ターニャ・フォン・デグレチャフ、下弦会議に出る   作:らら、

4 / 8
同名義のpixivからの作者自身による転載となっています。ご了承ください。


#4 狩り

あの会議から時間が経った。

恐らくは一か月ほどだろうか。てっきり督促の連絡なり呼び出しがあるものと覚悟していたのだが、今のところは何も無い。もはや興味も無くなったのかと不安になったのだが、知らない過去百年を見逃されていることを考えればかなりの放任主義なのかもしれない。だが、たとえそうだろうと次が無いということは分かりきっている。

従って、見られていないからという職務怠慢は有り得ないのだ。

 

 

一か月ほどが経過してこの体について分かったことがいくつかある。

まず太陽の下を歩けない。出れば死ぬ。それが本能として分かる。朝の通勤ラッシュから縁遠いのは利点なのかもしれないが、時代を考えればラッシュは有り得ない。元社会人としての僅かな喜びも踏みにじる行為からはクソッタレな存在Xを想起させる。

 

次に力、それも肉体的な力だ。常人とは桁外れなほどに筋力があり、多少の傷はすぐに癒える。これは非常にありがたい。日中に外に出られないこの体で医者にかかるなど不可能だし、そもそもの話、今の自分の素性はむやみやたらに知られていいものではない。

 

私は『鬼』だ。

鬼と言えば、仏教概念においては地獄の王・閻魔の配下であり地獄に落ちた者にとっては獄卒にあたる地位にいる存在。

または酒吞童子や茨木童子などに代表される妖怪としての一面も持ち合わせる。無論ここは地獄ではないので今の私は後者にあたる。

 

つまり、今の私は物語であれば悪者というわけだ。だから。

 

「いたぞ!”あの鬼”だ!」

 

目の前でこちらを指さすのは真っ黒の服を身につけ、手に刀を持った人物である。今は見えていないが背中側には物騒にも『滅』の一字が刻まれている。

時代錯誤にも吞気に抜き身の刀を振り回す非文明人の彼らこそ『鬼殺隊』と呼ばれる集団である。『鬼』を『殺』す『隊』、今の私にとっての潜在的な脅威がこの存在だ。

 

初めて出会った時は、

「廃刀令違反で逮捕しろ!警察は何をやっている!」

などと叫んだものだが、巧妙にも隠しているらしい。奴らにも後ろめたい心があるのだろう。そのせいか街中よりはこうした辺境の方が奴らは食いつく。

つまり、今の奴らはまな板の上のタイ。引きつりそうになる頬を懸命に抑える。

帰るまでが遠足と言う。なればきっちり捌いて刺身にするなり、煮るなりにするまでが料理だ。魚を釣ったのならリリースするか調理して残さず食べるのが食品へのせめてもの礼儀と言うやつだろう。

 

目の前に一人、私を取り囲むように四人の合計五人がこの場にいるのを頭を振り、右目で確認する。これ以上出てこないのを見るにこれが奴らの総数なのだろう。

 

「水の呼…」

 

バン!と轟音が響き、何やら言いかけた者の頭が吹き飛んだ。

呆然が辺りを支配する。

視線は私の手の中、そこにあるモノに集中している。

 

私の手にあるモノ、それは銃である。正確に言えば銃に似せて作ったものなのだが。

『血鬼術』

個々によって異なるらしい私のそれは『創造』の力だ。それによって私はこの”銃”を作った。帝国での幼女生活、戦争と隣り合ったソレで培ったノウハウは活かすべきだ。それが鬼舞辻と呼ばれていた者に認められる為の最善手だろう。

 

まず一人が吹き飛んだ。そして、続けざまにもう一発。炸裂した弾丸がもう一人の頭蓋を破砕させ、その脳漿をまき散らす。啞然とする間にもう一発。数は五から二になった。

 

ガチガチと歯が震えている。

叫び声を上げながら斬りかかるバカの腹に銃底を打ち付ける。普通ならば鈍い打撲音が聞こえる程度だが、圧倒的な膂力で振るわれるそれは相手の腹を易々と貫く。念入りに頭を潰せば、導かれる結果は絶命だ。

人体に刺さった銃を血に解体。痕跡を残すなど愚の骨頂。そして、新たに銃を生成する。

 

「ひっ!」

 

開いた左目でねめつければ悲鳴が上がる。

 

「下、下弦の弐…!」

そう言った者を撃ち抜き、次に狙いを定めるのは飛んでいくカラスだ。情報を渡してはなるまい。

雲の上から地上の観測班を狙い、撃ち抜いたこともある。この程度の距離で外すようなら自分で自分の頭を撃ち抜きたくなる。

破裂音と共にカラスが落ちる。

 

外すはずも無いが、いつかに備えて今の単発式だけでなく機関銃タイプも作れないかと考えた。

 

 




4話でございます。あと1話を延期しますよと

轆轤の血気術はオリジナルです。
明かされていないので。………ないよね?明かされていたらごめんなさい。

轆轤→陶芸→製造→創造
という連想ゲームで決めました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。