神殺しのデミゴット   作:ののじん

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第8話 影の受け渡し

 宿を出る前に、俺たちは一度だけ腹を入れた。

 野菜のスープ。焼いた肉。固いパン。水。

 湯気が立つ匂いが、胸の奥の冷えをほどいていく。

 

 店の中は夕方の匂いに変わりかけていて、油の気配が薄くなっていた。代わりに、人の声が増える。笑い声。呼び込み。椅子を引く音。

 夕方が近い。

 

 ヘルミーナ様は、落ち着いた手つきで匙を動かした。

 急いでいるのに、急がない。

 その静けさが、逆に“決まっている”と感じさせる。

 

 護衛は会話をしない。

 食べながら視線だけを動かし、入口と窓、客の手元を拾っている。

 食事の場ですら仕事が抜けないのか、抜かないのか。たぶん後者だ。

 

 俺はパンを噛み切って、水を飲んだ。

 腹に温かいものが落ちると、頭の隅で鳴っていた警戒の音が少しだけ整う。

 空腹のまま張り込むのは、良くない。森でも街でも、それは同じだ。

 

 食べ終えると、護衛が小さく頷いた。

 無言の合図。出る。

 

 宿の外へ出た瞬間、空気が変わった。

 光が斜めで、影が長い。

 人の流れが、昼より一定の方向を持っている。帰る人間、集まる人間。仕事を終えた顔と、これから仕事を始める顔が、同じ通りをすれ違っていく。

 

 ──まだいる。

 

 けど、距離が遠い。

 遠いまま、夕方の場所へ誘導されている気がした。

 

 小広場の手前で、護衛が立ち止まらずに言った。

 

「ここからは、各自の位置へ散る。……目を合わせるな。合図だけで動く」

「分かった」

 

 ヘルミーナ様が小さく頷いた。

 その仕草だけで、今の言葉が“指示”だと伝わる。

 

 俺は通りの端へ寄り、広場の出入口と路地が見通せる位置を選んだ。

 入口が2つ。路地が3本。

 荷車が入るなら、ここだ。

 

 小広場は、まだ“普通”だった。

 露店が並び、買い物帰りの人間が足を止める。子どもが走る。犬が匂いを嗅ぐ。

 普通の夕方に見える。見えるだけだ。

 

 俺は視線を散らしながら、待つ。

 待つ時に一点を見ると、逆に目立つ。

 見るべきは“全体”だ。

 

 護衛の気配が、広場の向こうで動いた。

 ヘルミーナ様の影が、人の流れの中で一度だけ止まり、また流れに戻る。

 目を合わせない。合図だけ。

 

 風が吹く。

 どこかで布がはためき、串焼きの匂いが一瞬だけ濃くなった。

 

 遠くで鈴の音が一度だけ鳴った気がした。

 気のせいじゃない。

 露店の男が顔を上げ、通りの端の客が同じ方向へ視線を寄せた。

 

 ──来る。

 

 俺は息を整えて、足の位置を決めた。

 抜かない。

 でも、抜ける。

 

 影が動く。

 荷車の軋む音が、石畳を伝って近づいてきた。

 

 荷車は1台じゃなかった。

 少し離れて、もう1台。

 そして歩く人間が増える。露店の客のふりをしているが、足が止まらない連中が混じっている。

 

 ──本番だ。

 

 俺は視線を上げずに、腰の刀の位置を確かめた。

 手は触れない。触れた瞬間に、周囲の空気が変わる。

 

 荷車が広場へ入る。

 その瞬間、護衛の咳が一度だけ聞こえた。

 

 合図。

 

 俺の背中に、街のざわめきとは別の音が重なる。

 鈴の音が、もう一度だけ鳴った。

 

 鳴った場所は、荷車じゃない。

 広場の外れ。露店の陰。人が立ち止まる“理由”がある場所。

 

 視線を上げないまま、俺は周辺の動きを拾う。

 荷車の御者は、目線を動かさない。通り慣れた顔。

 荷台の横に並ぶ男が2人。腕の力が抜けていない。旅人の荷運びじゃない。

 

 広場の中央に、露店がひとつ寄っていた。

 果物と布を並べた小さな台。客が2人。買うふり。

 その2人の足が、揃いすぎている。

 

 ──“待ってる”。

 

 護衛の気配が広場の向こうで一度だけ止まった。

 止まって、すぐに流れへ戻る。

 目を合わせない。合図だけ。

 

 荷車が露店の脇で止まり、御者が短く言った。

 

「着いたぞ」

 

 声は普通。

 けど、その“普通”の中に硬さがある。周囲に聞かせる声じゃない。相手にだけ届けばいい声。

 

 露店の客の片方が、ゆっくり台から離れた。

 財布を出すふりをして、露店の裏へ回る。

 その動きが、流れに逆らっていない。だから目立たない。

 

 荷台の男が、布を一枚だけめくった。

 中から出たのは、箱だった。小さい。手のひら2つ分。

 木箱を布で包み、さらに紐で縛ってある。

 

 俺の胸の奥が、一段だけ冷える。

 “印”かもしれない。

 だが、断定はできない。断定した瞬間に、動きが雑になる。

 

 露店の裏へ回った男が、箱を受け取ろうとして手を止めた。

 周囲を見る。見るというより、感じている。

 目線は鋭いが、顔は笑っている。街の人間の顔だ。

 

 ──警戒してる。

 

 護衛の咳が、もう一度……鳴らない。

 まだ動くな、ということだ。

 

 俺は足を動かさない。

 代わりに、逃げ道を数える。

 

 露店の裏の路地。

 広場の外周。

 二階の窓から降りるなら、あの建物。

 荷車が切り返すなら、入口の角度は──。

 

 受け取り役の男が、荷台の男へ何かを差し出した。

 硬貨じゃない。紙だ。封蝋が押されている。

 証文か、通行札か。どちらにしても、組織の匂いがする。

 

 荷台の男が紙を受け取り、箱を渡した。

 指先が触れる。触れた瞬間に、鈴の音が小さく鳴った。

 

 ……鈴?

 

 男の腰。

 布の下で小さな金具が揺れた。飾りじゃない。合図の道具だ。

 鳴らすために付けている。

 

 広場の空気が、一瞬だけ締まる。

 誰も騒がない。誰も叫ばない。

 それなのに、俺だけが「今、線が繋がった」と分かる。

 

 受け取り役の男は、箱を抱えたまま露店の客へ戻るふりをして、歩き出した。

 歩く方向が、広場の出口じゃない。路地だ。

 

 ──逃げ道の方へ行く。

 

 護衛の咳が、ひとつ。

 合図。今度は“動く”だ。

 

 俺は息を吸って、足の裏に力を入れた。

 抜かない。

 でも、抜ける。

 

 まず、俺が動くべきは追うことじゃない。

 逃げ道の“蓋”だ。

 

 俺は広場の端を回り、路地の出口側へ向かって歩き出した。走らない。

 走れば、周囲がこちらを見る。

 見られたら、相手は走る。走られたら、街が騒ぐ。

 

 路地の出口。

 そこに立つだけでいい。

 遠目でも、俺の装備は十分に“邪魔”になる。

 

 受け取り役の男が路地へ入る。

 その背中に、尾行の男が遅れて続いた。

 そして、そのさらに後ろに──味方の目が滑り込む。

 

 二重になった。

 

 護衛が人波の中で位置を変えた気配がする。

 ヘルミーナ様の影は、まだ広場に残っている。

 動かない。動けば狙われる。動かないのが一番強い。

 

 俺は路地の出口で立ち止まり、周囲の通行人を装って呼吸を整えた。

 視線は前じゃない。影だ。足だ。反射だ。

 

 来る。

 来たら、止める。

 止める方法は、刃じゃない。

 

 箱を抱えた男の足音が、石畳を叩いて近づいてきた。

 

 早足。だが走らない。

 走れば目立つ。目立てば揉め事になる。

 街の人間は、その境界を知っている。

 

 路地の出口に立つ俺を見て、男の歩幅が一瞬だけ乱れた。

 表情は崩さない。崩さないまま、視線だけが左右へ逃げる。

 逃げ道を探している。

 

 その後ろに、もう1つ影がある。

 尾行の男だ。さっきまで遠かった距離が、ここでは近い。

 同じ線に乗った瞬間だけ、近づける。

 

 俺は刀に触れない。

 触れないまま、半歩だけ前へ出た。

 

 路地の出口は狭い。

 俺ひとりが“そこにいる”だけで、通り抜けるには角度が要る。

 

 男は俺を避けるふりをして、箱を抱え直した。

 抱え直す動作が、余計だ。

 武器があるなら、先に手を空ける。

 でも箱を手放せない。──目的は箱だ。

 

 俺は声を荒げずに言った。

 

「急いでるなら、道を選べ」

 

 言葉は短い。意味は曖昧。

 止めるとも言わない。通すとも言わない。

 相手に判断を押し付ける。

 

 男の口角が僅かに動いた。笑ったつもりの顔だ。

 

「通行の邪魔をする気かい」

 

「してない。立ってるだけだ」

 

 事実だけを返す。

 それでも相手には圧になる。

 この装備で、路地の出口に立っている時点で、普通じゃない。

 

 男の視線が俺の腰に落ちる。刀じゃない。鞘だ。

 抜かれていないことを確認して、少しだけ息を吐いた。

 

 ──抜けば終わると思ってる。

 だから抜かない。抜かせない。

 

 男が一歩、横へずれる。

 通り抜ける角度を作ろうとする。

 俺は同じだけずれる。鏡みたいに。

 

 通せない。

 でも、押し返してはいない。

 揉め事にならない、ギリギリの線。

 

 背後で、布が擦れる音。

 尾行の男が近づいた。

 俺と男の間に、さらに空気を詰めようとしてくる。

 

 護衛の咳が、遠くで一度だけ聞こえた。

 “動く”の合図。

 こっちに近づいてくるはずだが、まだ距離がある。

 

 男が低く言った。

 

「……箱は関係ないだろ。旅人」

 

 旅人。

 そう呼ぶのは、俺を“外”に置きたいからだ。

 外の人間は、黙って見送れという意味。

 

 俺は首だけで否定した。

 

「関係ないなら、焦るな」

 

 男の目が一瞬だけ鋭くなる。

 言葉が刺さった。

 つまり関係がある。

 

 男は箱を抱えたまま、体を少しだけ傾けた。

 肩で押してくる──その直前の角度。

 

 俺は踏み込まない。

 代わりに、足先をひねって位置を変えた。

 男の進路を潰しつつ、自分はぶつからない。

 

 押されない。押さない。

 ただ、通れない。

 

 男の背後で、尾行の男が舌打ちをした。

 小さい音。だが、この距離なら聞こえる。

 

 ──同じ側だ。

 こいつらは別々の顔をして、同じ線にいる。

 

 男が息を吸い、声の調子を変えた。

 

「……金なら払う。通してくれ」

 

 払う。

 ここで金が出るなら、やっぱり中身は重要だ。

 

 俺は首を振った。

 

「いらない」

「なら何が欲しい」

「道を変えろ」

 

 短い。

 断定的。

 相手に“通れない現実”だけを渡す。

 

 男の頬が引きつった。

 次の瞬間、視線が俺の肩越しへ飛んだ。

 

 誰かが来た。

 護衛だ。

 

 人波の中から、護衛が一人、出てくる。

 走らない。急がない。

 それでも空気が変わる。仕事の目が増えた。

 

 護衛が男へ言った。

 

「その箱を置け。話はそれからだ」

 

 男は笑った。

 

「なんの権限があって?」

「権限は要らない。……ここで騒ぎになる方が困るのはお前だ」

 

 男の笑いが止まる。

 周囲の通行人が、何かを感じて足を速めた。

 “揉め事の匂い”だけは、誰でも嗅ぎ分ける。

 

 男は箱を抱え直し、視線を逃がした。

 逃がした先──路地の奥。

 まだ別の出口がある。そこへ回るつもりだ。

 

 護衛が短く言った。

 

「逃がすな」

 

 俺は頷いた。

 

「分かった」

 

 俺は一歩だけ引いた。

 引いて、道を空ける……ふりをする。

 男がその隙に踏み込んだ瞬間、俺は横へ滑った。

 

 進路の前に、もう一度立つ。

 

 男が小さく息を呑んだ。

 そして初めて、走った。

 

 走った瞬間、街の空気が変わる。

 ざわめきが一段上がる。

 誰かが「何だ」と声を上げる。

 

 ──まずい。

 

 護衛がすぐに判断した。

 

「離れろ。外へ出すな。路地の中で止める」

 

 俺は走らない。

 走らないまま、最短の角を取る。

 “追う”じゃない。“先に出る”。

 

 路地の奥で、箱を抱えた男が角を曲がる。

 その先に、別の出口──小さな抜け道が見えた。

 

 俺は息を吸って、足を踏み替えた。

 抜かない。

 でも、次は──抜くかもしれない。

 

 逃げ道の先で、影がひとつ立ち上がった。

 待っていた人間だ。

 

 路地の中に、もう一段、罠がある。

 

 立ち上がった影は、路地の出口を背にしていた。

 通りへ抜ける細い口。そこを塞ぐように、ゆっくりと前へ出る。

 

 箱を抱えた男が、足を止める。

 止めた瞬間、肩が跳ねた。

 ──仲間じゃない。想定外だ。

 

 影の男は、外套の前を少しだけ開けた。

 中に見えたのは短い刃。短剣。

 脅すための見せ方じゃない。使うための見せ方だ。

 

 箱を抱えた男が低く吐き捨てる。

 

「……違う。今じゃない」

 

 違う。

 これで確定した。受け渡しは“終わっていない”。

 箱を抱えた男は運び役。運び先に渡す段階がまだある。

 そして、今出てきた影は──運び先でもない。

 

 俺は一拍だけ呼吸を整えた。

 この状況、街の喧嘩じゃ済まない。

 

 影の男が、笑いもしないまま言う。

 

「その箱。置いていけ」

 

 声が淡々としている。

 淡々としている奴ほど、刃を出すのが早い。

 

 箱を抱えた男が、視線を左右へ逃がす。

 俺と、追ってきた護衛と、出口の男。

 三方向。挟まれた。

 

 護衛が俺の横で止まり、低く言った。

 

「……予定にない」

「見れば分かる」

 

 俺が短く返すと、護衛は即座に判断した。

 

「箱は奪われるな。だが騒ぐな。……最悪、箱の中身が本命とは限らない」

 

 それもそうだ。

 この街では、偽物も本物も“箱”に入る。

 けど、今は箱を守らないと、ヘルミーナ様の線が途切れる。

 

 箱を抱えた男が、影の男へ言った。

 

「俺は届ける役だ。お前の相手じゃ──」

 

 影の男の短剣が、黙らせるみたいに一閃した。

 空を切っただけ。

 でも距離が近い。次は当たる。

 

 箱を抱えた男が、反射で後ろへ下がる。

 その瞬間に、箱が少しだけ傾いた。

 

 俺の中のスイッチが、無音で入った。

 

 ──落とすな。

 ──奪われるな。

 

 俺は刀に触れない。触れないまま、前へ出た。

 

「そこまでだ」

 

 言葉は短い。

 命令じゃない。宣告だ。

 

 影の男の視線が俺に移る。

 腰の刀を見て、それから俺の目を見る。

 判断している。抜けるか、抜かないか。

 

 俺は抜かない。

 代わりに、距離を殺す。

 

 影の男が短剣を構え直した瞬間、俺は一歩だけ踏み込んで、手首の角度を潰した。

 斬らない。叩かない。

 ただ、刃が“こちらを向けない”角度へ押し流す。

 

 短剣が壁に当たり、カン、と乾いた音がした。

 

 ──音が出た。まずい。

 

 俺はすぐに力を抜き、影の男の視線を外へ向けないよう、体の位置だけで塞いだ。

 見物が増える前に終わらせる。

 

 影の男は歯を見せた。

 

「……旅人が、何のつもりだ」

「通り道だ。邪魔だ」

 

 俺はそれだけ言った。

 言い訳は要らない。相手も要らない。

 

 背後で、箱を抱えた男が息を呑む。

 逃げる気配がある。

 逃げられると、線が切れる。

 

 護衛が即座に動いた。

 箱を抱えた男の肩へ手を伸ばし、掴む──寸前で、掴まない。

 掴めば揉め事になる。だから、前へ立って進路を塞ぐだけ。

 

「戻れ」

 

 護衛の声は低い。

 命令ではないのに、逆らえない温度がある。

 

 箱を抱えた男が、震える声で言った。

 

「……俺は、ただの運びだ。殺される」

 

 俺は一拍だけ視線をそちらへ流した。

 殺される。

 この街では、その言葉が冗談じゃない。

 

 影の男が、短剣をもう一度振り上げた。

 今度は俺じゃない。箱へ向けて。

 

 俺は迷わず、鞘を前へ出した。

 抜かない。

 鞘で受ける。

 

 ガン、と鈍い音。

 短剣が鞘に当たり、弾かれる。

 

 衝撃が手首まで突き上げたのに、鞘を見ても──傷がない。擦れ跡すら見えない。

 

 影の男の目が一瞬だけ揺れる。

 

「……硬いな」

 

 護衛が、間髪入れずに低く言った。

 

「引け。今なら逃がしてやる」

 

 影の男は笑わない。

 代わりに、指を鳴らした。

 

 その音に反応して、路地の奥の影がもう一つ動く。

 増えた。

 最初から一人じゃない。

 

 俺は息を吐いた。

 ここで長引けば、広場が騒ぐ。

 騒げば、ヘルミーナ様の位置も危ない。

 

 護衛が言う。

 

「……引くぞ。ここは離脱する」

「分かった」

 

 ここで追いすぎない。

 

 俺は鞘で短剣を押さえ、足を一歩だけずらした。

 相手の視界を塞ぐ。

 その一瞬に、護衛が箱を抱えた男へ低く命じる。

 

「来い。今だ」

 

 箱を抱えた男が、反射で動いた。

 動いた瞬間、影の男が舌打ちする。

 

 俺はその舌打ちを聞きながら、刀の柄に指をかけた。

 抜かない。

 でも、次の一手で抜く覚悟だけは作る。

 

 ──この街で、抜く時は。

 たぶん、最後の一線を越える時だ。

 

 路地の入口の向こうで、広場のざわめきが少しだけ大きくなった。

 誰かがこちらを覗き始めた気配がする。

 

 時間がない。

 

 護衛が短く言った。

 

「撤退。宿へ戻る。……箱は確保した」

 

 箱を抱えた男の腕の中で、紐が軋んだ。

 その音が、やけに現実だった。




アマテラス「くく……赤雨よ。抜かぬまま止めおったか。
ようやったの。街では“勝つ”より“騒がせぬ”方が難しいでな。
……それにしても鞘が無傷? 当然じゃ。
妾の童が、そんな矮小な刃で擦り傷など貰うものか。
じゃが油断はするでない。守れるのは刃と鞘まで――おぬしの判断だけは、己で守れ」
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