俺の回復魔法が優秀すぎるせいで、仲間が全員ビキニアーマーになった   作:エアロマグロ

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第28話:記者会見

 吸血鬼の王を討伐……したことになり、残す敵は魔王だけとなった。

 最後の決戦を前に、王都では俺たちへの壮行会が開かれていた。

 広場には溢れんばかりの人だかりができている。

 王都中の市民が集まったのではないかというほどの熱気だ。

 

 彼らの視線は、壇上の俺たちに釘付けになっている。

 そして、その最前列には、目を血走らせた記者たちの姿があった。

 

「王都の英雄! 変態騎士団のリーダー、アスク氏! 今回の勝因は何だったのでしょうか!?」

 

 冒険者ギルド広報部の記者が、魔道具のマイクを突きつけてくる。

 いきなり変態呼ばわりか。

 俺は眉間を押さえながら、真実を答えようとした。

 ここで毅然とした態度を示さなければ、俺たちの二つ名は永久に変態騎士団で固定されてしまう。

 

「あー、まず訂正させてくれ。俺たちは変態騎士団じゃなくて、決死騎士団だ。自分で言い出してなんだが、ものすごく久しぶりに聞いたなその名前」

 

「ええ、世間でもすっかり忘れ去られています。読者アンケートでは変態騎士団が支持率98%で、決死騎士団はわずか2%です」

 

「圧倒的すぎるだろ。その2%の物好きは誰の話だよ」

 

「あなたのご両親です」

 

「こんな名声の響き方してごめん、父さん母さん!」

 

 俺のツッコミは、広場のざわめきにかき消された。

 記者は全く悪びれる様子もなく、さらにマイクを近づけてくる。

 

「では改めまして。今回の勝因についてお聞かせください。四天王最強と言われた吸血鬼の王を、一体どのような戦術で打ち破ったのですか?」

 

 記者の目がギラリと光る。

 周りの観衆も固唾を呑んで見守っている。

 俺はため息をつきつつ、ありのままの事実を話すことにした。

 

「いや、勝因というか……向こうが勝手に死んだというか……」

 

「勝手に死んだ!?」

 

 記者が目を丸くする。

 ざわ……と広場がどよめいた。

 

「ええ。寝込みを襲ってきたんですが、俺たちの血を吸ったのか朝起きたら死んでて……。多分、食中毒か何かで……」

 

「食中毒……!」

 

 記者が顎に手を当てて考え込む。

 そして次の瞬間、何かに気づいたように顔を上げた。

 

「なるほど! つまり、こういうことですね!」

 

 記者がバッとメモを取り、大声で叫んだ。

 

「圧倒的なビキニオーマーの輝きに、吸血鬼の王すら目を焼かれて自滅した!」

 

「なんでそうなるんだよ! 話聞いてた!? 食中毒だって言ったよね!?」

 

 俺の訂正は完全に無視された。

 記者は興奮気味に、隣に立つモアへマイクを向ける。

 

「モア様! ビキニアーマーの輝きとは、具体的には!?」

 

 モアは待っていましたとばかりに、聖女のビキニを堂々と見せつけた。

 朝日を浴びて、健康的な肌と、極小面積の金属片が眩い輝きを放つ。

 

「うん! やっぱり露出だね! 肌が出てる方が気合が入るし、吸血鬼も私の肌に見とれて死んじゃったんだと思う! 防御力より魅力で殺す、みたいな?」

 

「おおお! 名言出ました! 防御力より魅力! いただきました!」

 

 記者が猛烈な勢いでメモを取る。

 待て待て、そんな危険な思想を広めるな。

 

「モア様、その露出度の高い装備に不安はないのですか。敵の攻撃が当たれば……」

 

「当たっても平気だよ」

 

 モアは太陽のような笑顔で言い切った。

 

「だって、怪我してもアスクがすぐに治してくれるから。だから自分を守ることは考えないで、ひたすら敵を殴ることに集中できるの」

 

「おおおっ。肉を斬らせて骨を断つ。背後の仲間への絶対的な信頼があるからこそ成り立つ、常人には不可能な捨て身の境地ですね!」

 

 記者が感涙を流さんばかりに頷いている。

 

「美談みたいにまとめるな。代わりに俺の胃が削れてるんだよ」

 

「マホ様はいかがですか!? 魔術的な見地から、その極限まで露出した衣装の威力を!」

 

 マホが長い黒髪を払いながら、前へ進み出る。

 彼女のビキニはモアのものより更に面積が小さく、もはや紐である。

 黒髪ロングの知的な容姿と、その痴女のような格好のギャップが凄まじい。

 

「……魔力効率の極大化。衣服は魔力の吸収を阻害する絶縁体。故に、全裸こそが最強の魔術師の姿……」

 

「全裸こそ最強!」

 

「……しかし、公序良俗という名の足かせがあるため、妥協案としてこの形に落ち着いた。これが、理論値上の限界露出」

 

 マホが淡々と語るトンデモ理論に、記者たちが「ほほう……」と唸る。

 

「では、マホ様にとって服とは何ですか?」

 

「……拘束具。だから私は、この啓蒙活動を通じて世の魔術師たちから服という概念を消し去るつもり。ゆくゆくはビキニではなく、全裸で……」

 

「拘束具からの解放! いただきました!」

 

「やめろ! 変な見出しにする気だろ、お前ら!」

 

 俺は必死に止めようとしたが、もう手遅れだった。

 広場の熱気は最高潮に達している。

 

「変態! 変態! 変態騎士団!」

 

 誰からともなく、謎の変態コールが巻き起こった。

 広場を埋め尽くす人々が、拳を突き上げて連呼する。

 褒め言葉として定着してしまっているのが恐ろしい。

 

 ふと観客席を見ると、信じられない光景が広がっていた。

 最前列で熱狂しているファンたちの格好だ。

 男も女も、鎧の下がスカスカなのだ。

 中には、ビキニアーマーの者が入れば、単なる下着姿の者もいる。

 

「見てくださいアスク様! 僕もビキニを買いました!」

「私もです! 風通しが良くて、魔力がみなぎる気がします!」

 

 若い冒険者たちが、目をキラキラさせてパンツ姿を晒している。

 俺たちの影響で、王都のファッションセンスが致命的に狂い始めていた。

 経済効果も凄まじいことになっているらしい。

 ビキニショップ、脱毛サロン、ボディオイル専門店……王都のメインストリートは今や他国から変態通りと呼ばれているとかいないとか。

 

「アスク氏、最後に国民へ一言!」

 

 記者が最後の締めを求めてきた。

 俺は深く息を吸い込み、マイクに向かって叫んだ。

 

「え、あ、はい。……あの、危険なので真似しないでください。俺たちは特殊な訓練を受けて……というか、こいつらが特殊なだけで……」

 

「危険を恐れずさらけ出せ! 変態騎士団からの熱いメッセージです!」

 

「言ってない! 一言も言ってない!」

 

 俺の否定の言葉は、大歓声にかき消されて空へ消えた。

 もうダメだ。

 何を言っても無駄だ。

 

 翌日。

 王都新聞の一面には、デカデカとこんな見出しが躍った。

 

『変態騎士団、魔王城へ! 吸血鬼も即死する悩殺ビキニの威力! 全裸こそが最強の装備と断言!』

 

 記事には、モアの満面の笑顔とマホのドヤ顔、そして俺の引きつった顔が掲載されていた。

 さらに、特集記事として『魔術師マホ直伝! 今日から始める露出魔術入門』や『モア流・露出戦闘術』などが掲載されている。

 

 俺は新聞を握りつぶし、胃薬を大量に飲み込んだ。

 

「……もうやだ、この国」

 

 宿の食堂で項垂れる俺に、女将が朝食を持ってきた。

 彼女のエプロンの下も、心なしか露出度が高い。

 

「元気お出しよ、英雄様! ほら、今日は大サービスでビキニ盛りにしといたから」

 

「ビキニ盛りって何だよ……」

 

 出された目玉焼きは、黄身が三つ並んでビキニのような形になっていた。

 食欲が失せるわ。

 

 俺たちの評判は、完全に変態のカリスマとして固定されてしまった。

 だが、嘆いていても仕方がない。俺は居心地の悪い王都から離れるべく、魔王城へと出発した。

 

 城門を出る俺たちの背中に、門番が敬礼を送る。

 彼もまた、鎧の隙間から逞しい胸毛を晒していた。

 

「ご武運を! 変態騎士団に栄光あれ!」

 

「……行ってきます」

 

 俺は力なく手を振り返した。

 魔王を倒せば、この狂ったブームも終わるだろうか。

 いや、むしろ伝説になって永遠に残る気がする。

 そんな絶望的な予感を抱きつつ、俺たちは荒野へと足を踏み入れた。

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