ブルーアーカイブ~~キヴォトスに舞い降りる嵐≪ストーム≫~~ 作:ジョージ
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シャーレのビルを制圧し、シッテムの箱と呼ばれる謎のタブレットを使い、キヴォトスの混乱をどうにか終息させた俺たち。奪還したビルはそのまま俺たちの職場となり、そして当面の生活拠点となるのだった。
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シャーレのビルを巡る戦闘後、早瀬たちとも別れ、俺たちは一度、やっているスーパーやコンビニなどを巡り、とりあえず夕食としてカップ麺を数個手に入れた。
元々キヴォトス全体の混乱が数日間に及ぶ物だったため、カップ麺数個を手に入れるのも苦労した。慣れない町中を歩き回ったのもそうだが、なんとキヴォトスには生徒以外に普通の人間は居なかったのだ。
他に居たのは、二足歩行で言葉を離す犬猫や鳥。それ以外はアンドロイドのような人型ロボットだけだった。そんなのが居る町中を、仮にも戦闘用のプロテクターを纏った男4人が歩いているのだ。悪い意味で目立ってしまった。
そして夕暮れ時。とりあえず備え付けのケトルを使って湯を沸かし、カップ麺を作り、それを食す。
「やれやれ。キヴォトス最初の飯がカップ麺かよ。なんかパッとしねぇなぁ」
「そう言うなレンジャー3。混乱のせいでどこも物資不足のままだったんだ。これが食えるだけでも、良しとしようじゃないか」
「そう言えば、このビルの1階にもコンビニが入っていましたね。混乱のせいか閉まっていましたが」
「出来れば早く再開してほしいですねぇ」
男4人、ヘルメットを外しカップ麺を啜る。なんとも野郎臭い食事だ。なんて思いつつ、カップ麺を完食した後。
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「さて。とりあえず今日はもう休むだけだが、その前に今後の方針を伝えておきたいと思う」
俺の言葉に3人が無言でこちらを見つめる。
「まず、現時点で判明している事だが、正直少ない。なぜ俺たちはこのキヴォトスに居るのか?俺たちは死んだはずじゃないのか?なぜ若返っているのか?この若返りと蘇生は連邦生徒会長の力なのか?そもそも生徒会長はなぜ俺たちを指名したのか?彼女の失踪は、俺たちを呼んだ事と関わっているのか?それとも失踪は何か別の理由があり、本来なら彼女自身が俺たちを迎えるつもりだったのか?文字通り、上げればキリがない」
「むしろ、分かっている事と言えば今の我々の立場くらいでしょうか?」
「そうですね。今の俺たちは、連邦生徒会に属するシャーレ所属の先生、という事だけははっきりしていますね」
レンジャー2の言葉にレンジャー4が同意し、俺とレンジャー3も無言で頷く。
「しっかし、俺たちが先生ねぇ。俺、教員免許なんて持ってないぞ」
「自分もですよ」
「あぁ。俺もだ」
「全員が全員、そんな免許に興味を持つような人間ではないからな」
レンジャー3の言葉にレンジャー4とレンジャー2が同意する。俺も、ため息交じりにそんな言葉が口から出て来た。とはいえ、だ。現状、自分たちが先生としてここにいる。それが現実だ。
「さて。それらを踏まえて今後の俺の方針を話しておこう」
俺の言葉に3人は無言で姿勢を正す。
「まず現状、俺たちには分からない事だらけだ。その上、生活基盤や収入源が無い。このシャーレのオフィスビルが今の俺たちの家であり、シャーレの先生という職こそが収入源だ。もしこの立場を追われてしまえば、俺たちは生きていく事すら難しいだろう」
「そうっすねぇ。元の家族にも頼れないだろうし」
「いやいや。仮に家族の元に戻れたとして、死人が若返って帰って来たなんて、信じられますか?そもそも、このキヴォトスがどこにあるかも分からないのに」
レンジャー3の言葉にレンジャー4が反応する。
「……家族の元に帰るのは、絶望的でしょう」
「「「………」」」
レンジャー2の言葉に、俺と他の二人が沈黙する。退路は、無い。だが、前にならば道はある。
「そもそもな話、俺たちは死人だ。例えこのキヴォトスで蘇生したのだとしても、その事実は変わらん。ならば、故郷に置いて来た家族たちとの縁は、既に切れた物と考えろ。簡単には割り切れんだろうがな」
俺たちは既に、一度死んだ身だ。今わの際で家族との別れも覚悟していた。また会えるのなら、会いたい。そう思う俺自身が居るのも事実だ。それはきっと、こいつらも同じだろう。だが残っている家族たちからすれば、俺たちは死んだ人間だ。それが戻って来た所で、戸惑い混乱させるだけだろう。
俺も、簡単に割り切れる訳ではない。それでも、生きている以上前に進むしかないのだ。
「俺たちはこれから、このキヴォトスで生きていかなければならない。そして、生きる為には仕事をしなければならない。幸い仕事はある。飯や言葉、金なども、これと言った差は無い。これなら、そう遠くない内にキヴォトスには慣れるだろう」
「それで、ここでの生活に慣れたとして、その先は?まさか、ここで第2の生を全うすると?」
「そうだ」
レンジャー4の言葉に俺は頷いた。3人は、驚きはしなかった。ある程度、予想は出来ていたのだろう。今は静かに俺を見つめている。
そんな俺たちは死人だ。それが第2の生を与えられ、このキヴォトスにやってきた。
「もはや故郷に帰れるかも怪しい。そして家族から見れば俺たちは、死者だ。ならば、突如として与えられた第2の生を、俺は先生として全うしようと思う。……そして、この第2の人生の最後として、このキヴォトスに骨をうずめるつもりだ」
そう言って俺は椅子から立ち、窓の方へと歩み寄る。キヴォトスの町並みが、落ち始めた太陽によってオレンジ色に染まって行く。
「分からない事は多い。それについて知る事、調べる事を諦める訳じゃない。それでも、こんな戦う事ばかりだった俺が先生として。あの子たちに何かを与えてやれるのなら。先達として、何かを教えてやれるのなら。そんな第2の人生があっても、良いと思ったんだ」
それが、俺の意思だ。まだ分からない事だらけだが、先生として俺が呼ばれたというのなら、その先生として最善を尽くそう。……俺に何が出来るかは、謎なんだがな。
さて。
「お前らはどうだ?先生をする気はあるのか?無いのか?」
俺が問いかけると、3人はしばし無言だった。
「ハァ~~~」
やがてレンジャー3が深いため息をつく。
「そうだなぁ。今更家族の所には戻れねぇし。しょうがねぇ。やるだけやってみるか」
最初に踏ん切りがついたのは、やはりレンジャー3か。あいつの場合、うだうだと考えるタイプではないからな。
「そうだな。俺たちはもう、死んだ人間だ。今更家族の元には戻れんだろう。ならば、第2の人生、先生とやらをやってみるのもまた一興か」
「ハァ。こうなったらやってやりますよ、先生。出来るかどうか不安でしかありませんが」
レンジャー3の言葉がきっかけとなってか。レンジャー2とレンジャー4もため息交じりに頷く。
「そうか。ならば、俺たち4人はこのキヴォトスで先生をすることになった訳だな」
笑みを浮かべながら3人の方へと戻り、椅子に腰を下ろした。
「務まるのかねぇ。俺たちが先生なんてよ」
「もう立場上は先生だからな。やるしかないだろう」
「今から教員免許の勉強でもします?」
「それも良いかもしれんな。流石にキヴォトスと言えど、プライマーとの戦争中ほど忙しくはあるまい」
レンジャー3やレンジャー2、レンジャー4たちと、今後について更に話をしながらも、俺たちの最初の1日は過ぎていく。
ちなみに冗談で言った、『プライマーとの戦争中ほど忙しくは無いだろう』、という言葉は、のちのち撤回しなければならない事を、その時の俺は知る由も無かった。
~~一方、場所は移り替わり、ミレニアムサイエンススクールにて~~
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「は~~。疲れたぁ」
私、『早瀬ユウカ』はミレニアムの校舎内部を歩いていた。一応連邦生徒会の行政権は元に戻ったけど、混乱していた間に発生した問題とかの解決はこれからだし。数日は忙しそう。
「ハァ」
そう思うと余計疲れを感じる。あ~もう。今日はとりあえず上がっていいって言われたし、早く帰ろ。帰って、とっとと寝よう。
「って、そうだった」
帰りがけになって思い出した。先生に伝言頼まれてたんだった。まだ彼女、いるかな?
私は先生の伝言を思い出し、エンジニア部の部室に向かった。
「すみませ~ん」
部室のドアを開け、中に入る。
「ん?おやユウカじゃないか。何かご用かな?」
「あっ、お疲れ様です、ウタハ先輩」
私を出迎えたのは、エンジニア部の部長でもある3年生の『白石ウタハ』先輩。が、他の『3人』の姿は無い。
「あれ?ウタハ先輩だけですか?」
「あぁ。ヒビキとコトリの2人は他の部活からの依頼でね。設備の修理に行っているよ。『もう1人』の『トドロキ』なら奥の部屋だけど?」
「あぁ。トドロキは居るんですね。なら良かった」
「彼女に何か?」
「はい。実は……」
小首をかしげるウタハ先輩に、私は先ほどの先生から聞いた事を要約して話した。先生がやってきた事。先生は元軍人で、EDFという組織に属していた事。そしてEDFにはウィングダイバーという兵科がある事。そしてエンジニア部に開発を依頼したトリニティの生徒が、このキヴォトスでも同じ名前を名乗っている事から、その生徒やユニットを作った人物がEDFとかかわりがあるのでは?と考え、開発者と名付け親の生徒に会いたがっている事。一先ずこれらを伝えた。
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「成程。それでトドロキに」
「はい。ウィングダイバーユニットの設計や開発、生産自体はエンジニア部名義ですが、設計などはトドロキが担当していた、と聞いていたものですから」
「そうだね。確かにあのユニットの開発は彼女が主導だったからね。そう言う事なら」
と、そう言ってウタハ先輩は席を立ち、奥の部屋へと進んでいく。
「トドロキ、ちょっと失礼するよ」
奥の部屋のドアを開けて中に入ると、窓から差し込む夕日で、オレンジ色に染まりつつあった部屋で一人の、オレンジ色の髪の少女がパソコンに向かっていた。
「ん?部長か。何か用か?」
こちらに背を向けていた、オレンジ色の長髪をストレートで流した少女、『
「あぁ。君に話があると、彼女がね」
「ん?早瀬か。何か用か?」
「えぇ。実はちょっと話があって」
そう前置きをして、私はウタハ先輩に伝えたように、先生の話を伝えた。
「成程、成程」
話を聞いたトドロキは顎に手を当ててただ頷くばかり。なんか一人だけ納得しているの、ちょっとこっちが納得いかないわね。そう思って小さく眉をひそめていた時。
「そうだ早瀬。伝言はそれだけか?」
「え?あぁ、そうだ。あと一つだけ先生から伝言があったんだった。えっと、『ストーム2が会いたがっていた』って。そう伝えてくれって」
「ストーム2?はっ、ははっ!そうか成程っ!彼らかっ!あのレンジャー達が先生とはなっ!こいつは傑作だっ!ははははっ!」
な、何っ?トドロキったら急に高笑いし始めてっ!?ちょっと怖いんだけどっ!横でもウタハ先輩が少し引いてるしっ!っていうかっ!
「な、なんでアンタが先生たちの事、レンジャーって呼ばれてたか知ってるのっ!?私今の話でそのこと触れてないわよねっ!?」
言ってないはず。先生たちがレンジャーと呼ばれていたなんて、トドロキには伝えてないはずっ!なのにこいつは知っていたっ!?どうしてっ!?
「ははっ。そうだな。その点については、ノーコメントだ」
そう言ってニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべるトドロキッ。
「何でよっ!?」
「確かに『俺』は先生たちの過去を知っている。そのコールサインの意味も、EDFの事も、な。だが、先生たちの過去を俺から聞き出すのか?それは些か、デリカシーの無い行動といわざるを得ないな」
「うっ!」
た、確かにトドロキの言う通り、人の過去を他人から聞こうなんて、確かにデリカシーの無い行為だけど、でもっ!
「ははっ、まぁそう難しい顔をするな早瀬。時期が来れば俺の事も、ストーム2の4人についても話を聞ける機会はあるだろう。その時を楽しみにしていれば良い」
「……分かったわよ」
納得は出来ないし、分からない事だらけだけど。でも確かにトドロキの言う通り、先生たちの過去をトドロキから聞き出すのは、デリカシーの無い行動よね。……めちゃくちゃ気になるけど。仕方ない。……仕方ないんだけど。
「でも、念のため聞いておきたいの。先生が言ってたストーム2のコールサインて、どういう意味なの?それをあなたは知ってるの?」
「……」
トドロキは、無言で顎に手を当て、少し考えた様子の後、『それくらいなら、話して大丈夫か』と小さく呟いてから、口を開いた。
「かつて、先生が所属していた軍事組織、EDF。それはある時、プライマーと呼ばれる敵性集団との全面戦争に突入した」
「プライマー。……やっぱり」
「ん?ユウカはその名前を知っていたのかい?」
やっぱりあの名前、そうなんだ。と思って頷くと、隣のウタハ先輩に聞かれた。
「なんだ。早瀬も先生から聞いていたのか?」
「聞いた、っていうか会話の中でその単語が聞こえて来たのよ。内容からして、先生たちの敵みたい、って事くらいしか知らなかったけど、それは合ってたみたいね」
「そうだ」
トドロキが静かに頷き、話を続けた。
「プライマーの技術力は、当時のEDFのそれをはるかに上回っていた。決して無敵ではないが、物量や投入される兵器のスペックは、確実にEDFのそれを上回っていた。長く続く戦いで劣勢に立たされていたEDFはプライマーへの反撃の為、プライマーの占領された基地の奪還を計画。そんな中で各種兵科の精鋭中の精鋭が集められた。そのチームの名が、『ストームチーム』。先生たちは陸戦歩兵であるレンジャーの精鋭として、チーム内でストーム2のコールサインで呼ばれていた」
「ストーム、チーム。ねぇ、そのストームチームって、やっぱり強かったの?精鋭を集めたチームなんでしょ?」
「あぁ。強いも強い。何しろプライマーのボスを倒し、戦争終結に導いたのもストームチームだからな」
「ッ。それじゃあ……」
強いとは、思って居た。不良生徒なんて手も足も出ない程に。でも、『それだけ』じゃなかった。先生たちは、正しく『戦争終結の、英雄』?
私の驚きように、トドロキは得意げに笑みを浮かべながら呟いた。
「掛け値なし、嘘偽りも無しに、本物の英雄だよ。あの人たちは」
得意げに、しかし嬉しそうに、トドロキは語った。英雄。そう言えば、今日の戦闘は、まるで大したことない、と言わんばかりの様子だったミカメ先生。
でも、実際その通りだったのかもしれない。あの戦闘が、大したことないと思えるほどの苛烈な戦場を、生き延びてきたのなら……?先生たちは一体、どんな過酷な戦いを生き延びて来たのか。その時の私には、想像も出来なかった。
けれどその時の私はまだ、知らなかった。目の前に居るトドロキもまた、その英雄たちのチーム、ストームチームにて、コールサインを背負って戦った、英雄の1人であったという事を。
~~~場所は変わり、トリニティ総合学園~~~
「ふぅ」
今、私守月スズミは校内を歩き回っていた。先生に託された伝言を伝えるために。……とは言え。
『天羽さんは学園屈指の自由人。各派閥に属する事も無く、自由気ままが大好きな方。どこに居るのでしょうか?』
トリニティはもともと、複数の学園が統合されて出来た学園で、その際に統合の中心となった3つ学園をもじった派閥があるのですが、天羽さんはそのどれにも属さず、自由気ままに生活しています。まぁ、そんな自由気ままな天羽さんの事を慕って集まる生徒も多いのが現状です。そして私はそんな彼女を慕う生徒さんに遭遇。偶然にも天羽さんの居場所を教えて貰えたので、そちらに向かいました。
向かったのは学園の敷地内、それもあまり人が近づかない敷地の隅の方。
「あっ」
見つけました。少し古いベンチの上で横になり呑気に寝ている天羽さんを見つけました。そんな彼女に近づいていくと。
「ん?あぁ。スズミか。どうした?」
起きていたのか、それとも今まさに起きたのか。どちらにせよ天羽さんが私に気づいて体を起こした。赤、それもワインレッドに近い、紅い髪のショートヘアを揺らしながら問いかけてくる天羽さん。
「おはようございます、というべきでしょうか?この場合は」
「あぁおはよ。もう夕暮れ時だけどな」
そう言って頭上の、オレンジ色の染まりつつある空を指さし笑う天羽さん。
「というか。良いのか?自警団のスズミがこんなところで油を売っていて。今あちこちで大変な事になってるらしいじゃないか」
「えぇ。ですがその件は一先ず落ち着きました。少なくとも、これ以上悪化する事はありません。今後は事態回復に向かっていくでしょう」
「ほう?」
天羽さんは僅かに目を細めた。
「スズミは、確か連邦生徒会に向かうハスミについて行ったはずだな。向こうで何か進展でもあったのか?」
そう言いつつ、隣の席に座るように促す天羽さん。あっ。あの鋭い視線。これは間違いなく、事情を説明しないと返してもらえないですね。まぁメッセージもありましたし、帰る気はないのですが。
『失礼します』と一言言いつつ、天羽さんの隣に腰を下ろす。
「実は、ですね」
そして私は、連邦生徒会に向かってからの事を説明した。
向かった先で連邦生徒会長が招聘したという4人の先生と出会った事。先生たちがこの問題を解決するフィクサーになってくれる、と説明された事。そのためにDUの外郭地区にある建物へ向かった事。その周辺の不良生徒を先生たちと共に倒した事など。そして、ウィングダイバーの話を聞いた先生が、天羽さんに会いたがっている事。
そして、最後に私は、例の伝言を伝えた。
「『ストーム2が会いたがっている』、そう伝えてくれと言われました」
「そうか。ストーム2か。………くっ、くくっ!あはははははははははっ!!」
えっ!?突如として狂ったように笑う天羽さんっ!?ど、どうしてっ!?
「あ、天羽さんっ!?大丈夫ですかっ!?」
「はははっ。あぁ、すまないスズミッ。あまりに懐かしい名前を聞いた物だから、笑うのを堪えられなかったよっ」
そう言って笑い過ぎて目尻に浮かんだ涙を指先で払う天羽さん。でも……。
「懐かしい名前って、どういう事ですか?まさか、天羽さんは……?」
「あぁ。私は元EDFの、兵士だ」
ニヤリと狂暴な笑みを浮かべながら、天羽さんはベンチより立ち上がり、私の前に立った。
「折角だ。改めて名乗っておこうか。私はEDF所属のウィングダイバー部隊、中でも精鋭と言われたチーム、『スプリガン』を率いていた、スプリガンリーダー。そして、ストームチームにて、『ストーム4』のコールサインを背負い戦った女だ」
自信に満ちていて、その上でどこか狂暴な笑みを浮かべる天羽さん。何を言っているんですか、と言いたかった。けれど、言えなかった。
なんとなく、『感じる』。天羽さんの纏う、オーラのような物。覇気、と呼べる物かもしれない物を、感じる。彼女は、『違う』と本能で理解する。経験値が違う。『戦いの経験値』が。私も、自警団として戦いを経験してきた。でも、無理だと本能で理解する。届かないと理解する。不良相手に、何十、何百と戦った所で、今の天羽さん程の覇気を纏える自信が、無い。
今まで感じた事の無い覇気。これほどの覇気を纏える人なんて、早々居る訳が無い。そんな人がいるとしたら、その人は、きっと、歴戦の強者。一体、どれだけの戦闘を経験したら、こんな……。
「天羽、さんが、ストームチーム?つまり、先生の?」
「あぁ。幾多の戦場を共にした、戦友だ」
「で、でもその話本当なんですかっ!?天羽さんが従軍していたなんてっ!そもそも、天羽さんはまだ学生ですよねっ!?」
正直、信じられない、と言いたい自分も居た。でも同時に、あの濃密な覇気は、まさに歴戦の強者。元軍人、それも精鋭部隊出身と言われれば納得してしまうほどに。
理性的な疑惑と、本能的な理解がせめぎ合う。と、その時だった。
「ふっ。まぁ、信じるか信じないか。それはスズミの自由だ」
そう言って踵を返した天羽さんが歩き出す。
「あぁ、それと。ストーム2が私に会いたがっているそうだな。日付はいつでもいい。そちらの都合がいい日をとりあえず教えてくれ、と伝えておいてくれ」
そう言って、こちらに背を向けたまま、手を振りながら天羽さんは去って行く。
「は、はい。……って、じゃなくてっ!天羽さんっ!?」
少しして、私はハッとなって天羽さんを追いかけた。今の話が本当なのか、もっと話を聞きたかったから。……でも結局、その日はのらりくらりと躱されてしまい、結局それ以上の話を聞く事は出来なかった。
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キヴォトスに招かれた先生たち、レンジャー2。だが、この世界に招かれたのは、彼らだけではない。彼らとは異なる形で、かつての戦友たちもまた、このキヴォトスに招かれていたのだ。
そして、かつて強大な敵に力を合わせ立ち向かった英雄たちの、再会の時は近い。
第6話 END
って事で、エンジニア部に追加のオリキャラです。彼はこの作品オリジナルの登場キャラで、EDF側からの登場人物です。楽しんでいただければ幸いです。感想や評価、お待ちしております。