俺の回復魔法が優秀すぎるせいで、仲間が全員ビキニアーマーになった   作:エアロマグロ

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第17話:魔術学院の特別講義

 有名なった俺達の元に、一風変わった依頼が舞い込んできた。

 送り主は、王立魔術学院。

 この国最高峰の研究機関であり、マホの母校でもある。

 

「特別講義の依頼……?」

 

 宿ベッドに腰掛けながら、俺は招待状を読み上げた。

 

「『魔王軍四天王を二名も撃破した英雄たちの、革新的な戦術理論をご教授いただきたい』……だそうだ」

 

「当然の結果」

 

 マホが紅茶を啜りながら頷く。

 今日の彼女も、もちろんビキニアーマー姿だ。

 黒髪のストレートロングのお清楚ヘアが、格好と最悪のミスマッチを起こしている。

 

「私の理論が結果を出したのだから、学会が注目するのは必然……。むしろ遅すぎるくらい」

 

「まあ、確かに実績は出てるけどさ」

 

 不壊の将軍、幻惑の将軍を立て続けに撃退した。

 結果だけ見れば快進撃だ。

 しかし、その過程があまりにもひどい。学会で話す内容どころか、話して大丈夫な内容すら思いつかない。

 

「……まあ、断る理由もないか。謝礼もいいし」

 

 どうせ喋るのはマホだし、俺はあくまで付き添いだ。

 

 ということで、俺たちは魔術学院へ向かうことにした。

 

 ***

 

「ようこそお越しくださいました」

 

 学院の大講堂は、満員だった。

 ローブを纏った学生や老齢の教授たちが、固唾を呑んで俺たちを見つめている。

 厳粛な雰囲気だ。

 だが、登壇者がほぼ全裸である一点において、その空気はシュール極まりないものになっていた。

 

「では、マホさん。お願いします」

 

 学院長に促され、マホが演壇に立つ。

 彼女は杖で黒板を叩いた。

 

「本日のテーマは……『露出度と魔力吸収の相関関係』について」

 

 ザワ……と講堂がどよめく。

 マホはチョークを走らせ、人体図を描き始めた。

 

「従来の魔術理論では、魔力は体内から湧き出すエネルギーだと考えられてきた……。しかし、それは大きな間違い」

 

 マホがビシッと自分の肌を指す。

 ビキニの面積が少なすぎて、ほぼ肌だ。

 

「魔力は大気中に充満している……。それを最も効率よく取り込む器官はどこか? そう、皮膚」

 

 まるでアップルの新製品を発表するかのような堂々とした立ち振る舞いで、マホは結論を告げる。

 

「衣服は、人間が作った絶縁体に過ぎない……。分厚いローブで体を覆うことは、自ら魔力の取り込み口を塞いでいるようなもの……。愚の骨頂」

 

「な、なんと……!」

「衣服が……魔力供給を阻害していた!?」

 

 教授たちがメガネをずり落ちさせる。

 学生たちが必死にメモを取る。

 信じてるよこいつら。

 

「検証データを見せよう……。これはローブ装備時の魔力吸収量……そしてこれが、ビキニアーマー装備時の吸収量」

 

 マホがグラフを提示する。

 右肩上がりのとんでもないグラフだ。

 適当に書いたんじゃないだろうな。

 

「このように、露出面積と魔力効率は正比例する。私の計算では、露出度が九十パーセントを超えた時点で、吸収効率は通常の三倍に達する」

 

「素晴らしい……! 逆転の発想だ!」

「我々は数百年間、常識という名の牢獄に囚われていたのか!」

 

 会場が熱狂に包まれる。

 待て待て、落ち着けエリートども。

 

「質問があります!」

 

 最前列の女子学生が手を挙げた。

 真面目そうなメガネっ娘だ。

 

「理論は理解できました。では……全裸が最も効率的ということでしょうか?」

 

「理論上はイエス……。しかし、戦場では最低限の防御も必要……。そこで導き出された黄金比が、このビキニアーマー」

 

 マホが自分のビキニの紐をつまんで見せる。

 

「急所の最低限を隠しつつ、九十八パーセントの露出を確保する……。これこそが、攻防一体の究極系」

 

「おおおおお!」

「究極系!」

 

 拍手喝采だ。

 まずい。空気が完全に出来上がってしまった。

 

「ためそう! 私も、真理に近づきたい!」

 

 先ほどの女子学生が、おもむろにローブのボタンに手をかけた。

 

「え」

 

「私もだ! 魔法の真髄のためならば、恥など捨ててやる!」

 

「俺も!」

 

 一人が脱ぐと、連鎖的に周囲も動き出す。

 バサッ、バサッ、とローブが脱ぎ捨てられる音が響く。

 神聖な学び舎は、あっという間に集団脱衣所と化していった。

 

「ちょ、待て待て待て!」

 

 俺は慌てて止めに入ったが、学問の徒たちの暴走は止まらない。

 

「感じる……! 風を……大気を……!」

「これが魔力……! 肌で感じるマナの奔流!」

 

 半裸になった学生たちが、恍惚の表情で両手を広げている。

 地獄絵図だ。

 

 学院長も、すでにローブを脱ぎ去っていた。

 

「……ふむ。数十年にわたる魔術研究で研ぎ澄まされた私の感覚でわかるが、確かに魔力が活性化しておる」

 

 待ってください学院長。

 あなたはその数十年、ずっとローブを着て研究してきたんじゃないんですか。

 その間、ずっと魔力が抑制されていたということになりますけど、それで本当にいいんですか。

 

「アスク……。真理が伝播していく……!」

 

 マホが満足げに頷いている。

 

「止めてくれよ! 風紀が崩壊してるだろ!」

 

「風紀とは、凡人が天才を縛るための鎖に過ぎない……」

 

「無駄にかっこいいこと言ってもダメだ!」

 

 脱衣の嵐が吹き荒れる講堂でマホと話し込んでいると、学院長が満足げな顔で近づいてきた。

 ローブを脱ぎ捨てたままの、上裸の状態だ。

 

「本日は誠に有益な講義であった。これを」

 

 差し出された封筒が、ずっしりと重い。

 開けてみると、依頼状に書いてあった金額より三割ほど多い。

 

「……色をつけてもらいましたね」

 

「なに、あれほどの成果が出るとは思っておらなかった。感謝の気持ちだ」

 

 成果というのが何を指しているのか、俺には少し確認する勇気がなかった。

 たぶん学生たちが一斉に服を脱いだことを、この人は成果と呼んでいる。

 

 俺は封筒を受け取りながら、静かに遠い目をした。

 これでいいのか。

 まあ……謝礼は謝礼だ。もらっておこう。

 

 だが。

 後日、学院から一通の報告書が届いた。

 

 曰く、あの講義に参加した学生たちの魔術出力が、軒並み向上しているらしい。

 平均して1.4倍。上位者では2倍を超えるケースもある。

 原因は不明だが、傾向として露出の多い服装へ移行した者ほど数値が高い、と。

 

 俺はその報告書を三回読んだ。

 それでも意味が変わらなかったので、もう一回読んだ。

 

 マホのやつ。

 本当のことを言っていたのか……?

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