産まれたばかりの弟は、すぐに家を出された。
無能力者だったから。
笑ってしまう。
その、無能力のはずだった弟は。
男を侍らせ、髪の毛を真っ赤に染め、チンピラみたいな言葉遣いで……東京の魔技理校を生徒教師の区別なく纏めて撫で斬りにしている。
蛮族のような格好のシャドウはとても格好良く、二刀流である。
弟に会うまで、自分には守り癒やすしか能がないと思っていた。
そんな自分を憐れんでいた。
甘えだった。
自分と全く同じ癒やしの力を使う弟は、自分の生命力を分け与えるのではなく、相手から生命力を奪い、それを使って癒やしていた。野球バットでぶん殴って生命力を強引に奪い取り、自らの力とする。
健康そうなその様子に、悲壮感は欠片もなく、男を侍らせ髪を染め、自由そうにしている。結界について聞いたら、性に合わないと笑って切って捨てられた。
自分が惨めになった。
政略結婚が決まっていて、早く子供を作れと言われていて、死を目の前にした自分とはあまりにも掛け離れていた。
あの後、私も修行をして、エナジードレインという秘技を物にしていた。
私のシャドウは、聖騎士だ。私の心は、剣を持っている。戦える。戦いたい。それはすとんと私の心に落ちた。剣で生命力を吸って、返す。未だ、シャドウでしかできないけれど。いつかはモノにしてみせる。
私の番が来た。弟に指南を願う。
それが悔しくすら思えないほど、弟は高みにいる。
「お、光也。強くなった?」
「多少はね」
「見せてもらうぜ」
「見せてあげるよ」
空也。君の心はバーサーカーなんだね。美しき蛮族。
私は、君が羨ましい。
剣と剣が交わる。
エナジードレインを発動させる。
「っ 上手く出来るようになったじゃねーか! でも遠慮すんな! 思いっきりやれ! C!」
「ありがとう」
確信。シャドウが出来るなら、私も出来る。空也が出来るなら、私も出来る。
いずれ、空也は我が家に戻ってくる。
そのときに、ただ黙って当主の座を奪われるなんて絶対に嫌だ。
そして、先生の番が来る。
雷矢先生のシャドウは別格だ。
私のペンダントを貸して、事前に訓練もしている。
今初めてシャドウを操る大多数の生徒とは違う。
流石に空也も……。そこで私は目を見張った。
「シールド」
今までの対戦者の技を使った!?
「ここからは、絡め手も入れてくな。出ないと実力見る前にこっちがやられる」
「ダーリン、格好いいー♡」
「……へぇ。じゃあ、胸を借りるとしようか!」
スキル、ドレイン。
辛そうだったのは、100人近くものスキルを奪って保持していたから?
どこまで、君は……いいや!
空也が出来るのなら、僕にも出来る!
絶対にスキルドレインを、ものにしてみせるよ、空也!!
結局、最弱の家の、武器を持たない家の生まれの空也は、一度も膝をつかなかった。
東京校の先生生徒全員を相手にして。
それは、鮮烈に皆の、私の眼に刻まれた。
いつか必ず、その高みへ登ってみせる。
どんなに地べたを這ってでも、頂へ。
マシュマロ
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