蠱毒の女   作:マコーラの方陣になりたい人生だった。

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 良いタイトルが思いつかない今日この頃


③ 蠱毒と小学校

 

 

 

 「いっぱいいるなぁ…」

 

 白く、所々塗装が剝げ、黒ずんだ校舎を見上げながら、尚美は溜息と共に、声を漏らした。

 

 昨晩、蠱毒を使う覚悟を決めた尚美は、小学校に来ていた。案の定、空気は澱み、低級ではあるが何体か呪霊も生まれていた。

 

 今日の尚美の目的は、➀呪いの確保、②贄の確保 の2つである。

 

 ➀は蠱毒という儀式を進めるにあたり、不可欠であるが、問題は②である。

 

 ②贄は、蠱毒という術式においてかなり重要である。その生物の特性を体に刻み込み、反芻し、呪いとして濾過する。この過程で生物由来のものをぶち込むと、式神の呪力量や硬度が飛躍的に向上する。

 

 「……いた」

 

 給食時間も終わり、尚美はお目当ての存在を発見した。校舎の裏庭にいるのは、"蜂"、"百足"、"飛蝗"が3体ずつ発見した。

 

 一匹ずつ家から持ってきた虫籠に昆虫を詰め、生きている3匹を確保する。

 

 そして、残った6匹を――

 

 

 

 

 ダンッ!

 

 

 

 

 

 呪力をまとった足で踏み潰し、屍に変える。

 

 「良し、取り込むか」

 

 出来立てほやほやの6匹分の死骸が、潰れ、圧縮され、尚美の胎に吸われていく。胎内いる蠅頭と、授業中に確保した2匹の蠅頭の餌兼プロテインにする為に、吸収する。

 

 今日のタスクは完了し、ドッジボールに戻ろうとしようとすると――

 

 

 

 

 

 

 「ボ、ボ、ボ、ボ…僕モ……混ゼテェェ……

 

 

 

 

 

 

 

 「……は?」

 

 

 

 呪いが現れた。

 

 それも、言葉を解する個体が……。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 尚美は蠱毒を発動し、呪いを吸収しようとしたが――

 

 (……吸収できない?)

 

 

 吸収は不可能であった。それが意味するのは、

 

 (こいつ……!最低でも準一級かよ!)

 

 尚美の頬を、汗が伝った。今は6月、夏は先にも関わらず、尚美の体から汗が噴き出していた。

 

 「イっしょに…、アー…そ、ぼおおおぉぉぉぉうううううぅぅぅうぅおお!」

 

 黒板に爪を立てた様な不快な音と共に、二足歩行の人面の甲虫が、4本の右腕を振り上げながら尚美に狙いを定めて、跳んだ。

 

 「ッッ……!!」

 

 尚美は全身に呪力を纏い、防御の耐性をとる――のを辞め、全神経を回避に集中させた。

 

 ドチュッという音を立てながら、甲虫呪霊の拳が、校舎に突き刺さった。

 

 ジュウッという、鉄板の上にある肉を焼く様な音を立てながら、コンクリート製であろう校舎が、溶けた。

 

 (これが……こいつの術式か?)

 

 蝕爛腐術の様に、何かを媒介にして分解、あるいは溶かす術式と尚美は仮説を立てたが――

 

 「僕ね!い……パイ、虫さんもってるよオおおおオおお」

 

 ブウゥンという音を立てながら、甲虫呪霊の周りに、蜂が集まり始めた。

 

 (やられた!術式の開示か!壁を溶かしたのは……呪力特性か!)

 

 この甲虫呪霊は蜂を操る術式と、酸の様に触れたら溶ける呪力特性を持っている。だが、尚美が危惧したのは呪力特性ではない。

 

 (蜂を操作するってことは……、あの呪霊が神風(バードストライク)モドキをする可能性もあるよね……)

 

 神風(バードストライク)。冥々が新宿にて披露した、「烏に自死を強制させる縛り」を課すことでその代価として本来微弱である動物(烏)の呪力制限を消し去り、相手に体当たりさせる技。

 

 その威力は特定疾病呪霊――疱瘡婆の胴体に大穴を空けるほどであり、防ぐことができた人間は五条悟とかいうアッチ側の化物を除いて存在しない。

 

 (……呪力量だけなら私の方があいつより多い、なら……!)

 

 全身に呪力を纏い、呪霊に向かって走る。

 

 幼い子供の痩躯では、呪い相手に技をかける事など不可能である。ならばこそ、呪力を全身に纏い、ただただ殴る、ただただ蹴る。

 

 ゴリラ廻戦の開幕である。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 「シッ……!」

 

 掛け声と共に、足を蹴る。昆虫の外骨格を持ってはいるが、尚美の蹴りでも壊せる程脆い。

 

 バキィっという音を立てながら、人間でいう膝の部分が砕け散り、両脚が寸断される。

 

 「ふゆみちゃぁぁああああぁぁン…………痛イよよおおおおぉぉおぉ?」

 

 「……誰?」

 

 (……この呪霊、鈍いし脆い……どういう事だ?)

 

 尚美は甲虫呪霊の脚を折った直後から、違和感を感じていた。

 

 あまりにも鈍く、脆い。本当に術式持ちの呪霊かと疑いたくなる程に弱い。一般的な術師なら二級だと判断するレベルで弱い。

 

 確かに呪力特性は脅威ではあるが、それを差し引いても弱い。何なんだこいつはと思い始めた直後、甲虫呪霊が行動を開始する。

 

 

 

 

 

 「鈴虫

 

 

 

 

 パアンと、空砲に似た音が響いた。

 

 そして、尚美の右前腕が2cm程抉れ、血が垂れる。

 

 (……見えなかった!)

 

 甲虫呪霊がやったのは冥々の神風(バードストライク)に近いものである。蜂に絶命の"縛り"を課し、己の呪力の五分の一を分け与える事により、蜂は銃弾の様な速度で突進、尚美の肉を穿った。

 

 (……ぶっ潰す!)

 

 が、それはあまり意味をなさなかった。

 

 尚美が体中の呪力が迸ると共に、抉れた腕の一部が修復されていく。

 

 

 

 

 

 蠱毒には、副作用が存在する。

 

 蠱毒とは、己の胎に呪いを封じ込め、共食いさせ、生き残った個体を式神として創り直す。この説明は間違っていない。

 

 己の胎に呪いを封じ込めるという特性上、その肉体は呪いという存在に耐える為、より魔に近いものになる。

 

 そして、蠱毒という術式そのものが、術者の身体を作り変えていく。

 

 九相図が呪力を血液に変換するという特異体質を獲得した様に、尚美は己の呪力を己の血肉に変換するという特性を得ていた。

 

 「オラァッ!」

 

 その結果、全身に傷を負っている小学1年生に嬲られる準一級呪霊という、意味不明な状況が完成する。

 

 ぐちゃっ

 

 肉が潰れる様な音と共に、甲虫呪霊の四肢――ではなく、六肢が根本から潰され、達磨になる。

 

 甲虫呪霊側が従えていた蜂は底を尽き、呪力もすっからかん。とてもじゃないが戦闘を続行できる様な状態ではなかった。

 

 だが、そんな事はどうでも良かった。

 

 

 「お前、中々強かったよ」

 

 

 己に跨る人間の雌が囀る言葉に、禍々しいものを感じ取った。

 

 「精々、私の式神(子供)の良い肥やしになってくれ」

 

 (あそこ)に行けば、己が己では無くなる。そう理解し、抵抗しようとしても、できなかった。

 

 あらゆる物体が重力に引っ張られる様に、甲虫呪霊は蠱毒に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ 

 

 

 あの後、ドッジボールに戻ろうとしたら服に血がついていた為、ちょっとした騒ぎになったがなんとか乗り切れた。

 

 それにしても、あの呪霊強かったな~。今も私の中で暴れているのが感じ取れるし、結構強いのができると思う。

 

 でも、五条や伏黒 甚爾(最強のオスゴリラ)に対抗するにはあの程度の敵に梃子摺っている様じゃ、全然駄目だ。

 

 もっと呪霊を取り込んで、強い式神を創ろう。

 

 まぁ、まだ一体も創ってないんだけど……。

 

 どんな奴が産まれるか楽しみだよ。

 

  

 

 

 

 

 




 戦闘シーンムズすぎだろ!

 質問コーナー!

 Q.尚美の特異体質って何なの?

 蠱毒で創り直す式神を顕現させる際、式神が強過ぎると術者が死ぬ可能性がある為蠱毒を発現した時点で本人も知らない内に身体を造り変えられている。
 今の尚美は九相図みたいな状態。蠱毒を続ける程肉体が寄り呪霊側に近づいていく。
 呪霊を創り続ければ、≡の虎杖みたいにワンチャン不老になる可能性もある。
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