俺の回復魔法が優秀すぎるせいで、仲間が全員ビキニアーマーになった 作:エアロマグロ
魔王城へ向かうルートは、偶然にも俺の故郷の近くを通っていた。
最後の決戦になるかもしれない。
俺は少し寄り道をして、両親に顔を見せることにした。
「ここがアスクの実家? のどかないいところだねー!」
モアがキョロキョロと辺りを見回す。
俺の故郷は、山間にある小さな農村だ。
人の良い村人たちが、畑仕事をしながらのんびりと暮らしている。
そんな平和な村に、ビキニアーマーという劇物が投下された。
「お、おい見ろよ……」
「なんだあの格好……」
「都会じゃああいうのが流行ってるのか?」
村人たちが手を止め、目を丸くしてモアたちを見ている。
刺激が強すぎる。
日常になりすぎて麻痺していたが、ここに来る前に服を着てもらうべきだったな。
後悔先に立たず。俺は頭を抱えながら、実家の扉を叩いた。
「ただいま。父さん、母さん」
「おや、アスクじゃないか!」
扉が開くと、少し白髪の増えた父と、エプロン姿の母が出てきた。
二人は俺の無事な姿を見て、目を細めた。
「よく帰ってきたな。元気そうで何よりだ」
「王都で冒険者として頑張ってるって、手紙は読んでたわよ」
久しぶりの家族の団らん。
俺はホッとして、肩の力を抜いた。
だが、父の視線は俺の後ろ、モアとマホに向けられていた。
「うわっ……そちらのお嬢さん方は?」
「……ああ、パーティーメンバーのモアとマホだ。優秀な仲間だよ」
「はじめまして! モアです!」
「……マホ。魔術師」
二人が挨拶する。
父と母は、二人の格好を上から下まで凝視し、それから顔を見合わせた。
微妙な沈黙が流れる。
そして、父がおずおずと口を開いた。
「その、アスクよ。……お前、あの……あれはどうなんだ、変態のほうは……」
ズバリ聞かれた。
いきなりのことで、俺の心臓が止まりかける。
「は!? な、何のことだよ父さん!」
「いや、村にも噂が届いててな……。変態騎士団とかいう、露出狂の集団が王都で暴れまわっていると」
田舎の情報網を舐めていた。
行商人や旅人を通じて、噂はここまで届いていたらしい。
「ち、違うよ! あれは誤解なんだ! 俺たちは真面目な冒険者で……」
「でも、そのお嬢さんたちの格好は……」
母が困惑したように言う。
確かに、説得力ゼロだ。
二人ともは聖女のビキニを着込んでいる。
どこからどう見ても、露出狂の集団である。
「これは……その、機能性を追求した結果というか……流行というか……」
俺がしどろもどろになっていると、モアがニコニコしながら口を挟んだ。
「お父さん、お母さん! 安心して! アスクはすごいんだよ!」
「ほほう、そうなのか?」
「うん! アスクはね、私たちがどんなに酷い怪我をしても治してくれるの! だから私たちは、安心して裸になれるんだよ!」
「裸に……」
父の目が泳いだ。
言葉のチョイスが致命的だ。
「……アスクの回復魔法があれば、衣服など不要。私たちは彼に全てを委ねている」
マホも淡々と追撃する。
「全てを委ねる」とか言うな。誤解が深まるだろ。
「そ、そうか……。アスク、お前……」
父が俺の肩に手を置いた。
その目は、何かを諦めたような、それでいて息子を見守るような、生温かい色をしていた。
「立派になったな」
「なってないよ!? 変な方向に解釈しないでくれ!」
「いいんだ。男なら、多少の性癖の歪みは……いや、変態と呼ばれるほどの道を見つけたのなら、父さんは何も言わん」
「違うって言ってるだろ!」
「母さんも応援してるわよ。……孫の顔が見られるなら、お相手が露出狂でも構わないわ」
「飛躍しすぎだろ!」
両親は完全に「息子はそっちの道で成功した」と納得してしまった。
弁解しようにも、目の前にいる二人のビキニ姿が動かぬ証拠になりすぎている。
「さあ、上がってくれ。採れたての野菜があるんだ」
「皆さん、歓迎しますよ」
「……お邪魔します」
俺は力なく項垂れた。
実家での団らんは、まるで針の筵のようだ。
モアとマホは田舎の野菜や果物に無邪気に喜んでいるが、俺は父からの「で、どっちが本命なんだ?」という小声の質問をかわすのに必死だった。
数時間後。
俺たちは村を出発した。
両親は村の入り口まで見送りに来てくれた。
「アスク、体に気をつけるんだぞ。……あと、捕まらないようにな」
「たまには帰ってくるのよ。……風邪引かないように気をつけてね」
最後まで誤解は解けなかったが、久しぶりに両親の顔を見れたので、来てよかったかな。
俺は涙目で手を振り、故郷を後にした。
「いいご両親だったねアスク!」
「……理解のある親」
二人は満足そうだ。
俺の社会的地位が、故郷でも完全に崩壊したことを除けば、平和な帰省だったと言えるかもしれない。
家族に別れを告げ、俺たちは再び魔王城への道を歩き出した。
失った名誉を取り戻すために。