「デカグラマトンは…僕が殺します。」
目的の階に到着したようなので、リンさんについて行きエレベーターを降りる。
何やら数人の生徒だと思われる女性が集まっている…
なんだろうか?何か切羽詰まっているようだけど…
…リンさんが気にしてないようなのでとりあえず、反応せずについていきますか。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたんだから!早く連邦生徒会長を呼んできて!!」
菫色の髪の女性が騒ぐ。
リンさんがため息をつく…流石に露骨すぎませんか?
…恐らくキヴォトスの生徒の一人なのでしょう。彼女の他にもまだ数名生徒らしき人が見えます。
彼女のこの騒ぎようからもかなり事態は深刻なのでしょうね。全くここの大人は何をしているのか…
……まさか、まともな大人がいない…?
確かに、先ほどの説明で学園が国のようなものだとは言われました…
しかしその管理をするのは大人の役目では…?
まさか、その管理を生徒達が担っていると…?
…なるほど。だから連邦“生徒会”なのですか…
きっと彼女達の間違いを正してくれる存在はキヴォトスにはいないのでしょうね。
リンさんもこの少女たちも相当な苦労人のようだし…
どちらかといえば管理者側なのでしょう。
だとすれば私とも分かり合えることがありそうです。
少なくとも幻想郷に帰れる確信がない今は、良い関係を築いておきましょうか。
「……うん?その隣の可愛らしい子供は…?」
……キヴォトスの生徒は失礼過ぎませんか?
私は断じて子供ではありません…
確かに容姿が幼いのは否定できません…
しかし見た目だけで子供と言うのは余りにも失礼です…
「主席行政官。お待ちしておりました。」
「今のこの状況について、連邦生徒会長からの説明を要求します。」
長い黒髪の女性が冷静に言う。
…色々と大きい…いや私が小さいのもありますが…それにしても大きすぎでは?
お空よりは…流石に小さいですね。ですがその存在感はお空とも引けを取らないです…
「連邦生徒会長に会いに来ました。」
「風紀委員長が今の状況について、納得のいく回答を求めております。」
メガネをかけた茶髪の女性が言う。
赤の手袋に赤のタイツとは…なかなか派手…
余程赤色が好きなようですね。
…今さら気づきましたが皆さん、銃のようなものを携帯していますね…
いくら何でも物騒では…?それともここではそれが普通…?
いくら妖怪といえど痛みはあるので当たらないよう気をつけなければ…
「あぁ……面倒くさい人達に捕まってしまいましたね。」
「こんにちは、わざわざここまで訪問してくださった各学園の生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
「こんな暇そうな…いえ、大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています。」
「今、キヴォトスで起きている様々な混乱の責任を問うために…でしょう?」
リンさん…いくら何でも煽りすぎです…
明らかに皆さんが先程より苛付いているのですが…
ほら、菫色の髪の方なんて心読まなくても不機嫌なのがわかるくらいですし…
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!貴方達、連邦生徒会なんでしょ!」
…やはり連邦生徒会はこのキヴォトスの統治組織のようですね。
しかし、その責任を連邦生徒会…連邦生徒会長だけに取らせるのはあまりにも酷では?
学園は国のようなものだとしたら、混乱に対応できないその学園のトップも責任を取るべきなのでは…
「数千の学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前、うちの学校なんか風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
もしかして全ての学園がマズイ感じですか…?
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました。」
きょうせいきょく…?
…停学中ということは問題犯したのでしょうね。
脱走ということは、その“きょうせいきょく”とやらに収監された生徒が逃げ出したのですか…
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
…これ間違いなく銃で襲われてますよね。
私ならともかく、人間には致命傷になるはずですが…
…本当にここに来てから疑問が絶えませんね…
「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
2000%!?二十倍ですか!?不法流通が!?
戦車…?とかはよくわかりませんが武器がそれほど不法流通するのは治安がどうこう言っている話ではないのでは!?
「……。」
リンさん、黙ってしまいましたね。
きっと思う所があるのでしょう…
ただでさえ連邦生徒会長がいない現状で…リンさんが代行をしていてこの状況ということは…
もうどうしようもなさそうな状況に見えますが…どうするのでしょうか。
少しだけ覗いてみますか…
(はぁ…やはり面倒くさいことに…)
さてはリンさん、割と余裕ありますね。
しかしどうするのでしょう…彼女達は連邦生徒会長がいないということを知らないみたいですし…
「こんな状況で連邦生徒会長は一体何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ会わせて!」
まずいですね…馬鹿正直に連邦生徒会長が失踪したことを伝えれば余計に混乱が大きくなりかねない。
しかし、彼女達は連邦生徒会長を問い詰めなければ納得しないでしょうし…あれ、手詰まりでは…?
(…隠し通せるわけがありませんし、仕方ありませんね。)
…彼女達に伝えるということでしょうか。
しかし、それをした所で問題の追及先がリンさんになるだけなのでは…
…一応彼女達がどう思っているかも見ておきましょうか。
(全く!こんな時にも出てこないなんて。納得できない理由だったら許さないんだから!)
(彼女がここまで表に出てこなかった事は少なくとも一回もなかったはず…一体連邦生徒会長は何を…)
(ここ最近、連邦生徒会長を見たという方は誰一人いませんでした。まさか、何かあったのでは…)
(最近、連邦生徒会長があまりに姿を現さないので失踪したのではと噂になっていますが…)
よかった、深くまで読もうとしなければ普通に読めるみたいですね。
やはり…というか皆さん連邦生徒会長のことを考えてますね。
…というか連邦生徒会長一人いなくなるだけで、普通ここまで麻痺しますかね…?
どれだけ凄い方なんでしょうか…
「…連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、突如行方不明になりました。」
「……え!?」
「……!!」
「っ……」
「やはりあの噂は……」
まぁそうなりますよね。
突如管理者がいなくなるのですから…
…ここに来てから、キヴォトスの事ばかり考えていましたが…
…よくよく考えれば地底からいきなり私が失踪したこの状況もかなーりまずいのでは…?
そう考えると急に生きた心地がしなくなりますね…
「結論から言うと“サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
えっ、そこまで聞いていなかったんですけど…
つまり、今の連邦生徒会には政治的な力は一切ないと…
この状況本当にどうするんですか…?
「認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」
(今となってはさとり先生が私達についていますからね。)
いや、えっ?私…ですか?
いやいやいや…急にとんでもない責任がとんできたんですけど…
私にできる事が本当にあると?この状況で…?
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
「はい。」
“はい”じゃないです…え、本当に私なんです?
「このさとり先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
あぁ…どうやら本当に私のことを言っているようですね…何も知らないこの世界で私ができることなんて、見守るぐらいしかないと思うのですが…
「えっ!?その方先生だったんですか!?小学生…とかではなく…?」
……そこまで私幼く見えますかね?
今までほとんどペットと妹としか関わらなかったので気にしたことなかったのですが…
「同意見です。私達より年下に見えるのですが…」
「この方が…?本当に…?」
これはもう…慣れたほうがいいのでしょうか?
これから先、何回か同じような事起きそうですし…
「リンさん、本当に私なのですね?」
自分でも不安になってきましたね…
「ちょっと待って。仮に先生だとしたらこの方は一体どなた?どうしてここにいるの?」
もはや先生ってことすら信じられてませんね。
どうしてここにいるのかは…私にも分かりません。
心当たりがあるとすれば…どこぞの
ですが、どちらの気配も一切感じないんですよね……
何より連邦生徒会長が私を指名した…というのが一番不可解です。面識など一切ないはずですし…
「こちらのさとり先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
というより私の情報はどこから手に入れたのでしょうか…
この様子だと恐らくここは、外の世界とも完全な別世界。
なら連邦生徒会長は別世界のなかの別世界から私を知り得たことになる…
そんな事可能でしょうか…?
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……」
安心してください、私も同じです。
何がなんだか…流石に疲れます…
(本当にこの女の子が先生…?とてもそう見えないほど可愛らしいけど…)
(連邦生徒会長は何を考えているのでしょうか…こんな子供にキヴォトスの命運を託すとは…)
…慣れましたよもう…
まぁ、彼女たちの気持ちも分からないわけではないです。突如現れた先生とやらが自分より年下に見えたら誰だってこうなりますから。
ここは一度しっかり自己紹介をしておきましょうか。
これから先、何度もお世話になるでしょうし。
「皆さん、はじめまして。私は古明地さとりです。皆さんもきっと混乱されていると思いますが…ひとまず、これからよろしくお願いします。」
「……こんにちは、先生…?」
(子供みたいなのに…結構礼儀正しい…)
「一言余計です。」
「えっ?」
(も、もしかして今、口に出てた…!?もしそうなら凄い失礼じゃない私!?)
(…?ユウカさんが余計な事を言ったようには見えませんでしたが…?)
(先生はなにに対して余計と言ったのでしょうか…?)
「あ…いえ、な、何でもありません。」
つい、いつものクセで心読みながら会話してしまいました…怪しまれてますね…
なんとなくですが…このキヴォトスで私が妖怪であることと、心が読めることは可能な限り隠したほうが良さそうですね。
“変な輩”に目をつけられたら困りますし。
「あ、そのすみません……わ、私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
一応名前は聞いておきたかったのですが…
…多分この方は小さい子が好きですよね。
なら…
「どうでもいい…ですか……悲しいです…」
「えっ、いやそんなつもりは…えっとその…」
「わ、私は早瀬ユウカです。よろしくお願いします!さとり先生!」
案外上手く行きましたね。少し大人気なかったでしょうか?
「ユウカさんですね、よろしくお願いします!」
「は、はい!先生!」
(か、かわいい~。本当に先生なのよね……ミレニアムに連れて帰っちゃだめかしら……)
…近いうちに誘拐されそうな気がしますね…
まぁ…怪しい人じゃなければいいでしょう…
「あの、話を続けてもいいですか?」
凄いリンさんが睨んでる…
調子に乗りすぎましたね…
「は、はい大丈夫です…」