俺の回復魔法が優秀すぎるせいで、仲間が全員ビキニアーマーになった   作:エアロマグロ

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第27話:二人からの贈り物

 王都の城門が見えてきた。

 俺たちは四天王最強、吸血鬼の王の死体を担いで、門番の前に立った。

 ちなみに死体は腐らないよう、マホが氷漬けにしている。

 

「お、変態騎士団じゃないか! って、なんだそれ!?」

 

 門番が担いでいる死体に気づき、驚きの声をあげた。

 まあ、いつもの変態集団化と思ったら、氷漬けの死体を引きずっているのだ。誰でも驚くだろう。

 

「ああ、こいつは……」

 

 俺が説明しようとすると、門番の一人が叫んだ。

 

「その顔! 手配書の吸血鬼の王じゃないか!?」

 

「えっ」

 

「間違いない! 四天王最強のヴァンパイア・ロードだ! ま、まさか、あんたたちが倒したのか!?」

 

 門番たちの態度が一変した。

 畏怖と尊敬の眼差しで見つめられる。

 まあ、倒したというか、勝手に食中毒で死んだだけなのだが。

 

「あー……まあ、そんなところだ」

 

 嘘は言っていない。

 結果的に倒されたわけだし。

 

「すげぇ……! 四天王を全員討ち取るなんて!」

「おい、すぐにギルドと王宮に知らせろ! 英雄の帰還だぞ!」

 

 門番たちが騒ぎ出した。

 あっという間に話が広がり、城門が開け放たれる。

 そこには、噂を聞きつけた群衆が集まっていた。

 

「英雄だ! 英雄のお帰りだ!」

「四天王を倒したらしいぞ!」

「見てみろ、あの氷漬けの死体を! すごい迫力だ!」

 

 死体を見世物にするな。

 俺たちは歓声の中、ギルドへと向かった。

 モアとマホは慣れたもので、観衆に向かって手を振っている。

 

「みんなありがとう! 私の剣技とビキニアーマーのおかげだよ!」

 

「……わたしの魔力とビキニアーマーのおかげ」

 

 調子のいい奴らだ。

 俺はため息をつきつつも、その賞賛に悪い気はしていなかった。

 

 ***

 

 冒険者ギルド。

 カウンターに死体をドサッと置くと、受付嬢が悲鳴を上げた。

 ギルドマスターが飛び出してきて、死体を確認する。

 

「こ、これは紛れもなく……ヴァンパイア・ロード! 本当にお前たちが……?」

 

「まあ、寝込みを襲ったというか、向こうが襲ってきたというか」

 

 俺は曖昧に答えた。

 ギルドマスターは感極まった様子で俺の手を握った。

 

「素晴らしい! これで王都の脅威は去った! 約束通り、懸賞金を支払おう!」

 

 金貨の入った袋が差し出された。

 その額、なんと金貨1000枚。

 一生遊んで暮らせる金額だ。

 

「やったー! 大金持ちだ!」

 

「……これで新しい研究機材が買える」

 

 はしゃぐ二人を見て、俺は小さく息を吐いた。

 最近の戦いでも、俺はひたすら二人を回復し続けたせいで体が泥のように重い。

 大金が手に入ったことで、張っていた気が緩んだのだ。

 

「よし、とりあえず宿に帰るぞ……俺はちょっと横になって休む」

 

 だがまあ、これだけの大金が手に入ったのなら、苦労した甲斐もあったというものだ。

 ふらつく足取りで歩き出す俺の背中を、モアとマホがいつになく真剣な顔で見つめていたことに、その時の俺はまだ気づいていなかった。

 

 ***

 

 数日後。宿屋の部屋でモアとマホが改まった様子で正座していた。

 二人の表情は、これまで見たことがないほど真剣だった。

 

「どうしたんだ、急に畏まって」

 

 俺が首を傾げると、モアが深く頭を下げた。

 

「アスク。今まで私たち、何もわかってなかった……本当に、ごめんなさい」

 

「……私たちの配慮不足と、無意識の搾取を謝罪する」

 

 マホまでしおらしく頭を下げる。

 俺は目を丸くした。

 

「おいおい、なんだよ。急にそんな……」

 

「私たち、ようやく気づいたの」

 

 モアが顔を上げ、涙ぐんだ瞳で俺を見つめた。

 

「アスク、最近ずっと顔色が悪いし、戦いのたびに倒れそうになってるじゃない? 私たち、強敵と戦うたびに、アスクの回復魔法に頼りきりだった。……その魔法がどれだけアスクの体に負担をかけてるか、全く考えてなかったんだよ」

 

「……私の計算によると、アスクの疲労の蓄積はすでに限界に近い。このまま回復魔法を行使し続ければ、最悪の場合、過労死する」

 

 ――ああ。

 俺は言葉に詰まった。目頭が熱くなるのを感じた。

 

 こいつら、俺の体調をそんなに心配してくれていたのか。

 確かに俺は限界まで回復魔法を使うたびに、慢性的な胃痛や疲労に襲われていた。

 まさかこの二人が俺の命の心配までして、思いやってくれる日が来るなんて。

 

「……お前ら」

 

 ぽろり、と。俺の目から一筋の涙がこぼれた。

 苦労が、報われた気がした。

 

「もういい。俺は気にしちゃいないさ。お前たちが無事なら、それが一番の……」

 

「ううん! だから、二人で決めたの!」

 

 モアが力強く叫び、マホが背中の後ろから木箱を取り出した。

 重厚な装飾が施された、明らかに高級な箱だ。

 

「……吸血鬼を倒したギルドの賞金、金貨1000枚のうちの、私たち二人の取り分で……」

 

 マホが厳かに箱を開ける。

 中には、神々しい光を放つ金属片が収まっていった。

 ん……金属片? これは……

 

「王都最高のドワーフの鍛冶師に頼んで特注した。オリハルコンを100%使用した、絶対不壊の最強防具」

 

「これさえあれば、アスクの魔法の負担は劇的に減るよ!!」

 

「えっ」

 

 俺の涙が、スッと引っ込んだ。

 負担が減る? なんで? 俺が着るから?

 

「……空気中のマナ吸収効率は肌の露出面積に比例する。つまり、布の面積を極限まで減らして肌を外気に晒せば、アスクのマナ自己回復力は跳ね上がり、身体的負担を大幅に軽減できる」

 

「だからね! アスク専用のマイクロビキニアーマー!!」

 

 モアが笑顔でその金属片を掲げた。

 それは、どう贔屓目に見ても装備だとは認めたくない。何度見直しても金属片だ。

 

「鍛冶師の親方も露出こそが至高だって、泣いて喜んで作ってくれたの! 風通しは最高で蒸れないし、マナ吸収を邪魔しないように極限まで小さくしたんだよ!」

 

「……さあアスク、今すぐ装備して。今までの負担とはおさらば」

 

 マホが服を脱がせようとし、モアが金属片の紐を広げて俺に即座に着せようとする構えだ。

 

「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁっ!?」

 

 俺は悲鳴を上げ、部屋の窓枠に飛び乗った。

 

「ふざけんなぁぁぁっ! 誰がそんなモン着るかァァァァァッ!!」

 

 俺は窓から王都へと全力で飛び降りた。

 

 王都の喧騒の中、大金をつぎ込まれた無敵の男物ビキニを持って追いかけてくる美少女二人と、ボロボロのローブを翻して全力疾走する男一人。

 どうしてこうなったのか。俺の感動の涙を返してほしい。

 

 王都の空に、変態騎士団リーダーの絶叫が虚しく響き渡っていた。

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