さとり妖怪、先生になる   作:ルロイラ

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序章4話 曇る幻想、動き出す都市

幻想郷 地霊殿

 

さとり様がこいし様を探しに行って数時間。

さとり様が先に帰ってきてないということは、二人で帰ってきているのだろう。

…もうすぐお二人とも帰ってこられる時間。猫の勘は鋭いのだ!

そろそろお出迎えに出ますか!

 

「ただいま〜!」

 

「おかえりなさい、こいし様!」

 

館にこいし様の声が響き、あたいはそれに返す。

タイミングバッチリ、後は夕食の準備をして……

…あれ、さとり様は…?

 

「あれこいし様、さとり様と一緒じゃないんですか?」

 

「うん?お姉ちゃん…?どうして?私見てないけど……」

 

心臓の鼓動が速くなった気がする…

今まで何度か、さとり様がこいし様を地上に探しに行ったことはある。

しかしその場合、ほとんどさとり様が先に帰ってくるか、たまに一緒に帰ってくるかのどちらかしか無かった…

すれ違ったとしても…こいし様が帰ってきそうな時間になったら、さとり様は地底に戻ってくる…

 

こいし様を探しに行き、さとり様だけが帰ってこない…

余程のことがなければありえない事態だ…

何より…火車()の勘が異常事態だと告げている…

探しに行かなければ。

 

「こいし様すみません!さとり様のことを探しに行ってきます!」

 

「えぇ!?お姉ちゃんどうかしたの?」

 

「地上に出たこいし様を探して、さとり様も地上に出たんです!」

 

「……!」

 

こいし様も事の重大さを理解したらしい…

さとり様が探しに行ったとき、こいし様はバレないように隠れて、さとり様と一方的な遊びをしていると以前聞いたことがある。

 

「わ、私も手伝う!」

 

そう言ってくれるのは大変助かるが…

 

「こいし様、申し訳ないのですが今は館に残っていてください…」

 

「な、なんで…?」

 

「さとり様が心配なのは分かりますが、こいし様も出ていってしまうと、お空一人だけになってしまいます。」

 

流石にお空を残していなくなるのは心配だ。

お空は元気だが、意外と寂しがり屋でもある。

 

「さとり様がいなくなった不安に、私達も見えないとなったら炉にも影響が出てしまいますから。」

 

「お空には最小限の状況を伝えて、今は一緒にいてあげてください。」

 

「……分かった…絶対に帰ってきてね!!」

 

「もちろん!行ってきます!」

 

あたいは館を飛び出す。

さとり様はこいし様を探しに行く時、必ず博麗神社に訪れる。なら最初に博麗神社に行くべきだ。

一応、地底の知り合いにさとり様が帰ってきてないかを聞く。

 

「さとりかい?数時間前に見たきりだね。何かあったのかい?」

「へぇ…あいつが妹を置いておいてほっつき回るなんて有り得ない。嫌な予感がするねぇ…」

 

 

「さとり…?地上に出たのは見たけど…帰ってきたとこは見てないわよ。まだ帰ってないだけじゃない?」

「えっ?妹の方が帰ってきてる…?それまずい状況じゃない?」

 

 

「誰かと思ったら地霊殿の…さとり?外に行ったきり見てないよ。」

「妹が帰ってきてさとりが帰ってきてない?」

「…まずいね、探すの手伝おうか?…大丈夫?ならいいけど…」

 

 

…分かっていた事だが勇儀もパルスィもヤマメも…さとり様が帰ってきた所を見ていない…

鼓動が明確に速くなる。嫌な汗が噴き出してくる…

もし…さとり様が博麗神社に訪れていなかったら…?

…いや、考えるのはやめよう。今はさとり様が無事な事を信じるだけだ…

 

 

「さとり?見てないし、ここにも来てないわよ。」

 

博麗神社に着いたあたいは霊夢にさとり様のことを聞いたのだが…霊夢はこう答えた…

目の前が真っ暗になったような感覚に襲われる…

足に力が入らなくなり、倒れる…

 

「ちょ、ちょっとどうしたのよ!?」

 

さとり様……一体何処に行ってしまったのですか……?

 

 

ーーその頃

 

キヴォトス サンクトゥムタワー

 

 

 

「…説明を続けますね。先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」

 

「なるほど。その部活というのはどんなものなのですか?」

 

「その部活は、連邦捜査部“S.C.H.A.L.E”(シャーレ)。部活とは言っていますが、その実態は一種の超法規的機関…」

「連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。」

 

生徒達を自由に扱えるだけでなく、あらゆる学園で無制限の戦闘ができる…?

余りにも権力が大きすぎでは?

余程の善人で無ければ悪用する者もいるでしょうに…

 

「何故連邦生徒会長はここまで権力が強い組織を創設したのですか?」

 

一応聞いてみますが…恐らくリンさんも分からないでしょうね。

 

「申し訳ありませんが、なぜ連邦生徒会長がここまで権力を持つ組織を作ったのかは私含め、連邦生徒会長にしか分かりません。」

 

まぁそうでしょう。

長く生きている私からしても、なぜ連邦生徒会長がこんな危険な組織を立ち上げたのかは見当もつきません。

ただ…

 

「私がその連邦捜査部の顧問…つまり、シャーレの主になるということですね?」

 

「はい、そういう事になります。」

 

…その組織の顧問に私を任命するということは、何故か私は連邦生徒会長に“一方的な”信頼されていることになります。

…彼女は何を考えているのでしょうか…

 

「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に“とある物”を持ち込んでいます。」

 

「そのとある物というのは?」

 

(……オーパーツの説明なんてどうしましょう…。)

(…言葉に出来ませんね。いっそ見てもらったほうがいいでしょう。)

「……説明するより、ご覧になった方が分かりやすいと思いますので、今からシャーレの部室に行きましょうか。」

 

オーパーツ…?

キヴォトスにもそのようなものがあるのですね。

唯一馴染み深いと感じます。

 

リンさんは私達から少し離れ、板のようなものを取り出した。

確かあれは前にこいしが拾ってきた電話のようなもの…

ここで過ごすのなら私も持ったほうがいいのでしょうか?

 

「…先生…?はじめまして。」

 

黒い制服、黒髪の方が話しかけてきました。

距離が近いと余計に大きく見える…

 

(威圧感を与えてしまいそうですし……少し屈んだほうがいいですよね。)

 

彼女が屈んで目線を合わせてきます…

…改めて自分の小ささが分かりましたね。

ここにいる皆さん私より身長高いですし……

 

「私はトリニティ総合学園、正義実現委員会副委員長の羽川ハスミです。これからよろしくお願いします、先生。」

 

正義実現委員会とは…物騒な名前ですね。

大抵こういう名前の組織って、まともな気がしないのですが……

真面目そうなハスミさんが副委員長なのですから大丈夫だと信じましょう…

 

「同じくトリニティ総合学園、自警団所属の守月スズミです。」

「もしトリニティにいらっしゃる場合は是非とも呼んでください、その時は自警団が護衛致します。」

 

銀髪の方…スズミさんですね。

どうやらお二人とも同じ学園のようですね。

そして自警団…正義実現委員会とは違うようですが…

 

「はじめまして、私はゲヘナ学園風紀委員会の火宮チナツです。よろしくお願いします、先生。」

 

チナツさんが茶髪の方ですね。

ゲヘナ学園……地獄を冠する学園ですか……

既にキヴォトスで一番治安が悪そうな気がします。

 

「あ、改めましてミレニアムサイエンススクール、セミナー所属の早瀬ユウカです!よろしくお願いします、先生!」

 

「皆さん、自己紹介ありがとうございます。改めて先生になった古明地さとりです。よろしくお願いします。」

 

そしてユウカさんですね。

セミナー…確か勉強会みたいなものでしたっけ?

となると勉強する部活…?

なんだか違いそうですね。

 

「ユウカさん、質問してもいいですか?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「セミナーというのは?」

 

「セミナーはミレニアムの生徒会組織です。私は会計担当をしています。」

 

あぁ、生徒会のことでしたか。

それにしても……こんな事言うのも失礼ですが、胡散臭い名前してる組織ばかりですね…

…それはそうとして、これから長く関わる事になりそうですし…嫌われない為にもお礼は笑顔で返しましょうか。

 

「生徒会のことでしたか。ありがとうございます。」

 

「い、いえ!分からない事があったらぜひ聞いてください!」

(……先生じゃなかったら確実にミレニアムの生徒にしてたわね…)

 

ユウカさん相手には控えたほうがいいですかね…?

 

「先生、私も質問してもいいですか?」

 

スズミさんですね、なんでしょうか?

 

「先生のその…何と言えばいいのでしょう……」

(目…?なんでしょうか…?)

 

あぁサードアイのことですか…

なんて言いましょう…無難にアクセサリーということにしておきますか…

 

「もしかして、この目のようなものですか?」

 

「は、はい。余りにも不思議な感じがするので。」

 

「なんてことのない、普通のアクセサリーですよ。」

 

「え、でも動いて」

 

「アクセサリーです。」

 

「しかし…」

 

「アクセサリーです。何の変哲もない。」

 

「わ、分かりました。アクセサリーですね…」

(聞かれたくない事だったようですね……)

 

まぁ…しょうがないですよね。サードアイ(第三の目)なんて言えば頭がおかしいと思われかねませんから。

 

「私からもいいでしょうか?先生。」

 

今度はチナツさんですね。

 

「えぇ大丈夫です。」

 

「先生の年齢はお幾つなんですか?」

 

「年齢ですか…?」

 

なんて答えましょう…

実年齢はまず答えられないとして……

 

「今年で26になります。」

 

適当に答えてみましたが……どの程度がベストだったんでしょうか…?

 

「に、26…!い、意外と年上なんですね…」

(見た目からは想像出来ませんでした…)

 

(わ、私よりも十歳も年上…!?)

 

(本当に大人の方なんですね…)

 

(先生としては少し若いくらいですかね。)

 

どうやら違和感は無さそうですね。

まぁ本当の年齢は数えてないので覚えてないのですが。

 

「……先生、お待たせしました。」

 

どうやらリンさんは電話をし終わったようですね。

……凄い苛ついてるように見えるのですが…一体何が…?

 

「リンさん大丈夫ですか?…とりあえず深呼吸を…」

 

「……だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが…大したことではありません。」

(こんな大事な時に…!)

 

その反応から、大した事のように思いますが……

……うん?…さっきからこちらを見つめて…一体何を…?

 

(…ここに丁度良く、暇そうな方々がいらっしゃいますね。……暇そうなのだから協力してもらいましょうか。)

 

……心の中でも煽りは健在ですね…

確かに協力はしていただきたいですが……

 

「丁度ここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので私は心強いです。」

 

「……えっ?」

 

「主席行政官…?何を…?」

 

そのまま言いましたね…

リンさん、かなりお疲れのようです……

この状況にずっと対応し続けていたのでしょう…

…休んではというのは…あまりに無責任か……

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」

 

「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」

 

「ど、どこへ行くおつもりですか!?」

 

ここに来て早々に面倒事ですか……

大変な事になりそう…というよりなりますね…

いつもの日常が恋しい……

はぁ、幻想郷に帰りたい……

 

 

 

 

 

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