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「…うーん……?」
「一体……何が…?」
意識が戻り、直前の事を思い出します。
…確か、端末の画面が暗転して…
急に意識が……
「ここは…教室…?」
「それにしては余りにもボロボロですが…」
教室のようなこの場所は床が水浸しで、外を見渡せる程の大穴が壁に空いていました。
そこから見える外の景色は、青く晴れた空に水平線がどこまでも続いて…
まるで夢のような……キヴォトスに来る前に見た景色を思い出すような絶景でした。
「くううぅぅ……Zzzz」
寝息が聞こえ振り向くと、そこには机で寝ている女の子がいました。
「くううぅぅ……Zzzz」
どうやら、ここには私とこの女の子以外に人はいないようです。
察するに、ここが“シッテムの箱の内部”なんでしょうね。
私が…というより、私の意識がこの世界に入り込んでいる形でしょう。
となると、この子を起こさないといけませんね。
「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……」
…随分と幸せな夢を見てますね。
カステラに…バナナミルク…ですか。
個人的には甘味には紅茶が一番なのですが…
まだ幼いようですし、それが普通なのでしょう。
さて、どうしましょうか。
ここで私にできることはあまり多くありません。
となると、起こすのは可哀想ではありますが……
「くううぅぅ……Zzzz」
「もしも〜し、起きてくださ〜い。」
「えへっ……まだたくさんありますよぉ……」
声掛けでは起きそうにもありませんね。
少し体を揺さぶってみましょうか。
「起きてくださ〜い。もう時間ですよ〜」
「うにゃ……まだですよ……しっかり噛まないと……」
「もう起きないと遅刻してしまいますよ?」
「あうん、でもぉ……」
まさかここまで起きないとは……
どうしましょうか……
私の能力で夢に干渉できたら良かったのですが…
生憎そんな力はありませんし……
少し意地悪してみましょうか。
「起きないならカステラ没収しちゃいますよ〜」
「…!そ、それは駄目です!!」
効果ありましたね。すごい勢いで飛び起きました。
「……ありゃ?」
「おはようございます。」
「ありゃ、ありゃりゃ……?」
「え?あれ?あれれ?」
「混乱してるみたいですが…大丈夫ですか?」
「せ、先生!?この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか古明地…さとり…?先生…!?」
「はい。そうですよ。」
「う、うわああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」
「そんなに慌てずに、落ち着いてください。」
「うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて……」
「ゆっくりで構いませんよ。まずは自己紹介をしましょうか。」
「そ、そうですよね!」
「私はアロナ!」
「この“シッテムの箱”に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「よろしくお願いします!さとり先生!」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。改めて、私は古明地さとりです。」
「はい!やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!!」
(…事前の情報と違う事が気になるところですが……まぁ大丈夫でしょう!)
事前の情報と違う…ですか…
やはり私以外に先生になるべき人がいた…?
なら、なぜ私はここに…?
「どうかしましたか?先生。」
少し考え込んでいた私に、アロナさんは不思議そうに話しかけてきました。
「いえ、少し気になることがあって…」
「気になることですか…?」
「ええ、先程シッテムの箱を起動した際に、情報と乖離があるということでエラーになりまして…」
「それに、アロナさんも私の名前を呼んだ時、疑問形でしたから。」
「そのことですか……」
(うぅ…なんといったら…)
「理由はわからないのですが、先生の情報が事前の情報と違ったんです。」
「ですが先生の情報と全く違うわけではなく…なんというか……所々似ていたんです。」
「ですから、さとり先生の情報を再取得した際、先生として問題はない事を確認し、認証しました。」
となると、本当に私は先生になるはずではなかったということですか……
…まぁ、ここから帰り方がわからない以上、今は先生をやるしか無さそうですが。
「そうだったのですね。ですが、私のやることは変わりません。託された以上は先生をやり遂げますよ。」
「……!!ありがとうございます!先生!!」
「まだ体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……」
なるほど、だから声が不安定なのですか。
ですが、いつかは改善していくことでしょうね。
「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」
「はい、お願いします。アロナさん。」
「あ、そうだ!ではまず、形式的ですが生体認証を行います♪」
「…せいたい…?…にんしょう…?」
…また知らない言葉が出てきました。
色々落ち着いたらこの世界の辞書でも読みましょうか…
というより読まないとだめな気がしますね…
「……もしかしてご存知ないですか?」
「……はい、お恥ずかしながら…今まで一切機械に触れてこなかったもので……」
「そ、そうでしたか。説明すると生体認証というのは指紋や、顔、声などのその人特有のものを使って本人確認をするものなんです!」
(今のこの世界で機械に触れてこないって可能なんでしょうか…?)
「そんな事が……凄いですね。」
想像はしてましたが、かなり技術が進んでいますね。
恐らくは外の世界も同程度の技術があるでしょう。
幻想郷でも河童が色々しているとは聞きますが…地底にはほぼ関係ない話ですし……
「説明ありがとうございます、アロナさん。」
「その、生体認証というのをお願いします。」
「わかりました!では、こちらの方に来てください。」
そう言われたので、私はアロナさんの方に寄る。
「さぁ、この私の指に、先生の指を当ててください。」
「…こうですか?」
「うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?」
「そうですね、もしかしてこれで指紋を読み取るんですか?」
「はい!画面に残った指紋を目視で確認するんです!」
「こう見えて目はいいので、すぐ終わりますよ!」
「どれどれ……」
目視で指紋の確認ができるとは……
目がいいってレベルですかね?
…キヴォトスの技術は相当進んでいますね。
「うぅ……」
…?どうしたのでしょうか?
(うーん……よく見えないかも……)
(……まぁ、これでいいですかね?)
「そういう情報って適当じゃだめなのでは?」
「え!?い、今口に出ちゃってましたか!?」
「あっ…いえ……そういうわけでは……」
…このクセなかなか抜けませんね。
そりゃそうですよね、数百年続けてきたものですから。
でもどうしましょうか……アロナさんが私の秘書になるなら、この事は打ち明けたほうが……
「せ、先生?一応生体認証は終わりましたが…何かお困りですか?」
「そうですね……」
「何でも話してみてください!このアロナがいれば大丈夫です!!」
…もし…私の事を話して、アロナさんから距離を置かれたら……
私はこの世界でやっていけなくなるでしょうね。
勿論、私はこの能力は素晴らしいものだと自負しています。
ですが…それが他者から受け入れられるかといえば、それは違います。
(先生…とても難しそうな顔をしてますね……)
(でも、私なら何を言われても大丈夫なはず!)
「先生!悩むよりまず私に相談してください!」
…アロナさん……
そんな純粋な目を向けられては……
一度信用してみましょうか。
もし駄目ならその時は……いえそれはその時に考えましょう。
今は…アロナさんを信じましょう。
「アロナさん、落ち着いて聞いてくださいね。」
「は、はい!」
「実は私、人の心が読める妖怪なんです。」
「……へっ?」
(心が読める……妖怪……?)
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
(よ、妖怪!?な、何かの冗談…いえ、あの真剣な様子から冗談を言うなんて思えませんし…!?)
(それに心が読めるって…もしかして今も読まれちゃってます!?)
「はい、見えてますよ。」
「ほ、本当に読まれちゃってます!!こ、これが先生の力なんですね!」
「はい、嫌だったら言ってください。読むのは極力控えますから。」
「凄いですね!!」
「えっ?」
「だって人の心を読めるなら人の気持ちをすぐに察せられるんでしょう!」
「今このキヴォトスにさとり先生ほど先生に適した人はいません!!」
「アロナさん…」
「それに私の心ならいくらでも読んでもらって構いません!私と先生は一心同体ですから!!」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいです。アロナさん。」
…とてもいい子ですね。
心を覗いても何処にも嘘はない、この子が秘書なら安心です。
そろそろ本題の方を話しましょうか。
……連邦生徒会長や幻想郷について何かしらの手がかりがあればいいのですが…
「アロナさん、私がここに来た理由なんですが……」
私は連邦生徒会長が失踪したことで、サンクトゥムタワーの行政権がなくなり、キヴォトスが混乱に陥っていることを話しました。
「……なるほど、先生の事情は大体わかりました。」
「連邦生徒会長が行方不明になったせいで、キヴォトスのタワーを制御する方法がなくなった……」
「アロナさんは連邦生徒会長について何か知ってますか?」
「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……」
嘘はついていないみたいですが…何か引っかかります。
連邦生徒会長の事をアロナさんが知らないなら、連邦生徒会長はこの箱を起動できなかったということ……
なら何故そんな物を私に託したのか……
何故シッテムの箱が私なら起動できると分かっていたのか……
…今は考えていても仕方ありませんね。
この様子なら幻想郷の手がかりは無さそうですし、聞く意味はありませんね。
「…お役に立てず、すみません。」
「大丈夫ですよ、こちらもいきなり聞いてしまいましたから。」
「ですが先生、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです。」
「そうですか、ならお願いしてもいいですか?」
「はい!分かりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!」
「少々お待ちください!」
アロナさんは目を閉じ、しばらく無音が続きます。
今の彼女は機械のよう…というより本質はそうなのでしょうが。
子供のような活発さはもしかしたら後付けのようなものかもしれませんね。
もうしばらくして、アロナさんが目を開きました。
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……」
「先生、サンクトゥムタワーの行政権を無事回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。」
「今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です。」
凄いですね、本当に助かります。
ですが…より連邦生徒会長に対する謎が深まりました。
こんなに簡単にキヴォトスを支配できる物をどうして見ず知らずの私に…?
これがもし悪人や、厄介な妖怪の手に渡れば……
容易に想像つきますね。
「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。」
「でも……大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても……」
「えぇ、大丈夫です。承認します。」
「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
アロナさんがそう言ってから数十秒ほどでしょうか?
「……はい、分かりました。」
(…これで、キヴォトスの混乱は抑えられます。)
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。」
「そうですか。なら、これからはひとまず安心ですね。」
「はい、これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように行政管理を進められます。」
「お疲れさまでした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」
「私に出来ることをやりきっただけですよ。これから頑張ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
「ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく。」
「……それではシッテムの箱は渡しましたし、私の役目は終わったようですね」
「そうですね、リンさん本日はありがとうございました。」
「……あ、もう一つありました。」
「うん?まだ何か…?」
「ついてきてください。連邦捜査部“シャーレ”をご紹介します。」
「確かに、まだ案内されてませんでしたね。リンさんお願いします。」