魔法少女の恩師の死体を乗っ取ったクソ外道にTS転生しちゃった   作:エターナルフォースブリザード

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1話 日記

 触手さんと出会って数日が経った。

 その間、僕は実に快適な生活を送っていた。

 

 あの階段を上がると、なんとリビングがあったのだ。

 それだけじゃない、台所も、お風呂も、トイレも、なんならプールだってあった。

 前世の僕の家なんかよりよっぽど豪勢な一軒家だ。

 

「マスター、オクチガ、ヨゴレテマス」

「んっ、一人で拭けるよっ、触手さん」

「エンリョ、セズ」

 

 触手さんは案外優しい人だった。

 

 見た目はちょっと怖いけど、家事が得意で、特に何十本の手を使ってやる掃除はお手の物だ。

 

 お風呂に入るのも手伝ってくれるし、僕が粗相をしたときは黙って着替えを持ってきてくれた。

 

 ……いや、あれは触手さんが夜中寝てるとこに来たのが悪いけど。

 あんなの誰でもちびるよ。

 

 でも、最近は寝るときも一緒にだし、僕がベッドの中で不安で泣いちゃいそうになったときは、触手を束ねてあやとりみたいなのをして笑わせてくれた。

 

 意外とおしゃれとかもするらしく、この前はおかしな帽子を頭に乗せていて、思わず笑ってしまった。

 魔女がつけてそうな変なセンスの帽子で、じっと見てると、欲しがってると勘違いしたのか僕の頭に乗せてくれた。

 

 結構気に入って今も被っている。変なセンスって言ったけど意外と趣味が合うのかもしれない。

 

 こんなよく分からない場所に迷い込んで数日。

 僕は触手さんのおかげで、なんとか生きていた。

 

 分かったこともある。

 ここはどこかの森の中らしい。

 何度か家の中から出てみたけど、外には大量の木が茂っていて、人や動物なんかはいなかった。

 

 それどころか、配管や電波のアンテナの類も見つからない。

 じゃあ、家についてる電気とか水はどうやってるのって思ったけど、そこは触手さんがやってるらしい。

 

 掃除にご飯に加えて、電気の発電とか、水の浄化、あとWi-Fiも出てるらしい。スマホはないけど。

 

 ふふん、触手さんはすごいのだ。

 決してえっちなことしかできないようなそこらの触手どもとは違うのだ。

 

 でも、流石に物自体作ることはできないらしい。

 例えば、地下にあったカップ麺とかお酒はどこか別の場所から持ってきたもので、その場所は触手さんに聞いても教えてくれなかった。

 

「……持ってきた、か」

 

 ここには僕と触手さんしかいない。

 色んなとこを探したから間違いないと思う。

 

 あの酷い臭いの倉庫も探索したけど、触手さん本体の他には何もなかった。……なんか、変な液体みたいなのは床についてたけど。

 

 庭には変なのがあった。

 まんまるとした巨大な機械。

 車なんかよりずっと大きくて、長いケーブルが沢山ついていた。

 ……あれは、僕の知識には存在しないものだ。

 

 おかしなものはいくつも見つけた。

 

 だけど、人がいなかったのは間違いない。

 

 

 ……じゃあ、あのカップ麺は誰が持ち込んだ?

 

「んー、結局ここはどこなんだろう。触手さんは知ってる?」

 

「ケンキュウジョ」

「……それは、そうっぽいけど」

 

 なんとなく、あの地下室を探索した感じで分かった。

 水槽だと思ったやつも、何かを培養しているポッドみたいだ。中にどんな液体が入ってるか分からないから近寄れないけど。

 

 ――もしかして、僕は死後なんらかの実験に使われたのだろうか。

 例えば人間の意識を別の身体に移す実験とか。

 

 それなら納得……いや、人がいないことの理由にはならないな。というか、倫理的に許されないだろう。

 

「マスター、コレ」

「なにかあったの? 触手さん」

 

 そんな僕の様子を見たからか、触手さんが何かを持ってこちらに伸びてきた。

 

 持つとは言っても、触手さんに手なんかないから引っ付けて、の方が近いかもしれない。

 この前観察した結果、吸盤的なやつはあったし。

 

 そんなことを考えながら、触手さんの方を見ると、そこにあったのは薄くて四角い物体。

 

「……本?」

 

 いや、サイズ的には手帳とか、日記帳に近いな。

 僕は触手さんから受け取ったソレをペラペラと捲ってみる。

 

 ページの大半は何かの記録のようで、よく分からない。おそらく実験記録ってやつだけど、どうやら日本語で書かれていないようだ。

 英語ならちょっと読めそうなことを考えると、ロシアとかアラビア辺りの言語なんだろうか。

 

「あ、ここ読めそう」

 

 でも、一部の箇所は日本語だった。

 だけど、読みづらい。

 殴り書きというか、誰かに読ませることを目的としてないのは確かだ。

 

「……これ、日記?」

 

 それはおそらく、ここに色んなものを持ち込んだ人物が書いたであろうものだった。

 

 読めば、ここのことが分かるかもしれない。

 

 でも、不安なのは。

 そのページの一部に付着して、取れないもの。

 

 ……黒い液体。

 それは、倉庫の地面についていたのと同じ色をしている。

 

「読んだ方が、いいよね」

 

 僕は意を決して、日記の世界に飛び込んだ。

 

 

 

6月1日

 魔法少女どもが攻めてきやがった。

 あいつら徒党を組んで私を殺しに来やがる。上等だ。返り討ちにしてやろう。

 魔獣のストックは十分、作ったばかりの奴らも多いが雑魚どもの相手くらいはできるはずだ。

 あんな奴らに私の邪魔はさせない。

 

 ……だが、日本で殺し合いは奴らに分があり過ぎる。

 よって異空間まで退避した。

 

 決して逃げたわけではない。

 

 今は異空間ポッドの中で追ってきた魔法少女どもとの戦いを見守っている。

 

 見たところ優勢だ。ふん、当然だろう。

 こっちは何年かけて準備したと思ってるんだ。

 

 はっ、この程度の雑魚が私を殺せるわけがないだろ。

 クソ政府のクソ犬どもが。消えろ、私の前から。

 

 6月8日

 面倒なのが来やがった。

 何でいつもこうなるんだ。

 

 メルティ・ルナ。

 あいつは有象無象のガキどもとは話が違う。

 今日だけで魔獣が半分死んだ。全部あいつのせいだ。

 あぁ、何年、奴に邪魔されてるんだ私は。

 

 右目が見えない、潰されたからだ。

 魔法でやられたなら治癒魔術で治せたが、これは駄目だ。

 

 ……あの野郎、それを知ってて素手で殺しに来やがった。

 化け物が。

 

 魔獣の質量を押し付けて、追い返すことには成功したが、身体中が痛くて堪らない。

 

 そもそもどうやってポッドの中に入ってきたんだ? と思ったが、仲間らしきガキ三人がポッドに穴を開けていた。

 

 ……ルナのせいで仕留め損ねた。

 ガキどもを狙った攻撃は、全てルナによって防がれる。

 

 今は魔獣どもに相手をさせているが、劣勢だ。

 穴の修復が終わったら、私もいこう。

 後退はできない。

 

 6月9日

 無理だ。勝てない。全部ルナのせいだ。

 あいつが来てから魔法少女どもの士気が上がった。

 魔獣も奴に怯えて戦おうとしない。

 逃げないと駄目だ。なんで、こんなことになったんだ。

 

 ポッドの自動運転を切って、無理やり前に進ませる。危険だがやるしかない。

 ひたすら異空間の奥に進めば、以前作った避難用のアジトに着くはずだ。

 

 だが、あのクソガキ3人。

 奴らの中に、何の魔法か知らんがこのポッドを壊せるのがいるらしい。

 

 ……殺さないと駄目だ。

 魔法少女でもない私が、この状態でエンジンに穴でも開けられたら、どうなるか考えるだけで恐ろしい。

 

 これが最後の戦闘だ。

 魔獣の尻をぶっ叩いてルナの方へ向かわせた。

 ガキは私が殺す。せいぜい時間稼ぎはしてくれよ。

 

 

 6月10日

 メルティ・ルナが死んだ。

 最高だ。

 ガキ三人を狙ったら、馬鹿みたいに庇って死にやがった。心臓を潰した。あれで死なない人間はいない。

 

 あぁ、ぶっ倒れたあいつの身体を目の前で散々嬲ってやったときのガキどもの顔が忘れられない。

 一人は泣いて、一人は呆然として、一人は私を殺そうと向かって来た。

 

 ……ざまあみろ、私の気持ちが分かったか犬どもが。

 

 あは、死体は持って帰ろう。

 こいつの魔法は知らない。実験用としては最高の素材だ。

 ガキどもに興味はない。

 

 ルナの消えた今、魔獣ももうビビらない。

 戦闘が続けば、そのうち奴らも魔力切れで逃げるだろう。

 

 6月11日

 一人、追ってきているやつがいる。

 ルナを嬲ったとき、私に魔法をぶつけたやつだ。

 

 面倒くさい。

 殺しに行こうと思ったが、ルナにやられた傷が痛む。

 

 ちっ、ここは逃げるしかないか。

 

 6月15日

 追手はもう来ない。

 おそらく諦めて逃げ帰ったのだろう。

 腰抜けが。

 あんなのを庇って死ぬなんて、ルナも哀れなものだ。

 

 ……ルナか。

 ほんとうに、死んだのか?

 こいつが死ぬところなんて、見れると思えなかった。

 

 念の為首を飛ばしとくか?

 いや、それで実験に支障が出ても困るな。

 

 話しかけても返事はしない。

 当然だ。もう死んでる。

 

 ……そうだ、実験が終わったら魔獣にしてやろう。

 こいつもある意味可哀想なやつだ。

 魔獣にして、人類への復讐を手伝わせてやろうじゃないか。

 

 死体はポッドの奥にしまった。

 こいつが隣にいる状況じゃ、気が散って仕方ない。

 一応見張りはつけている。何かあったら長い身体で呼びにくるだろう。

 

 しばらくは異空間を彷徨うことになる。

 あぁ、早く帰りたい。

 死体と旅する異空間ほど、楽しくないものはないのだ。

 

 

 

 7月23日

 長い旅だったが、ようやく終わりだ。

 研究所に到着した。

 

 ルナの死体は、魔獣と一緒に地下の倉庫に突っ込んだ。

 喰わないようには言ってある。まぁ、あんな魔力の塊、恐ろしくて喰おうとしないだろうが。

 

 今日はもう寝る。

 

 やりたいことはいくらでもあるが、流石に疲労が溜まっている。

 ルナにやられた傷も治っていない。

 しばらくは療養だな。

 

 あぁ、やっとベッドで眠れ――

 

 

 なんだ?

 倉庫が騒がしい。

 もう日が変わるというのに。

 

 さては雑魚魔獣どもがルナの死体にビビったな。

 ……仕方ない。落ち着かせに行くか。

 まったく、手のかかる奴らだ。

 

 

 

 7月24日

 死体が動いた。

 意味が分からない、こいつの魔法か?

 

 ルナが来る。足音が、どんどん、近づいてくる。

 

 あ、ぁ、どうしょう、ころされる

 たたかわない、と

 

 

 

 7月25日

 ルナは、もう動かない。

 分からない、また、動くかもしれない。

 

 魔獣は全員死んだ。

 

 潰された内臓から血が止まらない。

 駄目だ、致命傷だ。助からない。

 

 あぁ、くそ。死ぬ。

 痛い、身体中が痛い。

 ルナのせいだ。なんで、死体が動くんだ、死んだんじゃないのか。化け物、が。

 

 嫌だ、死にたくない。

 こんなとこで終わるわけにはいかない、

 だって、私はまだ、あいつの――

 

 ……まだだ、そうだ、幸い材料はある。

 

 こいつの身体に私の魂を注入するんだ。

 なぜか分からないが、こいつは死体になっても動けるらしい。

 だったら、私の魂で、ルナの身体を塗り替えてやれば……。

 

 

 7月26日

 やけに低い視点、銀色の髪、小さな手。

 どうやら、実験は成功したらしい。

 

 ――あぁ、死体を乗っ取るだなんてできると思わなかった!

 こんな実験、政府の犬どものもとでは絶対にできなかった。

 なんて、素晴らしいんだっ!

 あはは、奴らが崇拝していたこいつの身体を好きにできるなんて、まるで夢のようだ。

 そうだ、この身体で魔法少女どもを殺しに――

 

 ……いや、冷静になれ。今は潜伏だ。

 魔獣も全て失った。

 一応一匹キモイのが残ってたが、大した戦力にはならないだろう。

 

 緊急用にこの場所を作っておいてよかった。

 地下の研究所にはたんまり酒とジャンクがある。

 

 今日はパーティとしよう。

 参加者は私とあのキモイ触手型だ。

 デカい口にたんまり酒を流し込んでやる。

 

 7月27日

 はきそう、さけのめない。

 くそが、るなのせいだ。

 

 8月1日

 ……まだ頭が痛い。

 検査したがアル中で死にかけていた。

 ルナめ。死してなおも私を苦しめるのか。

 

 しばらくはゆっくりしよう。

 色々と考えることもある。

 

 そういえば、放置していた私の死体が消えていた。

 まさか、触手型が喰ったのか?

 ……あぁ、倉庫に入れとくんじゃなかった。

 

 はぁ。

 あの身体を失った以上、この日記を書く意味もない。

 

 ルナの身体じゃ、例の魔術はもう使えない。

 必然的に触媒のコレの価値も消えた。

 まぁ、精神汚染やら記憶操作だかの対策にはなる。

 べつに、続けてもいいか。

 

 

 8月15日

 人間というのはつくづくクソだな。

 

 8月16日

 飯がまずい。前まではこんなこと感じたことなかった。この身体になったせいだとしたら、ルナのせいだ。くそっ、あいつは常に私を苦しませる。

 日本食が恋しい。こんな感情、久しぶりだ。

 

 8月17日

 どうせ暇だ。

 転移装置の開発をすることにした。異空間転移の技術をうまいこと応用すれば、ここから直で日本に行くことも可能なはずだ。

 そうなれば、まずいカップ麺ともおさらばできるだろう。

 

 8月25日

 転移装置が完成した。ルルパレラと名付けることにする。

 どっかのゲームの転移魔術がそんな名前だった気がしたからだ。ガキの頃の話だからよく覚えていないが。

 異空間ポッドにも内蔵した。これで緊急時の退避もお手のものだ。

 

 8月26日

 ルルパレラで買い出しに行ってきた。

 が、相変わらず日本というのは治安が悪い。ちょっと歩いただけで人攫いに目をつけられた。

 

 逃げるときにぶつけた足が痛い。

 くそっ、あんな奴ら、元の身体なら一瞬で殺せたのに。

 

 ルナのせいだっ!

 

 

8月30日

 ……人間が足りないせいで魔獣が作れない。

 

 唯一残っていた触手型も何を勘違いしたのか私を襲ってくる始末だ。

 どうにか抑えつけて教育してやったが、また襲われても面倒だ。放置していた魔獣の死体と一緒に倉庫に突っ込んでおいた。

 

 野良の魔獣を捕まえようにも戦力が足りない。

 はぁ、どうしようか。

 

 この身体も使い勝手が悪すぎる。

 死体のくせして、腹は減るし、酒には酔う。

 面は良いが背が低いせいで上の棚まで手が届かない。

 

 新しい身体を探すか?

 生きている人間の魂を塗り替えてやれば……だが、この身体を手放すのも気が引けるな。

 

 ……どうにか、いい方法を考えてみるか。

 

 8月31日

 一度実験するか。

 魂を抜いて、どうなるか確認してみよう。

 上手いこといけばもっと使いやすい身体だって手に入るはずだ。

 

 だが、今日はもう遅い。

 やるなら明日からだな。

 ……ねむい、この身体になってから、ずっとだ。

 おそらく、精神が、このちびに引っ張られてる。あぁ、きもちわるい。

 早く寝よう。

 大丈夫、実験が成功すれば、これもどうにかなる、はずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 9月1日

 く、そが。しっぱい、した。

 いしきが、とぶ、だれか、わたしのからだに、はいってきやがった。

 さいあくだ、たましいが、わたしが、ぼくで、なくなって、し、ま

 

 

 

 日記はここで終わっていた。

 

 

 

 

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