もしも、ロキファミリアに闇深系少女が入ったら。   作:匿名。

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第8話

 深い闇の中から、意識が浮上する。

 

 フィーナが目を開けると、そこは見慣れた黄昏の館の天井だった。

 

 全身が鉛のように重い。指一本動かすのも億劫なほどの倦怠感。

 

 節々が痛み、喉がカラカラに乾いている。

 

 (……生きてる)

 

 その事実を確認すると同時に、隣のベッドに視線を向ける。

 

 そこには、静かな寝息を立てるアイズの姿があった。

 

 包帯が巻かれているが、顔色は悪くない。

 

 フィーナは安堵のあまり、涙が滲みそうになるのを堪え、乾いた唇を震わせた。

 

 「……【謳え……残響……】」

 

 掠れるような声。

 

 だが、魔力は確かに応える。

 

 フィーナは自身の体に魔法を行使した。

 

 【ディア・リヴィーレ】。

 

 淡い光が体を包むと、全身の痛みが嘘のように消え去り、重かった体が羽のように軽くなる。

 

 鏡を見なくともわかる。拷問の痕も、疲労の色も、全て消え去ったはずだ。

 

 そこにいるのは、傷一つない、ただの可憐なハーフエルフの少女。

 

 フィーナはベッドから降り、音もなくアイズの元へ歩み寄った。

 

 そっと手をかざす。

 

 「【癒えよ】」

 

 アイズの体にも光が染み渡る。

 

 包帯の下の傷が完全に塞がり、深層遠征の疲労が浄化されていく。

 

 魔法の光と気配を感じて、アイズの睫毛が震えた。

 

 ゆっくりと、黄金の瞳が開かれる。

 

 「……ん……?」

 

 視界がぼやける。

 

 だが、目の前にいる銀色の影だけは、はっきりと認識できた。

 

 フィーナ。

 

 あんなにボロボロだったのに、今は傷一つなく、優しい笑みを浮かべて自分を見下ろしている。

 

 「……おはようございます、アイズさん」

 

 その声を聞いた瞬間。

 

 アイズの心の中で、何かが決壊した。

 

 「フィーナ……ッ!」

 

 アイズは跳ね起きて、フィーナに抱きついた。

 

 「アイズさん!?」

 

 フィーナが驚いて受け止める。

 

 アイズの体は震えていた。熱い涙が、フィーナの肩を濡らす。

 

 「怖かった……。フィーナが、死んじゃうかと思って……」

 

 「……ごめんなさい。心配かけました」

 

 「なんで……あんなことしたの……。私を庇って……」

 

 「それは……アイズさんが大切だからです」

 

 フィーナは、アイズの背中を優しく撫でた。

 

 「アイズさんが私を庇ってくれたから、私も庇ったんです。……私たちは、二人で一つですから」

 

 「……うん。うん……ッ」

 

 アイズは言葉にならなかった。

 

 ただ、この温もりが消えずにここにあること、それだけが嬉しくて、愛おしくて、離したくなかった。

 

 「……もう、無茶しないで」

 

 「ふふ、お互い様ですよ」

 

 「……約束。これからは、絶対に死なないし、死なせない。」

 

 「はい。約束です」

 

 二人は指切りをするように小指を絡め、そしてまた強く抱き合った。

 

 血の繋がらない姉妹。戦友。共犯者。

 

 どんな言葉でも足りない絆が、そこにはあった。

 

「――おーい、入るでー?」

 

 しばらくして、空気を読まない(あるいは読みすぎた)タイミングで、ロキが顔を出した。

 

 「大丈夫やったかー? フィーナたん、アイズたん……って、お熱いねぇ」

 

 抱き合う二人を見て、ロキはニヤニヤと笑いながら、その実、心の底から安堵していた。

 

 「よかった……ほんまに、よかったわ」

 

 朱色の瞳が、少しだけ潤んでいるように見えた。

 

 「さて、感動の再会もそこそこに、やることあるで。……フィンのステイタス更新や」

 

 場所をロキの私室へ移す。

 

 そこにはフィン、リヴェリア、ガレス、そしてフィーナとアイズだけが集められた。

 

 完全なるトップシークレット。

 

 ロキがフィンの背中に針を走らせる。

 

 そして、羊皮紙に書き写された文字を見て、口笛を吹いた。

 

 「……お見事。フィン、今日からオラリオの頂点の一角や」

 

名前: フィン・ディムナ

Lv. 5 → 6

《アビリティ》

 全能力値が大幅に上昇。器は満ち、新たな位階へと昇華。

 

 「Lv.6……!」

 

 フィーナが息を呑む。

 

 これで、フィンはオッタルと並ぶ(あるいは迫る)領域に達した。

 

 「このことは、ここにいるメンバーだけの秘密や。ギルドにも報告はせん」

 

 ロキが真剣な顔で告げる。

 

 「敵に情報を与える必要はない。……『切り札』は、伏せておいてこそ意味があるんや」

 

 「はい。……納得です」

 

 フィーナとアイズも頷く。奇襲の成功率を上げるため、情報は統制すべきだ。奇襲とは単にふいをついて先に攻撃することを指すだけではない。レベルアップを報告しないこと、レベルを偽装することも立派な奇襲たり得るのである。

 

 「ほな、次はフィーナたんとアイズたんの番やな。男どもは早よ出てき」

 

 フィンとガレスを部屋から追い出す。

 

 二人が外に出たことを確認したのちに、ロキが手招きする。

 

 まずはアイズから。

 

 彼女は深層で強化種と戦い、下層でのモンスターとの戦いで前線を支え続けた。その経験値は計り知れない。

 

 「……うわぁ」

 

 ロキが羊皮紙を見て、呆れたような、それでいて誇らしげな声を上げた。

 

【ステイタス更新結果】

名前: アイズ・ヴァレンシュタイン

Lv. 3 → 4

能力値(Lv.3最終):

 力:D 512 → S 920

 耐久:E 405 → B 780

 器用:E 420 → A 830

 敏捷:C 630 → S 960

 魔力:H 180 → B 720

 

 「……アホか。Lv.3をすっ飛ばしてLv.4になれるやんけ」

 

 ロキの手が震える。

 

 通常の冒険者が数年かけて到達する領域を、彼女は数日(実質的な戦闘時間はもっと短い)で駆け抜けた。

 

 どれだけ濃密で、どれだけ死に近い時間を過ごしたのか。想像するだけで胃が痛くなる。

 

 「おめでとう、アイズたん。ランクアップや。……それに、スキルも変わっとるで」

 

《スキル》

『復讐姫(アヴェンジャー)』

 ・憎悪対象に対して攻撃力超域強化。

 ・怪物種に対して攻撃力高域強化。

 ・竜族に対し攻撃力超域強化。

 ・憎悪の丈だけ効果上昇。

 ・【追加】:対「特定敵対者(フィーナ・アルジスを害する者)」に対しても効果発動。憎悪の対象が拡張された。

 

 「復讐の対象が……人にも向くようになったんか」

 

 ロキは複雑そうに、けれど優しくアイズの頭を撫でた。

 

 「大切なもんができたんやな。……よかったな、アイズたん」

 

 「……ん。守るための力、手に入れた」

 

 「よし、次はフィーナたんや!」

 

 フィーナが背中を向ける。

 

 ロキはその背中に触れ、そして再び絶句した。

 

 「……アイズたんもフィーナたんも、ほんまに……」

 

 ロキの声が震えている。怒りではない。愛おしさと、畏敬の念だ。

 

 あんな小さな体で、どれだけの痛みを飲み込んだのか。

 

【ステイタス更新結果】

名前: フィーナ・アルジス

Lv. 2 → 3

能力値(Lv.2最終):

 力:H 190 → D 520

 耐久:E 480 → S 999

 器用:H 160 → B 720

 敏捷:H 195 → C 680

 魔力:B 790 → SSS 1581(限界突破)

 

更新後

Lv3

能力値

 力: I 0

 耐久: I 0

 器用: I 0

 敏捷: I 0

 魔力: I 0

《発展アビリティ》

精癒I 治癒I

 

《魔法》

ディア・リヴィーレ

《空きスロット1つ》

 

《スキル》

アウクス・マナ・ヴィーレ

・魔力の限界突破

・魔力に成長補正大

・魔法待機の安定化

 

比翼連理

・特定対象(アイズ・ヴァレンシュタイン)との共闘時、全ステイタスの成長推移(エクセリア取得率)に極大補正。

 ・対象との想いの強さ、共有する「渇望」の深度に比例して効果が上昇。

 ・共鳴現象(レゾナンス)。

 ・復讐の対象に対する憎悪の丈の上昇。

 ・復讐対象との戦闘で全ステータス超向上。

 ・復讐相手を前に敗北あるいは逃走するたびにステータスに大幅ペナルティ。

 ・対象、あるいは自身の「根源的渇望(復讐)」が成就した時、または精神的乖離が生じた時、憎悪が終了した時、このスキルは消失する。

 

 「魔力1500オーバーに、耐久カンストて……」

 

 ロキは乾いた笑いを漏らすしかなかった。

 

 深層でアイズを庇い、瀕死の重傷を負いながら魔法を使い続けた結果だ。

 

 肉体の限界を、精神が凌駕している。

 

 「……無茶しすぎや。ほんまに」

 

 ロキはフィーナを後ろから抱きしめた。

 

 「よう生きて帰ってきたなぁ。……偉かったで、フィーナたん」

 

 「……ロキ様」

 

 「おめでとう。ランクアップや!」

 

《発展アビリティ》

 『治癒』(選択)

 (回復魔法や治療行為に補正)

 

 新しい魔法やスキルはない。だが、今の彼女にはそれで十分だった。

 

 『精癒』と『治癒』。二つのアビリティ。特に、治癒の発展アビリティによって概念的射程(回復できる範囲が広がることを指す。例えば、今までは治せなかったものが治せるようになること)が伸び、ありとあらゆるものを治す可能性を秘めた最強の回復魔法。

 

 そして何より、隣に立つ最高の相棒(アイズ)がいる。

 

 「これで……ようやく… 」

 

 フィーナの瞳に、静かな闘志が宿る。

 

 ステイタス更新を終えたフィンたちは、執務室にある応接スペースのソファに深く沈み込んでいた。

 

 極限の緊張から解放された安堵感が、泥のような疲労となって押し寄せている。

 

 だが、まだ眠るわけにはいかない。

 

 彼らを囲むリヴェリア、ガレス、そしてロキの三名は、固唾を呑んで「英雄の帰還報告」を待っていた。

 

 「……さて、どこから話そうか」

 

 フィンが淹れられたばかりの紅茶に口をつけ、乾いた喉を潤す。

 

 その碧眼には、まだ深層の闇の色が微かに残っていた。

 

 「まず、行程だ。僕たちは上層、中層での探索をほぼ放棄した。……『落下』したんだ」

 

 「落下、じゃと?」

 

 ガレスが太い眉を顰める。

 

 「ああ。縦穴を見つけては飛び降り、アイズの風で着地し、また走る。フィーナの魔法で疲労を無限に回復させながら、ノンストップで深層まで駆け抜けた」

 

 フィンは淡々と語るが、その内容は狂気の沙汰だった。

 

 「37階層、『白の宮殿』に到達するまで、数時間。……通常の遠征なら二日はかかる道のりだ」

 

 「……無茶苦茶やな」

 

 ロキが呆れたように天井を仰ぐ。

 

 「Lv.2のフィーナたんを連れて、その速度で深層入りか。心臓が破裂してもおかしないで」

 

 「そして、階層主ウダイオスとの戦闘」

 

 フィンはフィーナとアイズを見やった。

 

 「僕が『魔人化』で暴走し、それをフィーナの魔法が強制解除した件はさっき話した通りだ。……だが、真に驚くべきは、その帰り道だ」

 

 どうやら、フィン団長は、リヴェリア様達にレベルアップをした時の話をしていたようだ。

 

 そんなことを考えていると、フィンの声色が、一段低くなる。

 

 「18階層で、アレクト・ファミリアの団長と副団長……『ディース姉妹』に遭遇した」

 

 「なっ……!?」

 

 リヴェリアが絶句し、ガレスが身を乗り出した。

 

 「あの双子か! Lv.5の第一級冒険者……しかも二人揃ってか!?」

 

 「ああ。僕は消耗し、装備もボロボロ。対して向こうは万全。……絶体絶命だったよ」

 

 フィンは自身の親指を撫でる。

 

 「だが、勝った。……彼女たちが、勝たせてくれたんだ」

 

 フィンは、その時の光景を詳細に語り始めた。

 

 フィーナが囮となり、拷問を受けたこと。

 

 その隙を突いて、アイズが『復讐姫』を発動させて魔法を使い、強烈な一撃を叩き込んだこと。

 

 そして、半狂乱になった妹を、フィンが仕留めたこと。

 

 「……Lv.3のアイズが、Lv.5を葬ったというのか」

 

 ガレスが信じられないといった顔で呻く。

 

 「ステイタスの差は絶対じゃ。それを覆すなど……」

 

 「『比翼連理』と『復讐姫』の共鳴。そして……フィーナの献身だ」

 

 フィンは悲痛な面持ちで、フィーナを見た。

 

 「リヴェリア。君はフィーナの怪我を見て、不思議に思わなかったかい? 魔法が使える彼女が、なぜあれほどの傷を負い、出血していたのか」

 

 「……まさか」

 

 リヴェリアの翠の瞳が揺れる。

 

 「ああ。彼女は、囮になったんだ。そして、最初から『目潰し』を狙っていたんだ」

 

 室内が静まり返る。

 

 フィンは、フィーナが行った狂気的な選択を、指揮官の視点で冷徹に、しかし敬意を込めて解説した。

 

 「アイズもフィーナもLv.5の速度に、ステータスに対抗する術を持たない。普通に魔法を唱えれば、詠唱前に首を跳ねられて終わりだ。……だから、彼女はあえてディナを挑発して拷問を受けた」

 

 「なっ……」

 

 ロキが息を呑む。

 

 「舌を噛み切り、口の中に血を溜め、敵が最も油断する至近距離まで引きつけた。……自分の体が切り刻まれる激痛に耐えながら、彼女はずっと、反撃の一瞬だけを待っていたんだ。口に溜まる血液で視力を奪うために… 」

 

 フィンの言葉に、その場の全員が戦慄した。

 

 Lv.2の少女が、Lv.5の快楽殺人者を相手に、痛みに耐え、死の恐怖に耐え、冷静に罠を張り続けたのだ。

 

 それは勇気という言葉で飾るにはあまりにも凄惨で、狂気と呼ぶにはあまりにも理知的だった。

 

 (……なんて子だ)

 

 リヴェリアは口元を押さえた。

 

 フィーナという少女の、愛らしさの裏にある底知れぬ「覚悟」に、恐怖すら覚えた。

 

 「……それが、唯一の正解だった」

 

 フィンは独白するように呟く。

 

 「僕が助けに入れば、アイズもフィーナも守りきれずに全滅していただろう。Lv.2がLv.5に一矢報いる方法は、それしかなかった。……彼女は、盤上の駒として、自分自身を最も効果的に『消費』したんだ」

 

 悔しさと、指揮官としての納得。

 

 フィンはその両方を噛み締め、拳を握りしめた。

 

 「……僕は、彼女に救われたんだ」

 

重苦しい沈黙の中、アイズがゆっくりと口を開いた。

 

 その黄金の瞳は、真っ直ぐにフィーナを見つめている。

 

 「……フィーナ」

 

 「は、はい」

 

 「もう、しないで」

 

 アイズの声は震えていた。

 

 「あんな、危ないこと。……自分を傷つけること。しないで」

 

 それは、悲痛な願いだった。

 

 フィーナの顔が歪む。アイズの願いを拒みたくはない。だが、嘘もつけない。

 

 彼女は俯き、小さな声で、けれどはっきりと答えた。

 

 「……約束は、できません」

 

 「っ……」

 

 「アイズさんに危険が及ぶなら……私は、何度でもやります。私の命で、アイズさんが助かるなら……迷わず差し出します」

 

 その言葉は、純粋な愛であり、同時に重すぎる呪いだった。

 

 アイズは唇を噛み締め、フィーナの肩を掴んだ。

 

 「だめ。……私が守る。フィーナは、私が守るから」

 

 「アイズさん……」

 

 「……『アイズ』」

 

 「え?」

 

 フィーナが目を瞬かせる。

 

 「『さん』はいらない。……アイズって、呼んで」

 

 アイズは真剣な眼差しで、フィーナに迫った。

 

 対等でいたい。守られるだけの存在ではなく、隣に立つ存在でありたい。

 

 その意思表示だった。

 

 「……あ、う……」

 

 フィーナは顔を真っ赤にして、おずおずと口を開く。

 

 「……あ、アイズ……?」

 

 「……ん。フィーナ」

 

 二人は見つめ合い、そして小さく微笑み合った。

 

 その光景は、戦場での血生臭さを忘れさせるほどに尊く、美しかった。

 

 「……はぁ」

 

 ロキがわざとらしく大きなため息をついた。

 

 「お熱いこっちゃ。見てられへんわ」

 

 「全くだ。……だが、悪くない」

 

 ガレスが髭を揺らして笑う。

 

 「少し、依存が強すぎる気もするがな」

 

 リヴェリアは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえたが、その表情は柔らかかった。

 

 冒険の報告が終わり、場の空気が「過去」から「未来」へと切り替わる。

 

 フィンが姿勢を正し、リヴェリアに向き直った。

 

 「さて、リヴェリア。こちらの準備はどうなっている?」

 

 「ああ。お前たちが地獄を巡っている間、こちらも動いていた」

 

 リヴェリアは一枚の羊皮紙をテーブルに広げた。

 

 そこには、膨大な物資のリストと、流通経路が記されていた。

 

 「まず、指示通りエリクサーと精神力回復薬(マインド・ポーション)の発注は完了した。……ファミリアの金庫は空に近いがな」

 

 「構わない。必要な出費だ」

 

 「ディアンケヒトには、『極秘任務での消耗』という名目で、市場価格の2.5倍で買い取ると持ちかけた。彼らは金に聡い。口外無用を条件に、在庫の全てを吐き出してくれたよ」

 

 リヴェリアは淡々と報告する。

 

 「ミアハ・ファミリアにも接触した。あそこは規模は小さいが、品質は確かだ。試作品も含め、特に精神力回復アイテムを根こそぎ確保した」

 

 「流石だね。……他には?」

 

 リヴェリアは、少しだけ得意げに口角を上げた。

 

 「私なりの『対策』も進めている。……闇派閥の攻撃に備え、『黄昏の館』自体の防衛機能を強化した」

 

 「防衛機能?」

 

 「ああ。敵がアルフィアとザルドならば、正面突破もあり得る。そこで、ゴブニュ・ファミリアに依頼し、館の地下シェルターを拡張させている。今も工事中だ。非戦闘員の避難経路の確保と……もう一つ」

 

 リヴェリアは指を立てた。

 

 「『魔剣』の確保だ」

 

 「魔剣……クロッゾのか?」

 

 フィンが驚く。

 

 「いや、クロッゾの魔剣は今は手に入らん。私が集めたのは、使い捨ての『即席魔剣』や、魔力を込めて爆発させる魔石製品だ。……質より量だ。敵の進軍を遅らせるための『地雷原』を作るつもりだ」

 

 リヴェリアの瞳が鋭く光る。

 

 「高貴なエルフの戦い方ではないかもしれんが……フィーナの話を聞いてな。綺麗事では守れないと悟ったよ」

 

 リヴェリアの表情は悩み抜いた結果だと語っていた。同族の森を焼いた魔剣。そんなものに頼ることになると思っていなかった。だが、背に腹はかえられない。

 

 「……ありがとう、リヴェリア」

 

 フィンはリヴェリアの心境を理解し、深く頷いた。

 

 「十分だ。これで、僕たちは戦える」

 

 戦力、物資、そして覚悟。

 

 全てのピースが揃いつつあった。

 

 オラリオを揺るがす大抗争、『死の七日間』。

 

 その幕開けは、もう目の前まで迫っていた。

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