俺の回復魔法が優秀すぎるせいで、仲間が全員ビキニアーマーになった   作:エアロマグロ

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第20話:ビキニブーム大爆発!

 魔王軍四天王である猛毒の女王を撃退した俺たちは、王都への帰路についていた。

 今回もまたなし崩し的な勝利だったが、世界平和に貢献したのは事実だ。

 

 しかし、俺の足取りは重かった。

 その理由は、隣を歩く二人の仲間にある。

 

「アスク! 早く早く! みんなに見せびらかさないと!」

 

 戦士のモアが先頭を走りながら叫ぶ。

 彼女はいつにも増してハイテンションだ。

 それもそのはず。今の彼女の肌は、毒沼での荒療治によって、かつてないほど輝いているからだ。

 太陽の光を反射し、直視できないほどの光沢を放っている。

 

「凱旋パレードだよ! 英雄は堂々と帰らなきゃ!」

 

「……一理ある。この完璧な肌の状態、データとして民衆に提示し、その反応を収集する必要がある」

 

「お前ら、絶対に見せびらかしたいだけだろ……」

 

 俺は深く溜息をついた。

 道中、すれ違う旅人や商人たちが、ギョッとした顔で振り返る。

 それはそうだ。ビキニアーマー姿の怪しい二人組が、全身を発光させながら歩いているのだから。

 

「アスク、見て見て! このふくらはぎの張り! 毒の刺激で引き締まって、最高の仕上がりだよ!」

 

 モアが足を高く上げてポーズをとる。

 

「はいはい、すごいすごい」

 

「反応が薄いなぁ。アスクも毒沼に入ればよかったのに。あそこの毒、絶対腰痛に効くよ?」

 

「入ったら死ぬわ。俺は回復術師であって、不死身じゃないんだよ」

 

 そんな馬鹿な会話をしているうちに、王都の城壁が見えてきた。

 城門の前には、既にたくさんの人だかりができていた。

 どうやら、四天王撃破の報せは早馬によって届けられていたらしい。

 

「おお! 見ろ! 帰ってきたぞ!」

「我らの英雄、変態騎士団だ!」

「四天王を倒して、無傷で帰還したぞ!」

「あの日光を反射する輝きを見ろ! 神々しい……!」

 

 割れんばかりの歓声が上がる。

 俺は少し誇らしい気分になった。

 なんだかんだ言っても、俺たちは命懸けで国を守ったのだ。

 変な格好のパーティだが、その実力と功績は正当に評価されている……そう思っていた。

 

「皆さん! ただいまー!」

 

 モアが群衆の前で、ビシッとポーズを決める。

 右手を突き上げ、左手を腰に当て、背中を反らせる勝利のポーズ。

 その瞬間。

 惜しげもなく晒された肢体が太陽の光を浴びて、閃光のような輝きを放った。

 

 ピカーッ!!

 

「うおっ!? 眩しい!?」

「なんだその輝きは!」

「肌が……肌が発光している!?」

「これは聖なる光だ……! 女神の光だ!」

 

 ざわつく群衆。

 人々は目を瞬かせ、あるいは拝むように手を合わせている。

 モアは胸を張って、大声で宣言した。

 

「みんな見て! これがビキニアーマーの力だよ! 毒にも負けない、最強の美肌!」

 

「おおお! ビキニアーマーの力……!?」

「毒すらも克服する美肌だと!?」

 

 群衆のざわめきが大きくなる。

 

「ちょっと待てモア、誤解を招く言い方をするな。毒に負けなかったのは俺のヒールのおかげだろ……」

 

 俺の小声のツッコミは、熱狂の渦にかき消された。

 

「そうか……やはり噂は本当だったんだ!」

「ビキニアーマーを着れば、あんなに美しくなれるのか!」

「防御を捨てて肌を晒すことで、神の祝福が得られるんだ!」

 

 何か決定的な誤解が広まっている気がする。

 というか、話が飛躍しすぎている。

 しかし、興奮状態の群衆には、俺の常識的な声など届かない。

 

「その通り……」

 

 さらに追い打ちをかけるように、マホが一歩前に出た。

 彼女は懐から拡声魔法のスクロールを取り出し、起動した。

 その声は、広場全体に朗々と響き渡った。

 

「王都の皆さんに、真実をお伝えする……」

 

 マホが淡々とした口調で語り始める。

 それはまるで、学会での発表のような厳粛な雰囲気だった。

 

 マホが自分の極小面積のビキニを指差す。

 

「……重い鎧は、防御力を与える。それは正しい」

 

 群衆がゴクリと息を呑む。

 

「だが同時に……人体が大気中のマナを取り込む機能を、阻害している。研究で確認済み」

 

 マホが続ける。

 

「露出面積と魔力伝導率には、正の相関がある……衣服は、肌本来の輝きを遮断する不純物。大気のマナを直接取り込むことで、魔法効率が最大化する……結果が、この功績」

 

「さらに!」

 

 モアが追撃する。

 

「この開放感! 風を肌で感じる喜び! 今まで重い鎧の中で汗をかいて蒸れていた自分とおさらばして、新しい自分に生まれ変わろうよ!」

 

 モアが健康的な笑顔で呼びかける。

 その笑顔は、どんな演説よりも強力な説得力を持っていた。

 

 シーンと静まり返る広場。

 固唾を呑んで見守る俺。

 頼む、誰か正気に戻ってくれ。

 

「……脱ごう」

 

 誰かが呟いた。

 それは小さく、しかし確かな決意に満ちた声だった。

 

「俺も脱ぐぞ! 輝きたい!」

「私だって負けない! こんな鎧、今すぐ捨ててやる!」

「暑苦しいローブなんて必要ない!」

 

 信じてしまった。

 王都の人々は、四天王撃破という事実に目がくらみ、判断能力が低下している。

 そこに、英雄であるマホの科学的っぽい説明が加わったことで、トンデモ理論が「真実」として受け入れられてしまったのだ。

 

 ダムが決壊したかのように、広場は集団脱衣所と化した。

 老若男女が次々と服を脱ぎ捨て、下着姿になっていく。

 

 騎士が自慢のプレートメイルを脱ぎ捨て、筋肉を見せつける。

 貴族の奥様がドレスを脱ぎ、コルセット姿でポーズをとる。

 商店の主人がエプロンを引き裂き、褌一丁になる。

 

「やめろぉぉぉ! 風紀が死ぬぅぅぅ!」

 

 俺の絶叫は、歓喜の嬌声にかき消された。

 そこら中で、「見て見て! 私の肌!」「風が気持ちいい!」という声が響き渡る。

 もはや狂気の沙汰だ。

 

「ええい! 鎮まれ! 貴様ら、騎士の誇りを忘れたか!」

 

 その時、怒号が響いた。

 現れたのは、王都の治安を守る憲兵隊の隊長だった。

 彼は全身を分厚いフルプレートアーマーで固めており、顔だけを出して群衆を睨みつけている。

 おお、まともな人がいた!

 

「隊長! これを取り締まってください!」

 

 俺は救世主を見る目で彼に駆け寄った。

 だが、マホがスッと隊長の前に立ち塞がった。

 

「非効率……。貴方のその鎧、無駄が多い」

 

「なんだと? これは王家より賜った由緒ある鎧だ!」

 

「見て……。左肩と脇腹の装甲が凹んでいる」

 

「む……!」

 

「その傷は、重装甲による機動力低下が原因。……もし貴方がビキニアーマーを装備していれば、その攻撃は回避できたはず」

 

「馬鹿な! 鎧を着ていなければ死んでいた!」

 

「いいえ。鎧を着ていたから被弾した……当たらなければ、防御力はゼロでいい。圧倒的な速度と、肌で風を感じるセンスがあれば、全ての攻撃は見切れる」

 

 マホが隊長の目の前で、高速の反復横跳びを披露した。

 残像すら残らない動きに、隊長が目を丸くする。

 

「鎧を脱げば効率よくマナを取り込めて、かつての全盛期のキレが戻るはず」

 

 隊長の手が、震えながら鎧の留め具にかかる。

 

「全盛期の……キレ……」

 

 ガシャン、ガシャン。

 重厚な鎧が地面に落ちる音が響く。

 数分後、そこにはパンツ一丁になった隊長の姿があった。

 

「あ、あぁ……! 軽い! 体が羽のように軽いぞ!」

 

 隊長がその場で高く跳躍した。

 かつてない高さまで飛び上がった彼は、空中で涙を流して叫んだ。

 

「これがッ! 本当の私だァァァッ!」

 

「隊長ぉぉぉ!」

「俺たちも続きます!」

 

 隊長の部下たちも、次々と鎧をパージし始めた。

 終わった。

 王都の治安を守る最後の砦が、今陥落した。

 

 そんな中、商魂たくましい男が一人。

 広場の隅にある武器屋の親父だ。

 彼は店の前に金床を引き出し、ハンマーを振り上げて叫んでいた。

 

「さあさあ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 今なら手持ちの重たい鎧を、最新流行のビキニアーマーに改造するぜ! 工賃は特別価格だ!」

 

「おじさん、私のこの革鎧もビキニにして!」

「私のローブも! できるだけ露出度を高めて!」

 

「おうよ! 任せときな! 布面積を減らす分には材料費もかからねぇから、安くしとくぜ!」

 

 武器屋の前に行列ができる。

 親父は次々と持ち込まれる鎧や服を、容赦なく裁断し、削ぎ落としていく。

 防御力を捨て去り、露出度を高める改造。

 それは職人のプライドとしてどうなんだと思ったが、親父の顔は充実感に満ちていた。

 需要があるなら、それに応えるのが商人の鏡なのかもしれない。

 

「これは……とても素晴らしい光景ですね」

 

 ふと、背後から声がした。

 

 振り向くと、そこには聖女ルナが立っていた。

 彼女もまた、この騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。

 かつての純白の修道服の面影は、もはや欠片もない。

 胸元の十字架だけが原型を留めており、薄絹1枚の下はほとんど全裸だ。

 もはや痴女を超えた露出で、エロさを超えた迫力を感じざるを得ない。

 

「ルナ! 止めてくれ! お前の言葉なら、みんな聞くはずだ!」

 

 俺は縋るような思いで言った。

 聖女の権威があれば、この集団ヒステリーを鎮静化できるかもしれない。

 

「いいえ、アスク様。止められません」

 

 ルナは首を横に振った。

 

「これは解放なのです。人々は、神が与えたもうた肉体の美しさを、衣服という罪で隠してきました。しかし、マホ様とモア様の勇気ある行動が、人々の心の扉を開いたのです」

 

「は?」

 

「見なさい、あの人々の笑顔を。恥じらいを捨て、ありのままの自分を晒け出す喜び。これこそが、神が望まれた楽園の姿……!」

 

「いや、ただの露出狂の集団だろ!」

 

「素晴らしい……。私も露出を広める手伝いをせねば」

 

 ルナが胸の前で手を組み、祈りを捧げ始めた。

 ダメだ、こいつも手遅れだった。

 聖女のお墨付きを得てしまったビキニブームは、もはや誰にも止められない。

 

「ふふっ。アスク、これが私たちが救った世界だよ」

 

 モアが満足げに笑い、俺の肩を叩く。

 

「……こんな世界なら、滅んだほうがマシだったんじゃないか?」

 

 俺は遠い目をして空を見上げた。

 王都の上空には、脱ぎ捨てられた服や鎧の破片が舞い上がり、キラキラと輝いている。

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