ターニャ・フォン・デグレチャフ、下弦会議に出る   作:らら、

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同名義のpixivにも投稿しております。ご了承ください。


#3 生存本能

(さて、どうしたものか)

僅かな星明かりの下、存在Xというクソッタレから解き放たれたターニャは熟考する。

 

確かにあのパワハラ上司の会議から解放され、人生からの解雇は免れることができた。が、これは始まりに過ぎない。何しろ先程までクビかどうかの瀬戸際だったのだ。これで助かったからと何もしなければ今度こそ挽回できないだろう。

 

必要なのは結果だ。それも早急な。百年来の怠慢をわずか数日で取り返すことができるような戦功を立てることができれば、私は今度こそ本当に解放されるに違いない。

無論その後も戦功は必要不可欠だが、この一瞬より気張る必要はないだろう。

火事場の馬鹿力は否定し難いがそもそも火事場にするなという話である。

 

ともなればまずしなければならないのは自分を知ることだ。

戦いとは情報戦である。

『彼を知り己を知れば百戦危うからず』とはよく言ったもの。

 

勝てるかもしれない戦いを挑むのは勇猛と称えられるかもしれないが勝てない戦いをするのは馬鹿のすることだ。そして私は決して賢くなど無いし、コンプレックスの塊であるという自覚もあるが、同時に人並みの文明人であるという自負もある。

従って過去の言葉に倣おうではないか。

 

 

まず試したのは魔法、術式が発動できるかどうかだ。帝国の航空魔導士として使い慣れたあの技術がこの世界でも使うことができるのならば、戦功の樹立に大いに役立つはず。が、そもそもの演算宝珠が無い。

 

あの呪われた九十五式が無いのは喜ばしいのだが、普段使っている九十七式まで無いとなれば術式の発現ができない。

つまり帝国での幼女生活で培ったノウハウがほとんど活きないということだ。

だが、全く活きない訳ではない。

 

私が帝国で培ったのは何も魔導だけではない。

魔導の力を実際に行使するための道具。つまり銃である。

銃の技術は無駄になっていない。

 

今が厳密に何年の日本なのかは分からないが、街灯らしき物があることから明治後期や大正、昭和程度だと推測できる。

 

 

 

………ん?

 

明治や大正、昭和?

帝国で体験したような戦争、それは塹壕戦で第一次世界大戦で多く見られたものだ。

そう、第一次世界大戦である。

 

「!!…クソッ!まただ!!またやられた!!クソッタレの存在Xめ!どれだけ善良な一般人を弄べば気が済むのだ!!!」

 

第一次世界大戦は西暦で言えば1914年から1918年に渡って繰り広げられた戦争だ。そしてそれは日本だと丁度大正時代に当たる。

確定だろう。

 

またしてもあの存在Xの魔の手に私はかかってしまったらしい。

解放されたとぬか喜びしていた私を見て、あのクソッタレはさぞかし下卑な笑みを浮かべ、腹を抱えて笑っていたことだろう。

呪いから解放などされていなかったのだから。

 

腹が立つ。浅慮な自分と嘲笑っているだろう存在Xにだ。横に立っている建物に拳を横殴りに叩き込む。

八つ当たりの一つしたくなる。

 

「は?」

 

叩いた柱の木がメキメキと音を立てて砕け散った。伐採をする時、木をチェーンソーで完全に切らず、自重で倒れるように切れ込みを入れる。その木が倒れる時に聞くような、そんな音だった。

 

叩き込んだつもりの腕は振り抜いており、そこには柱が抉れたことによる空洞が形成され、何事かと慌てふためいている住民まで見える。

 

ゴクリと溜まった唾を飲み込んだ。

 

飼い猫や犬にも本能はある。水が好きな猫より、嫌いな猫が多いのもその一つだろう。普段キャットフードしか与えていなくても生魚を前にすれば猫はそれに喰らいつく。

それが生きる上での本能、生存本能というやつだ。

 

そして私は今、それに直面している。

慌てる人間を見て、私は彼らをエサだと認識している。自らの血肉になるものだと分かる。彼らを喰らうことで私は強くなれる。そう本能が言っている。

 

そしてあの鬼舞辻という女は言っていた。

強くなって貢献しろ、と。

会社に勤めている以上、会社の方針には従わなければならない。

 

そうすることが給料を頂いている者としての最低限の一つであると信じる次第。

 

ならばすることは一つだ。




お久しぶりです。
まさかの三話です。そして、確約しますがあと一話はあります。
まだ一文字も書いていませんが、人物込みのシナリオはあるので。いつになるのかも分かりませんが、もう一話はあります。その展開に行くまでに何話かあるかもしれませんが、そんなに長くはならないかなと思います。

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