お偉いさんが帰った後は、4月7日までダンジョンの調整である。
その日から授業が始まるので、それまでに間に合わせたい。
スタンピードが起こらないようにする処置もある。
とは言っても、ずっと集中しないといけない訳でもないので、医学書を読みながら。
そう、VRMMOは医学と理工の知識が必要となってくるのだ。
空也はパソコンを持ち込んで作曲をしている。それを聴きながら、医学書を読みながら、ダンジョンに魔力を注ぐ穏やかな時間。
ドーピングアイテムを使いながら、なんとかダンジョンを仕上げ、注意事項を纏めて、俺達は7日を迎えた。映えある最初の授業はピッカピカの中学一年生。
一週間前の授業でDコースだったうちの大部分がここである。
約1名、Cもいるけど。
集合場所はダンジョンの前。
「今日から戦闘任務入るらしいな。最初にダンジョンの使い方を案内して、次回から順番に潜在能力の開発をしたいと思う。最初から自分の力がわかってる子はそれを磨く事の手伝いをできたらと思う」
「でもその前に注意事項をしっかり聞いてねー」
しっかり説明をした後。ダンジョンに入って1人一戦ずつ見る。
大丈夫そうだね。
よくよく考えたら、教師は自分達だけじゃなくて、ここはそういう学校で。
生徒は自主的に訓練を積んで育っているはずだし、戦闘を教える先生は他にもいるか。先生の総数は少ないけど。
もう一度注意事項を念押しした後、授業終了。
「物足りなければ放課後に修行に来ていいよ。ただし、必ず3人以上で来ることと、ダンジョンに入る前はダンジョン前に置いてあるノートに人数と突入時間、目標階数、帰還予定時間、帰ったら帰還時間を書く事」
「特にボスの階層は危ないから、全員分の潜在能力開発が終わるまで行くなよ。ボスの階層は助けに行けないし、一定以上攻撃力ないと詰むからな」
そうして、順々に生徒に説明したら、次は教師だ。
生徒の救出に行く事もあるかもだしね。
俺も朝昼晩の3回はノートを確認するつもり。
京都校にも案内を求められたので、ダンジョンの手引きを送付しておく。
空也と相談して、一人一人、潜在能力にじっくり向き合う事とする。
チートで貰った予備知識が役立った。
自分の力を把握、向き合ったら、後はそれを磨くだけだ。
ちゃんとした戦闘訓練は他の先生や自主性に任せよう。
空也が頑張ってる間に、俺はモンスター召喚で他の子の戦闘を見る。
任務も入ったが、さほど苦労する事なくクリアできた。
任務よりも移動が大変だった。
授業1時間→移動2時間→任務30分→移動2時間→授業1時間みたいな感じで、移動中に勉強はしてるけど辛い。移動はどうにかならないかな、うーん。
そしてついに日曜日。
特別授業の日が来た。
もちろん、準備はバッチリである。
初回の特別授業は、みんな大好きポーションの作り方だ。
傷が癒えるのが早まるスペシャルな薬である。
材料は全てダンジョンで取れる。取り尽くされないか心配。
教えつつ、かすり傷をポーションで湿らせた布で拭くと、傷口が消える。
「すげー!」
「おおー」
「向いてる手慰みを覚えておくといいぞー。人生にハリが出る。次回はちょっぴり身体能力の上がる料理だ。一学期は好きなもの探しで、二学期から専門に分かれる。戦闘訓練もありだから、細かい作業が苦手な子も一学期だけは頑張ってついてきてな。得意な事も見つかるかもよ」
採取の際は成長途中の物は取らない、傷口は洗ってからポーションを掛けるなど、注意点などを教える。
それから2週間が過ぎた。職員室で話をしていると、月谷 雷矢先生はウッキウキでクッキーを持ってきてくれた。元気もりもりスタミナアップクッキーである。
「やぁー。空也達のお陰で生徒が増えたよ。家で研鑽積んでた子や、能力が足りなくて諦めてた子も出て見たいってさ。途中入学の子達もついていけるように特別授業お願いできないかな。後、大人に対する特別授業もお願いしたい。4月初めの講義みたいなのでいいからさ」
途中で生徒が増えるのは無しだろ。力がなくて諦めてた子が入って来るのも無しだろ。この学校はいつだって俺たちを不安にさせる。なんだこのブラック。
「授業内で調整するからいいよ。どうせ順番にマンツーマンだし。対大人に対しては、事前に予約をしてくれ」
「待った、ダーリン。持ち出しがすごい勢いで増えてる。甘やかせすぎは良くない。後、勉強する時間が無くなる」
一応、神様からのクエスト発布とその報酬もあるけれど。それは神様から貰ったもので、学校からではないのだ。二重取りになってしまうけど、学校から報酬をもらわないのはこれからの関係の構築上良くない。
それに準備に授業にと、なかなか暇が無い。第一目標を忘れてはいけない。
「週一で望みの講師を招聘するよー。予算つけて欲しい人材集めた研究室立てる? いっその事国でプロジェクト立ち上げる?」
まじかよ、すげーな。
「だってさ。それに、死傷率のデータ見ちゃうとな……。ガンガン鍛えて、育った生徒達から10年後ぐらいに取り立てればいいだろ、ハニー。この業界、一応給料高いみたいだしい、立派になった生徒からいっぱい搾り取ろうぜ」
「ダーリン……」
「でもまあ、使いすぎは見張っててくれ、ハニー。必要な時にないってのは困るからな」
「ああんダーリン、好き好き!」
俺は空也に抱きついた。本当、ダーリンは聖人すぎる。しかも頼りになって器がデカくてそれでいて気遣いを忘れなくて……。
「うーん熱々。2人とも女の子とか好きになるつもりないの? すごいモテると思うけど。許嫁とかいくらでも決められると思うよ?」
「今の所、そのつもりはないかな」
「俺ら、十分満たされているので」
むしろ女の子が入るの関係変わりそうで怖いよね。
「そう。実家に戻るつもりはある?」
「実家」
「君ら、能力ないと思われて、分家に里子に出されてたんだよね。当主にする話も出てるけど、君らに逃げられたら困るから、こっちで止めてる。どうしたい?」
「第一志望がゲーム会社だから、無理かな……」
「特権とか色々あるから、当主もおすすめだよ。継ぐなら勉強始めるの早いほうがいいし。考えといてね」
そう言われてもなー。目の前の事で手いっぱいなのにさらに当主修行とか……しかも、元々継ぐはずだった人絶対いるよな? 揉める予感しかしないもん。
「一生そっちで話止めててください。継ぐつもりはないです」
「俺も」
俺たち忙しいので。
マシュマロ
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