悪の組織幹部高校生、拗らせた前世の願いを叶える為に奔走する!!   作:マスターBT

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打ち消せぬ炎

『レ、レグルス……す、凄いじゃないか!』

 

 別に貴方に八つ当たりするつもりはないから安心して良いよレオ。

 それにしてもここ最近、腹に溜まっていたものを一気に吐き出したせいか少し頭がふわふわとした高揚感に満たされてちょっといや、かなり心臓がうるさい。

 

「はぁ……はぁ……アイツは?」

 

 胸に手を当てて呼吸を整えながら、気配を探る。

 理由は分からないけど、ずっと楽しげにしていたアイツの声が聞こえてこないって事は無事に倒せたと思って良いのかな?

 煽られる様な形で出した大技だったから、使った私自身何処までの威力があったか掴み損ねてはいるとは言え、なんだか無性にアイツを倒せていないという直感が走ってるんだよね。

 

『えっと……あ、あそこにいるよ!!』

 

「……焼死体?」

 

 見た瞬間は周囲の木々の様にアイツが殺した誰かの死体かと思ったけど、あの場所は最初にアイツが立っていた場所に近いし見落としていたなんて事もないからきっと、アレがアイツなのだろう。

 

「……ねぇ、レオ。これって人殺しなのかな」

 

 魔人……そう、レオはアイツと出会った瞬間に教えてくれた。

 曰く、私を襲ったのっぺりとした連中の中でも上澄み──強者に分類され()()()()辿()()()()()()()()()()

 

『ボクが知る限り、魔人に変貌してしまった人はもう二度と以前の生活に戻る事はないよ。レグルスと会話が成立していたかもしれないけど、魔人は根本的に破壊を好む様にデザインされる……仮に一般の生活に戻せたとしても、それは腹を空かせたライオンを人混みに放つ様なものだ』

 

「だから魔人を人として見る必要はないって言いたいの?」

 

『悲しいけどそうだね。魔人へ変貌してしまった時点で、もう種が違う。まともな話し合いでの解決なんて望めるものじゃないからね』

 

 いつもの様に優しい口調で、でも何処か突き放す様な冷たい声色のレオの言葉に胸の奥が重くなるのも感じた。

 正直、ちょっと思う事はあるけどレオの声が茶化している訳でも誤魔化している訳でもないと信じる事にし魔人の方へと降りて行く。

 

「だとしても生死の確認は大事だよね」

 

『……そうだね』

 

 エレボスと名乗った魔人が本当は良い奴なのか、悪い奴なのかは兎も角としてその大元に居るであろう存在から適格者として狙われている私の安全の為に、生死を確認させて貰う。

 倒したと思って背中から不意打ちを喰らったなんて笑い話にも──

 

『ッッ!!レグルス!!今すぐ、離れて!!!』

 

「え?」

 

──視界が赤紫色の炎で埋め尽くされた。

 

「くっ!?」

 

 あ、危なかった。

 レオの忠告があったお陰で、咄嗟に両手に魔力を集めて身を守れたけどもし忠告がなければ炎に飲み込まれてこんがりと焼けていたところだったよ。

 

『ククッ!!ハハハハハハ!!!』

 

「生きていたのね!!」

 

 さっきまでの焼死体と見間違う程の貧相さはなんだったのかと叫びたくなる程に、私の目の前には全身から赤紫色の炎を激らせるエレボスが宙に浮いている。

 今の私にさっきの一撃以上の火力を出せるとは思えない……これは万事休すという奴かしら。

 

『魔法少女レグルスと言ったなァ!!貴様の俗物的な願いは確かにこの身を重く貫いたぞ。覚悟なきと言った非礼を詫びよう』

 

「……はい?」

 

 え?今なんて言ったコイツ??

 非礼を詫びる??え、殺されかけたってのに私にごめんなさいって事??

 

『だがしかし、この身を滅ぼすには足りなかった様だな!!彼岸の彼方より舞い戻ったぞ』

 

 テンションが高いなコイツ。

 誰がどう聞いても弾んでる声に応じているのか身体中の火が激しく爆ぜているし、気のせいじゃなければ今はこれから春がやってくる季節の筈なのにこうして向かい合っているだけで、汗が噴き出すくらいには熱い。

 

『日常を愛するが故に非日常に抗う獅子の娘か……ククッ、ハハハハハハ!!貴様のまだ小さき牙が我らが王に届き得る程に成長するのか少々、楽しみに思えてきたな』

 

 高熱に歪む景色の外で、ニヤリとアイツが嗤った瞬間、背筋に冷たいものが走って反射的に距離を取り拳を構える。

 今の私の最高火力で倒せないと分かっても、今此処で抵抗を辞めればきっと目の前のコイツは私を殺しにくる……そんな確信にも似た直感が不思議と私の胸の内にあるんだよね。

 

『──無理をするな魔法少女レグルス。肩で息をしているのを見るに限界を迎えているだろう?』

 

「……だから、なに?」

 

『強がって見せるか。ふっ、追撃する余力があると言うのなら追いかけてくるが良い』

 

 ふっと、感じていた熱と共に圧が消えると共にアイツが私に背を向けてどんどん高度を上げて行く。

 

「ッッ、待て!!」

 

 ほぼ反射的に声をかけてしまったけど、アイツは一欠片も振り返る事なくどんどん遠くへと飛んでいき、やがて魔法で強化している私の目でも見えない程にこの場から離れてしまった。

 自分の命を狙う敵を逃してしまった……そんな、本来であればこれからくる不安と恐怖に怯える筈なのに冥界の神の名を騙ったエレボスが離れてくれた事に私は──

 

「……ふぅ」

 

──強い安心感を抱いていた。

 

「なんで見逃してくれたんだろう?」

 

『きっとレグルスの攻撃が効いたんだよ!!』

 

「……だと良いんだけど」

 

 レオの言葉が真実だったら嬉しいけど、再び炎を宿した瞬間のアイツが放っていた異様な圧力は……私なんかいつでも捻り潰せると思わせる程に不気味で重いものだった。

 それに去る時も全然、余裕そうだったし……とても瀕死だから撤退したとは思えないんだよね。

 

 

 

 

 

 

 あー、死ぬかと思った!!!!

 

 改造手術を受け、身体の頑丈さと頭の回転が何倍にも跳ね上がっているとは言え前世も含めて殆ど喧嘩なんてしていない男がその高すぎるスペックを十全に活かせる訳もなく、レグルスが放った大技を身体で受け止める事になったが、どうにか死なずに済んだ様だな。

 

「……こうして無事に逃げられているし、高高度を飛んで来たから帰りの代金も浮いた。改造手術様々だな」

 

 高度情報社会において、人目が殆どない場所なんて限られている訳で都心住みの俺がそんな都合の良い辺鄙な場所へ向かうにはそれ相応の金がかかった。

 貯金をするタイプの子供だったから良いが、そうじゃなきゃ破産ルートまっしぐらの行動だったな……浮かれ過ぎた。

 

「レグルスの一撃がヒーローとしてどれ程のものかは分からないが、明らかな大技は受けない方が身の為だな」

 

 今回平気だったからと次も平気なんて保証はない。

 特にヒーローなんて呼ばれる連中は、涼しい顔で昨日の自分を乗り越えてくるんだから。

 

「身体のスペックは大体、分かったが問題は俺自身だな。脳が勝手に導き出す行動に従っているだけじゃあっさり負けてしまう」

 

 例えるなら今の俺はCPUだけが規格外な型落ちPCみたいなもので、幾ら処理能力が高くてもそれを反映するそれ以外のものがゴミでは折角の性能を活かせないまま、ゴミと成り果てるだけ。

 何処かで格闘術か何かを習う必要性があるか……どう仕上がっても付け焼き刃にしかならないがこのままよりはマシだろう。

 

「ただいま……ってまぁ、居ないわな」

 

 いつも通り真っ暗な家に文明の灯りを灯して行く。

 悪の組織のトップなんて知らない頃から、親父は仕事だと聞いていたし母親の顔は見たこともないから真っ暗な家に帰宅するというのは慣れてしまったな。

 

「さてと……近所で格闘技か何か募集してないか調べるか」

 

 いつも通り、一人だけの飯を食べながら俺はスマホで格闘技の検索を始めるのだった。




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