ブルーアーカイブ~~キヴォトスに舞い降りる嵐≪ストーム≫~~   作:ジョージ

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まだまだ出てきませんが、この作品はストーム2の軍曹やその部下が先生ってだけで我らがストーム1とかグリムリーパー(フェンサー)、スプリガン(ウィングダイバー)、あと独自設定のネームドのエアレイダーも出てきます。ストーム1の立ち位置は『鬱フラグクラッシャー』、言うなればデウスエクスマキナ、演劇的に言うのであれば、困難な状況を神にも等しい力で強引にハッピーエンドまでごり押すような存在です。
 まぁ人類の代表に選ばれてるし、プライマーの神を殺した神殺しの英雄みたいなもんですし。ちょっと軍曹たちの活躍を食っちゃわないか心配ですが。あと軍曹たちに名字がありますがオリジナルです。
 まぁ楽しんでいただければ幸いです。


第2話 シャーレビル奪還作戦・前編

~~~~~~

 なぜか、見ず知らずの連邦生徒会会長によってキヴォトスに、それも若返った姿で招かれた伝説の兵士たちのチーム、ストームチーム所属の軍曹ら4名。戸惑いながらも、現在キヴォトスで発生する問題を解決するため、彼らは再び兵士として戦う事となった。

 

 

~~~~~~

 俺たちが戦う事を宣言した直後、俺たち4人は七神の案内で、建物内部の武器格納庫へと向かっていたが、その道中でとんでもない事を聞いてしまった。

 

「何っ!?キヴォトスの生徒たちには銃弾が効かないっ!?」

「いえ。効かない、というより、貫通したりすることが無い、というべきでしょうか?」

 七神の口から出た思いがけない情報に問い返していると、彼女は言葉を訂正した。

 

 そして七神の口から語られたのは、彼女達の肉体の特異性だった。彼女達の頭上で輝く、天使の輪のようなオブジェクトの名は、『ヘイロー』。基本的にこのヘイローは生徒たち全てが持っていると言っても過言ではないものらしく、ヘイローを備えた少女たちは、例え顔面に銃弾を食らっても、乗っていた車がミサイルで吹き飛んだとしても、何なら戦車砲に吹っ飛ばされても、『痛い』か『気絶』で済むらしい。

 

 完全に傷を負わない、という訳ではないらしいが、それでも驚異的な防御力である事には間違いない。だが、完全という訳でもなく。頭部に銃弾を受ける・過度のダメージを受けると気絶してしまうらしい。そして睡眠中や気絶中はヘイローが消えるため、ヘイローの無い生徒は気絶していると判断出来る、らしい。

 また、不死身という訳ではなく、気絶してからも更に攻撃を受け続ければ、流石に死んでしまうとの事だ。

 

「これらのことを踏まえて、敢えて言わせていただくのであれば、『彼女達を止めるためであれば別に実弾でも構わない』、という事です。非致死性の武器もない訳ではありませんが、どうされますか?」

「……七神、その話に嘘は無いんだな?」

「はい。全て、真実です」

 

 念のために真っすぐ七神を見つめながら問いかけるが、彼女も俺を真っすぐ見返しながら答えた。……どうやら嘘を言っている訳ではなさそうだ。

「おっそろしい話だぜ。自前でフェンサー並みの装甲持ちって事かよ」

「下手な攻撃でも相手の少女たちを殺す事は無い。無為な殺人にならず喜ばしいと言うべきか、相手の高い防御力を恐ろしいというべきか。悩ましい所です」

 驚くレンジャー3と小さく眉を顰めるレンジャー2。

 

「フェンサー?」

「ん?どうかしたか?」

 歩いていた七神が、不意にレンジャー3の口にした単語を呟いた。更にそれを聞いていたレンジャー4が問いかける。

 

「あぁ、いえ。すみません。っと、こちらです」

 何やら不自然に会話を切り上げる七神。しかし目的の保管庫にたどり着いたためか、俺はそのことを特に気にせず、意識を保管庫の方へと向けた。扉の横の電子ロックに端末を掲げると、ピピッ、という音と共にロックが解除され七神が扉を開ける。

 

「こちらにある武器は、元々連邦生徒会の職員のための物です。キヴォトスは銃社会でもありますから、非常時にこのタワーが攻撃を受けた場合を想定して、こうして武器を保管しているのです。どれでもお好きな物をお使いください」

「どれでも、と言われてもなぁ」

 たくさんの銃火器を前に言葉を漏らすレンジャー2。

 

「選び放題ったって、俺たちが使い慣れたのと同じタイプの銃でもないと、いきなりの実戦はキツイんじゃねぇの?」

「今は時間が無いんだレンジャー3。この際、実戦で慣れるしかないだろう。とにかく、俺たちの使用経験がある銃と、似た構造の物を探せ」

「「「了解」」」

 

 俺たちは手分けしてガンラックを見て回った。と、その時。

「あっ!隊長ッ、皆さんっ!来てくださいっ!」

「んっ?なんだっ」

 棚の向こうからレンジャー4の声が聞こえて来た。そちらに向かうと、レンジャー4が一丁の銃を携えていた。それは……。

 

「これは『PA-11』じゃないかっ!キヴォトスにもあったのかっ!」

 『それ』は、俺たちがよく使っていたライフルに似ていた。

 

 『PA-11』。EDFレンジャーの標準装備ともいえるライフルだ。俺もこれには随分世話になった。

 

「PA、11?そのM16アサルトライフルの事ですか?」

 傍にいた七神が小首をかしげている。どうやら銃自体は同じでも名前は違うのか?

「あぁ、名前は違うが。構造は全くと言って良いほど同じだ」

 

 

~~~~~~

 同じ。そう言って先生方は、私、七神リンが見守る中で、M16の操作を行っていく。マガジンを抜き、ボルトハンドルを引いて薬室の中を覗く。セイフティを親指で操作し、左手でハンドガードを掴み、ストックを肩に押し当てながら構えている。

 

 その姿を見て思うのが、『動作が速い』という事。そしてそれ以上に『手慣れている』という事。初めて見たはずの銃を、しかし慣れた手つきで動作確認している。一連の流れを見ていれば、先生方が軍人と言うのも納得です。初心者が多少練習した程度では到底たどり着けないであろう、動きの無駄の無さと速さを先生方は持っている。しかし、安全を考えれば後方に居て欲しいのですが。今更声をかけた所で止まれはしないでしょう。

 

 こうなったら、あの『暇な人たち』に精一杯頑張ってもらうとしましょうか。

 

 それにしても、なぜ先生たちがフェンサーの単語を知っていたのでしょうか?あれは、『ゲヘナがミレニアムと共同開発したばかりのはずなのに』。

 

 

~~~~~~

 その後、空のマガジンに弾を詰め込み、マガジンを数本作り、それとハーネスタイプのマグポーチを備品から借りて装着。追加でグレネードを数個。それと、先ほどの通信で戦車の単語が出ていた為、対戦車兵器として『M72 LAW』という使い捨ての対戦車弾発射機を2本ほど持っていく。また、現場での連絡用に通信端末を受け取り、軽く操作の説明を受ける。

 

 そして、連邦生徒会が用意したヘリに乗り、離陸したのだが……。

 

「なんでこうなる訳ぇっ!?」

 

 ヘリに乗っていたのは、俺たち4人、だけではなかった。更に追加で4人。先ほどの部屋に居て、七神と話をしていた4人だ。俺たちがヘリパッドで待機していたヘリに乗った時には、既に彼女達も乗っていたのだ。

 

 お互い、『え?なんでいるの?』と言わんばかりの表情をしたが、七神に急かされるまま、俺たちがヘリに乗るとすぐさまヘリは上昇してしまった。お互い事情が分からず、先ほど貰った端末で即座に七神に連絡を取ると。

 

『あなた達4人は、現場で先生たちを援護していただきます』、と伝えられた。そして直後に、菫色の髪の少女が叫んだのだ。

 

「ちょっとっ!どうして私達が先生たちと一緒に戦わなきゃいけないのよっ!」

『それは無論、先生たちを守るためです』

菫色の髪の少女が端末越しに七神に噛みつく。が、話を聞いている分だと、彼女達は何も聞いていなかったようだな。他の3人は、彼女ほど声を荒らげていないが、突然の言葉に驚きつつも、『やっぱり』と言いたげにため息をついている。

 

『先生方は軍属として戦闘経験がある、との事でしたが。その先生方に万が一があれば、文字通りそれはキヴォトスの終焉を意味します』

「それは分かるわっ!でもなんで私達がっ!?」

『残念ですが、現在連邦生徒会の権限で集められる兵力は皆無です。ほぼ全て、各地の問題解決のために奔走しているのが現状です。ですが、時間をかければ部室ビル内部にある最重要物品が盗難、ないしは破壊されてしまう恐れがあります』

「つまり、今連邦生徒会が出せる手札が、俺たちだけ、という事か」

『はい。そして、先生方に万が一が無いよう、一人でも戦える人は多い方が良いのです。強引なのは重々承知ですが、時間が無いのです』

「それは、分かるけど……」

 未だに彼女は納得しきれていないようだ。

 

「状況が状況だ。理不尽と感じて割り切れん部分もあるだろうが、今はそのことを考えるのはやめておけ。それより、自己紹介がまだだったな。俺は『一ノ瀬』。俺を含めた4人の小隊の小隊長でもある。コールサインはレンジャー1だ。先生、って事になってるからな。先生でも何でも、好きに呼んでくれ。こいつらからは、大尉とか軍曹とか、昔の階級で呼ばれる事もある」

「では、次は俺だな。俺は『二宮』。コールサインはレンジャー2だ。俺も好きに呼んでくれ」

「んじゃ、次は俺だな。俺の名前は『三瓶』だ。コールサインはレンジャー3。先生、ってのは正直出来るか分かんねぇけど、肉体仕事なら得意だからなっ!そっち方面で何か人手欲しかったら頼ってくれていいぜっ!」

「最後は俺だな。一応部隊内では一番若いのが俺だ。名前は『四柳』だ。コールサインはレンジャー4。まぁ、先輩たちと同じく好きに呼んでくれ」

 三者三様な俺たちの自己紹介。

 

「では、次は私達ですね。私の名前は『早瀬 ユウカ』と言います。『ミレニアムサイエンススクール』の生徒会、『セミナー』という所の会計をしています」

「では、次は私が。私の名前は『羽川ハスミ』と申します。『トリニティ総合学園』、『正義実現委員会』の副委員長を務めさせていただいております」

「私は、羽川先輩と同じくトリニティの生徒で、自警団に努めております。『守月スズミ』と言います。よろしくお願いします」

「私は、『ゲヘナ学園』の『風紀委員会』所属、『火宮チナツ』です。はじめまして」

 

 菫色の髪の少女が早瀬。黒い羽根を持つ少女が羽川。銀髪の少女が守月。ブロンドへアに眼鏡の少女が火宮、か。

 

「よろしく頼むぞ、早瀬、羽川、守月、火宮。軍属としての経験は長いが、キヴォトスでの戦闘は初めてだ。その点で言えばお前たちの方が先輩だからな。あてにさせてもらうぞ」

「はい。こちらこそ、先生の活躍、しかと拝見させていだきます」

「あぁ」

 羽川の言葉に頷き返す。しかし拝見と来たか。これは、無様な姿を見せないように頑張らなければな。

 

 今後俺たちは、彼女達の『先生』をやって行く事になるんだ。情けない姿を見せて、幻滅されてしまえば今後の仕事にだって影響するだろう。そうなると、気合を入れて挑まなければな。

 

「では、次に戦闘時のフォーメーションなどを決めていくが、お前たちの武器と戦闘経験について聞いても構わないか?答えられる範囲で良いから、早瀬から順に答えてくれ」

「分かりました。私の武器は、このSMGです。射撃の腕は、まぁそこそこ自信はありますが、戦闘経験は正直あまりない、ですね」

「私は、正義実現委員会、いわゆる風紀委員のような仕事をしていますので、戦闘経験はかなりあると思っていただいて大丈夫です。委員会のメンバーを指揮しながらの戦闘経験もありますので、集団戦の経験も多少は。武器はこのRFです」

「私も、トリニティで自警団活動をしていますので戦闘経験はそこそこあります。武器はこのARです。他にはフラッシュグレネードが数個」

「私は風紀委員会に所属しており、同じく戦闘経験は無い、訳ではありませんがどちらかというと応急処置などのサポートや補給物資の受け渡しがメインなので、直接的な戦闘力はあまりない、と思っていただければと。武器はこのHGです」

「ふぅむ」

 

 SMGが1人、ARが1人、RFが1人、HGが1人、か。となると、フォーメーションは自ずと決まって来るな。

 

「よし。ならばまず、早瀬と守月が前衛。羽川は中衛で前衛の2人を支援。火宮は後衛で負傷者が出た場合の処置や弾が足りなくなった場合、そいつに弾を分けてやってくれ」

「分かりましたっ!」

「お任せください」

「了解です」

「了解しました」

 三者三様の返事が返ってくる。

 

「では、次に俺たちだが。まず、レンジャー2。お前は羽川の直掩に入れ。彼女を支援しつつ浮いた敵を見つけたら積極的に無力化していけ」

「了解。よろしく頼むぞ、羽川」

「は、はいっ」

 

「次にレンジャー3。お前は早瀬と組め。最前衛だが、やれるな?」

「おぉッ!任せろっ!って事で頼むぜ早瀬ッ!」

「えっ!?は、はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

「次、レンジャー4。お前は火宮の護衛だ。後衛として彼女を守りつつ、可能であれば前線への支援射撃と戦場を見る目だ。ヤバい敵を見つけたら前線の俺たちに報告を頼むぞ」

「了解。そういう訳だ。よろしく頼むよ」

「分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「最後に俺だが、守月と組む。そういう訳で、頼むぞ守月」

「は、はいっ。頑張りますっ」

 それぞれ組む相手に挨拶をする。が、生徒たち4人は多少の差はあれど総じて緊張しているようだ。まぁ即席のチームだからな。無理もないだろう。その辺りは本職の俺たちがしっかりカバーしなければな。

 

「よしっ。では改めてフォーメーションと役割を伝えておくぞ。俺と守月、レンジャー3と早瀬が前衛だ。向かってくる敵は容赦なく倒せ。前衛である以上、敵の弾が飛んで来る可能性は特に高い。常に遮蔽と敵の位置を意識して立ち回れ。特に市街地では遮蔽物や小道がある。そういった所から回り込まれて側面を取られると危険だ。前だけでなく左右にも気を配っていけ」

「おうっ!」

「了解ですっ」

「わ、分かりましたっ」

 

 俺の指示にレンジャー3、守月、早瀬の順で答えるが、生徒二人を比較すると早瀬の方が緊張の度合いが大きいな。やはり実戦は経験が物を言うからな。無理もないと言えばそれまでだ。

「レンジャー3。さっきの話を聞いていたと思うが、早瀬はそこまで戦闘経験は無い。キヴォトスでは彼女達生徒の方が先輩だが、実戦経験では俺たちの方が先輩だ。戦場の後輩のフォローはしっかりな」

「任せておけってっ!」

 サムズアップをするレンジャー3。

「す、すみません。足を引っ張らないよう、頑張ります」

 っと、俺の言葉が気になったのか、早瀬が少し顔を伏せているな。フォロー、しといた方が良いよな。

「気にするな早瀬。俺たちは戦いを生業にしてきた、言わばプロだ。しっかりフォローしてやるさ。だから下手に気負う必要はない」

 彼女を安心させる意味でも、少しだけ微笑んでおく。

「ッ!あ、ありがとうございますっ!」

 彼女は、なぜか少しだけ顔を赤らめながら元気よく頷いた。まぁ、元気はあるようだし変に気負うよりはいいか。

 

「よし。次に羽川とレンジャー2の中衛だ。お前たちは前衛である俺たちの後方からの支援を頼む。優先排除対象は重火器、MGなどを装備した相手だ。レンジャー2。お前は羽川の護衛兼援護役だ。彼女のボルトアクションライフルでは連射ができん。万が一敵に狙われた場合は制圧射撃を行い彼女を守れ」

「了解ッ!」

 レンジャー2の返事と、無言で頷く羽川。

 

「最後にレンジャー4と火宮だが。お前たちは後方からの支援と、戦場全体の監視を頼む。何か怪しいと思った行動や、俺たちが見落としていると感じた敵が居た場合即座に警告の声を上げてくれ。レンジャー4は火宮の護衛だ。彼女は医療物資を携えている。何が何でも彼女を守れ」

「はいっ!」

「では、お願いします。シヤナギ先生」

「あぁ、任せろっ!」

 レンジャー4は火宮の言葉にサムズアップで答えた。

 

「最後に俺と守月だが、俺たちは早瀬たちと同じく前衛で敵を狩る。前衛の分攻撃を受けやすい。その点を気を付けて動くように。良いな?」

「はい。よろしくお願いします、先生」

 

 よし、これでそれぞれの役割の確認は出来た。

「お客さん方っ!そろそろ目的地付近だが、多数の敵性勢力を確認ッ!シャーレの部室ビル付近には降下できそうにないっ!」

「ならば、出来るだけビルに近い安全地帯で構わんっ!そこに降下してくれっ!後は地上から接近するっ!」

 ヘリのパイロットにすぐさまそう伝える。時間に焦り、無理に接近して撃墜されては意味がない。

 

「了解っ!2時方向に無人の立体パーキングがあるっ!そこの屋上に降下するっ!」

「頼むっ!」

 ヘリが進路を変え、目標地点の立体パーキングへ。

「いよいよ実戦だっ!各自、相棒の状態をしっかり確認しておけよっ!戦闘中に動作不良なんぞシャレにならんからなっ!」

 俺の言葉を聞いた部下たちがチャンバーチェックがマガジンチェックを行い、早瀬たちもそれに一拍遅れてチャンバーチェックなどを行う。

やがてパーキングの上空へとたどり着く。そして近づいた時点で、レンジャー2とレンジャー3がスライド式のドアを開け周囲を警戒する。

 

「右側面ッ!ストレンジャー無しっ!」

「左側面も同じくっ!ストレンジャー無しっ!」

「よしっ!そのまま周辺警戒っ!怪しい奴が居たら牽制射撃ッ!ヘリを撃たせるなっ!」

「「了解っ!」」

 

 ヘリからの降下時、地上付近でホバリングするヘリは格好の的だ。故に左右への警戒は怠れない。

 

 やがてヘリがパーキングの屋上から2メートル程度上空で静止する。

「よしっ!まずは俺が降りるっ!その後に合図したら早瀬たちが降りろっ!」

「りょ、了解っ!」

 緊張した様子の早瀬が頷く。

 

 まず、先に俺がヘリから飛び降り、すぐさまM16を構えながら周囲を警戒する。周囲に怪しい影は無し。

「よしっ!来いっ!」

左手を上げ、合図を送る。直後、早瀬、羽川、火宮、守月の順で降りてくる。早瀬はおっかなびっくり、羽川と火宮は特に怖がる様子もなく、守月は最後だからか、周囲を警戒していたレンジャー3に声をかけてから降りてくる。

 

 それを確認すると、3人が周囲を警戒しつつ降りてくる。

「よしっ、全員揃ったなっ!」

 俺は全員が降りた事を確認すると、ヘリのパイロットが分かるように、手を掲げ回す。離脱しろ、という意味の合図だ。

 

 それを受け、ヘリが急上昇をかける。

『幸運をっ!先生ッ!』

「あぁっ!」

 無線機から聞こえるヘリパイロットの言葉に答えつつ、離脱していくヘリを見送る。その後、改めて皆の方に向き直る。

 

「さて、ここからは実戦だ。各自、気を抜かずに行け。早瀬たちもだ。銃弾で死なないとは聞いているが、だからと言って気を抜くなよ。ここは戦場なんだからな」

「「「「はいっ!」」」」

「良い返事だ。では、ポイントマンは俺が務める。その後ろに守月、その後ろに早瀬とレンジャー3。その後ろを羽川とレンジャー2。最後尾は火宮とレンジャー4だ。目標は連邦捜査局シャーレの部室となっているビルの奪還だ。また、敵対勢力がビル内部の最重要物品の破壊、もしくは奪取を画策していると思われる。時間との勝負だ。行くぞっ!」

「「「「「「「了解っ!」」」」」」」

 

 そうして、俺たちはビルに向かって歩みを進めた。まずは立体駐車場を降り、入り口近くの壁際まで移動。そこから半身を晒して周囲の様子をうかがう。はた目には普段通りの町並みなのだろうが、建物の明かりは付いておらず、所々にドアが開けっぱなしの車がある。不良生徒たちが車上荒らしでもしたのか?更に見れば建物入り口付近の窓ガラスも割られている所があるな。しかしめぼしい物は狩りつくした後なのか、周囲に不良生徒たちの姿はない。

 

「よし。ひとまず移動を開始する。ついてこい」

 俺の言葉に部下3人と早瀬たち4人が無言で頷く。そして俺たちは立体駐車場を出て移動を開始した。

 

PA-11もどき、もといM16を構えた俺が歩き出すと皆が続く。構えつつ、ビルの窓からの狙撃などもあり得るので上への警戒も怠らない。と、その時、前方の小道から僅かに足音が聞こえて来た。不味い、周囲に隠れられる場所が無い。俺はすぐさま角の方へと近づく。

 

「ちっ、どっかに金になるモン落ちて、えっ?」

「あ?」

 角から現れたのは、銃火器を装備した女生徒、2名。明らかにガラの悪い生徒たちだ。

「なっ!?てめっ!?」

 片手でぶら下げていた銃に、もう片方の手が伸びるが、遅いっ!

 

「ふっ!」

 銃身の先端、すなわちマズルによる刺突。狙うは、首ッ。

「おごぇっ!?」

 銃を構えるより先に、刺突が喉を捉えくぐもった悲鳴が響く。たたらを踏み、後退した彼女、ではなく彼女を挟んだその後ろにいる二人目の顔面目掛けて、セミオートで2発。

 

「ぐげっ!?!?」

 白目をむいて崩れ落ちる二人目。それを横目に、痛みで呻く1人目の額に至近距離から更に2発叩き込む。1人目も、白目をむいて倒れた。と、同時に頭上にあったヘイローが消える。

 

 だが油断せず、周囲に視線を走らせ、音にも句を配る。銃声に引かれてこちらに駆け寄って来るような足音や怒号は、聞こえない。

「レンジャー各員、周辺状況知らせ」

「レンジャー2、周囲にストレンジャーを認めず」

「レンジャー3,同じく」

「レンジャー4、同じく」

 

 よし、気づかれてはいないか。だが倒した生徒をこのままここに置いていくと攻撃があったとバレそうだな。かといって拘束している時間もない。

 

 俺はスリングベルトでM16を背中側に回すと、気絶した2人の首根っこを掴んで路地裏まで引きずり、適当な物陰に隠しておく。

 

「よし、移動を再開する」

「「「了解」」」

 

 時間が無い。とにかくシャーレの部室であるビルを目指して移動する。

 

~~~~~~

 不良生徒二人を瞬く間に制圧したレンジャー1、先生に対し、生徒であるユウカ達は内心、驚いていた。

『さっきの先生、凄かった。あっという間に2人とも倒しちゃった。格闘術に明るくない私でも分かる。先生は、強い』

『手前の生徒を怯ませ、同時に後方のもう1人の銃撃から身を守る障害物として利用。2人目を制圧し、怯んだままの1人目も返す刀で制圧。軍人というのも間違いないでしょう』

『動きのキレ。ただものではありませんでした。それに他の3名の先生も、驚いた様子がまるでない。これくらい出来て当たり前、という事でしょうか?』

『イチノセ先生の動きもさることながら、小隊の統制の取れた行動。接敵にも慌てた様子はない。一体、どれだけの戦場を潜り抜けて来たのでしょうか?』

 

 先生、という事になっているレンジャーたちの、軍人として洗練された動きに、彼女達はそれぞれ驚嘆していた。

 

 だが、それはまだ、始まりに過ぎない。彼女達が更に、人目を避けて路地裏を進んでいると。大きな十字路の傍まで来た。その角から少しだけ、それも一瞬だけ顔を出すレンジャー1。そして、彼は十字路の中央にたむろする不良たちを見て、顔をしかめつつ、顔を引っ込めた。

 

~~~~~~

「不味いな」

「ッ、先生、どうされました?」

 独り言のつもりだったが、傍にいた守月が反応した。

「この先、十字路に敵の部隊が集まっている。確認できるだけでも敵影は20から30。ミニガンらしき武装を持っている奴も居る」

「迂回しますか?」

 即座にレンジャー2が提案するが、ダメだな。

 

「いや、やめておこう。連中の目標がシャーレのビルであるなら、他にも部隊が居るはずだ。例え連中を避けて進めたとしても、戦闘が始まると音に気づいて集まって来る可能性がある。そうなれば挟撃を受ける恐れもある。それに時間が惜しい。多少荒っぽいが、ここは強行突破する」

「「「了解」」」

 

 部下たちが即座に頷く。

「そういう訳だ。お前たちもここからが実戦だ。頼むぞ」

「「「「はい……っ!」」」」

「よし。羽川」

「ッ、何でしょう?」

「ミニガン持ちが厄介でな。ここから狙撃出来るか?」

 

 彼女を角際まで手招きする。羽川は一瞬だけ顔を出し、敵の位置を探る。

「問題ありません」

 そして自信に満ちた表情で頷いた。

「よし。ならば羽川の狙撃を合図に戦闘開始だ。予定通りのフォーメーションで行くぞ。細かい指示は適宜俺が出す。羽川、頼む」

「はい」

 

 羽川は、角際で地面に立て膝の状態で手にしていたライフルを構える。

「すぅ、はぁ。……ッ!」

 深呼吸、そののちに射撃ッ。銃声を伴い放たれた銃弾は、寸分たがわずミニガン持ちの額を捉えた。

 

「がっ!?」

「え?」

 ミニガン持ちが倒れ、そいつに背を向けていた仲間が間の抜けた声と共に、振り返り、こちらに背を向ける形となる。好機だっ!!

 

「総員、戦闘開始ッ!」

「「「「「「「了解ッ!!」」」」」」」

 俺の掛け声に応じて、皆が飛び出し、動き出す。そうして、レンジャーたちの、キヴォトスでの最初の戦い、シャーレビル奪還作戦が開始された。

 

 

     第2話 END




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