悪の組織幹部高校生、拗らせた前世の願いを叶える為に奔走する!!   作:マスターBT

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 十話ぐらいまでは毎日一話投稿する予定。


幹部襲名と堪えぬ願い

零二(れいじ)起きたようだな」

 

 昨日まで俺は折角の転生だというのに、生きていた頃と同じ現代日本で胸の何処かに退屈さを抱え込んでいたんだが……人生、どう転がるか分からないものだな。

 

「お前の()()()()は無事に終了した。私の息子だ、脳の方は神経系の反応を格上げしただけで洗脳まではしていない。無論、私の名は分かるな?」

 

「……あぁ。アンタは常世 空(とこよ そら)俺の親父で、世界征服を企む悪の組織『オリンポス』のリーダー『ケイオス』そうだろう?」

 

 誰が聞いたって厨二病全開としか思えないやり取りではあるんだが、これが嘘偽りのない事実だと言うのだから笑えてもくる。

 手足が金属製の拘束具で動かせない俺を見下ろしているぱっと見では、精々が二十代後半ぐらいにしか見えない悪人面の男は感情が一切伺えない空の瞳で少しの間、俺を見つめるとゆっくりと微笑みを作り出した──あぁ、作ってるだけで本心からは全く笑っていないものだな。

 

「流石は私の息子だ。お前には今日より、『オリンポス』の幹部として仕事をして貰う。コードネームは『エレボス』とする」

 

 エレボス……ギリシア神話における原初の幽冥を神格化させたもので地下世界を意味するだったか。

 まぁ、ケイオスから産まれた存在ってニュアンスも兼ねているんだろうけど、実は転生した人間って秘密と妙に相性が良いな。

 

「了解。で、俺は何をすれば良いんだ?」

 

 手足の拘束が外され、痛む手を揉みながらもう笑みを作るのを辞めている親父に問いかけるが、大凡の理由は思いつく為、ちょうど良い機会として俺の記憶を整理させて貰おうか。

 

 俺の名前は『常世 零二』でこの世界に転生する前の名前はもう忘れてしまったが、アニメや特撮が程々に好きなニワカオタクだった気がする。

 日常系や恋愛系はあまり好きではなかったが、日常から離れた戦闘物が好きでロボット物もよく見ていたが、特に心を惹かれて観ていたのは日曜日にやっている仮面ライダーや、戦隊ヒーローといった正義と悪が描かれるものだ。

 

 ああいう作品は物にもよるが、立場を変えてみれば悪役側の理屈も案外、筋が通る物が多く単なる正義と悪のぶつかり合い……ではなく、正義と正義がぶつかり合ったりして面白いのだ。

 俺の親父みたいに純粋悪が正義に打ち倒されるというのも、王道らしく嵌ったがワクワクとした気持ちを持って観れたのは正義と正義のぶつかり合いだった気がする。

 

 で、そんな物ばかり見漁っていれば当然ではあるのだが、自分の中の善悪の価値基準というのがそれはもう見事に捻くれてしまい前世では行動に移す事はなかったが、世間一般に悪とされる事も自分だったらどうするか等と思考に耽るぐらいには拗らせてた。

 

「──という訳だ。分かったか?エレボス」

 

 っと、全く聞いていなかったが親父の話が終わったらしい。

 

「あぁ。春からの高校生活で、目下の敵つまり『ヒーロー』を探し出して始末すれば良いんだろ?」

 

「……ちゃんと聞いていた様だな」

 

 いえ、全く聞いてません。

 どうせ、そんな事だろうなとニワカオタク知識から引っ張ってきただけです。

 しかし、この世界に転生してから16年を迎えようとしている訳だが、親父の組織は隠れ潜んでいたから兎も角として、『ヒーロー』を名乗る様な非日常を見聞きした覚えはないんだが、俺は節穴だったか?

 

「今のお前ならば我々の戦いを隠した現実改変にも気が付ける。違和感を探れ、真実はそこにある」

 

 あぁ、そういう事ね。

 どうやら俺達の敵である『ヒーロー』側も随分と大きい組織らしい。

 確かに改造される前の唯の一般人でしかない俺が現実改変に気が付けと言うのは無茶だな。

 

「話は以上だ。手術の疲れもあるだろう、今は休め」

 

「はい」

 

 神妙な顔で頷き、手術室を出て行く。

 簡易的な光源が照らす無機質な廊下に、足音をコンコンと響かせながら歩いていき空間が歪曲している白い光の壁に入っていけば、あら不思議と俺の部屋に繋がっていた。

 幹部だとなんだといっておきながら、本部の場所を隠すとは実に親父らしいな。

 

「……さて、と」

 

 椅子を引き、どかっと座り込み今にも大笑いをしそうになる口元を覆い隠して俯く──この部屋すらも監視されてる可能性がある以上、不必要に言葉を漏らすのは危険だろう。

 ただまぁ、今ばかりはこの転がり込んできた非日常を噛み締めるぐらいは許して欲しい。

 

 ──拗らせた俺の善悪論は一つの結論を導き出している。

 そんな機会が訪れるわけもないと思っていた前世や、変わっていないと思っていた昨日までの俺は実行する事はなかっただろうがこんな絶好な機会が訪れたのなら俺は一つ、やってみたい事がある。

 

 悪でありながら、正義に味方する──そんな敵役を。




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