早朝、早速外に出ると、フヨフヨと妙な半透明の生物が浮いていた。
お、空中に透明なウィンドウが出現した。
クエストは、妖魔を10匹倒すこと。今日中に余裕でクリアできそうだ。
空也と落ち合い、誰もいない公園でまずはゲームキャラに変身して倒せるかどうか試す。問題なく倒せた。元の姿で攻撃。これもOK。
「まずは、この体のレベル上げか」
「レベル上げも兼ねて難しいクエスト以外は縛りプレイしねーか?」
「そうだな」
ここに来るまでに人を観察して、常人がどんなモヤか覚えてある。殻みたいにぴっちり力で身体を覆うなり循環させるなりして、その上からわずかにもやをだして擬態するってできるかな?
力の本質の理解はある。エラーのお詫びの前提知識ダウンロードで、ある程度力の性質や修行の仕方はわかる。さらに、それに追加して、オタクの知識とゲーム経験がここで生きる! 教科書なんか読んだだけじゃ何もわかりはしない。まずは実際に手を動かしてこそ、だ。
幸い、実験対象は山ほどある。
二人で、色々実験しながら習熟していった。
どうやら空也はドレイン的なもの、俺は影を操ることに特化しているらしい。
なかなかいい力だと思う。
シャドウと言われる、潜在能力を使い魔として引き出すペンダントをする。
そういう設定の、遥昔のアニメ、GS美神からのパクリアイテムだ。あのゲーム、そういう所があった。大好き。
シャドウを操作して妖魔を狩らせることで、授業中も戦闘経験を積める。休日はダンジョンやクエストでレベルを上げた。
俺達は、2年修行に明け暮れた。
もちろん、勉強も手を抜いてない。
オープンキャンパスを巡り、大学の設備を確認。
早々に資格、特許を取って、スポンサー探しをする予定だ。
クラウドファンディングもいいな。
そんな俺達の目論見は、あっさりと壊される事となる。
その日は、受験が近くなったという事でピリピリした空気で、俺達は小さくなってお昼ご飯を食べていた。
この前イチャイチャしてたら怒鳴られたからな。
いきなり警報音が鳴って、俺達はびっくりして顔を上げた。
ポップアップして点滅するウィンドウが二つ。
『弟を助けろ! 殺されるまで、あと03:25:02』
「!?」
「ゴッホげっほ」
「うっわ、お弁当腐ったの入れちゃった! ちょっと早退!」
「大丈夫か、送っていく!」
この大事な時期に何やってんだあいつら、という視線の中、俺達は慌てて学校を出た。
空也の場合は兄で誘拐だけど、助けに行けと指定された場所は同じ。ナビに従って急ぐ。3時間あるなら時間に余裕があるなんて言うなかれ。電車使うし、結構遠いぞ。
「弟なんて知らねーぞ!」
「両親が知らねー間にやらかしてたんだろ!」
「二人共かよ! そりゃいつも家にいねーし、仲は冷え込んでるっぽかったけど!」
それはもう慌てまくって走る走る。
携帯で接続を調べつつ、電車に飛び乗り、電車の中で手早く作戦会議。
変装して正体は隠す。できれば正体も見せない。まずはシャドウを使う。よし!
電車を降りて、走っていくと、山についた。見えない壁で覆われている。
なんだこれ。結界?
「ここは俺が……」
「いや、俺のドレインで結界の魔力を吸うから、それで出来た隙間から行こう。壊して目立つのは心配だし、ここまで走ってきて回復してえ」
「わかった」
その後は、妖魔を倒しながらの山登り。たどり着いたのは山の中のお屋敷の廃墟だった。鍛えてたつもりだったけど、流石に息が上がっていた。本当にここは現代日本か。ボスダンジョンかよ! どう見ても、もうさらわれてるじゃねーか! 息を整えつつ、アイテムで手早く変装して、臨機応変な対応はシャドウ越しでは難しいとシャドウでの救出案は棄却。
俺達は扉を蹴破った。
「すっげーお化け屋敷みてー!! うじゃうじゃ変なおばけがいるー♡」
「色々見て回ろーぜ!!」
大根演技で、一般人を装う。対魔組織とか異能バトルとかある世界かもしれないが、状況がわからないので、とりあえず一般人を装うしかない。一般人だし。
そして、化け物を殲滅。ずんずん進んでいく。
「貴様、何者だ!?」
「お前が何者だよ、ばーか」
「ここは俺らが秘密基地として徴収しまーす。お前みたいなおばけはいりませーん。消えろ」
頭空っぽの演技をしながら、空也がごく普通に売られている野球バットを「力」で強化してぶん殴る。
「くっ 野良の能力者、だと……!? 馬鹿な! こんなに強いものが!?」
「あっはっはっはっは! やっちゃえダーリン♡」
「見てろよ、ハニー?」
「ぐわー!」
内心焦りつつも、のーみそお花畑を演出しつつ、化け物共を倒していく。
ずんずん進み、扉を蹴破る。
結界で身を守る、高そうな着物を着た長髪の気品ある美男子と、必死でその結界を守ろうとするボロボロの服の美少年が3人いた。年は20歳ぐらいと中学生が2人、それに同学年ぐらいだろうか? 肌はきれいな場所もあるってことは、途中で回復したのだろう。20歳ぐらいの結界構築してる気品ある人が空也の兄かな? 似てるし。
「ん? 誰だおめー。ここは俺らが秘密基地にするんだよ! 出ろ、出ろ!」
「ダーリン、子供相手にキッツ! 山の下までは送ってあげてよ♡ って事で、送り賃1万円ずつな」
「新手……!?」
「くっ」
「行きましょう、影二くん、焔くん。謡さん。お二方は助けてくれるようですから。さあ、怪我を見せてください」
「光也さん……」
動揺し警戒する護衛らしき3人を、光也と呼ばれた着物の男性が落ち着かせる。
「わかりました」
「はい」
結界を解いて、光也はヨロリとお腹をかばって立ち上がる。
「おいおいおいおい、おめーも怪我してんじゃねーか! 面倒くせえなぁ!! おらよ!」
こんな事もあろうかと、ばあんと光也と影二と呼ばれた中学生を叩く空也。ぐっと肩を掴むと、貯めていた「力」と解き放って循環、回復させる。
「馬鹿な……!?」
「これは……!」
「ダーリン、やっさしー♡ 惚れ直すぜ」
「だろだろ? 謡と焔?も安心しろよ。直に治してやるから」
多分、影二が俺の弟だな。悪いが治療は身内優先だ。影二は攻撃方法が同じだし、名前も似てる。若干俺に似てるかも。謡は剣、焔は光弾を使うのか。
4人を回復した後、空也は野球バットでガンガン敵を殴ってエナジードレインし、俺はガンガン影の鞭で切り裂いていく。4人はついてくるだけでオーケーだ。
「私は退魔組織に所属しているもので、光也というものです。妖魔を倒す仕事に興味はお有りですか?」
「あ? 俺は博士様になるハニーを応援するって決めてんのよ」
「ダーリン♡」
悪いが、ゲームを作るのもかなり優先度高いので、状況もわからないうちからそんなわけのわからない組織に入るつもりはない。明らかにブラック臭がするし、両方できるかどうかって言われると……難しいのかな、と思う。当然だが、時間加速はリアルにはない。
「すごいですね。博士を目指しているのですか?」
「すっげぇゲームを作るんだ! すげーだろ?」
「すごいですね」
「だっろー♡でもまあ、最近は成績下がり気味で困ってんだけどな」
修行も頑張ってるからね。でも合格圏内にはちゃんといる。
頭悪い会話にニコニコと付き合ってくれる光也さん。影二くん、焔くんは半眼でそれを見つめてくる。
けど、それも光也さんと謡が技のコツなど聞いてきてから尊敬の眼差しに変わった。我流だけど、と前置きしてガンガン教える。また捕まったら困るからな。特に光也さんは攻撃手段がない上に他者を回復すると寿命を削るって聞いて驚いた。どんどん空也の技術を覚えて吸収してくれ。謡も、「力」の武器へのコーティングについて熱心に聞いている。お前らのほうがプロだろ、大丈夫か。僕らは基礎知識をダウンロードされたとはいえ、二年修行しただけだぞ。君らその着物とかから見るに対魔組織の名家とかでしょ。空也もそう思ったらしい。
「お前退魔組織向いてねーな! 俺でもわかるぜ! やめちまえよ!」
「あはは。君に比べたらそうかもしれませんね」
「光也さん……。光也さんは、凄いです!」
「そうです!」
「ありがとう、影二くん、焔くん」
「おめーらもその年で殺し合いとかふざけてんのか」
俺は影二くんと焔くんの額をつんっと突く。
話せば話すほど、不安が募る一方だった。大丈夫なのかこれ。
「あのっ また会えないか!? 万全なときに手合わせなどお願いしたい!」
謡の言葉に空也と眼を見合わせる。
未だに関係わかんないしなぁ。兄弟ってのは疑ってないけど。
まだ表舞台に立つの早すぎる。けど4人は心配だ。
「やめとけやめとけ。俺らに触れたら火傷するぜ?」
ぐっと空也が抱き寄せてくる。そうだよな。ちょっと調べてからだよな。
それにゲーム作りたい。
そこまで話して、山の麓が見えてきた。
「おらっ これに懲りたら無茶すんじゃねーぞ!」
「うん。ありがとう」
俺達は光也達から合わせて4万円もらう。ガメツイという勿れ。服装からお金持ちっぽいことはわかってたんだ。そして、交通費が結構掛かっているのである。命を買えたと思ったら安いでしょ? それに。
「……腕を磨け。俺なんかの指導でいいなら、来年の4月1日、9時にこの場所に来い。授業料一人3万な。あと、シャドウ死ぬとテメーらも死ぬから!」
光也がペンダントを4つ投げる。シャドウのペンダントだ。
「ああん♡ 好き好きダーリン!」
俺は空也に抱きつく。素晴らしいアフターフォローだ。一人当たり四万ずつ巻き上げる事になるが、いうまでもなくシャドウのペンダントはそれよりも遥かに価値がある。
いいことをした。懐も暖かい。
その後、二人で仲良く手をつないで帰った。
「まさか、あんな凄い素人がいるとは……運が良かったですね。我が一門の血を引いていたようですが……」
「彼らは、最初から僕達を助けに来てくれたよ。気配がまっすぐ僕達の所に向かってきていた」
結界を操るのが得意な光也が静かに指摘する。
「このペンダントからして、いずれかの組織の所属であることは間違いないでしょう。かなりの力を感じます」
「試させてください」
謡がペンダントをする。そして、ガクッと膝を落とした。
「ぐっ……!!」
ずず、と影から剣で作ったロボットのようなものが出てくる。その下半身は蜘蛛型だ。影二は光也を庇いつつ、その異形から距離をとった。
「大丈夫、です。多分、式神を作る力を持ったペンダントですね、ただ、式神を作ったら後は何も出来なそうです」
謡の言葉を聞き、光也は、そのペンダントを付けてみる。
真っ白な法衣を着た白銀の騎士が現れた。
「確かに、負担が凄い、ですね。でも……凄い。何か掴めそうな気がします」
続いて、焔がペンダントをつける。水晶のようなものが影から出てきた。
水晶の周りに、くるくるといくつもの光が纏わりついて飛んでいる。
最後に影二がペンダントをつける。出てきたのは巨大な影の竜。これは影二が気絶すると消えてしまった。
影二を介抱している間に、迎えが来る。
「大丈夫だったかい? 通りすがりが救援をしてくれたという話だったけど」
「先生!」
「そのペンダントは?」
「貰いました。面白いですよ、これ」
「通りすがりに? それは剛毅だね。でもその前に、相手の拠点を潰そうか。僕の生徒を虐めてくれた仕返しをしないとね」
「「「「はい!!」」」」
マシュマロ
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