悪の組織幹部高校生、拗らせた前世の願いを叶える為に奔走する!!   作:マスターBT

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指令

 時間が過ぎるのは早いもので、毎日のトレーニングとして早朝のランニングを欠かさず行っていれば明日には高校の入学式を迎える日となっていた。

 その間、悪の組織としてこれと言って仕事が回ってくる事はなかったが、あの親父の事だ俺の役回りはヒーローを探す為の潜入調査なのだから素顔が割れる機会を減らそうとか考えていたんだろうな。

 

「……で、前日に呼び出しって辺りがらしいよな」

 

 悪の組織の首領と幹部らしい会話どころか、親子らしい会話すらもなく月日が流れて久しぶりの顔合わせがこの秘密基地ってなるんだから、情というものがないんだろう。

 冷徹で人の心が全くない親父らしい何一つとして装飾のない鉄製の扉を開けて入れば、悪の組織らしい黒塗りの玉座に腰掛けた親父と目が合った。

 

「来たか」

 

「おう」

 

「お前の任務はヒーローの特定だ。本来であれば他の幹部共と顔合わせをするべき日に、独断で動き新しいヒーローとの接触を起こしたが素顔が割れていないのなら不問とする。だが、不用意な変身は避けろ」

 

 あ、バレてたんですねレグルスとの一件。

 どうやって知ったのか確認したいところだが、有無を言わせない雰囲気からして問いかけたところで満足のいく答えなんて貰えないだろうな。

 

「分かった」

 

「問題の共有に移る。お前が探るヒーローは、仮面のヒーロー『リブラ』だ」

 

 上から突然、モニターが現れ映し出されるヒーローの姿は一言で言えば、『仮面ライダー』に近いものだった。

 天秤を掲げる女神の像を一度見た事はあるが、それを連想させる黒い目隠しに似た仮面とシスターを連想させる白い装束で顔を完全に覆い隠し、女性を思わせる身体を黒い包帯の様なもので縛り上げるとかいう扇情的なボディはどうかと思うが、片手で振るわれる剣は改造により車の激突にも耐えれる身体を持つはずの戦闘員を容易く斬り飛ばしている。

 

「リブラの出現は二年ほど前だ。初めに交戦したのはアルテミスだったが、二日間に渡る戦いの末、敗走。その後、我々が何処で活動を開始しようと次々と邪魔をしてきた」

 

「ふむ」

 

「襲撃の場所と時間をずらし、リブラが最も素早く対処してきた場所を絞り込みこの栄決高校付近が最も対応が早いと判明した。お前にはリブラを探し出し、変身前の素体の居場所を割り出して貰う」

 

 日本全国で試すにしてもどれだけ労力がかかることをやってんだこの親父……しかも、無駄足に終わる可能性が高いものを二年でやり遂げているとか末恐ろしいな。

 逆に言えばこの親父の調査力をもってしても、個人の特定まで辿り着いていないリブラが凄いとも言えるか。

 

「偉大なる幹部の事だ。リブラの能力も割り出しているんじゃないのか?」

 

「アルテミスからの報告ではリブラが用いたのは、片手剣による純粋な剣術と詳細不明な拘束だ。拘束の際は空いている右手に天秤を構えたと聞いている」

 

 天秤を構えることによる拘束か。

 レグルスの様な派手さはないが、俺としては拘束される方がやり辛いな。

 なにせ、レグルスの一撃は確かに俺を殺し得る可能性があるが発動の予備動作や攻撃後の疲労を突けば逃げに徹する事は出来るが天秤を構えるというあまりにも小さい隙と行動を奪われる拘束は真っ当にヒーローと戦う気のない俺にとってあまりにもメタを張っている。

 

「……必殺技の様なものは?」

 

 初回に丸二日、その後も二年間に渡る戦いが繰り広げられていたのならリブラが誇る最大火力を把握しているだろう。

 何か溜める必要があるものなら、その隙に炎の火力を上げて物理的な目潰しとして逃げても良し、出の速い技なら威力がそこまで高くないと判断しレグルスの時と同様、死んだふりで誤魔化すのも手だろうな。

 

「確認されていない。そも、僅かな動作で相手を拘束する事が可能な相手だ。その時点で大袈裟な火力を必要としないのだろう」

 

「ふむ。もしそれが真実なら助かるが」

 

「……気掛かりか?」

 

 珍しいな。

 絶対王者として君臨している親父が人の意見を欲しがるなんて。

 

「あぁ。確かに幹部相手に拘束と剣術だけでやり合える強さなら必殺技なんてなくても良いとは思うが、最悪を想定すれば奥の手の一つや二つあるものだと臨んだ方が良い」

 

「ならば近いうちに襲撃を仕掛ける。アルテミスを使い、リブラの戦闘を観察しろ。正体を隠し通せるのなら好きな様に援護して構わない」

 

 ……なるほど。

 珍しく意見を聞いてきたかと思えば、『俺を戦闘に駆り出す』口実作りが目的だったのかよ。

 これで親父からの命令を無視して、リブラへの攻撃を行わなかった時に『その必要性を感じなかった』等の独断が封じられてしまった……何処の世界に自分で警戒しておきながら気を緩める馬鹿が居るんだって話だ。

 

「分かった。ただ、介入するかは好きにさせて貰う」

 

「あぁ」

 

 話は終わりだと言わんばかりに親父は口を閉ざし、深く玉座に座り直した。

 俺としてもこれ以上、堅苦しい空気なごめんだし、何より入学の準備がまだ終わってないからとっとと帰らせて貰おう。

 

「──期待しているぞ。我が息子」

 

 去り際に背中へと投げかけられた言葉には何一つとして熱が宿っていない空虚なものだった。




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