さとり妖怪、先生になる   作:ルロイラ

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序章9話 解決した問題と、解決できない問題

「ここがシャーレのメインロビーです。」

 

リンさんに案内され、地下から上がり広い部屋に出ました。

薄い青と白を基調とした部屋は、落ち着いた雰囲気でありながら、どこか爽やかな空間です。

 

「広い部屋ですね。一人では持て余してしまいそうです。」

 

「ご心配なく、いずれ多くの生徒達で賑わうことになるでしょうから。」

 

そうなればいいのですが……

そこは私の頑張り次第と言った所ですかね。

 

「長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね。」

「中に入りましょう、先生。」

 

リンさんがある扉を開けて、私達は部屋の中に入ります。

 

中に入ると広めの部屋に棚や机などが置かれた、まさしく仕事場という部屋でした。

窓からは日光が部屋を照らし、他に光がなくても大丈夫なほどです。

 

「そして、ここがシャーレの部室です。」

「ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう。」

 

机の上に置かれた電子機器…あれで仕事をするのでしょうか…?

困りましたね、使い方が分かりませんし……

…そもそも私の仕事とは…?

 

「リンさん、私はこれから何をすればいいのですか?」

 

先生というからには勉強を教える?

といってもキヴォトスの勉学は全くわからないのですけどね。

それとも、生徒達の悩みを解決するとか…?

こっちのほうが近いかもしれませんね。

 

「……シャーレは、権限だけはありますが、目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない……という強制力は存在しません。」

 

「目標がない?これだけの権限を持つ組織がですか?」

 

「はい……もしかすると何か事情があったのかもしれませんが、連邦生徒会長がいなくなった今、誰にもそれはわかりません。」

 

あらゆる学園に立ち入れ、自由に生徒を加入させることができる。

それだけでなく、学区内での自由な戦闘ができる組織にやるべき事がない……

あったとしてもそれは彼女のみ知る、ですか…

 

「面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れていませんでした。」

「つまり、何でも先生がやりたい事をやって良い……ということですね。」

 

強大な権力がありながら、その力の使い方は私次第……

もし私がこの権力を自分勝手に使えば、止められる勢力はいないでしょうね。

もっとも、そんな事はしませんが。

 

「……本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。」

「私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力がありません。」

 

……それは優先順位が間違ってません?

確かにいなくなったトップを探すのも大事でしょう。

しかし連邦生徒会はキヴォトスの行政を担う組織。

その組織がキヴォトスの問題に対応できなくなる程、力を入れることでしょうか……?

 

「今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……

支援物資の要請や環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……」

「……もしかしたら、時間が有り余っているシャーレなら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね。」

 

……これが目的ですね。

細かい事をシャーレに一任し、自分達は行政といなくなった連邦生徒会長を探すのに力を投じる……

確かにこんな混乱した状況で、細かい事を気にしてられないでしょう。

実際シャーレは暇でしょうし、仕事を任せるなら適任ですね。

 

「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください。」

 

やっぱりですね。

まぁやることがないのでやりますが。

 

「すべては、先生の自由ですので。」

 

何をするにしろまずはキヴォトスの今の情勢と、私の知らない言葉を理解する必要がありますね。

その辺りは後でリンさんに用意してもらいましょうか。

 

「それと先生、もう一ついいですか?」

 

「はい、まだ何か…?」

 

「今日の17:00頃から予定を空けておいてくれますか?」

 

「はい、大丈夫ですが…何かあるんですか?」

 

「連邦生徒会からの会見を開こうと思いまして。」

 

「会見…?」

 

「はい。連邦生徒会長の事や先生の就任の事など、公にしてしまった方が楽になるでしょうから。」

 

会見というものがよくわかりませんが……

わざわざ開くということは、重要な事なのでしょうか。

 

「いきなりの会見になるので、慌ただしくなると思いますが…大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫です。それと私からもお願いをしても大丈夫ですか?」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「今のキヴォトスの情勢が分かる資料と、百科事典を用意してもらえませんか?」

 

「なるほど、分かりました。百科事典に関してはシャーレのオフィスにあるはずです。資料に関しては……」

「…先生、パソコンの使い方分かりますか?」

 

「……」

 

「…分かりました。戻り次第すぐ準備してお持ちします。」

 

「二度手間になるようで申し訳ない……」

 

「気になさらないでください。それでは私は一度失礼しますね。」

 

「はい、お疲れ様でした。」

 

リンさんは部室から出ていき、部屋には私一人だけになりました。

今ここにいても仕方ないですし、皆さんの所にいきますか。

 

 

「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ。」

 

「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど……すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。」

「あとは担当者に任せます。」

 

「皆さん、改めてありがとうございました。」

 

「…あ、先生!こちらこそありがとうございました!」

 

「私達だけでは、シャーレの奪還はできなかったでしょう。」

 

「先生のご活躍はキヴォトス全域に広がると思います。すぐにSNSで話題になるかもしれませんね。」

 

えすえぬえす……?

何かの略称でしょうか……?

話題になる……ですか。

何か会話をするためのものなのでしょうか?

 

「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください。先生。」

 

ハスミさんがそう言うと、隣にいたスズミさんもぺこりとお辞儀します。

 

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」

 

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」

 

「はい、皆さん本当にお疲れ様でした。」

 

皆さんが立ち去ったのを確認して、再び部屋に戻ります。

 

「あはは……なんだか慌ただしい感じでしたが……落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした。」

 

「アロナさんもですよ。今日はありがとうございました。」

 

「はい!でも、本当に大変なのはこれからですよ?」

 

「ええ、そうですね。生徒達が直面している難題……それを解決するために助力していく。簡単なことではありませんね。」

 

「はい、一見単純に見えるかもしれませんが、きっとそれは複雑で……先生の手に負えないこともあるかもしれません。」

「ですが、もちろん私も一緒です!全力でサポートさせていただきますね!」

 

「頼りにしてますよ、アロナさん。」

 

「はい!それでは先生、キヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします!」

 

「こちらこそお願いします。」

 

 

 

ーーー幻想郷、博麗神社

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「うん……いきなり悪いね、霊夢。」

 

私は今、神社に焦った様子で来て、そのまま倒れた地霊殿の猫の看病をしていた。

 

「あんたがそんなになるなんて、何があったわけ?」

 

「……その前にもう一回聞くんだけど、本当にさとり様来てないんだよね?」

 

「来てないし、見てもないわ。」

 

「…そっか……」

 

「…まさか、さとりに何かあったの?」

 

「……数時間前にさ、こいし様を探しに地上に出たんだけど……」

 

そこから私は燐に詳しい説明を受けた。

 

「要するに地上でさとりが失踪したと……」

 

「うん、もしかしたら別のところにいるかもだけど……」

 

「それはないでしょ。アイツが地上に出て、ここに来ないなんてことないもの。」

 

「……だよね…」

 

面倒なことになった。

怨霊の一件が終わったと思ったら、今度は地底の主が行方不明。

本当、勘弁してほしいわ。

 

突然、勢いよくふすまが開く。

 

「邪魔するぜ、霊夢。」

 

「…魔理沙、こんな遅くに何の用?」

 

「今日、夕飯ご馳走してくれるって言ってただろ?」

 

あぁ…そんな事言った気がする。

全く人が大変な時に……

 

「って何でここにお燐がいるんだ?」

 

私は魔理沙に事情を話す。

 

「さとりがいなくなった!?」

 

「うん、魔理沙どこかで見てたりしない?」

 

「いや、悪いが私は見てない。」

 

「本当にどこに行ったのかしら。勝手にうろつくような奴でもないし…」

 

「……なぁ、もしかしたら幻想郷にいない…ってことはないか?」

 

「はぁ?」

 

「いやもしもだよ。結界かなんかの歪みに巻き込まれて……なんて。」

 

「そ、そんな…それじゃ今、さとり様は……」

 

「……さとりは外の世界にいる事になる……今一番考えたくない可能性ね。」

 

困ったわね。こうなったら紫に頼る他はないし……

そもそも外のどこに飛ばされたかも分からないし…

 

「でもそれが一番高い可能性だから困るのよねぇ。」

 

「ゆ、紫!?いつの間に……」

 

「はぁ、まだ呼んでないんだから出てこないでよ。」

 

「いいじゃない。どうせ呼ぶつもりだったんでしょう?なら変わらないわ。」

 

「それで、その可能性が一番高いって…どういう事…?」

 

「数時間前にね、結界に歪みが生じたの。」

「貴方たちの聞いていた話からすると、さとりがいなくなったであろう時間帯と、歪みが生じた時間が一致するのよ。」

 

「そんな……」

 

「それにこの結界の歪みが、ただの歪みじゃないのよ。」

 

「どういう事…?」

 

「……誰かが意図的に歪ませた以外にあり得ない歪み方をしている。」

「もしかすると、外の世界にもいない可能性がある。それこそ、私達が認知していない全くの別世界にいる可能性もあるわ。」

 

「ま、待ってよ!じゃあさとり様を探し出すのは…!」

 

「ほぼ不可能ね。」

 

「……どうするわけ?地底の主が行方不明で見つけ出せないって、相当まずいと思うけど?」

 

「そうね。地底じゃ、あの鬼よりさとりの方を恐れて大人しくしている者もいる。」

「しばらくすれば、暴れ出すのは明白ね。」

 

「まずいことになったわね…」

 

「さとりは見つけられないし、地底の奴らはいつ暴れ出すか分からないんだろ?」

「何か別に解決法とかないのか?」

 

「解決法と言われてもねぇ…現状、さとりを何とかして見つける以外にないわ。」

「……私は一旦外の世界を探してみる。それで駄目なら……その時考えましょう。」

「地底は……そうねぇ…さとりがいなくなったことを、どれだけ秘匿できるかになるわ。」

「少なくともしばらくは大丈夫と見ていいでしょう。」

 

「もし暴れ出したときは?」

 

「その時は地霊殿とあの鬼で何とかしてもらうしかないわね。」

「それでも収まらないなら、それは博麗の巫女の仕事でしょう?」

 

「げっ…はぁ……どうしようもない時ならね。」

 

「もちろん、私もいるぜ!」

 

「霊夢たちが来てくれるなら、まぁ安心だけど。」

 

「さとりに関しては今は何もできないし、何もわからない。」

「だから、貴方が今するべき事は、地霊殿をまとめる事よ。」

 

「あ、あたいが!?」

 

「逆に誰がまとめられると?」

 

「……」

 

「とにかく、ここは一旦解散しましょう。私は情報を探ってくるわ。」

 

そう言って紫はその場から去っていった。

 

「はぁ、異変が終わったと思えばまた別の異変…少しはこっちの苦労も考えてほしいわ。」

 

「ま、まぁいいじゃないか。」

 

「はは、博麗の巫女も大変だね。」

 

「本当、大変ってもんじゃないわ。」

 

「とりあえず、あたいは地霊殿に帰るよ。これからしばらく苦労しそうだなぁ…」

 

「ええ、そうなるでしょうね。がんばんなさいよ。」

 

「うん。じゃ、ありがとね、霊夢。」

 

 

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