悪の組織幹部高校生、拗らせた前世の願いを叶える為に奔走する!!   作:マスターBT

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一旦、ストック切れです


悪巧みと……

「貴方達を担任する事になりました狐坂 百合(きつねざか ゆり)です。教師としては新米も新米。皆さんと共に成長出来ると嬉しいですね」

 

 手入れの行き届いた美しく長い黒髪を耳にかけながら、微笑む俺達の担任である狐坂先生。

 俺の好みではないが、思春期にとって歳の近い美人な人というのは目の前に差し出された肉厚のステーキと同じくらい、興味関心を強く惹かれるものであって耳を澄ましてみれば──

 

「狐坂先生美人じゃね?」

 

「恋人とか居ないならワンチャン……」

 

「……あり」

 

 ──こんな声が聞こえてくるのも致し方ないだろう。

 冷静に考えれば特別な時間を何一つも共に過ごしていない大人が高校生のガキを恋人として選ぶ訳がないのだが、思春期という自分が無敵になった様な錯覚を覚える男にとって最も馬鹿な状態なので、小声を出している男子は誰一人として当然の答えには辿りつかない……まぁ、俺だって転生してる下地が無ければ仲間入りしてただろうしな。

 

「さて、入学式を終えたばかりの皆さんにはこれからやりたい事が色々とあるとは思いますが、少しだけ先生に時間をください。先ず、校長先生のお言葉にもありましたが我が校は生徒の自主性を尊重するのが基本の方針ですが、それはルールを破って良い免罪符ではありませんからね?」

 

 そりゃ当然のことだが、見事に浮ついている連中に届くか?

 下手すりゃ堅苦しい先生だと折角、見た目という第一印象で稼いだ高めの好感度が落ちてしまう発言だが。

 

「毎年居るらしいんですよ。自由な校風を都合よく解釈して入学して早々に大馬鹿をやらかす生徒が。ですので、これだけは折角のおめでたい空気に水を刺す現実ですが、この場で一言申しておきました」

 

 なるほどね……まぁ、そういう連中もいるだろうな。

 狐坂先生の意図に納得していると教卓の方から、パンっと拍手が一度だけ鳴り自分が作り出した真面目な空気を払拭するともう一度、人好きする柔和な笑顔を浮かべた。

 

「それじゃあ初日の挨拶はこんなものかな。みんなの自己紹介とかは明日、するとして今日はもう解散しましょう。配布した教科書とかはしっかり持ち帰って名前を記入してくださいね」

 

 早いな……高校の入学式ってこんな早かったか。

 そういや、鴉羽先輩も明日から部活動勧誘が始まるとか言ってたし、本番は明日からってのも納得だな。

 

「……あ、君はちょっと待ってて」

 

「え、あはい」

 

 俺の席は最後列の筈だが、いつの間に目の前に?そんなに考え事に耽っていただろうか。

 俺と狐坂先生の会話が聞こえていたのか楽しげに会話をしながら、次々と教室を出ていくクラスメイト達に混じり、一緒に帰ろうと思っていたのか芹香さんがチラチラと見てくるので手を振っておくと小さく頷いて教室を出てくれた。

 

「……ふぅ。これなら話せるかしらね」

 

「ん?」

 

 雰囲気が変わった?

 お淑やかな雰囲気から、触れるもの傷付ける物々しい雰囲気になった狐坂先生がパチンと指を鳴らした瞬間、世界から音が消えた。

 

「新参の手伝えをしろなんて、あの方の命じゃなければ従う道理もないんだけどね。エレボス」

 

「ッッ……近い内とは聞いていたが、随分と早いなアルテミス」

 

 いや本当に早いって!?

 命令を受けてからまだ一日だってのに、目の前にアルテミスが立ってるし彼女が俺の担任とか手回しが早すぎるだろ。

 

「現地で打ち合わせをしろとの命よ。他の幹部相手なら兎も角、新参である貴方のやり方を私は知らないからね」

 

「……なるほど」

 

 詰めようと思えば親父と顔を合わせている時にも出来たであろう内容をこうして押し付けてくる辺り、アルテミスは親父の目の代わりも担っている可能性があると考えておくべきか。

 まぁ、親父が現場の連携を重要視するタイプとかなら話は変わってくるが。

 

「一気に特定するのは不可能だろうな。親父の策を元にした考えだが、先ずこの学校を中心にアルテミスのダメージ等を考慮した上で、一つの方角に絞って暴れてもらう。得られるであろう僅かな誤差からリブラが住んでいるであろう方角を特定するのはどうだ?」

 

 口には出さないがこの方法なら、襲撃のタイミングを俺が知る事ができ万が一でも、リブラが敗北する様な事があれば手を回す事が出来るしそうでなくても、芹香さんを巻き込まない為に近寄らない様に誘導出来るメリットがある。

 そしてアルテミス視点でも、親父が実行した策を似た形で利用する事で無闇に否定させない様に釘を打てるしな。

 

「ふむ」

 

 癖なのであろう右目を閉じ、顎に手を当てて考える姿を手持ち無沙汰に見つめていると一分ほどで結論が出たのか閉じられていた右目が開く。

 

「良いでしょう。初回のタイミングだが、教師という立場を使っている以上すぐには難しい。一週間後に北からというのは?」

 

「……思ったより真面目なんだな」

 

「仮とは言え、仕事は仕事よ。余計な不信を重ねるよりも信頼を得ていた方がバレた時に効いてくるもの。まぁ、所謂、経験則というやつね」

 

「じゃあ俺もゆっくり部活見学とか楽しませてもらいますか狐坂先生」

 

「ふっ、あの方の息子とは聞いていたけれど思ったより話せるタイプみたいね常世君」

 

 ニヤリとした笑みと共に再び、指パッチンが鳴り響き俺たち以外の音が帰ってくる。

 秘密の話し合いは一先ず、終わりという訳だな。

 

「それでは俺はこれで失礼します」

 

「はい。気をつけて帰ってくださいね」

 

 ただの生徒とと教師らしい距離感を演出し、教室を出た俺はガヤガヤと賑やかな廊下を進み校門を出て一人、帰路へと着く。

 最後にちょっと、普通とは異なる出来事があったが基本は世間一般によくある入学式で新生活が始まるというワクワク感は十分に味わえたな。

 今後はエレボスとして立ち回る事も増えるだろうから、こんな純粋に一日を楽しめる機会は減っていくだろう。

 

「ま、ヒーロー探しの日々はそれはそれで楽しみなんだが……ん?」

 

 ふと感じた違和感に従い、周りを見渡してみれば()()()()()()()()()()()()()()事に気がつく。

 今はまだ、お昼が少し過ぎた程度ですぐそこに大通りが面している以上、ここまで人っ子一人歩いていないのははっきり言って異常事態……ん?異常事態だと?

 

「……まさか」

 

 口に出そうとした違和感の答えはすぐ、頭上から聞こえてくる。

 

「──邪悪な気配を感じました。汝には一切の虚偽なき返答を期待します。悪なりや?」

 

 おいおい……初日から気取られるとか何者だよ仮面ヒーローリブラ!!




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