は6.7番のはずだがそこに俺の名前はなく探していくと俺の名前が書かれた番号は3番…本来なら伊佐敷先輩が座っている打順だ。そして伊佐敷先輩は6番に置かれている

 

 

 

「向こうは先に一勝をあげ勢いに乗っているはずだ。油断だけは絶対出来ん。どんな相手だろうと全力で挑め…そうすれば自ずと勝利はついてくる。いいな」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 ミーティングの後それぞれがこの部屋を出ていく中俺は伊佐敷先輩を呼び止める

 

 

「ーーあ?お前が3番に置かれた理由だぁ?なんだお前そりゃあ俺への当てつけかおい」

 

「いや!んなわけないじゃないですか!だってあそこはーー」

 

「監督がお前の方が相応しいと見込んだ…ただそれだけのことだ」

 

「…」

 

「それに…舐めんじゃねぇぞ?お前がそこに相応しくないと思えば俺がすぐさま大活躍して奪い返してやる。…いいな?」

 

「…はい」

 

 

 

 全く…かっこいい先輩たちだよ…これじゃあ説得する暇すら与えてもらえないじゃないか…いいぜ…その期待に応える為にも俺は俺の出来ることを全力で全うする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《府中市民球場》

 

 

 俺たち青道高校の初戦…相手は米門高校…予定では左のオーバースローのエースが先発してくるとの報告だったがーー

 

 

 

ーーパシッ!!

 

 

「…アンダースロー」

 

 

 いきなりコチラの出鼻を挫く作戦か…確かに予定とは違うスタートになりそうだが…

 

 

 

ーーカキィン!!

 

 

 

「っくそ!」

 

 

 倉持先輩はあまりの球の遅さ…それに一度浮かび上がってから消えるように沈む独特の軌道に翻弄されショートゴロに倒れてしまった。

 

 

「…ふーん…なかなか厄介じゃん」

 

 

 2番の小湊先輩は得意の選球眼とバットコントロールで際どいところや打ちにくいところは的確にカットしていく。…しかし思いのほか相手が打ちずらいコースに投げてくるのか最終的にボールを捉えるもののサードライナーに終わってしまった

 

 

 

 

 そして続く打者はーー

 

 

 

『3番…レフト…夏目くん…3番…レフト…夏目くん』

 

 

「「凛!!」」「夏目ぇぇ!!」「青道の力見せつけろ!!」

 

 

 俺は観客席の最前列からコチラを応援する雫と若菜の姿を目に収める。2人とも心配そうにコチラを見つめているな。ふとベンチの方を振り返ると…ふっ…心配はしてねぇってか…分かってんじゃねぇか栄純。

 

 

 一応関東大会に出たことあるが高校野球は夏からだろ…そういう意味では俺たちの高校野球デビュー戦だ。…この程度の投手に躓いているわけにはいかねぇよな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《米門高校 監督 千葉順一》

 

 

「ぶわっはっは!!見たか青道高校!!この俺が考えた秘策を!!」

 

 

 監督の千葉順一は青道高校が予めうちのエースを想定してくることを予定してこの為にアンダースローの10番を育成していたのだった

 

 

「無様に1.2番を討ち取ったと思えば次は一年生だと!!…天下の青道もヤキが回ったもんだ!!おい南平!そんな一年生など軽くいなしてーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

 

 

「しま………な、なんだと!?」

 

 

 

 いくら名門だとしても一年生バッターなど恐るるに足らんと言ったその場からその一年生打者が捉えた打球はセンターバックスクリーンに弾丸ライナーで突き刺さったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うぉぉぉぉ!!!」」」

 

「「きゃぁぁぁぁ!!」」

 

「ナイバッチじゃねぇか!」「ナイバッチ凛!」「…流石だな」

 

 

 

 俺の捉えた打球は低空のまま正面に立ち竦むバックスクリーン中段へと突き刺さった。…ボールとしてはおそらく慎重に入ったアウトコース低め…いくら見たことのない軌道だろうとあの程度の速度やキレ・球威のボールに打ち負ける俺ではない。何を投げてきても迎撃できる準備はしていたがこの程度で抑えられると思われていたのなら心外なんだよ

 

 

 

ーーカキィィィィィィィン!!

 

 

「「「うぉぉぉ!!」」」

 

 

「2者連続!!」「青道やべぇ!」「今年も打の青道は健在だぞ!」

 

 

 

 どうやら結城先輩も俺に続いてホームランを打ったらしい。…まぁそりゃそうなるよな。俺に打ててあの人に打てない道理はない…言っちゃあ悪いがこんな地区予選の投手が抑えれるレベルの打者じゃないんだよあの人は。…なにせ俺が高校に入って唯一"今は"敵わないかもって思った人なんだからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沢村!打たせてこいよ!」「緊張してんのか!」「深呼吸しろ!深呼吸!」

 

 

 

 結局あれからコチラはもう一点追加し3:0で一回の攻撃を終え次はコチラの守備の時間…マウンドに上がるのは栄純…一年生で初登板ということもあり先輩たちはみんな気にしてくれてる

 

 

「栄純!」

 

「ん??」

 

「分かってんだろうな?俺は見せつけたぞ…次はお前の番だ。…赤城中のエースが舐められてんじゃねぇぞ。…皆んなを連れていくんだからな、あの場所に」

 

「…おう。任せとけ!」

 

「ん」

 

「ん!」

 

 

 

 そう言って俺はグラブを合わせた後守備位置に着く。…隣で冷やかしてくる伊佐敷先輩が少しうざいけどアイツにはこんくらい発破掛けとかないとな。みんなの想いとか信頼とかそういうの纏めて力にするタイプの選手だから

 

 

 

 

 そして数球投げ込みが終わった後審判からプレイの合図がかかる。果たして青道バッテリーが選んだ初球はーー

 

 

 

ーードパァァァァァァン!!

 

 

「んな!?」

(こいつ本当に一年かよ!!とんでもなく伸びてきやがる)

 

 

 

 栄純は初球をインコースにストレートで見逃しのストライクを取り一年だと舐めていた相手打者は直球のキレと球威に驚く。ーーそしてその後もストレートで空振りを奪うと3球目ーー

 

 

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァン!!

 

 

「シャアァァァァ!!」

 

 

「全球ストレートかよ!?」

 

 

「「「うぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

「アイツ本当に一年かよ!」「今年青道にいい選手入ったって本当だったんだな!」「アイツとさっきホームラン打ったやつ同じ中学らしいぞ!」「うっそ!マジかよ!」

 

 

 

 

 最後もストレートで三振を奪った栄純…後ろの電光掲示板には【140キロ】の記載がされており栄純の持つ最速タイの球速だ。しかも栄純が尻上がりなタイプなのを見越すとおそらくこの試合…もしくはこの夏時点で最速は更新するだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァン!!

 

 

 

「「「やべぇぇ!!」」」

 

 

「ストレートだけで三つ三振取りやがったぞ!」「どんだけキレてるんだ!」「140でそこまで当たらないもんか!」「バカか!そもそもアイツは一年生だぞ!左の140でも全国で見れば希少だろうが!」

 

 

 

 

 栄純はその後も2.3番をストレートのみで三振に仕留め見事3者連続三球三振の完璧な立ち上がりを見せてくれた。…かませとは言ったものの俺のホームランのインパクトを軽く超えてきやがったなコイツめ…

 

 

 

「飛ばしすぎだ馬鹿者」

 

「え!?」

 

「…まぁいい。…いいかお前たち…俺たちは甲子園優勝のみを目指している。この程度で苦戦している暇はない。…この回で決めてこい」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 そしてそこからは先頭の伊佐敷先輩がツーベースで出塁し得点圏打率チーム一位の御幸先輩が狙い澄ました一撃でホームへ返す。さらに白州先輩も続き栄純が、バントで送るなど青道の打撃陣が猛攻を仕掛ける。

 

 たまらず相手監督はエースにスイッチさせるが…

 

 

「ヒャハッ!」

 

「…甘いね」

 

「栄純に比べれば劣化でしかない」

 

 

 この程度の投手で青道打線が止まることはなく寧ろアンダースローへの苦渋をここで晴らすかのように打線が火を吹く。

 

 

 そして結果としてこの試合終わってみれば17対0の5回コールドゲーム…俺としては3打数3安打2本塁打の大爆発…栄純も3回無安打無失点の完封…スターター全員がヒットを放つ猛攻…4回には川上先輩…5回には降谷と継投も問題ないことが証明された。…さらに極め付けは

 

 

『青道高校…選手の交代をお知らせします。レフト夏目くんに変わりまして滝川くん』

 

 

 なんと俺の代わりに代打でクリス先輩が出場したのだ。皆が待ち侘びたその姿に3年生たちはどこか微笑ましいような仕草を見せていた。そしてーー

 

 

 

ーーバギャァァァァァァン!!

 

 

 

「うお!」「クリス先輩!!」

 

 

 

 クリス先輩は初球のインコース高めのボールを綺麗に腕をたたみながらフルスイング…打球はライトフェンスを大きく超え場外弾となったのだった。正直結城先輩並み…いや一打席で判断するのはどうかと思うがそれほど圧巻の打球だった……というか元々怪我する前はクリーンアップを打ってたくらいなんだから当たり前か。…とりあえずお前が打ったわけじゃないんだからドヤ顔やめろ栄純

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3回戦

 

 

《青道ーー村田東》

 

 

 

 俺たちの次の対戦相手はまたもや特徴のない中堅校である。この日は降谷の調子が良すぎて全く打たれる気がしなかった。

 

 

 

ーードパァァァァァァン!!

 

 

 

「おぉ〜まさにバズーカ。これ外野まで飛んでこないかもな」

 

 

 単純な真っ直ぐというのは早いだけで脅威的な物になる。特に降谷の直球は最速148キロ、さらに球威も威力抜群で当たっても中々外野まで飛んでこないのだ。この日も3回のここまででヒット一本の無失点…まぁ四球を3回で3つは多すぎだけどな。

 

 かくゆう俺もここまで2の2で2長打を放ってる。あの桐生戦からどうやら調子が良すぎて怖い。まぁ後ろの人が一緒くらい打ってるから微塵も満足できないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこの試合をスタンドから見ている男がいた。背丈は180もないほどだが細身ながら衣服越しでも鍛えているのが分かるほど無駄のない筋肉。…さらには特徴的なのがその眼鏡…冷徹そうなおもたちでグラウンドにいる…さらにいえばマウンドに立つ青色のユニフォームの男を見つめていた

 

 

「ふん…くだらない投手だ。ペース配分もなく力任せ…自分が憧れたこの国の野球はもっと緻密で高度なスポーツであったはずだ」

 

 

 男には'この男"がなぜそれほど騒がれているのかが分からなかった。ただ速い球を投げれるだけの平凡な投手…制球力も無ければ変化球もない‥駆け引きなんて夢のまた夢だろう。…そしてそれはこの男のポリシーからもっとも遠いスタイルであった

 

 

「おい舜!もう見なくていいのか!」

 

「あの一年の球マジで速ぇぞ!ほとんどのアウトは三振で奪ってる」

 

「ふん…ただの速い球を投げる投手ならいくらでも攻略法はある」

 

 

 

 

 このチームの警戒すべき点は2つーー

 

 

(警戒すべきはあの"左投手"と強力打線…さらに最も警戒すべきはあの3番と4番…俺が奴らを抑えれるかが試合の鍵を握ると言っても過言ではない…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7月23日 AM9:30分

 

 

 俺たちと秋川学園の試合日程の日がやってきた。

 

 

「戦い方はミーティング通り、サインの確認を絶対忘れるな」

 

「「「はい!!」」」

 

「水分はこまめに取り、ベンチにいる人間は選手をサポートしてやってほしい。チーム全員で目の前の勝利を掴みにいくぞ!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

 秋川学園…昨年までなら1.2回戦で敗退を喫するような所謂弱小校のレッテルを貼られている高校なのだがある1人の男の加入により名門校とも渡り合えるのではないかと言われるまでに成長を遂げたチームである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー昨晩ーー

 

 

 

「明日の秋川戦なんだけどまずは要注意な選手が1人いる。…名前は楊 舜臣、台湾からの留学生でこのチームの投打の柱です。右の本格派のような投球スタイルではあるもののMAXは140には届いていないもののキレのいいストレートをコースの四隅にきっちりと決めてくることからついたあだ名は【精密機械】」

 

「「「…精密機器」」」

 

「3回戦でも9回まで投げきり被安打5の無失点の完封勝利…塁に出してもクレバーな投球で一切隙を与えることなくピンチを脱していました。」

 

「「「…」」」

 

「打線についてはそこまで強さはないもののやはり4番に座っている彼…楊が要注意となります。投手をしているだけあって打撃センスも中々のものを持っているのでこの男の前にランナーを出しているのかどうかが秋川打線を抑えるキーポイントとなるのは間違いないでしょう」

 

「…うむ…ここまでの情報ですでに相手が油断ならない強敵であるという事はもう分かっているだろう。…だがお前たちならこの好投手相手でも打ち込める…俺はそう信じている」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お!出てきたぞ!青道高校!」「御幸ぃぃ!!」「夏目くん!!」

 

 

 俺たちが入り口からベンチ入りするとスタジアムから応援の声が飛び交う。やはり前の試合でも感じていたが名門校だけあってチアやブラスバンドさらには父兄や高校ファンなどこの時点で結構客席は埋まっている気がする。…そして反対に秋川学園は勉学の方に力は入れているもののスポーツに対してはそれほどだそうでベンチ上の応援席も空席が目立っている

 

 

 ちなみにこの試合俺たちが後行で向こうからの攻撃でスタートする。先日から明らかに体調があまり良くない降谷を御幸先輩が心配そうに声をかけている。…本当に大丈夫なのか?

 

 

 しかしそんな俺の心配をよそに試合がいよいよ開幕する

 

 

 

 

『整列!!』

 

 

『いくぞぉぉぉ!!!』

 

 

「「「おぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

 

《青道高校ーー秋川学園 試合開始》

 

 

 

 

 そして真っ新なマウンドに上がるのはこの男ーー1年生ながら最速148キロを誇る剛腕・降谷暁である

 

 

 

『プレイボール!!』

 

 

 

 審判から合図がかかりいよいよ試合が開始される。マウンド上の降谷が大きく振りかぶって一球目を投じる

 

 

 

 

 

ーードォォォォォォォン!!!

 

 

 

「うぉぉぉ!」「今日もえげつない!何キロ出てんだ!」「これで本当に一年かよ!!」

 

 

 初球…御幸先輩が構えたのは真ん中高めのコース。そのコースに降谷の豪速球がミットに突き刺さる。…ほう…あの降谷の豪速球を見た後でもまだ長くバットを構えるか。もしかしてこいつら…

 

 

 

 そしてその後も3球続けて降谷の直球が投じられるもの全て見送られ四球を出してしまう。…ありゃりゃ…降谷の直球は威力はあるんだけどコントロールはアバウトなので基本的にボールとストライクの判別が分かりやすいのだ。…にしても一球も降らないってのは…ビビって見逃しただけなのか…それとも余程目が慣れているのか

 

 

 

 続く2番打者もバットを長く持ったまま打席に立った。…こいつが何を考えているのかはわからないがそもそもストライクが入らないんじゃどうしようもない。

 

 

 

『ボールフォア!!』

 

 

 結局この打者に対しても一球もストライクが入らず歩かせてしまった。…御幸先輩が妙に落ち着いているのが気がかりだがこのままだと先手を取られかねないな…

 

 

 

『ストライクッ!!』

 

 

 と俺が心配している間に今度はストライクを取り出した。どうやらスプリットをうまいこと駆使して投げた結果直球も枠内に入れることに成功したらしい。…まぁ全部ど真ん中だけども…

 

 

 3番打者を三振に仕留め降谷がノリ始めた所で次のバッターは4番の楊である。…ランナーは1.2塁…単打でもホームへ送球だな。

 

 こいつ…降谷ストレートに初見では合わせてきやがった。…降谷も楊が持つプレッシャーに気づいたのか先ほどまで制御できてきたボールが浮ついてきやがった。…嫌な予感がするぜ

 

 

 

 数分後ーーその予感は的中することになる

 

 

 

 

ーーカキィィィィィィィィン!!

 

 

 

 楊は降谷の投げたスプリットを強振…多少浮いてしまったのもありほぼ真ん中のボールを俺のいるレフトへライナー気味の打球を飛ばしてきた

 

 

 

「レフトォォォ!!」

 

 

 

 栄純が叫んでいるのが聞こえる。…くそ…判断のしづらい打球だ。…滑ったら間に合うかも知れないがまだ初回、ここでギャンブルをする価値はない

 

 

 

「バックホーム!!」

 

 

 

 俺はランナーが三塁ベースを周りそうな光景を目にしつつ打球に対しタイミングを取りワンバウンドし跳ねてくるボールをグラブで取る。…そして三塁ベースを回ったランナーを刺すべくホームへ矢のような送球を送る

 

 

「…んん!!」

 

 

「なに!?」

 

 

『アウトォォォ!!!』

 

 

 

 ランナーは俺の肩を舐めていたのか送球を見て驚愕しホームでタッチアウトをくらっていた。…おそらく俺が一年でデータが知られてなかった故の走塁だったのだろう。

 

 

 何はともあれこれでツーアウトだな。…これで少しは落ち着いたのか降谷は次の打者を内野フライに打ち取りスリーアウト…まさかウチが初回からこんなピンチを背負うとはな

 

 

「ナイス判断だこのやろー!」

 

「あざっす!伊佐敷先輩!…それにしても向こうのエース」

 

「あぁ…アイツだけ飛び抜けてやがるな。…ありゃあ強豪校にいても主力になれる実力だ」

 

「あれで本業は投手ですからね」

 

「だな。お前は初回から回ってくんだからちゃんと見とけよ」

 

「…うす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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