悪の組織幹部高校生、拗らせた前世の願いを叶える為に奔走する!! 作:マスターBT
見上げる視線の先、俺を見下ろす金色に輝く女が浮かんでおり、直感が告げていた──アレは間違いなく、話に聞いているヒーローであると。
随分と魔法少女らしい雰囲気を感じさせるが、手足を覆い隠す装甲はより物理的な破壊力も伴っている気がしている。
『ヒーローって奴は空を飛べるのか?』
『……そういう者もいるだろう』
へぇ、そういう者もいるね。
無意識のうちにヒーローって奴は一人しかいないものだと思っていたが、親父の口振りからして複数人いる訳だな。
どれだけの数が居るのかは分からないが、ヒーローと呼称される様な連中が複数存在していて壊滅していないウチの組織力の高さに驚きはあるが、俺が行うべき立ち回りも必然的に難易度が上がる事に楽しみすら覚えるよ。
『なるほどな』
『接敵したのか。エレボス』
『好きにやらせて貰う』
此処で逃げるのもアリだが、親父にヒーローの事を唐突に尋ねた上で逃げれば敵前逃亡の責任を追求されかねないからな。
スマホの電源を切り、懐へしまいながら一度たりとも視線を外していないヒーローを観察する。
変身することで年齢が変わったりするパターンもあるから、さほど参考にはならないがザックリと見て俺と同年代ぐらいと考えて良いだろう……顔達は全身が黄金なのもあって気の強そうなタイプで可愛いと言うよりは綺麗系か。
杖の様なこれぞ魔法少女という装備がないあたり、ステゴロタイプと仮定を置くか。
まぁ、何かの補助なく空を飛んでいる辺りあの掌から突然、光弾を乱射してくるタイプという線もあり得るが。
『──どちらにしろ、どの程度やれるのか把握は必要か』
今の俺の肉体スペックがどれだけ高いのか、そしてヒーローと呼ばれる連中がどこまで実力を有しているのかで今後の俺の立ち回りは変わってくるからな。
「ッッ!!魔人だがなんだか知らないけど、向こうはどうやらやる気みたいねレオ」
『魔人?あぁ、確かにそう見えるかもしれないな』
「なにをッッ!!」
いつまでも見下ろされているというのはあまり気分が良いものではないからな。
足の裏から火を噴き出し、自分の体を持ち上げまるで打ち上げられた花火の様な勢いで目の前のヒーローへと殴り掛かる。
「うっぐ……重っ!!」
『ほぅ』
俺が目の前に迫るまで目で追えていなかったにも関わらず、ほぼ反射に等しい反応で俺の拳を受け止めたか……この感じ、あまり戦い慣れていないと思って良いか?
まぁ、俺も人の事が言えるほど戦闘経験を積んでいる訳ではないんだが。
『お前、名前は?』
「ッッ……は?……」
おぉ、怖いな!?
ギロッと睨まられると風貌のせいもあって肉食獣みたいだ。
『拳を合わせる相手を知っておきたい』
「そういうのは……先にアンタから言うのが筋だよ!!」
『っと』
クロスしていた手が光り輝き、明らかに筋力とは違うナニカに押し出される様に弾かれる。
問題なく手を握り締める事は出来るし、身体の何処にも不調を感じない辺り今のは攻撃というよりも、純粋に俺との距離を作る為の『弾く』専門の魔法といった感じか?
『ふむ。俺はエレボス、オリンポスが幹部の一人だ』
総勢で何人いるか知らんし、その中での俺がどれくらいの立ち位置に居るのか不明だけどな。
俺が特に抵抗もなく、あっさりと名前を名乗った事が意外だったのか目を丸くしているヒーローだが、そういう隙は極力無くした方が今後の為だぞ。
『さぁ、俺は名乗ったぞ』
「なんか調子狂うな……レグルスよ。魔法少女レグルス」
『ほう。魔法少女、ヒーローではないのか』
「そっちがどういう分類してるか知らないけど似た様なもんじゃないの?」
言われてみれば確かにと頷くしかないな。
どうにも魔法少女というと、こう目を背けたくなる様な鬱展開とセット売りな気がして純粋なヒーローとして見るのが難しいんだよな……心が痛くなる意味で。
『そういうものか』
「……ねぇ、貴方は此処でなにをしていたの?」
視線の雰囲気が変わったな。
先程までは乾坤一擲の勝負といった雰囲気だったが、少し距離が離れ会話も重ねた事で話が通じる相手と値踏みをされている感じだ。
確かに俺は正義に味方する敵役になりたいとは思っているが──コレは違うな。
『俺がなにをしているかお前に話す理由はないな』
「ッッ!!」
『ハハッ!!それで良い魔法少女レグルス!!気を抜くな──俺は決して味方ではない』
馴れ合いにはまだ早すぎる。
俺はまだ、目の前に浮かんでいる魔法少女レグルスの正義を知らない。
雰囲気では善良な気配を感じてはいるが、魔法少女という力を得た事でその思想が歪み正義とは名ばかりの自己中心的な怪物と成り果てているかもしれない相手に力を貸す訳にはいかないからな。
「そう……じゃあ、力尽くで聞き出す!!」
なにもない空中を蹴る様にレグルスが俺へと迫る動きは、集中するまでもなく目で追える程には並の速度ではあるが俺の様に慣性を制御する必要がない為、彼女は地上を走り回る様に複雑な軌道で走る。
「せいっ、あぁぁ!!」
『んぅ!!』
大きく踏み込んだ勢いで重心を前に出すレグルスが放つ拳をはたき落とすが、その感覚が妙に軽い事に違和感を覚える。
まるで、本命を放つ為のオトリ……物が入っていると思って持ち上げた段ボールが空であったときの様な肩透かし。
「
あえて軽い一撃で防御を誘発させ、生じた隙間に第二撃を本命として打ち込む技か!!
『面白い!!』
「ッッ!!」
格闘術なんて習っていないこの身だが、改造手術により処理能力が上がった脳がフル回転し迫る一撃を防ぐ最適解を導き出す──即ち、この身を纏う火力の増加だ。
俺の身体の芯を貫くより早く、火力を増量させた火がレグルスの拳を飲み込み熱風で勢いを殺し、高熱で躊躇いを生み出させる。
『足りん足りんなぁ!!覚悟が足りないぞレグルス!!』
「きゃぁぁ!?」
右手を向け、高音の火をガスバーナーの様に放つ。
両腕を盾にした様だが、俺の火とレグルスが纏う魔力がぶつかり合った為か大きく後方へと吹き飛んでいく。
『燃え盛る火を前にして怖じ気る様ではお前は誰も救えんよ』
今後も俺が配属先の様にレグルスと戦うのなら、絶妙に手を抜き続ければ良いだけだがウチの組織力は高く、俺が預かり知らぬところで他の幹部連中と戦うこともあるだろう。
当然、他の幹部連中は俺の様に拗らせた思想を持っていないだろうから一欠片の容赦もなくレグルスを殺すことだろう。
実の息子である俺の前ですら、しっかりとした感情のある笑顔を見せたことのない男が人を殺す覚悟すら持たない奴を幹部に据え置いている訳がないのだから。
「……覚悟?そんなのある訳ないでしょう。こちとら、散々巻き込まれ尽くしで死にたくない一心で、レオのスパルタにだって向き合ってるだけで……あーもぅ!!レオもあんたもうるさーい!!」
『うお……』
これはアレだな?誰がどう見てもプッチンしてしまいましたって奴だな?
今まで以上に黄金に輝く魔力が放出されているし、心なしかキラキラと輝きが増している様にも見える。
「私だって!!命が狙われてるとか脅されてなきゃ、友達とケーキとかアクセ買いにとか行きたいの!!最近、付き合い悪いね?とか言われてなにも返せない私の身にもなってよ!!もー!!適格者とかなんとか知らない!!アンタ達がとっとと、消えてくれれば私は日常に戻れるの!!」
ヒーローとして無辜の民を守りたいのではなく、ただの一人として自分の細やかな日常に戻りたいが為にその力を振るうか……俗物的と言えるが絵空事の理想論を語られるより胸の内に納得がいくものだな。
「──極点を穿て獅子の咆哮……レグルス・インパクト!!!!!」
『ッッ!!』
黄金に輝く獅子が顕現し、魔法少女レグルスの右腕に宿ると彼女の振り抜きに合わせて、獅子の咆哮の如き轟音を響かせ極光が俺を飲み込んだ──