ブルーアーカイブ~~キヴォトスに舞い降りる嵐≪ストーム≫~~ 作:ジョージ
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現在の混乱したキヴォトスを救うため、目覚めて早々に生徒たちと共にシャーレの部室であるビルの制圧を目指す事になった先生たち、もといレンジャーチーム。そしてついに、本格的な戦闘の火ぶたが切って落とされた。
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『『『『ガガガガガッッ!!!』』』』
戦闘開始、と共に俺、レンジャー3、守月、早瀬による制圧射撃が不良共の頭を押さえる。その隙に移動した羽川とレンジャー2が角から飛び出し、通りを挟んだ反対側の車の影へと飛び込む。
「レンジャー3ッ!」
それを確認して叫ぶ。
「あいよっ!行くぞ早瀬ッ!」
「はいっ!」
射撃を止めたレンジャー3と早瀬が前に出る。
「このっ!やりやが、がっ!?」
射撃の密度が低くなったのを好機と捉えたのか、SMGを装備した不良が顔を上げるが、それを羽川の狙撃が撃ちぬく。
「なっ!やろっ、おがっ!?」
傍にいたもう1人が、反撃しようと顔を上げたが、それだけだ。レンジャー2のセミオートから放たれた銃弾が顔面に命中し、そのまま意識を手放した。
そして、そのタイミングで1マガジンを撃ち切った守月。
「リロードしますっ!」
「カバーするっ!」
彼女が一旦物陰に隠れ、俺は残っていた弾を3点バーストで、不良共が隠れていた障害物に撃ち込む。
ここで弾切れとなるが、十分だ。既にレンジャー3と早瀬が別の障害物に取りつき、牽制射撃を開始した。と、その時、後ろの守月から肩を叩かれた。
「OKですっ!」
「よしっ!リロードするっ!」
「カバーしますっ!」
すぐさまマガジンリリースボタンを押しつつ、手首のスナップでM16を振り、空のマガジンを弾くように抜きつつ、新しいマガジンを差し込み、ボルトリリースを押すとボルトが前進し初弾装填完了。
すぐさま守月の肩を叩くっ。
「前進してレンジャー3たちと一緒にラインを押し上げるっ!正面1時の方向の敵集団に圧をかけつつ出るぞっ!」
「はいっ!」
俺と守月が動き出す。まず俺が牽制しつつ飛び出す。適当な障害物、車の影に飛び込み、更に制圧射撃を加える。それに続くように守月が飛び出し、俺と同じ車の所へと飛び込む。
「こ、こいっ、あがっ!?」
威勢のいいのが、頭を出して反撃しようとするが、それも羽川の狙撃によって『撃つ前に撃たれた』。……数秒の攻防で分かった事があるが、不良生徒共の評価は『銃の扱い方を知っているだけの悪ガキ』程度だった。
撃ち方は知っている。遮蔽物に隠れるという基本中の基本は知っている。だが、『それだけ』だ。完全に俺たちの集中砲火に、動きを止められていた。
こうなってしまった場合、有効な手段はグレネードなどの投擲物による敵部隊への牽制や足止め。スモークグレネードなどによる射線を遮っての移動か後退。後は、あまり褒められた手段ではないが、遮蔽物から銃だけを晒して弾幕を張るブラインドファイアなど、取れる手段は多少ある。だが……。
「撃てっ!撃ち返せっ!」
「無茶言うなっ!?頭抑えられてんだぞっ!」
「こなくそぉっ!あがっ!!??」
怒鳴り合うだけの生徒たち。その声を、ヘッドギアの優れた収音装置が拾う。また、破れかぶれで頭を上げた不良生徒も、即座に羽川かレンジャー2かの狙撃で倒されるだけだ。完全にこちらが押している。連中は動けない。混乱からも抜けきっていない。ここが攻め時だ。
「守月ッ」
俺はすぐに隣にいる守月の肩を軽く叩いた。
「ッ!なんでしょうっ!」
「俺が次の制圧射撃を開始したら、それを合図に1時の方向、遮蔽物の裏に集まっている連中目がけて閃光弾を投げ入れてくれっ!出来そうかっ!?」
「はいっ、大丈夫ですっ!」
「よしっ!」
さて、後はタイミングだが……。一旦遮蔽に身を隠し、部下や守月以外の生徒の動きに目を向ける。早瀬と羽川がリロードに入る。レンジャー2、3、4が咄嗟に牽制射撃を行う。リロードを終えた早瀬と羽川が射撃を再開し、同時に3人がリロードタイムに入る。不良共は、頭を上げていないっ!ここだっ!
「おぉぉぉっ!!」
遮蔽に向かい、薙ぎ払うように銃弾を放つ。これは倒すことが目的ではない。ただ、今は連中の動きを封じられればそれでいい。
「閃光弾ッ!行きますっ!」
守月が見事なフォームで閃光弾を投げる。それは放物線を描いて遮蔽物の向こう側と落ちていく。
「ッ!伏せろ早瀬ッ!」
「えっ!?は、はいっ!」
「フラッシュだッ!羽川っ!」
「はいっ!」
「火宮っ!影にっ!」
「了解っ!!」
守月の声を聴いたレンジャー2たちが、声を上げ、早瀬たちに注意を促す。3人も、そして閃光弾を投げた守月自身も、すぐさま遮蔽の裏に隠れる。
「っ!?ぐ、グレネッ!!」
不良の声が聞こえた刹那、大音量の炸裂音と白い閃光が響いた。それも、ヘッドギアのマイクが規定値を越える音を検知したために、自動的にフィルターをかけ聴覚へのダメージを最小限に抑えてくれる。
「ぐっ、あぁぁっ!耳がぁっ!」「目ッ、目がぁっ!」「クソクソッ!どこだぁっ!」
閃光弾によって不良たちはパニック状態だっ!今が好機ッ!
「総員前進ッ!連中を制圧せよっ!」
「「「了解ッ!」」」
すぐさま俺と部下3人が前に出て、それに一拍遅れて早瀬たちが続く。そしてあとは、簡単だった。
目と耳を奪われ、混乱しつつも無防備に立ち上がった彼女達の頭に、近距離から弾を打ち込んでいくだけなのだから。そして大よそ10秒程度で、残っていた不良生徒たちを撃破。気絶させる事が出来たのだった。
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戦闘後に、また起きて後を追ってこられても面倒だからと、レンジャーチームは不良生徒たちが使っていた武器を手近な、大型のゴミ箱の中に放り込んでいる。そしてそれを横目に周囲を警戒していたユウカ達だったが。
「あれが、先生たちの実力、なんですね」
ボソッと、ユウカがレンジャーチームを見つめながら呟いた。そしてそれは傍にいたハスミ達の耳にも届いていた。
「そうですね。正直、驚嘆しました」
それに答えたのがスズミだ。
「リーダーでもあるイチノセ先生の傍で戦っていましたが、個人の練度もさることながら、高い状況把握能力と的確なタイミングの指示。正直、不良生徒では練度、いえ。この際『場数』と表現するべきでしょうか。文字通り、先生と彼女達では『踏んできた場数が違う』のだろうと感じてしまいました」
「えぇ、そうですね」
スズミの言葉にハスミが同意する。
「その最たる理由、と言えるでしょうが。敵である彼女達は『何もできませんでした』。いえ、この場合、『何もさせなかった』、というのが正しいのでしょう」
ハスミは、路肩にまとめられ今も気絶したままの不良生徒たちに目を向けた。
「前進も後退も。それどころか満足な反撃すら出来ないまま、完封されていました。それに加えて、他の先生方の練度もまた、高いのも事実」
そう言ってハスミは3人のレンジャー達へと視線を向けた。
「私も最後方から見ていましたが、先生方4人の射撃精度や迅速なリロード、エイム能力、更には部隊として練度や実力は、かなりの物だと実感しました。正直、シャーレの先生ではなければゲヘナの風紀委員の顧問に、今すぐスカウトしたい程です」
チナツは額に手を当てため息を漏らしながら呟いた。彼女の属する『ゲヘナ学園』は生徒数はキヴォトスで1、2を争うほどのマンモス校であり、同時に『自由と混沌』を校風にしているためか、破天荒だったりけんかっ早い生徒も多く、この銃が一般に普及し銃撃戦が当たり前のキヴォトスの中にあって、輪をかけて治安が悪い学園となっているのだ。
そしてそんなゲヘナの風紀委員、言わば治安維持機構に属するチナツにとって、即戦力となる人物はいつでもウェルカム状態という事だ。そんな彼女の言葉に、スズミがうんうん、と頷き、ハスミも(※諸事情で彼女はゲヘナが嫌いなので)小さく頷く。
銃が世間一般に浸透し、生徒同士の喧嘩で銃が出てくるようなこのキヴォトスでは、治安維持も簡単ではない。何ならこの場にいる生徒の、ユウカを除いた3人は各校の治安維持に関わる組織に所属している。
故にこそ、チナツを始めハスミやスズミが、強い人物をスカウトしたいと考えてしまうのは、仕方のない事であった。
とは言え彼ら4人は連邦生徒会の組織に属しているため、各校でスカウトする、なんて事は出来るはずがないのが実情であった。だからか、ユウカ以外の3人は、少しだけ残念そうな表情を浮かべるのだった。
そしてその後、不良生徒たちを脇に片付けた彼らは、再び移動を開始した。
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それから、幸いにも戦わずに移動していた時だった。シャーレの部室ビルまではあと少し、という所だったが。
『ピピピッ!』
「ッ」
通信機から僅かな音と振動が伝わって来た。すぐに足を止めて、周囲を見回してから路地裏に入り、他の面々もそれに続いた。
端末を取り出すと、そこには『七神 リン』の文字が。念のために全周警戒を、と皆に伝えつつ通話のボタンを押す。
「こちらレンジャー1。どうした七神?」
≪先生に至急お伝えしたい事がありまして。今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました≫
「主犯か。で、そいつの名は?」
≪『ワカモ』、『狐坂 ワカモ』と言い、百鬼夜行連合学院で停学になったあと、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科を持ち、矯正局に収監されていた生徒たちの中でも、特に危険な人物、『七囚人』の1人に数えられる程の相手です。どうかお気をつけて≫
危険人物、それも物騒なあだ名がつく程か。さっき相手にした素人集団とは全くの別物、と見て警戒した方がよさそうだな。
「了解した。情報感謝する。他に何か情報は?」
≪特には。ただ、先生たちを送り届けたヘリパイロットから1点、シャーレ部室のビル付近で巡航戦車を遠目に目撃したとの事です。戦闘開始後は、戦いに介入してくる恐れがあります。その点、お気を付けください≫
「分かった。では、これで通信を終了する」
≪はい。……先生?≫
「ん?なんだ?」
通話を切ろうとしたが、七神から声が掛かり指を止める。
≪どうかお気をつけて。先生にもしもがあれば、キヴォトスは……≫
「……そうだな」
今のキヴォトスの命運は、俺たちに掛かっている。だが、それでも俺は銃弾が飛び交い銃声轟く戦場に居る。七神としても、折れて俺たちを送り出したが、それでも心配なのだろう。俺たちにもしもがあれば、もはや彼女達に打つ手はない。このキヴォトスは、緩やかに死滅に向かっていく事になる。
だが、そんな事はさせんっ。
「心配するな七神」
≪先生?≫
「俺たちは今のこのキヴォトスより酷い戦場で生き延びてきた。早々悪ガキどもの銃弾でくたばって等やるものか」
ニッ、と笑みを浮かべる。もちろん七神には見えないだろう。だが、それでも意思は伝わったようだ。
≪分かりました。先生のその言葉を信じます≫
彼女の声色からは、疑念や嘘を感じない。出会ってまだ数時間だが、俺の言葉を信じてくれたようだ。……連邦生徒会長が指名した男だから、だろうか?まぁその辺りは良い。言葉にしてしまった以上、それは守らなければな。
「あぁ。ありがとう」
≪では≫
「あぁ。通信終了」
今度こそ通話を終え、端末をしまう。
「よしっ!移動を再開するっ!」
俺の言葉に従い、俺たち8人は再び移動を開始した。
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「あれが、連邦生徒会の建物、ですね」
所変わって、シャーレの部室ビルの近く、また別の建物の屋上。そこから部室ビルを眺める、黒い和服に狐の面を被り、ライフルを手にした少女が居た。それこそがワカモ。この騒動を巻き起こした中心人物である。
「あら?」
その時、彼女は視界の端で、眼下の市街地で何か動いたのを捉えた。何だろう?とそちらに目を向けと、建物の壁沿いに前進するレンジャー1たちのチームを見つけた。
「あれは?」
観たことも無いプロテクターで身を固めた4人の兵士に、彼女は首を傾げた。
『生徒?いえ、ヘイローらしきものが見えませんね。それに他の4人は、制服がバラバラ。まるで寄せ集めですわね。そして……』
彼らの動きから、その目的地がシャーレのビルである、と判断したワカモ。
『この騒ぎに参加するために来た、という訳では無さそうですね。それに、先ほど微かに戦闘の音が聞こえてきましたし』
そう考えながら、ワカモは手にしていた銃、『真紅の厄災』を構えた。
『折角です。連邦生徒会の子犬たちに、『挨拶』させていただきましょう』
狐面の下で、ワカモは笑う。そして狙いを定め……。
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壁沿いに目標地点に向かって移動する俺たち。その時、視界の端で何かが煌めいた。あれは銃口の、煌めき?……ッ!?即座に体が強張るっ!
「ッ!スナイパーッ!!!」
「「「ッ!?」」」
狙撃の文字が脳裏によぎる。気付いたときには叫んでいた。すぐさま身を隠せそうな遮蔽を探し、左を見る。そこには窓ガラスが粉々に砕けたブティックが。
「ッ!左だっ!」
即座に叫んだ。それが何を意味するのか、他の連中も分かっているようで即座に動き出した。
「守月ッ!」
「は、はいっ!」
多少強引だが、彼女の肩に手を回し、店舗の中に飛び込む。
「こっちだ早瀬ッ!」
「わわっ!?」
レンジャー3が早瀬の腰元に腕を回し、引っ張るように店舗内に突っ込んでくる。
「羽川ッ!」
「はいっ!」
レンジャー2が俺と同じように羽川の肩を抱くようにしながら飛び込んでくる。
「こっちへっ!」
「了解っ!」
レンジャー4も、火宮の手を引きながら飛び込んでくる。
直後。
『タァァァァン……ッ!!!』 『ボッ!』
銃声、そして何かがコンクリートに命中したような音が響く。どうやら狙撃は回避できたようだが、油断は出来んな。
「総員ッ!各部のチェックをっ!撃たれた奴は居ないかっ!レンジャー2!」
「はっ!」
「おいレンジャー4ッ、俺を見てくれっ!」
「了解っ!」
俺たちは二人一組となり、お互いの背中や目に見えない頭の部分など、とにかく傷が無いかを確認する。幸い、俺たち4人は大丈夫だった。だがまだだ。
「よしっ!次は早瀬たちのチェックだっ!」
「「「了解っ!」」」
すぐさまそれぞれの組んでいた相手の様子を伺う。
「守月、悪いが体を確認するぞ」
「え、えぇっ!?」
「戦闘時にアドレナリンの影響で痛みを感じなくなっている恐れもあるっ。悪いが、確認させてもらう」
何故か顔を真っ赤にする守月。しかし確認しなければ。銃弾は効かない・貫通しないという話であったが、傷が出来てしまえば失血死の恐れもある。故に確認する。
「う、うぅ。お願い、します」
俺は立った姿の守月の四肢などを確認する。顔や胴、腹部などは致命傷になりやすいが、傷は無し。腕や足にも銃創は無し。
「よし。大丈夫だな」
「うぅ、恥ずかしい……!」
顔を真っ赤にしている守月。正直、悪い事をしたか?とは思ったが、これも確認のためだ。すまん、守月。
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ちなみに他の生徒とレンジャー達はと言うと……。
「ちょっ!?先生っ!私は大丈夫ですからっ!」
「黙ってろ早瀬ッ!怪我してたらシャレにならねぇッ!」
「ひゃぁんっ!?」
顔を真っ赤にして叫ぶユウカだが、レンジャー3はいつになく真剣だ。これも戦いを生業としてきた兵士として当たり前の事なのだろう。
しかしユウカはそれでも殆ど出会って数時間の異性に体を見られ、触れるのは、とてつもなく恥ずかしかった。
そしてそれは、ハスミやチナツも同じだ。
「あ、あの、先生?私は大丈夫ですからっ」
「そうはいかん。傷があったら事だ。しっかり確認しないと」
「う、うぅ」
「右足、左足、右手、左手、肩、胴、腹部、頭部。よしっ、異常なし」
「は、恥ずかしい、です……ッ!」
全員が全員、年上の男性に食い入るように見つめられ、耳まで真っ赤になってプルプルと震えていた。無論彼らの下卑た思惑など無い。ただ仲間が負傷していないかを確認しているだけだ。……だけなのだが、絵面が滅茶苦茶シュールな事は、避けられなかった。
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「よしっ、全員怪我はないな」
素早く互いに傷が無い事を確認した俺は、仲間たちに待つように、とハンドサインで押しとどめ、素早く異なる場所から、スナイパーの位置を探ろうと、した。が……。
「ッ」
目に入った物に思わず驚いた。だが、それは攻撃された、等ではない。手を振っていたのだ。黒い着物に狐の面を被り、ライフルを片手に持った少女が、俺たちの方へと手を振っていた。
思わず唖然としてしまうが、すぐに気を引き締めて狙いを定めた。が、距離があり過ぎる上に彼女は俺が銃を構えたのを確認すると、踵を返してどこかへと歩き去って行った。
「おい、大丈夫かよ隊長ッ!そんなに身を晒してっ!」
そこにレンジャー3が声をかけてくる。どうやら狙われてるんじゃないかと心配してくれたようだが、杞憂だな。
「大丈夫だ。どうやらあいつは、俺たちに『挨拶』をしたかったようだ」
「挨拶?」
困惑するレンジャー2を後目に、端末を取り出し今度はこちらから七神をコールする。
≪はい、こちらリン。どうされました?≫
「七神、確認したいんだが、さっき話に合った狐坂ワカモの容姿について分かるか?」
≪えぇ。それについては大よそ。それが何か?≫
「では、黒い和服姿に狐の面を被った少女、と言えば分かるか?」
≪ッ!≫
画面の向こうで七神の息を飲む声が聞こえた。それから一度、息を整える声がかすかに聞こえる。
≪……確かに、確認されている狐坂ワカモの特徴と一致します。……接触を?≫
「あぁ。向こうから一方的にな。挨拶代わりに一発撃ってきたな」
≪ッ!?大丈夫だったのですかっ!?≫
「心配するな。誰も被弾していない」
驚く彼女を宥めるために、出来るだけ優しい声で語り掛ける。
「あいつも俺たちを撃ち殺すつもりはなかったようだな。こちらと視線が合うと、手を振って去って行った」
≪そう、ですか。とにかく先生方がご無事で安堵しました。それで、現状は?≫
「シャーレの部室ビルまでもう少し、と言った所だ。だが今回の騒動のリーダーが俺たちの存在に気づいたとなると、防衛ラインを構築している可能性がある。そこを突破しなければならない、激戦になるだろう」
≪……分かりました。重ね重ねになりますが、どうかお気をつけて≫
「あぁ。武運を祈っていてくれ。通信終了」
通信を終え、部下たちの方へ向き直る。
「会話は聞こえていましたが、スナイパーが今回の騒動の首謀者だったのですね」
「あぁ」
「随分な挨拶だぜ全くっ!」
レンジャー2の言葉に頷いている側で、レンジャー3がけっ、と苛立ち混じりに吐き捨てる。
「今回と似たような前科がある、と少し前の通信で言っていましたが。そうなると戦闘を楽しむタイプの生徒、なのか?」
「分からん。しかしそのことを気にしている場合ではない。移動を再開するぞ」
「「「了解ッ!」」」
「早瀬たちも、行けるな?」
「はい。大丈夫です」
俺の問いかけに早瀬が答え、他の3人も静かに頷く。流石に回復はしたようだな。
「よし、では行くぞっ!目標地点はもうすぐだっ!」
建物を出て、俺たちは移動を再開した。
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荒らされた市街地を抜け、シャーレのビルの目と鼻の先までたどり着いたのは良かった。だが……。
「あれが『戦車』か」
建物の入り口の前、広場のようになっている場所に、土嚢をくみ上げて作られた陣地があった。そしてその中央でどっしりと構えている戦車。
「あれは。『クルセイダーⅠ型』。私の学園の正式戦車と同じ型です」
「通信で聞いた時はまさかと思ったが。本当に戦車まで装備しているのか、連中は」
羽川の言葉にレンジャー4が戸惑うような声を上げるが、無理もない。
「恐らく、不法に流通したものですね。PMC辺りが買い取った物を、更に不良たちが買い取ったのかもしれません」
「戦車の横流しが不良生徒に、か。俺たちがいたところでは考えられん話だな」
早瀬の言葉にレンジャー2が皮肉気味に返す。
「だが、よく見て見ろ。奴は履帯を守るサイドスカートを履いていない。あれなら側面から『
そう言って背負っているLAWを軽く揺らす。
「だがどうするよ隊長。連中ガチガチに防御固めてるぜ?」
「それなら問題ない。レンジャー3。お前は早瀬と共に裏路地から戦車の側面に回れ。残りの俺たちで戦車と連中の注意を引く。お前たちの奇襲で撃破出来ればそれでよし。ダメでもお前たちの出現に戸惑っている間に、俺のLAWをぶち込む。戦車は確かに歩兵にとって心強い精神的支柱だが、それが無くなった時の士気の低下は計り知れん」
「確かに。戦車の有無は彼女達の士気に大きくかかわると思われます。それを撃破出来れば、撤退、とは言わずとも士気を低下させられる可能性があります」
「そうですね。私も同意見です」
「……はい、私も」
「私も同じくです、先生」
火宮、守月、羽川、早瀬の順に賛成の意を示し頷く。
「よし。お前たちはどうだ?反対意見があれば聞くぞ?」
「はっ。今まで隊長の作戦に従って来たんだ。異論なんて無いっすよっ!」
「同じくです。隊長の判断に従います」
「自分もですっ!」
レンジャー3、2、4の返事。よぉし、なら作戦は決まりだ。
「では手筈通りに。レンジャー3と早瀬は裏路地から戦車の側面に出てくれ。俺たちは今から3分後に連中に攻撃を仕掛ける。良いかレンジャー3。タイミングが重要だぞ?」
「分かってるってっ!行くぞ早瀬ッ!」
「は、はいっ!」
LAWを背負ったレンジャー3と早瀬が路地裏に消えていく。さて。
「俺たちは言わば囮だ。レンジャー3達が攻撃を行うまで、奇襲を悟られない程度に連中を撃ちまくれ。良いなっ?」
「「「「「了解ッ」」」」」
そうして、俺たちもまた攻撃の準備を始めた。火宮のカバンから物資を受け取り、マグにリロード。狙うべき相手を慎重に選ぶ。
幸い、狐坂ワカモの姿はない。連中は何かを探しているような動きをしている、との事だったし、シャーレのビル内部に入った、という可能性も考えられる。となると、うかうかしていられないな。
「隊長、もう間もなくです」
「了解したレンジャー2」
その時、レンジャー2の言葉で意識をワカモから目の前の戦場に戻す。
「羽川。またお前の狙撃が開戦の銅鑼代わりだ。頼んだぞ?」
「お任せください、先生」
再び、路地の角から半身だけを出した羽川が狙撃態勢に入る。
「すぅ、はぁ。……ッ!」
刹那、銃声。それと共に放たれる弾丸。
「あがっ!?」
「えっ!?」
それは、2脚を展開し、土嚢の上にマシンガンを添え、周囲を警戒していた不良生徒の額を撃ちぬいた。
「今だっ!攻撃開始ッ!」
路地裏から飛び出し、銃を撃つ。俺たちの初日の戦いは、まだまだ終わる事を知らないのであった。
第3話 END
感想や評価、お待ちしてます。ただ、うぷ主が豆腐メンタルなので、あまり強い言葉での批判とかはどうかご勘弁お願いします。
楽しんでいただければ幸いです。