黄金寓話   作:いなほみのる

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第10話 魍虎伏草─伍─

 京都姉妹交流会二日目、"野球戦"。

 虎杖悠仁による厳正なくじ引きの結果、東京校と京都校は呪術を交えた野球で勝敗を決することとなった。

 

 

 

 

 

「すまなかったな、マハトよ」

 

 二日目の交流会が始まる前、東堂葵はマハトへと謝罪に来ていた。

 言葉とは裏腹に、東堂の顔は嫌に煌めいている。

 

性癖(せんじつ)の件でしたら、別に気にしていませんよ。学生にも色々事情があるのでしょう?」

「フフ…。よく分かっているじゃないか」

 

 一日目の団体戦において、東堂は東京校の学生たちを蹴散らした後にマハトと思う存分語らう予定であった。実際、東堂はいの一番に群れて行動する東京校の面々に会敵した。

 想定外だったのは、虎杖悠仁の存在。

 

「あの日、俺は"運命(ディスティニー)"を思い出したんだ」

「昨日のことですよね」

 

 虎杖の性癖を知った時、東堂の脳内には()()()()()()()が溢れだした。

 彼と同じ中学で性癖を語らい、告白を見届けてもらい、共にラーメンを食べた記憶。東堂と虎杖は、地元では負け知らずだったのだ。

 

「そういえば、マハトは虎杖(ブラザー)と親しいのだったな」

「ぶらざー、ですか?」

「皆まで言わせるな。オマエなら分かるだろう」

 

 昨日虎杖と語らう中で、マハトも話も多少は聞いている。マハトは呪いでありながら、虎杖と生活を共にしていたのだと。虎杖が見た限り一度も人を傷つけることなく、彼の親代わりとして在り続けたと。

 やはり東堂の目に間違いはなかった。マハトは他の呪霊とは一線を画した存在なのだ。

 

「俺と虎杖(ブラザー)のことをこれまで見守ってくれたんだ。オマエが凡百(ただ)の呪霊のはずがなかったな」

「………もしや、ぶらざーとは悠仁様のことでしょうか?」

「皆まで言うなと、言ったはずだぞ」

 

 あくまで嬉しそうに、東堂はマハトを窘める。東堂は、マハトが全てを理解(わかっ)っていると確信している。

 

「ですが、悠仁様と葵様は血の繋がりはないはずでは」

「おいおい、野暮なことを言わないでくれ」

 

 東堂は自身の胸筋に手を添えた。

 

「血の繋がりの有無など些事。俺と虎杖(ブラザー)は、魂で繋がっている!」

 

 彼の力強い断言を聞いて、マハトもまたたおやかに微笑んだ。それでこそ、虎杖の育ての親だ。

 

「戦いで培われた強固な繋がりは、時に血の繋がりをも凌駕する。とても興味深い話ですね」

「? 俺と虎杖(ブラザー)は中学からの仲だぞ」

「………面白い」

 

 東堂の言葉に、マハトの笑みが深まる。当たり前のことを東堂は言っただけだと言うのに、一体何が面白いというのか。

 

「今、私は葵様に好意を抱いています。もっと貴方のことを、理解したいと思っている」

「フッ……。随分大胆な告白だな」

 

 交流会前に感じたものと同じ、舐め回すような視線。だが今の東堂には、その視線すら心地よい。さながら、春のそよ風を全身に浴びているような心地だ。

 これも全て、虎杖のおかげ。

 

「俺とていけずな男じゃない。オマエの想いには今日の野球戦で応えてやる、今度こそな」

「恐れ入ります。ですが私はあくまで呪術指南役です。今日の野球戦には──」

「分かっているとも」

 

 そんなことは承知の上だと、東堂はマハトへと指を振る。

 

「オマエはただ俺と虎杖(ブラザー)を見ていればいい。それで全てが分かるはずさ」

 

 もう野球戦の刻は近い。東堂は虎杖たちの元へ足を踏み出した。

 瞼の裏に映るのは、虎杖との青い未来のみ。

 

「俺たちの雄姿を、その目に焼き付けてくれ」

 

 野球戦にてキャッチャーの任を預かった東堂は。

 結局バットを一振りもすることなく、禪院真希による死球で撃沈した。

 

 

 

 

 

 記録。

 2018年10月31日19:00。

 東急百貨店・東急東横点を中心に半径およそ400mの"帳"が降ろされる。

 この事態を受け、呪術高専は五条悟及び1級相当以上の術師を中心とし編成した4班を派遣。

 呪術総監部からの要請に基づき、内1班には1級相当以上の術師として呪霊マハトが割り当てられた。

 

 

 

 

 

「驚いたなー。まさかマハトと任務で一緒になるなんて」

「高専の外に出るのは久しぶりですね」

 

 青山霊園にて、虎杖悠仁はマハトと共に歩いていた。

 呪術師としての任務だ。渋谷に大規模な"帳"が降ろされるという異常事態。それを受けて虎杖はマハト共に任務に臨むこととなった。といっても、あくまで事態の対処は五条が行い、虎杖たちの役割はあくまでそのバックアップらしいのだが。

 補助監督──伊地知から聞いた話では、虎杖と組む相手は当初1級術師冥冥とその弟であったらしい。だが冥冥たちに急遽別件が入り、そこで空いた穴にマハトが収まる形になったのだとか。

 

「上層部の方々は、私が術師として十分な能力を持っているか確かめたいようでした」

「成る程………。つまりどういうことだ先生?」

「例えば、こういう類のものを扱うことができるかどうかなどでしょうか」

 

 マハトが懐から取り出したのは、バイブ音を鳴らす携帯電話だ。そこでようやく虎杖はマハトの言葉の意味を理解した。

 いくら人と似たような姿をしていて人と同じ言葉を喋るといっても、マハトは呪霊だ。現代の電子機器には馴染みがなくて当たり前だ。特に携帯電話は術師、というか人間の世界ではもはや使わなければ生きていけないレベルのもの。この任務を通して、上層部とやらはマハトにそれらを扱えるかを試したいのか。

 

 マハトは電話を受け、淀みなく電話先と会話をこなしている。虎杖と一緒に住んでいた時は携帯電話は使っていなかったはずだが、凄まじく早い順応だ。

 

「悠仁様、行き先が変わりました」

「!」

「明治神宮前に渋谷と同様の"帳"が降ろされたそうです。私たちはそちらに向かいます」

 

 かつて1級術師七海が虎杖がそうしたように。

 マハトは迅速に状況を把握し、虎杖を先導しつつ歩みを早める。

 

「マハトってもう東京の地理マスターしてんの?」

「ご心配なく。悠仁様は私に付いて来てください」

 

 

 

 

 

 東京メトロ、明治神宮前駅に到着した虎杖たちは、補助監督との情報共有の後駅構内に突入。

 構内の改造人間や呪霊を処理しつつ、(ちか)(かい)まで到達した。

 

 

 

 

 

 虎杖たちが(ちか)(かい)に到達した時には、敵──真人たちの策は為されていた。

 今現在虎杖たちは、線路を辿る形で五条のいる渋谷駅(ちか)(かい)副都心ホームへと向かっている。

 

「…それにしても驚きました。悠仁様が、短期間でここまで強くなっているとは」

「別に、マハトに比べたら全然でしょ」

 

 虎杖と共に線路を駆けるマハト。彼から唐突にかけられた称賛の言葉に、虎杖は反射的につっけんどんな返事をしてしまった。長年生活を共にしてきたが故の照れ隠しだ。もし言葉の主がマハト以外の術師であれば、虎杖は謙遜するにしてももう少し素直な言葉を吐けていただろう。

 

 それに事実として、今の虎杖ではマハトに遠く及ばない。

 交流会でマハトと再会してから今まで、任務の合間合間で虎杖はマハトに練習試合という形で稽古をつけてもらっていた。体術を鍛錬を目的とした術式を使わない練習試合である。練習試合において、虎杖は一度もマハトにまともに攻撃を当てられなかったのだ。マハトが図抜けた実力を持っていることは分かっていたが、まさか体術勝負もまともに出来ないとは思っていなかった。唯一、東京校の学生全員でマハトを相手取った時にのみ、虎杖はマハトの隙を突き攻撃を当てることができた。だがあれもラッキーパンチのようなもの、虎杖とマハトの実力差は歴然である。

 

 彼の照れ隠しを知ってか知らずか、マハトは愉快気に笑みを漏らした。

 

「おやめください、過度な謙遜はかえって印象が悪いのですよ。悠仁様が祓った呪霊は、気配からして並の術師では相手にならなかったはずです」

「まああのバッタ、言葉も分かってたしな」

 

 虎杖が祓った呪霊は飛蝗を象った姿をしており、その姿に基づいた強みをいくつか持っていた。

 高い脚力と咬合力、四本腕から繰り出される手数、奥の手としての伸縮する尻尾。確かにどれも厄介なものだ。

 だがそのどれも、虎杖には通用しなかった。ただそれだけの話だ。

 

「きっと悠仁様なら1級術師にもすぐなれます。悟様もそう仰っていました」

「五条先生も? 何か照れるな」

 

 線路を走りながら、顔を綻ばせる虎杖。

 その左耳に、突如得体の知れない異物が張り付いた。

 

『聞こえるカ? 虎杖悠仁。よく聞ッ───』

 

 虎杖は即座に異物を左耳から引き剝がした。引き剥がしたそれは、どこかロボっぽい顔のついた円盤。とにかく得体が知れない。左手で強く握り、虎杖は握力での破壊を試みる。

 

『待て待て待テ! 味方だバカ!!』

 

 得体の知れない異物の言い分など聞く必要はない。虎杖はそのまま一息で異物を砕こうとし。

 

『京都校のメカ丸ダ! 時間がなイ、一度で聞き分けロ』

 

 メカ丸、その名を虎杖は知っている。京都校二年、天与呪縛を患った傀儡使いだ。

 手の力を緩めた虎杖に、メカ丸は話を続けた。

 

 

 

『五条悟が、封印されタ』

 

 

 

 突拍子もない言葉だった。

 だから、虎杖は最初その意味を呑み込めなかった。

 

「五条先生が…!? 嘘だろ!??」

「………」

 

 驚愕の声を上げる虎杖とは対照的に、マハトは目を細めただ黙っていた。

 メカ丸は更に言葉を続ける。

 

『悪いが、嘘ではないという証拠は出せなイ。あえて言わせてもらえバ、俺がココにいることだ』

 

 そこからメカ丸は、五条が封印されたという証拠をつらつらと語った。

 曰く、自身は既に真人という特級呪霊に殺されていること。今のこの姿は生前のメカ丸が残した保険に過ぎず、"五条悟封印後"に発動条件を限定したものであり、この傀儡を含め3箇所に忍ばせていたこと。

 そして、虎杖悠仁とマハトは内通者の可能性が低いこと。

 

「呪いである私を、信用するのですね」

 

 マハトが手の内のメカ丸を見やる。いつも通りの微笑み。だが虎杖は何故か背筋をなぞられたかのような悪寒を覚えた。

 

『呪い云々に関してはが俺がどうこう言えることじゃなイ。アンタと虎杖は数か月前まで呪術界との繋がりがなかっタ。あくまでその事実に基づき判断したことダ』

「成る程」

 

 メカ丸の術式は傀儡操術。傀儡の操作範囲は天与呪縛の力で日本全土に及び、蚊や蠅レベルのサイズの傀儡を駆使すれば容易く情報を収集できる。

 そのメカ丸が呪術界の繋がりがないと断じているのだから、それは信頼できる事実なのだろう。

 

『その上、アンタを始末するための呪詛師がここに向かっていル』

 

 虎杖とマハトは線路の先に満ちる闇に視線を移す。

 闇の中に、何かが蠢いている。呪詛師の気配だ。

 

 

 

 

 

「悠仁様、地上の皆様を頼みます」

「押忍!!」

 

 虎杖とマハトは、メカ丸の指示に従うこととした。

 虎杖は地上から渋谷に向かい、五条悟封印の伝達及び五条奪還という目的の提示。

 マハトには、呪詛師の対処、及び線路での待機が命じられた。

 

 

 

 

 

「やあマハト、4か月ぶりってところかな」

 

 羂索は、自身の歩く線路の先に立つマハトに手を振った。

 先ほどまで線路間を隔てていた"帳"は上がっている。地上で"帳"を守っていた呪詛師がやられたのだ。

 

「やはり、呪霊の一派と通じていたのは貴方でしたか」

「まあね」

 

 マハトの足元には、両断された呪詛師の死体が転がっている。羂索に驚きはない。マハトとこの呪詛師の実力差を考えれば、当然の結果だ。

 

「もしかして、君以外の呪霊と連んでたことに妬いてたりする?」

「お戯れを」

「はは、冗談だよ。君くらい面白いのもいなかったしね」

 

 おどけた笑みを見せる羂索。マハトは礼の形を取っている。

 

「君は真人と会ってるんだよね。私の目的はあの呪霊の術式だよ」

「…呪霊操術ですか」

「へぇ。この(がわ)のこと、よく知ってるじゃないか」

「恐れながら、悟様や正道様から伺いました」

「流石だね」

 

 マハトが高専で条件付きで解放されてから、おおよそ4か月。この短期間で、まさか()()五条悟から夏油傑の情報を聞き出していたのか。

 今も昔も、呪術界は呪霊の本能に滅法弱いらしい。なんともままならない話だ。人の言葉を喋れるというだけで、こうも簡単に呪霊の毒牙に蝕まれるとは。

 

「知ってるなら詳しい説明は省いて構わないね。五条悟が封印された今、成長した真人さえ調伏できれば死滅回游は実行できる」

「正に目前といったところですね」

「そういうことになるね。因みに五条悟はこの中さ」

 

 羂索は懐から五条悟が封印された特級呪物、獄門疆を取り出し、マハトの前に見せびらかすように掲げた。マハトは無表情でそれを見ている。本当に興味がなさそうだ。

 単純な強さの極致では、マハトの琴線に響かないのか。なんだか虚しくなった羂索はすぐに獄門疆を懐にしまった。

 

「で、マハトはどうする?」

 

 羂索の問いに、マハトは目を瞬かせた。

 

「どうする、とは」

夏油傑(わたし)側につくか、虎杖悠仁側につくかの話だよ」

 

 羂索は両手を広げる。わざわざ一度決定した任務内容に介入したのは、マハトにこれを問いたかったからだ。

 

「命令はしないのですか?」

「そうだね。命令はしない、しなくて済むように手筈は整えてある。ああでも、夏油傑(わたし)側につくというならそれに即した命令を下すことにはなるね」

「悠仁様につく場合は」

「私は君に何も命じない。君の好きに動くといい」

 

 死滅回遊が実行されるということは、羂索の存在が露見するということ。

 そもそも現段階でも、与幸吉の遺志を通じて五条悟を封印した呪詛師の情報は共有されているだろう。夏油傑の(がわ)を使っているだけで、その裡には別の何者かが潜んでいることも。呪術界、いや虎杖を始めた高専の人間たちとの衝突は避けられない。

 

「さあ、マハト。君はどうしたい?」

 

 羂索の問いに。

 マハトは暫し逡巡しているような様子を見せた。あらぬ方向へと視線を向け、思い悩むように口元を手で覆う。だがやがて、マハトは意を決したのか羂索の方へと向き直った。

 

「傑様は、7月に悠仁様が一度亡くなったことは知っていますよね」

「そりゃね、私がそう仕向けたようなものだし」

「私はこの身が解放された直後に、その訃報を聞くこととなりました」

 

 虎杖が羂索が指を仕込んだ呪霊に敗れ、最終的に一度死ぬことになったのはまだ羂索の記憶に新しい。

 虎杖の裡にいる宿儺のことを知っている羂索は大した衝撃も感傷もなかった。しかしながら、マハトは宿儺のことを何も知らない。恐らくマハトは、あの時虎杖が本当に還ってこないものと考えていたはずだ。

 

「あの時、私は何も感じなかった。何も分からなかった」

 

 マハトの目には、確かに懊悩が宿っていた。少なくとも羂索にはそう見えた。

 

「私は、年月が足りなかったと考えています。年月が足りなかったために、悠仁様のことを十分に知ることができていなかった」

「10年程度では、君にとっては短すぎると」

「ええ。加えて、傑様と異なり悠仁様の寿命は限られている」

「クックッ。まあ私のは術式だしね」

 

 虎杖の死は、思いの外マハトに影響を与えていたようだ。虎杖にマハトの血が混じっていることの影響か、真人と接触したことによる影響か、あるいはもっと別の何かなのか。

 何にせよ、非常に興味深いことには変わりはない。

 

「ですから、私は悠仁様と更に長い年月を過ごしたいと思っています」

 

 羂索の笑みが深まる。マハトの言葉の意味を、それが示す結論を、羂索が分からない訳がない。それでこそ、手筈を整えた甲斐があるというもの。

 

「つまり君は、虎杖悠仁の側につくということでいいんだね」

「…恐れながら」

 

 羂索はマハトから半歩引いた。虎杖側につく、それが羂索にとって意味すること。

 場合によっては今この場で───

 

「………………あれ」

「どうしたのですか、傑様?」

 

 羂索の予想、いや期待に反して。

 マハトはただ、羂索のことを見つめていた。ぽかんとした表情には、何の他意もなさそうに思える。

 一応、本当に一応の確認のために、羂索はマハトへと口を開いた。

 

「えーっと。マハトはさ、これからどうするつもりなのかな?」

「地上が随分と荒れているようですので、地下に潜伏する予定です。事が落ち着いた後に、機を伺い悠仁様たちと合流できればと考えております」

「その、私はこれから死滅回游を実行しにいくわけだけど」

「存じていますよ。傑様の計画の成就を願っております」

 

 羂索は思わず息を吐いた。

 虎杖側につくことと、羂索の死滅回遊の実行を看過すること。これが矛盾なく両立できることが人から見てどれだけ歪なあり方であるか、マハトは果たして気づいているのか。

 

「うーん……なんというか………いや、これはこれで……」

 

 手で顎をさすり、羂索は呻くような声を上げた。

 想定外の事態だ。かけっこをしようと走り出した瞬間に、道端の石に躓きつんのめったような虚脱感。マハト相手に感じたことのなかった感覚だ。

 

 マハトの意図を、決して理解できない訳ではない。彼はあくまで虎杖と関わる時間を求めているだけ。きっとそれ以上でも以下でもなかったのだろう。羂索との関係と完全に切り分けて思考しているのか。

 いやともすれば、マハトは羂索に対して───

 

「まあ、良いか」

 

 そこまで考えて、羂索はマハトへと向き直った。線路(ここ)でマハトと出会った時と同じように、マハトへと手を振る。

 

「京都からの追手がもう来てるかもしれないし、私はこれでお暇するよ」

「では、ここでお別れですね」

「そうなるね」

 

 羂索はマハトの側を通り過ぎた。そのまま彼へと背中を向け、線路の先へと歩み始める。

 

「じゃあねマハト、これからの世界を楽しんでくれ」

 

 マハトは線路でただ立ち尽くし、粛々と羂索を見送っていた。




次回の更新は3月8日(日)0時の予定です
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