宿へ戻る道は、さっきより短く感じた。
実際に短いわけじゃない。頭が先へ行っているだけだ。
箱を抱えた男は、護衛の間に挟まれて歩く。
走らせない。押し倒さない。
ただ、逃げ道だけを消す。
男の呼吸は浅い。
箱の紐を握る指が白い。
守っているというより、手放せないように縋っている。
俺は周囲を見た。
右手は動かさない。代わりに、左手だけを柄に添える。抜くためじゃない。手を遊ばせないための癖だ。杖代わりみたいに、そこに置いておくと呼吸が落ち着く。
追手が来るなら、背後。
来ないなら、先回り。
街は森と違って、道が多い。だから敵も多い。
宿の看板が見えたところで、俺はようやく息を吐いた。
街の灯りが増える時間帯。人は多い。耳も多い。
その中で“無事に戻れた”だけで、ひとつ勝った気がした。
箱を抱えた男は、護衛に挟まれて扉をくぐる。
走らせない。押し倒さない。
ただ、逃げ道だけを消す。
店主がこちらを見て、一瞬だけ目を見開いた。
すぐに表情を整える。商売人の顔だ。
でも手元が忙しい。椅子を引く。客に目配せする。余計なことを聞かせないための動き。
護衛が短く言った。
「部屋を1つ追加で借りる。鍵も」
「……あ、ああ。分かった」
店主は素早く鍵を2つ、布で包んで差し出した。
視線は箱へ行きそうになるのを、必死に押し戻している。
見たくない。見たら巻き込まれる。そういう顔。
ヘルミーナ様は声を落とした。
「侍女は?」
「上だ。別室で待機」
護衛の返事は端的だ。
それで十分だった。今は“混ぜない”のが正解だ。
俺は箱を抱えた男を見た。
顔色が悪い。息が浅い。
逃げたいのに、逃げた先がないと分かっている目だ。
「……頼む。俺は、ただの運びだ。殺される」
男が掠れ声で言った。
護衛が答える前に、俺は左手を柄に添えた。
抜くためじゃない。手を遊ばせない癖だ。
杖代わりみたいに、そこに置いておくと呼吸が落ち着く。
「殺されない場所にいる間に、吐け」
言葉は冷たく聞こえる。
でも、今のこいつにはそれくらいでちょうどいい。
護衛が男を促す。
「上だ」
階段を上がる。
木の軋む音が、やけに大きい。
宿の廊下は狭い。狭いから、守りやすい。逃げにくい。
追加で借りた部屋に男を入れる。
護衛のひとりが中へ入り、もうひとりが外に立つ。
扉が閉まる。鍵が回る。
隔離。
これでまず“線”は切れない。
ヘルミーナ様が、静かに言った。
「ここから先は、急ぎません。急げば崩れます」
「分かった」
俺は短く返し、廊下の端へ視線を流した。
気配は、ない。
けど、ないから安心はできない。街の敵は、見えない時ほど近い。
護衛が言う。
「聞き取りは俺がやる。お前は――外だ。廊下と階段。誰も近づけるな」
「了解」
俺は頷いて、壁際に立った。
背中に木の冷たさ。
左手は柄に添えたまま。
抜かない。
でも、抜ける。
扉の向こうから、男の荒い呼吸が聞こえた。
次に、護衛の低い声。質問が始まる。
夜が近い。
灯りの色が、窓の外で濃くなっていく。
この宿で、今夜は眠れないかもしれない。
そう思っても、俺は目を逸らさなかった。
扉の向こうから、男の荒い呼吸が聞こえた。
次に、護衛の低い声。質問が始まる。
俺は廊下に立ったまま、音を拾いすぎないようにした。
聞けば頭が動く。動けば視線が遅れる。
今の俺の役は、耳じゃない。目だ。
階段の下から、食堂の笑い声が上がってくる。
それが余計に現実だった。
こっちは箱ひとつで命のやり取りをしているのに、下では酒が回り、皿が空になる。
不意に、扉の向こうで椅子が軋んだ。
男が身じろぎした音。
続いて、護衛の声が少しだけ鋭くなる。
「誰に渡す予定だった」
返事がない。
沈黙。息だけが荒い。
護衛が続ける。
「“知らない”は通らん。お前は箱を受け取った。持って運んだ。……受け取り場所と渡し場所は言える」
男の声が、やっと漏れた。
「……言ったら、俺は……」
「言わなくても、殺されると言ったな」
護衛の言葉は短い。
慰めじゃない。現実の整理だ。
男が、喉を鳴らした。
「……北の小広場から、路地を3つ。裏手の倉庫だ。番号は……壁に白い線がある。二本。そこだ」
倉庫。
目に見える目印。
こういうのは現場の連中の符丁だ。読み書きより早い。
護衛が、すぐ次を重ねた。
「倉庫の中は」
「俺は入らない。外で渡すだけだ。……中のやつは、顔を見せない」
「誰の手だ」
「……金鈴亭の、使いだって言われた。俺は、そう聞いただけだ」
“金鈴亭”。
やっぱりそこに繋がる。
廊下の空気が、少しだけ冷える。
この街で名前が出た時点で、相手も同じだけ動く可能性がある。
護衛が一拍置いて、言った。
「箱の中身は知っているか」
男が、息を詰めた。
「……知らない。知らないって。開けたら殺すって言われた。俺は、持てって――」
言葉が崩れる。
震えが、伝染するみたいに床へ落ちる。
護衛が落ち着いた声に戻した。
「いい。なら今ここで確認する」
鍵の音。
護衛が扉を開ける気配がした。
次の瞬間、扉が僅かに開き、護衛が顔だけを出した。
「セキサメ。中へ」
俺は一歩で入った。
部屋は狭い。椅子が1つ。小さな机。灯りの皿。
そして中央に、箱を抱えた男。
男の目が、俺の腰の刀へ行って、すぐ逸れる。
怖いのは当然だ。俺だって、自分が怖い時がある。
護衛が机の上へ箱を置かせた。
男の手が離れた瞬間、肩が落ちる。
重さだけじゃない。責任が抜けた顔だ。
護衛が紐に手をかけ、ヘルミーナ様を見た。
「確認します」
ヘルミーナ様は頷く。
「お願いします。手早く」
護衛が紐を解く。
ほどく指先に迷いがない。
結び目は固い。だが固いからこそ、開けた痕跡も残る。
布が外れる。
木箱の蓋に、封蝋が押されていた。
俺には紋は分からない。
でも、ヘルミーナ様の目が一瞬だけ止まった。
止まって、息がわずかに浅くなる。
表情は変えない。変えないまま、指先だけが硬くなる。
――本物だ。
そう言い切る言葉は、まだない。
でも、あの反応が答えだった。
護衛が封蝋を割る。
割る音は小さい。
それでも俺の中では、やけに大きい。
蓋が開く。
中にあったのは、布に包まれた小さなもの。
護衛が布を解き、掌に乗せる。
印。
紋が刻まれた、重い塊。
ヘルミーナ様はそれを見て、ほんの少しだけ目を伏せた。
勝った顔じゃない。安心した顔でもない。
ただ、ようやく“戻った”という沈んだ静けさ。
「……間違いありません」
声は落ち着いている。ですますの丁寧さも崩れない。
けれど、言葉の重さが違った。
男が震える声で叫ぶ。
「……だから、俺は関係ないって言ってる! 俺は知らなかった! 知らなかったんだ!」
護衛が淡々と言った。
「知らないなら、生きる方へ動け。今からでも遅くない」
男は泣きそうな顔で、首を振った。
「遅い……。見られた。俺はもう……」
ヘルミーナ様が男を見る。
「あなたの罪は、ここで決めません。ですが、あなたが助かりたいなら、助かる手段を提示してください」
優しくはない。
でも、切り捨てもない。
逃げ道を“取引”として置く声だ。
男の唇が震える。
「……倉庫。あそこに渡せば終わりだった。けど、今夜……今夜、取りに来る。印が戻らないって分かったら、必ず」
護衛の目が細くなる。
「今夜、誰が来る」
男は、喉の奥で言葉を噛んでから吐いた。
「……兵みたいなやつらだ。腕に、同じ印をつけてた。俺みたいな運びじゃなくて、ちゃんとした……」
“ちゃんとした”。
つまり、暴力の質が違う。
ヘルミーナ様が、印を包み直しながら言った。
「では、今夜は宿を変えます。ここには留まりません」
護衛が即座に頷く。
「賛成だ。……印は隠す。運び役は連れていくか、置くか」
視線がヘルミーナ様に集まる。
決裁の時間。
ヘルミーナ様は一拍だけ考え、静かに言った。
「連れていきます。置けば口封じされます。こちらに置いても危険は増えますが……増えるなら、こちらで管理します」
護衛が短く返す。
「了解」
俺は左手を柄に添えたまま、扉の外へ視線を投げた。
宿の廊下は静かだ。
静かすぎる。
夜は、もう始まっている。
ヘルミーナ様が言う。
「セキサメさん。印は取り戻しました。ですが、ここからが本番です。……守れますか」
俺は頷いた。
「守る」
言葉は短い。
でも、今はそれでいい。
印は戻った。
だから相手は、次に“取りに来る”。
この街の夜は、森の夜よりずっと騒がしい。
なのに、刃の気配だけは静かに近づいてくる。
護衛が素早く段取りを組んだ。
宿を変える――それは“逃げる”じゃない。位置をずらす。相手の手順を崩す。
「店主には金を払う。口止めはしない。……余計な誓約は逆に目立つ」
護衛の判断は淡々としている。
俺は頷いた。余計な言葉を重ねない。
ヘルミーナ様は印を布で包み直し、さらに小さな革袋へ入れた。
そして、それを自分の胸元ではなく、護衛へ渡した。
「私が持てば狙われます。持つなら、守れる人が持ってください」
護衛が受け取り、衣服の内側へ収める。
「了解」
箱を抱えていた男――運び役は、椅子の上で縮こまっていた。
目線は床。肩が小刻みに震えている。
ヘルミーナ様が静かに言う。
「あなたも来ます。歩けますか」
「……歩ける。歩けるけど……」
男は顔を上げた。涙が滲んでいる。
助かりたいのに、助かり方が分からない顔だ。
護衛が短く言った。
「喋れ。倉庫の場所。見張り。合図。知ってるだけ吐け」
男は必死に言葉を繋げた。
「白い線が二本の壁だ。裏に小さい戸がある。……中に入ったことはない。けど、夜になると灯りが一つだけ点く。消えるまで誰も近づかない」
「見張りは」
「……路地の端に、いつも座ってる。物乞いみたいな格好。けど、目が違う」
護衛が頷いた。
十分だ。これで“夜に起きること”が形になる。
俺は扉の外へ出た。
廊下の空気が冷たい。
左手を柄に添えたまま、足音を拾う。
下の階はまだ賑やかだ。
笑い声と皿の音。
それが普通に続いているのが、逆に怖い。
階段の踊り場で、俺は一度だけ止まった。
宿の入口が見える位置。
扉の隙間から、外の灯りが差している。
人影が一つ、通りを横切った。
ただの客かもしれない。
でも歩き方が違う。寄り道をしない。迷いがない。
俺は目を細めた。
もう一つ影。
今度は立ち止まり、宿を見上げる。
見上げて、すぐ去る。
――確認。
ただの確認で終わってほしいが、確認で終わらないのがこの手の連中だ。
背後から、護衛の足音が近づいた。
「外に目がいるか」
「いる。数はまだ分からない」
「今は見せるな。……動くのはこっちだ」
護衛の声は低い。
今夜の勝ち筋は、刃じゃない。先に動くことだ。
俺は頷いた。
「どこへ移す」
「この宿のままじゃない。……表通りへ出て、一度人に混ぜる。宿を変えるのはその後だ」
ヘルミーナ様が廊下へ出てきた。
侍女も一緒だ。顔色は悪いままだが、足は動いている。
「準備はできました」
言葉は静か。
でも視線は鋭い。
印が戻ったからこそ、次の危険を正しく見ている。
護衛が頷く。
「では出る。順番を決める。……お嬢様は真ん中。侍女も真ん中。セキサメは前。俺が後ろ」
俺は左手を柄から離さず、前へ出た。
「分かった」
扉の前。
鍵を外す音が、やけに大きい。
開ける。
夜の匂いが流れ込んだ。
昼より冷たい。
でも、どこか甘い。酒の匂いと、灯りの油の匂い。
通りは賑やかだ。
だからこそ、紛れられる。
そしてだからこそ、紛れ込まれる。
俺たちは歩き出した。
走らない。騒がない。
普通の旅人の顔で、普通に見せる。
だが、俺の背中は知っている。
視線が一つ、二つ、三つ。
遠いまま、同じ速度で付いてくる。
護衛が、ほとんど口を動かさずに言った。
「……来るぞ。今夜、どこかで仕掛けてくる」
ヘルミーナ様が小さく頷く。
「ええ。こちらも、仕掛けます」
その一言が、冷たく強かった。
逃げるためじゃない。取り返したものを守るために、夜に入る。
通りの向こうで、鈴の音が鳴った。
今度は気のせいじゃない。
合図だ。
俺は息を整えた。
夜の戦いが、始まる。
通りの向こうで、鈴の音がもう一度鳴った。
音は小さい。けど、人のざわめきの上に乗る鳴り方だった。
わざとだ。耳に残すための鳴らし方。
護衛が歩幅を変えないまま言う。
「……合図が早い。今夜はもう動いてる」
「分かった」
俺は返して、視線を落とした。
石畳の反射。ガラス窓の映り込み。
正面を見てるふりをして、後ろを拾う。
影が3つ。
距離は一定。
一定だからこそ、役割が決まっている。
前に出るやつ。
横から塞ぐやつ。
後ろで追い立てるやつ。
街の喧嘩の形じゃない。
狩りの形だ。
護衛が言った。
「曲がるぞ」
次の角で、俺たちは露店の列へ滑り込んだ。
果物。布。香草。串焼き。
匂いが強くなる場所は、視線も散る。
そこで、護衛がほんの少しだけ速度を落とした。
落とすことで、後ろの影の動きが見える。
影が――止まらない。
同じだけ速度を落とす。
距離を保ったまま、離れない。
護衛が小さく舌打ちした。
「……徹底してる」
ヘルミーナ様の声が低い。
「こちらの宿替えを読んでいます」
「読んでるというより、監視の数が多い」
護衛が返した。
耳の多さじゃない。足の多さだ。
俺は左手を柄に添えたまま、前へ出た。
抜かない。
でも“邪魔”にはなる。
護衛が次の指示を飛ばす。
「このまま表通りを抜ける。人の多い広場を一度通る。……そこで振り分ける」
「振り分ける?」
侍女が小さく声を漏らした。
ヘルミーナ様がすぐに答える。
「私たちは分かれません。ですが、見せ方を変えます。追う側に“迷い”を作る」
護衛が頷く。
「そうだ。……同じ道を歩かせない」
角を曲がった先、灯りが増えた。
小さな広場。屋台が並び、酔った笑い声が混じる。
ここは人が多い。多いから、見失う。
でも多いから、衝突も起きる。
広場へ入った瞬間、空気が一段だけ硬くなった。
視線が来る。
さっきまで遠かった影の一つが、僅かに距離を詰めた。
人混みに紛れて“触れる”距離へ。
護衛が咳を1回。
合図。
俺は歩幅を変えず、屋台の列へ寄った。
人を避けるふりをして、進路の角度だけ変える。
ヘルミーナ様と侍女はその内側。
護衛が後ろを締める。
影が詰めてくる。
詰めて、横へ回ろうとする。
囲む気だ。
ここで走れば負ける。
叫べば負ける。
相手が欲しいのは“騒ぎ”だ。騒ぎが起きれば、力が出せる。
俺は足の位置を少しだけ変え、影の進路を潰した。
ぶつからない距離。
でも通れない距離。
影の男が、俺の横を抜けようとして肩を入れてくる。
酔客のふり。
乱暴な客のふり。
そのふりが下手だ。重心が違う。
俺は鞘を軽く押し当てた。
押すんじゃない。置く。
置くだけで、相手の肩が止まる。
男が低く言った。
「……邪魔だ」
「通り道だ」
俺はそれだけ返した。
その瞬間、別の方向で声が上がった。
「おい、何だよ!」
酒場の客同士の喧嘩。
……違う。
喧嘩に“見せた”音だ。
視線がそっちへ寄る。
寄った瞬間、俺たちの後ろの影が二つ、動いた。
護衛が低く言う。
「来る。押し込むぞ」
押し込む。
広場の端、路地へ。人の少ない方へ。
人の少ない方へ行けば、相手は刃を出しやすくなる。
ヘルミーナ様が、息を吐いた。
「……誘われています」
「誘われてる。だから、誘われない」
護衛の声が短く切れた。
「逆へ」
俺は即座に足を切り替えた。
屋台の灯りが強い方へ。人が密な方へ。
相手が嫌がる方へ進む。
影の男が舌打ちする。
その舌打ちが、答えだ。
だが、次の瞬間。
屋台の灯りの向こうで、別の影が立ち上がった。
前にいた。
こちらの進路を読んで、先回りしていた。
男は布の下から、短い刃を覗かせた。
覗かせただけ。まだ出してない。
出したら騒ぎになる。だから、“出せる”と見せる。
俺の呼吸が一段だけ冷える。
抜かないと決めていた。
けど、出されたら――。
護衛が低く言った。
「……セキサメ。止めろ。抜くな」
止めろ。抜くな。
矛盾じゃない。
俺の役は“刃”じゃなく“壁”だ。
俺は左手を柄から離し、鞘を前へ出した。
刃じゃない。鞘だ。
ぶつけるんじゃない。置く。
前に立ち上がった男の足が止まる。
止まった瞬間、周囲の客が「何だ」と顔を上げる。
見られた。
相手は動けない。
俺は低く言った。
「やめとけ。ここは明るい」
男の目が細くなる。
「……旅人が偉そうに」
「目立つのが嫌なだけだ」
男の視線が一瞬だけ横へ流れた。
合図を待っている。
だが合図が出ない。出せない。見られてるから。
護衛が、後ろで一拍だけ咳をした。
2回。
“引く”。
俺は鞘を引き、半歩下がった。
下がることで、道を空ける。
男が踏み込むか、引くか。
男は踏み込まない。
踏み込めない。
ここで踏み込めば、喧嘩じゃ済まないからだ。
俺たちはそのまま、屋台の灯りの中を抜けた。
抜けながら、護衛が低く言う。
「……宿替えは無理だ。このままだと、どこへ行っても追われる」
ヘルミーナ様が頷く。
「では、こちらから終わらせます。倉庫へ向かいましょう」
倉庫。白い線が二本。
運び役の男が言った場所。
攻めに転じる。
逃げる夜じゃない。
俺は息を整えた。
抜かない。
でも、抜ける。
次に抜くのは――
暗い場所だ。人の目が届かない場所だ。
だから、そこへ行く。
アマテラス「くく……赤雨よ。灯りの下で抜かずに通した、見事じゃ。
じゃがここから先は闇よ。鞘で誤魔化せる相手ではない。
抜くなら迷うでない――妾を呼べ。
刃を見せるのは、相手が“見せていい場所”に入った時だけじゃ」